仮題･･･恋姫世界に幕末日本をぶち込んでみた。 作：3番目
虎林港を脱出した美羽と蓮華達。
虎林港を脱出した彼女達は一度柴桑に入ったがその後すぐに蘆江が劉表軍によって陥落したとの報が入り、さらにこの柴桑にも南揚州の諸侯軍が長沙からの陸路を使い劉表軍が、制圧された虎林港より孫策軍が迫って来ていた。
この時、柴桑にいた袁術方の兵力は袁術の親衛隊約500、柴桑や他袁術領から脱出してきた者達を含めた袁術軍正規兵約3000、孫権軍約1000、呂布の兵約1000、徳川領事館兵100未満、袁術に協力した喬玄の兵1000と現地の民を徴募した兵で合計は7000を僅かに超える程度であった。
柴桑は袁術による統治が始まって短く旧領主喬玄は現状袁術に従っているが現地民の支持は未だ喬玄にあり袁術の領地とは言い難い。
迫る敵は劉表率いる荊州諸侯連合軍5万と孫策率いる3万。
この頃には孫権（甘寧）の河賊に対する影響力も激減しており、彼女に近しい者たち以外は味方する者はいなかった。それでも一種の義理立てか河賊の殆どが中立的立場をとっていた。
劉表軍と孫策軍がぶつかる中で、喬玄ら土着の者達が柴桑へ残ることを選択するなか袁術軍は柴桑を脱出することを選択した。
陸口港へ上陸した黄祖と蘇飛によって率いられる江夏劉表軍2万と長沙からの陸路にて侵攻して来た劉表軍の将である張允が纏め役となって率いた南部荊州諸侯連合軍3万、そして九江港から上陸してきた孫策軍3万。劉表軍と孫策軍がぶつかり合うでろうこの地からの脱出を図る袁術軍。ただし、柴桑が郷里の者達やこれ以上の根無し草の放浪を拒否した兵達はこの地へ置いていくこととしたので実際袁術軍に残ったのは3000弱の兵だった。
袁術軍が柴桑を出発する直前。柴桑の街門の前で出て行こうとする一行を喬玄が呼び止める。
「お待ちを！最後まで我が儘を言う様で申し訳ないのだが･･･どうか娘達を連れて行ってはくれないだろうか。」
「私達は構わないけど･･･あたしたちに着いて行ってもいい事なんてないわよ？」
「いえ、娘達を火事場泥棒の劉表や謀反者の孫策に渡すわけにはいかない。汚名を被ったこの二人は絶対に天下を取れますまい。そして、天下人もこの者達を重宝しようとは思わないでしょう。貴女方は戦に敗れたとはいえ汚名はない、幾らでもやり直せましょう。」
現状袁術軍の指揮を取っている詠は自分たちをギリギリまで柴桑においてくれた太守の喬玄を可能な限り悪いようにするつもりはなかった。自分から愛娘を手放そうとする喬玄の考えには少々戸惑ったが、理由を聞けばすぐ納得した。
喬玄が二人の娘の背を押す。
喬玄に背を押されたシニョンで桃色髪を左右でまとめている小柄な双子の姉妹。
「「･･････」」
「娘の大喬と小喬です。何卒、何卒よろしくお願いします。」
「父様も一緒に行きましょう？」
「そうよ！父様！」
「大喬、小喬･･･よく聞きなさい。父は柴桑の太守として民を守らねばならん、お前たちは喬公の血筋を守って欲しい。」
そう言って喬玄は力任せに娘二人を馬車に押し込め外側から鍵を閉めた。
「行ってくれ･･･」
「あなたは？」
詠が尋ねると喬玄は穏やかな表情で答える。
「柴桑の民を守るため、誰かが身代わりにならなければならないのです。民を見捨て一人で逃げた者と、謀反者と火事場泥棒に罵られたくはありませんのでな。」
喬玄は詠達に背を向けて都城の方へ歩き出す。
彼の意志の固さを察した詠は先陣を切る華雄と恋に出る様に促す。
華雄隊と呂布隊が先陣を切りその後ろを詠らの高級馬車や荷馬車が続き最後尾を蓮華の部隊が守る形で進みだす。
荷馬車には荷物以外にも汝南袁家以外の行き場がない女中や楽師、料理人などの世話役達が丸くなって身を寄せ合っていた。荷馬車の屋根や台の部分には銃を構えた徳川領事館兵が乗り込んでいた。
柴桑の街壁を隔てた長江南岸の各所で孫策軍と劉表軍の兵集団が剣と槍が激しくぶつかり合い、矢が飛び交った。
孫策と黄祖因縁の戦いであり激しくぶつかり合う。
袁術軍を送り出した喬玄は柴桑の門を固く閉ざし、扉の向こう側の土塁を補強し、兵で固める。
袁公路の一団はいくつもの小集団に分かれ、そのうえ非戦闘員を多く含み、移動速度こそ遅かったが、敗走中の軍として劉表軍・孫策軍両軍に大した脅威としては見られず無視された。
そのため、当初の予想に反して何事もなく長江へ脱した。
その後の柴桑は劉表軍と孫策軍は柴桑を奪い合い、その結果･･･
孫策軍が勝利を治め、劉表軍の大将黄祖を討ち取った。孫策軍は劉表軍を追撃、劉表軍の将兵が多く討ち取られた。
また、柴桑の兵は激しく抵抗したが所詮は多勢に無勢、柴桑は陥落。
孫策は母孫堅の旧領を完全に回復。
大陸の袁術領は消滅した。