仮題・・・恋姫世界に幕末日本をぶち込んでみた。   作:3番目

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90話 北揚州大感染大浄化

北揚州の感染症は加賀藩を中心とした防疫部隊の対応によって、鎮静化を開始した。

しかし、徳川がばら撒いたチフスは腸チフスだけであったが、防疫部隊が北揚州に入った当初は腸チフス以外にも発疹チフス・パラチフスと、さらにリッケッチアから来る紅斑熱やツツガムシ病の流行が始まっていた。

これらは初期の腸チフス感染時に死亡した死体の処理が戦時故に遅れ、飢饉と兵糧の戦時徴収によって食糧不足で体力・免疫力の低下した住民たちの間で大流行し、不衛生な環境下でダニ・シラミ・ツツガムシが繁殖したことが原因である。さらに大流行と言うほどではないが住民の健康状態の悪化から真菌・ウイルス性脳炎の発症も報告が上がっていた。ハエの増殖で通常の食中毒も多く発生していた。

また、死体も火葬ではなく山積みだったため敗血症の流行も発生し、死体をかじったネズミが原因なのか少数ながらペスト患者も発見された。

一部の村落では古い食料に手を付けてコレラに感染したものもいた。

 

 

先発して北揚州入りした防疫部隊も序盤こそ医療による治癒を目指したが、あまりにも想定外の多種多様の疫病の大流行によって、もはや医療的な対処は不可能と判断した加賀藩を中心とした防疫給水本部の長、前田慶寧は北揚州の大規模な浄化を決断。

なんとか、防疫給水本部の協力で疫病の根絶に成功していた呉の都城では、孫家暫定政権の実質的な長である孫静と名目上の長である孫尚香の許可を得た防疫給水本部は大規模な浄化作戦を敢行。火炎放射器や銃によって該当地域の住民の虐殺を実行、しかし、通常武器では浄化しきれず。防疫給水本部はガス化学兵器を投入、持ってきていたものだけでは足らず日本本土の保管施設にあったものも投入された。呉や建業などの外壁がある都市では扉が完全に閉じられ、街に救いを求めてやってきた感染者たちを街の兵士達が街壁の上から弩や弓で射殺すると言う非情な光景が広がっていた。

 

また、現地の様子を知らされた連合軍は中部揚州の関所を全て閉ざし、それ以外の各所で防衛線を展開し近寄ってくる人間すべてを射殺した。

 

以後2年をかけて北揚州の浄化が実施され、感染者のいない村落や街では軍の配給が行われ外部との接触が禁止された。

 

北揚州は飢饉による食糧不足と戦争による死者、疫病の大感染とその浄化とその抵抗による死者はあまりにも多く半数以上、100万以上の北揚州の人口が失われた。

結論から言えば黒い太陽計画における生物兵器の項目は防疫給水本部の予想を超えた大感染となり制御もままならないものとして不完全とされ、一定の成果(死者数的には大戦果)こそ示したが全体を見れば失敗と言え、今後の研究は続けられるが主力兵器としての扱いは受けないだろう。

逆にもう一つの化学兵器に関しては武器を持たない感染者とは言え殺戮を容易に行え、生物兵器に比べて制御は容易で、ガスとしての散布や噴射による使用のほかに爆弾に内蔵するなどの発展性も見込め、その評価は高いものとなった。

そして、この戦いで大きな成果を上げられなかった薬漬け兵士であるが、病気にもなるし簡単な指示しか受け付けないなどの問題点が多々あげられるが、死刑囚の有効利用の一環として今後も細々と続けられるだろう。

 

 

また、もう一つの黒い太陽計画の作戦予定地のローマであるが、こちらも天然痘の感染が広がり多くの死者が出ている。ただし、北揚州の様な絶望的な死傷者数ではない。そもそも、北揚州はほぼ全域で大飢饉と戦争が行われており、あの絶望的な大感染が起きる下地が出来上がっていたのだ。また、ローマは簡素ながらも水道設備や一定の衛生観念があった為に爆発的な状態にはなっていない。それでも、ローマ帝国を揺るがす程度にはダメージを与えている。と言ってもアナトリア戦線の主力は属州兵なので本国のダメージがダイレクトに影響するものではない。まあ、もしかしたら皇帝と元老院の対立は激しくなるかもしれないが・・・

 

 

加賀藩金沢城天守閣

加賀藩藩主前田慶寧、富山藩藩主前田利同、大聖寺藩藩主前田利鬯の三人は天守閣から城下を眺め語り合う。

「幕府では黒い太陽計画は問題点も多く指摘され微妙な評価となったが、我らが思うに大成功と言っても過言ではない。」

「はい、生物兵器は殺戮兵器としては最優秀です。今回は制御に失敗しましたが今後の研究が進めばいずれは制御も可能となるでしょう。それに北揚州では他の疫病の併発流行のおかげで多くの試験体が手に入りました。黒死病にコレラ、リッケッチア、それに真菌…他にもたくさんです。今後の研究ははかどるでしょう。」

慶寧の言葉に同調する利同。

「ガス化学兵器は幕府の評価も高く、増産命令が出ています。我ら三藩の製造施設では足りず、蓬莱や南天の防疫給水本部の製造施設も稼働させております。」

利鬯も付け加える。

 

「うむうむ、誠に良い事だ。今回の戦の最大の功績は我らと言っても過言ではない。今後も帝国の医科学の発展のために鋭意研究開発を進めねばならん。」

「その通りでございますな。」「然り。」

慶寧の言葉に賛意を示す2人。

慶寧はふと思い出したように利同に尋ねる。

「話は変わるが、解剖はどうだったか?」

「揚州民の解剖結果ですか?病理研究の方ですか?気操術関係の方ですか?」

「気操術の方だな。」

「残念ながら、ほとんど結果は出ていません。強いて言うなら気を扱う臓器があるわけではなく、それ以外の要素で気を操っていると思われます。次回は将校などの卓越した気操術者を・・・。彼の者らは疫病にも一切かかっておりませんのであるいは何か解ったやもしれませんな・・・」

「そうか、大陸の戦乱はまだ続きそうだからな。いずれは機会もあるだろう・・・。」

「そうでございますね。気長に待つことにします。」

 

 

 


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