仮題・・・恋姫世界に幕末日本をぶち込んでみた。   作:3番目

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感想欄では戦争は変わった展開を予想していた方々が多かったけど、それはまだ先ですね。
それに、呂布は例外だと思うんだ・・・


61話 反董卓連合⑩ 虎牢関の戦い

 展開を終えた連合軍と向かい合う董卓軍(呂布・張遼諸隊)。

 それを睥睨する張遼、この軍の大将は彼女だ。呂布は完全に武辺の者、それも華雄のように申し訳程度の指揮能力もなく、ただただ高い戦闘能力で今の地位にいる例外。ゆえに隊の指揮も副官の陳宮と高順に丸投げだ。

「ほぉー。奴ら、動きを止めよったな。こっちの出方を伺うつもりか?・・・・どうするよ、恋。」

 

 張遼は呂布に言葉を投げかけた。すると呂布は自分の軍師である陳宮の方を見て対応を求める。行動としては振り向くだけであるが、これだけで付き合いの長い二人はどうするべきかお互いにわかるようだ。

「ちんきゅー」

「はいです!敵は虎牢関を出て布陣している我々に対して、驚きと疑念を抱いているでしょう。ならば呂布殿は、一気呵成に敵本陣を突き、その混乱に乗じてさっさと逃げるのが得策!」

 

 それを聞いた張遼は少しばかり驚いたように応じる。自身が無茶をしようとしている自覚はあるので、演技も何割かあるのだろう。

「そうも問屋が卸さへんで?先陣らしい劉旗を追い散らして、総大将の袁紹に乱入するて、結構難儀なことやで?」

 それに、陳宮は軽く応じる。

「呂布殿なら無問題です!」

「た、確かに・・・恋なら出来るやもしれんけど・・・もう少し現実的にやな?」

 流石に無茶だと思った張遼は陳宮に再考を促すが、それを呂布が止める。

「霞。・・・・・・恋、頑張る。」

「・・・が、頑張るて・・・うぅ・・・まっ、ええか!」

 どうせ、派手に散る前提の戦いであったので、張遼は今更の小細工などと思い直し気持ちを切り替える。

「恋が突っ込んだ後で、ウチの部隊でさらに強襲を仕掛けたる。そうすりゃ敵は大混乱間違いなしやで!これを基本方針にして、あとは臨機応変に・・・どや?」

「何とも行き当たりばったりな策ですなぁ。」

「恋は、それで戦う。」

 

「応っ!・・・・・・頼りにしてるで!恋!」

 張遼の言葉にコクリと頷いて答える。

「よし。・・・・・・ほんなら恋。皆に一発、盛大な激、飛ばしたれ!」

「・・・・・・恋、頑張る。みんなも頑張る。」

「・・・まぁ恋ならそんなもんか。よっしゃ、ならウチが一発、気合入れたるわ!ええかっ!敵は連合軍とか言うとるが、そんなん名ばかりの烏合の衆や!ウチらに勝てるはずがあらへん!!怖がる必要はないで!派手にかましたれ!!全軍抜刀じゃあ!!」

 

「「「「「おぉおおおおおおおお!!!」」」」」

董卓軍の兵士たちの声がこだまする。

 

 

 

 

 劉備軍と呂布・張遼の軍が激突する。

 関羽と張飛の部隊は正面から呂布・張遼の軍を受け止める様に動き、趙雲と龐統の部隊が左右から固める動きをして、半包囲しようと動いたようだ。

 

 

 前線は馬脚の音、軍兵の足音、剣戟の音、砂煙も上がって視界もよくない。

 前線から距離があるが前線が見える位置にある隅の方の岩の影。

 そこに、徳川の顧問団一隊が潜んでいた。

 上原が岩陰に隠れながら兵士達に支度を促す。

 数人の兵士達が銃袋から村田銃を取り出す。

 上原たちは息を潜ませる。

「出来るか?」

「粉塵が多く見えますが狙撃用に改修されているとはいえ難しいかと・・・」

 内3人の兵士が、試製狙撃改修型の村田銃を構えた。

「仕方がない・・・手前の兵士を射殺して・・・戻るとしよう。」

 3人の兵士が董卓軍の兵士に狙いをつける。

「撃て。」

パーン!

 三人の董卓軍の兵士が倒れる。

「本当に狙えないのか?」

「何度言うようにっ!?ぐふっ!?」

 自分の横にいた副官が血を噴いて倒れる。腹部に大穴を開けて横たわる。

「な、何事だ!」

 腰を抜かした上原はその場でへたり込む。

「ぐあっ!」「ぎゃ!?」「げぇ!?」

 狙いを付けていた狙撃手達も奇妙な声を上げて突っ伏す。

「ふ、伏せろ!撤収撤収だ。」

 他の兵士達が屈みこんで銃を回収する。

 兵士の一人が戦場の方を見る。

「ひぃっ!?」

 あのうるさい戦場で銃声が聞こえるはずは無い、自分達の姿を見つけることだって困難だ。

 なのにどうして、あの呂布奉先とか言う将は石を持ったまま、こっちを見ているんだ。

 石を振りかぶって・・・投石で殺したのか?この距離で!?

「ば、化物だ・・・ぎゃ!」

 

 上原は銃こそ回収したものの、兵士を5人も失ったのであった。

「呂布奉先・・・人智を超える武を極めしもの・・・・・」

 

 徳川の暗殺奇襲は人知れず失敗に終わった。

 

 

 

 

袁術軍の陣にて

 

 美羽を中心に左右に七乃を中心とする。右に袁術軍の将、左に徳川の顧問官。

 

「大久保卿、申し訳ございません、呂布の逆襲に合い、兵を失ってしまいました。」

 上原が膝を屈し、大久保らに報告する。

 

「あははー。失敗してしまったようですねー。大久保さん」

「そのようだ、呂布は規格外だったようだ。上原、下がって良いぞ。」

 

「失礼します。」

 上原は頭を下げて退席する。

 

「どうする?張勲殿」

「困りましたねぇ。大久保さんの一手には少し期待していたのですが、返り討ちとは・・・次の手を打たなくてはなりませんね。」

 大久保は、自身の失敗を特に気にした様子もなく七乃がどう返すかを待った。

「仕方がありませんね。楽就さん、劉備さんの所に5000程率いて手伝いに行ってくださいな。」

「了解しました!」

楽就が駆け足で陣を後にする。

「七乃よ、なぜ、劉備如き田舎者に妾が目をかけねばならんのじゃ?」

美羽の疑念に七乃が答える。

「お嬢様には話すのが遅くなりましたが、劉備殿がこの前、我が軍の兵と兵糧を借りに来た時に、劉備殿に戦後の同盟を持ち掛けまして。」

「劉備等、雑多な小勢の長でしかないではないか?」

「いえ、劉備は先の汜水関で華雄を討ち取り一番槍一番首。汜水関の入場一番手、この虎牢関でも一番槍を上げました。この功績で劉備は戦後それなりに大きな地の太守になるでしょう。今のうちにこちらに引き込みたいんですよー。」

「うむ、妾は兵の事は七乃に任せようぞ。しっかり頼むぞ、七乃?」

 美羽は完全には理解していないが異存はないと答える。

「では、お言葉に甘えて・・・紀霊さん、軍の中央を開けておいてください。」

「そ、それはどういう事でありますか?」

 紀霊の疑問も当然であろうから七乃はそれにも答える。

「呂布さんは途轍もなく強い様です。なにせ、大久保さん・・・いえ、徳川日本国の搦手を力技で食い破ったのですから・・・。劉備さんも頑張ってくれていますが、無理でしょう。今いる呂布と我々の間に挟まれて、劉備さんがどうにも出来なくなってしまいます。せっかく、味方になってくれそうなのに失う訳にはいきません。もったいないですからね・・・、先ほどの楽就さんにも今少し耐えるようにと伝えさせます。劉備さんの軍師は優秀ですからね、切羽詰まれば、呂布を通してしまうでしょう。だから、せめてその時機だけでもこちらで決めたいと思いましてー。」

「な、なるほど。張勲殿、すぐに動かします。」

 紀霊も、大凡の事を理解して退席する。

「それと、程昱さん。この動きは少々露骨ですので、小細工の方はお願いします。袁紹さんさえ誤魔化せれば構いませんのでー」

「そうですか。それなら、何とかなるでしょう。ではでは」

程昱もそのまま退席する。

 

 七乃は一息入れて、大久保の方を見る。

「大久保さん、戦後の御支援期待させていただきますよ。」

「どういう意味だ?」

 

「明命さん」

「っは」

 七乃の呼び声に応じた明命は葵の紋のついた服の切れ端を地面に置く。

 それには血痕が付いていた。

「大久保さん、謀をするときは足跡を残さないものですよ。葵の紋も持って帰らなくてはダメですよー。貸し一つと言うことでお願いしますね。」

 額に手を置き上を仰ぎ見てから返事をする。

「はぁ・・・・・わかった。」

 

 

 

 その後、呂布は劉備軍と袁紹軍の包囲を突破。

 後方部隊と前線部隊を組み直すのために再編中だった袁術軍の間を通って下野したのだった。張遼は残念ながら曹操軍の捕虜となったようだ。

 

 

 

 


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