仮題・・・恋姫世界に幕末日本をぶち込んでみた。   作:3番目

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徐々に徐々にこの作品も真名で呼ぶキャラが増えていきます。
徳川側の恋姫キャラは多かれ少なかれ黒くする予定。


63話 反董卓連合⑫ 洛陽懇談会 後編

 七乃達が孫権らと話している間、七乃の片腕(実質両腕)として着実に功績を上げてきた程昱は袁術軍内でも高い地位と信頼を得るに至り、美羽・七乃と真名の交換を行っている。

 また、今まで公表する機会を失っていた紀霊の真名は仕士(しし)である。

 

 紀霊こと仕士の事は置いておくことにして、程昱(風)は劉備軍からの劉備の代理として出席した諸葛亮と龐統に応対していた。

 諸葛亮と龐統の席を左に風、右に大久保ら徳川の顧問官によって挟み込むようになっていた。

「あの~劉備さんのお返事はいかがなものでしたか~?」

 いつも通り間延びした声で尋ねる。

「朱里ちゃん・・・」

 龐統の声に促される形で諸葛亮が答える。

「袁公路様のご提案をお受けします。つきましてはどの地域を振り分けていただけるのでしょうか?」

「おぉう、意外と抵抗なく受け入れたのですねぇ。」

 風は観察するように二人を見る。この行為は正直言って不安を煽る行動の一つだ、風が七乃の下で仕える様になってから覚えた手法だ。ただの不思議ちゃんでしかなかった彼女もずいぶんと染まってしまったものだ。

「汝南袁家の持つ豊富な資金や優れた技術や文化、袁術軍の新しい戦術。そして、それを与えた徳川日本国。これに楯突いてどうやって生き延びて行きましょうか。」

「かつての袁家が弱卒と呼ばれる時代は終わりました。今や両袁家は強兵を抱える大勢力となりました。」

 諸葛亮と龐統が交互に告げる。

「漢王朝だけならば、曹操や劉表・劉焉にも天下取りの機会はあったでしょう。」

「しかし、徳川日本国がこの戦争に加担している時点で勝者は袁紹さんと袁術さん、そしてそれらに続く諸侯達でしょう。」

 大久保と風は話を聞き続ける。彼女たちの理解がどの程度のものかを測るためだ。

「どうぞ、続けてください。」

 大久保←大久保が 本国輸入品のワインを口に含みながら促す。

 促された、諸葛亮と龐統は軽く頷いた後続ける。

「ですが、徳川日本国にも弱点はあります。これだけの資金を袁紹さんや袁術さんにつぎ込んでおきながら、軍隊を一切派遣しない。」

「徳川日本国は世界各地に軍を派遣している。おそらく、世界中に兵力を分散してる為、この大陸に回す戦力が足りないのではないでしょうか。」

 風は大久保の顔を覗き込む。

「おぉ・・・。見事な推察ですねぇ、大久保さんどうします?」

「ふむ、別に絶対に軍を派遣できないわけではないが概ね当りと言っていいだろうな。」

 大久保は盃に入っていたワインを一気に飲み干す。

「だが、決定打ではないだろう?」

 すると今度は、諸葛亮のみが答える。

「貴方方は虎牢関で呂布を暗殺しようとして失敗しました。ですが、それは本題ではありません。貴方方はどこからどうやって呂布を暗殺しようとしましたか?」

 諸葛亮は鋭い視線を大久保に送る。

「(銃を見たのか!?)・・・致し方ない・・・まあ、想定外ではあるがこちらについてくれると言うのなら私から言うことはない。劉備軍への差配は袁公路殿に任せている。」

 風に視線であとは任せると合図を送り、大久保は食事を始める。

「おぅ・・・丸投げですか?仕方ないですね、あとの差配は任されましょう。あ、そこの職人さん私にも飴をください。形はそうですね龍でお願いします。」

 風は徳川日本国から呼び寄せていた飴細工師を呼び止めて、飴細工を造らせる。

 熱せられた熱いままの飴を素手で練り加工していく、彫刻刀で細かい細工を付けていき、食紅を付けた筆で色を付けていく。

「まるで、今の漢王朝の様ですねぇ。」

 風の言葉を聞いて諸葛亮と龐統はその意味を理解する。

「見かけは華美だが中身を伴わないものと言う事ですか。」

 龐統の言葉に風は笑って応じる。

「ほほほ、良くわかっているようですねぇ」

 飴細工師が完成した龍の飴を棒に刺し風に差し出す、風はそれを受け取って舐め始める。

「そう漢王朝は飴細工の様ですねぇ。かつて劉邦が作った王朝は気高く雄々しく美しい姿を見せてくれました。ですが、多くの人を抱え統治しきれなくなった王朝は腐った宦官や欲深い廷臣達にしゃぶり尽されたその姿は見るも無残な姿に変わってしまいました。大陸全土を治めるなんて無理な話なのですよ。所詮劉邦のやったことはこの飴細工の様な見てくれの良いだけのしょうもない国だったと言う事ですよ。」

 諸葛亮と龐統は風の発言に驚きを隠せないくらいに表情に出ていた。

「だから、分割統治と言う事ですか?」

「その通りです。徳川日本国の力の一端は見たようですし、徳川が分断を望むならそれに従うのが当然でしょう。それと、劉備さんにはしばらくは沛国のあたりでも治めていただき、いずれは巴蜀のあたりでも治めていただきましょう。場合によっては涼州辺りまで範図を広げても構いませんよ。荊州の分割はいずれしましょう。」

 諸葛亮と龐統はしばらく考え込む。

「はい、それで構いません。」

「ですが、巴蜀の地は少し遠いです。支援は期待できるのですか?」

 諸葛亮と龐統の問いに風は答える。そして、龐統の問いにも答える。

「えぇ、まあ、汝南袁家からと言うよりは別の同盟国と言う形になりますが―」

「それはどこですか?」

「南方三国、皆さんが南蛮と呼んでいる国ですよ。汝南袁家と徳川幕府で話は付けますのでご安心ください。」

「徳川は南方まで掌握しているのですか?」

 諸葛亮は少し驚いたように尋ねる。

「掌握と言う言葉は不適切ですが、かつての漢の朝貢国は軒並み徳川に切り替えてますからね。南方の三国も例にもれずですね~。徳川に敵対するのは馬鹿のやることですよ、仮に漢を統一出来たとしても、徳川とその同盟国に寄って集って四方八方から責め立てられて終わりですよ。ほほほ」

 

 

 

 

 

 会食会議が終わり、主客達を帰らせた後。

 七乃、風、仕士(紀霊)、大久保らは周りが片付けられているのを気にしないで雑談を始める。ちなみに美羽は眠くなっていたので上階の宿泊施設で寝ている。

「孫権さんは、元々孫策さんのやり方には思うところあったようですからね。こちらが歩み寄れば、やる気を出してくれるとは思ったのですが・・・どうも、踏ん切りはつかないようですねー。」

「といっても、姉妹で派閥が分かれ始めているようですがー」

「孫呉の臣達は機敏に本能で察しているのでしょうかねぇ。立場を明確にしている者は少ないですが、どちらかに寄り始めているのは明命さんを通して聞いていますから」

 大久保はパイプに火を点けながら七乃と風の意見をまとめる。

「つまり、孫権自身は事が起きればこちら側に着くと言う事かね」

「もしくは中立ではないでしょうかね。」

「まあ、孫呉が割れるのならばやり様はある、張勲殿も手を打っているのでしょうからな。劉備の所もいずれは巴蜀をくれてやって巴王なり蜀王なりを名乗らせればよいだろう。私としては、後の事も考えたいのでな。」

「後の事でありますか?」

 ここでようやっと仕士が会話に参加する。彼女は完全な武官なのでこういった話には参加できないのだが、立場上席にはつかないといけない。ちなみに彼女のセリフは今回これだけである。

「上海・澳門・香港の漁港の整備だよ。この地域を租借して我が国の港湾領土にしたい。貿易の中継拠点にもしたいのだよ。」

 

 群雄割拠の時代は確かに来るだろう。だがそれは出来レースに近いものであった。

 

 

 


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