仮題・・・恋姫世界に幕末日本をぶち込んでみた。   作:3番目

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67話 北の尖兵

 大陸において反董卓連合が解散し、一時的ながらも安寧の時代が訪れていた。

 諸侯は黄巾の残党や賊徒の討伐もしくは懐柔を進め手持ちの兵力を増やし、領内の治安を回復させ、自らの力を高めていく、そう言った時代だ。

 

 

 端から見れば、漢王朝の一通りの不穏分子が取り払われ回復しているようにも見える光景であった。詳細は群雄達が各々で国力を高めている結果だが、そんなことまで理解しろと言うのは無理な話である。そう言った理由で遊牧民族が徳川日本国に擦り寄ったのは当然の流れだろう。

 

 徳川日本国は挹婁族・夫余族・羯族・匈奴族・烏桓族と万国博覧会以後交易が始まった。

 一方で徳川日本国との友好を拒否し敵対した鮮卑族に対抗させる目的で徳川日本国は挹婁族・夫余族・羯族・匈奴族・烏桓族・羌族に対して鉄や青銅の鏃・鐙の輸出を開始。

 北方遊牧民族の最大勢力である鮮卑族に対して挹婁族・夫余族・羯族・匈奴族・烏桓族・羌族は反旗を翻したのである。彼ら遊牧民族にとって力こそすべて彼らに力を示した徳川日本国は挹婁族・夫余族・羯族・匈奴族・烏桓族・羌族と言った遊牧民族を従えることに成功したのであった。

 

 

 夫余単于と挹婁単于の出迎えを受けた北方統監府の使節板倉勝達と幕府役人達を迎え入れた。

 幕府及び各財閥からより大量の鉄・青銅製武器がもたらされる。

 板倉ら使節団が出迎えの夫余単于と挹婁単于に頭を下げる、すると向こうも頭を下げる。

「家茂公はこの度の夫余単于様と挹婁単于様の御英断に対して非常にお喜びです。」

 たかが他国の大使に対して国王が出迎える。彼ら遊牧民族と徳川日本国の力関係が如実に表れていた。

「それは何よりです。大使殿、こちらにゲル(モンゴルの伝統的な家屋)を用意した。どうぞこちらへ・・・」

 

 ゲルに案内された板倉は席に着き接待を受ける。

 接待側の夫余単于と挹婁単于も徳川日本国との交易の利益で得た財で宝石などの多くの装飾品を身に着けている。王なのだから当然だと思うかもしれないが、徳川日本国との関係を持つ前はそうではなく、単純に力がすべてであり、個人の武器に向けられていた。

 しかし、徳川日本国と交易を始めるとそう言った考えは徳川より流れ込む大量の金の流れによって一気に押し流されてしまう。今までは全員貧民だった遊牧民は単于や各部族長に大量の財が流れ込んだことで上流階級が登場した。これは挹婁族・夫余族・羯族・匈奴族・烏桓族・羌族と言った徳川についたすべての遊牧民族に言えることだ。

 

 贅沢を覚えた人間は脆い、自分達の財を守るために徳川日本国の言いなりになり、意にそぐわない者たちを次々に討ち取っていく。さらに、彼らの財貨を守るために徳川一族の協力を得て中央銀行が開設される。徳川から寒冷地用の農業技術や食物がもたらされ放浪の回数が減っていく。移動しなくなるので徳川日本国との接触回数が増える、彼ら遊牧民族は接触するたびに徳川の代理人である上流階級者達を通して徳川が用意した理論と原則へと傾倒していくのだ。

 

 歓待を受けた板倉ら使節団は挹婁族・夫余族が鮮卑族を討つ準備を着々と進め、挹婁族・夫余族上流階級者達の忠誠を確認し、かの地を後にした。

 かの遊牧民たちは徳川の尖兵として大陸支配のための強力な力となるだろう事を板倉は理解していた。だからこそ、上流階級の贅沢な生活を保障し、彼らにその他大勢の庶民達に程よい飢えを維持し続ける様に指示し、それを手伝う。

 

 板倉は帰途の籠に乗り家茂公に他の藩主達や財閥当主、政府高官と共に呼び出された時の事を思い出す。

 

「我々の要求に素直に従い、遊戯盤の駒となって、国を陰で操ることを我々から任じられる者を選ばなければならない。」

 

 世界を遊戯盤に置き換え徳川日本国含む全ての国家の高官たちを駒と呼ぶ家茂公の姿が頭から離れない。彼の作る世界に自分たちの居場所を確保するには彼に尽くすしかない。それが分かるからこそ、幕府の高官も諸藩の藩主達も財閥当主も彼に逆らうことはしない。

 いや、財閥は一度彼の指示を待たずに大陸の袁紹に火炎瓶を渡して不興を買っている。

 その締め付けとして鉱山油田利権における鉱山と油田はすべて国有財となった。今の鉱山産業は財閥が国から採掘権を預けられているに過ぎないのだ。もう誰も、徳川家に逆らえない。

 

 鮮卑の人間は間違いなく徳川の世界の生贄になるだろう・・・

 しかし、鮮卑だけでは足りないだろう。情勢からしてローマ帝国も間違いなく生贄だ。

 あとは、どこの誰がこの徳川の世界の祭壇に捧げられるのだろう。

 

 板倉は籠の小さな障子戸を開ける。北方の大地ゆえに荒れ地が広がっている。

 

 


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