バルタン星人の奇妙な野望   作:チキンライス

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第一話 来襲

 

 

 

 

 

「銀座事件」。

 突如出現した『異世界への門(ゲート)』から出現した侵略者。

 そしてそれを撃退した自衛隊、及び()()()

 世界は、人類はその日、目撃した。

 それまで創作や空想の中でしか存在しえないと思われていたゴブリンやオーク、エルフといったファンタジーの住人。

 そして人々を取り巻く広大な宇宙には、私たちがまだ知り得ない知的生命体がいることを。

 そしてここではないどこか。次元を超えてやってきた、光の戦士。

 そのライバルである、とても有名な宇宙人。

 ウルトラマンと、バルタン星人に地球人は出会ったのだった。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 その日はとても蒸し暑い日であった。

 寺島(てらしま)鋏魅(はさみ)はその時、銀座の喫茶店にいた。

 モダンなデザインの、こじゃれた雰囲気の中、一人で席に着いていた。

 時刻はもうじき、正午になろうとしている。

 すでに店内は昼食を求めてやってきた人々であふれかえっている。

 この店ではパスタやドリアといった軽食もメニューに有り、ランチサービスとしてドリンクが無料となるのである。

 それを求めてきた奥さま方、買い物で街に繰り出してきた学生、一休みにと涼みに来た作業着を着たおじさんと、客層は様々である。

 すでに何人もの従業員が、いそいそと席と席の間を動き回っている。

 その光景を、寺島はぼんやりと眺めていた。

 寺島の席には、飲みかけのアイスコーヒーと、シャープペンシル、書きかけのルーズリーフが置かれている。

 寺島は肘をつきながら、せわしなく変化していく店内を眺めていた。

 一口、すでに温くなったコーヒーに口をつける。

 苦い、ブラックのコーヒーが、のどを滑り降りていく。

 ふと、書きかけのルーズリーフに目を落とした。

 何度も消しゴムで消したような汚れが残った、しわくちゃな紙だ。

 寺島はシャープペンシルを手に取った。

 しかし、何か書き始めるわけでもなく、再び店内の様子をぼんやりと眺め始めた。

 もう2時間近く、こうして座っている。

 それでもルーズリーフは埋まらず、視線は宙をさまようだけだった。

 店の入り口付近には、席が空くのを待っている人の姿が見えてきた。

 潮時か。

 そう思い、荷物をまとめて席を立つ。

 黒色の小さなリュックサックを背中に背負うと、伝票を持って入口に向かう。

 

「500円です」

 

 レジでは先ほどまでせかせかと動いていた店員に相手をされた。

 まだ若い男の子のようである。

 巷で流行っているブランドの、折り畳みの財布から500円玉を取り出し、店員に手渡す。

 

「ありがとうございました」

 

 店員の声を背に受けながら、寺島は店を出た。

 天に昇った陽の光は、憎らしいほどよく寺島を照らしている。

 大勢の人々であふれかえる銀座の街並みを、寺島はあてもなく歩き始めた。

 波の一部として、正午の街並みを歩いていく。

 人々の会話、ディスプレイから流れてくる宣伝、客寄せの掛け声、様々な音が寺島の中に入っては出ていく。

 その中で、この日本に似つかわしくない音が、ふと寺島の耳に入って来た。

 女性の悲鳴である。続いて、男性のものも。

 それは寺島の後ろから聞こえてきた。

 不思議に思った寺島が振り返る。

 横目に見えた人々も、後ろに視線を向けていた。

 寺島の身長は、170センチ超。

 人の波に埋もれた彼の目には、立ち尽くす人々の姿しか見えなかった。

 それでも、悲鳴が次々と耳に入ってくる。

 ホラー映画の宣伝でもしているのかと、最初は思った。

 それにしては、真に迫った悲鳴だった。

 妙に()()()()()のある悲鳴である。

 変化が起こったのは、少ししてからだった。

 立ち尽くして声のした方角を眺めていた人々の間を、走り抜ける人々が出てきたのである。

 必死の形相で、何かから逃げているようであった。

 まだ視界に入らない寺島を含めた人々にとっては、事態の把握は困難であった。

 やがて走り去る人々の数が増えていくにつれて、寺島にも見えてきた。

 彼の視界には、鋼の鎧で武装し、剣を持った男が駆けてくる姿が見えたのである。

 現代社会に似つかわない馬に乗った男が、鈍く光を反射する剣を、近くにいた女性に振りかぶる。

 女性の体から赤い液体が出、そのまま力なく地面に倒れ伏す。

 またも近くで悲鳴が上がった。

 阿鼻叫喚だった。

 人々は近くの人を押しのけて、我先にと逃げだしていく。

 鎧を身につけた人々の標的となるのは、まず逃げ遅れた人々であった。

 動きの鈍い彼らは、馬で追い立てる彼らの格好の標的となる。

 無抵抗な現代人は、どこからともなく現れた異世界人によって蹂躙されていた。

 寺島は突如として出現した現状を、理解できなかった。

 つまり、鈍かったのである。

 そして、棒立ちになって立ち尽くす男を見逃す者でもなかった。

 馬が駆け、寺島の視界には剣を振りかざした男が。

 そのまま、鋼の切っ先が寺島の胴体に吸い込まれていき――――――

 

 

 

 ◇

 

 

 

 伊丹耀司は憤っていた。

 せっかくの休暇、年に二回開催される祭典を、彼は楽しみにしていたのである。

 しかし、突如として銀座に出現した、『門』から現れた異世界の軍隊が人々を攻撃し始めたのである。

 戦争であった。

 無抵抗のまま、血を流し絶命していく人々。

 それを見て嗤っている蛮族。

 自衛官として日々訓練している伊丹は、突然出現したこの非常事態においても即座に行動を開始した。

 逃げ惑う市民の誘導を開始したのである。

 しかし、門から次々と敵が現れてくる中で、闇雲に逃げるのは危険である。

 そこで伊丹は、駐在していた警官数名と協力して、皇居に立てこもることにした。

 数百年前では立派な籠城施設であった皇居に市民を誘導することで、市民の犠牲をなくす。

 伊丹の機転は、最初は受け入れられなかったが、非常事態故、認可がおり、市民の誘導が開始された。

 伊丹は警官と協力しながら近づいてくる異世界人を無効化した。

 嫌な音も聞いた。

 力足らずに目の前で失った命もあった。

 それでも彼は、日本国が誇る自衛隊が到着するまでに、何百、何千人もの命を救ったのである。

 彼は後に英雄として表彰されるまでにもなる。

 しかし、事態はそれだけにはとどまらなかった。

 誘導を行っていた彼の頭の中に、突然「声」が響いてきたのである。

 

 

 

 ◆

 

 

 

『武装を放棄し、自分たちの世界に帰れ!!』

 

 そのような言葉が、突然頭に流れてきた。

 それは銀座を逃げまどう地球人のみならず、「門」の外からやってきた異世界人の頭にも同様のことが起こっていた。

 それだけでなく、オークやゴブリンといった蛮族、果てには空を駆る小型の飛龍にまで声の影響は及んでいた。

 彼らの頭の中では、彼らが使用する言語に変換されているようである。

 つまりは種族によって、適当な形で翻訳された言葉や意思のようなものが、適当な形で伝達されたということになる。

 後に判明したことであるが、強力なテレパスが銀座一面に力を及ぼしていた。

 突然頭の中に響いてきた「声」に人々は動揺したが、異世界の軍隊の将軍クラスは立ち直りが早かった。

 「声」を無視して、仲間に叱咤激励を行う。

 再び、侵攻を開始した。

 再び、「声」が響いてくる。

 

『よろしい。ならば抵抗が無意味であることを教えてやる』

 

 そして銀座の街中に、巨人が出現した。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 声が出せなかった。

 銀座を逃げ惑う人々も。

 「門」の外からやってきた軍隊も。

 再び「声」が響いた後で、巨大な影が出現した。

 それは立ち並ぶビルよりも大きかった。

 それはぎょろぎょろと動く二つの目で、こちらの姿を見下ろしていた。

 それは厚い鉄板も紙のように切り裂く鋏を上下に揺らして、嗤っていた。

 「フォッフォッフォッフォ」そのような不気味な嗤い声で、人々を見下ろしていた。

 異世界から来た来訪者は、こんな巨大な生物を見たことがなかった。

 地球にいた人々は、それはフィクションの中の存在だと思っていた。

 両者が少し違うニュアンスだが、信じられないように目を見開いていた。

 誰かがそれの正体を呟いた。

 

「――――バルタン星人」

 

 創作(フィクション)の中にしか存在しなかったあのバルタン星人が、銀座の街に現れたのである。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 バルタン星人。

 初登場は、『ウルトラマン』第二話「侵略者を撃て」。

 セミに似た顔に、ザリガニをモチーフとした大きな鋏が特徴の、宇宙人である。

 身長はミクロから50メートルほど。 

 体重も大きさに合わせて変化させることができ、地球に対しても、ウルトラ一族に対しても幾度となく攻撃をかけてきた。

 特撮のウルトラシリーズで出てくる怪獣たちの中で、1,2を争うほどの知名度を誇り、ウルトラマンのライバルでもある。

 弱点は、火星にあるというスペシウム。

 ウルトラマンの必殺光線は、ここから名前がきているとされている。

 それが、()()()()でのバルタン星人に対しての認識であった。

 太い、響くような低い声がバルタンから放たれる。

 バルタン星人の特徴として、「フォッフォッフォッフォ……」という笑い声があげられるだろう。

 異世界から来た軍隊も、銀座で逃げ惑っていた人々もあっけにとられてその光景を見ていた。

 50メートルという巨体は、思っている以上に大きいものだ。

 東京タワーから始まり、日本の首都である東京には、それ以上の高さの建物がいくつもある。

 しかし、50mクラスの動く生物―――しかも二足歩行のものを、あなたは見たことがあるだろうか?

 異世界からの侵略者も、声も上げられずにいた。

 自分たちの世界での大きな建造物といえば、城だろうか。

 山も、大きい。

 生物としては、竜種があげられる。

 しかし、前時代の建築技術しか持ち得ていない彼らにとっては、50mの建造物を造ることは、一朝一夕の出来事ではない。

 竜種を見たことがあるものなど、何人いるだろうか。

 おそらく、その竜ですら今のバルタンの半分にも満たない小さな存在だ。

 そんな巨体が、こちらを見下ろしているのである。

 灰色がかった黒の体躯、鈍い銀色に輝く二つの鋏、黄色に光り輝いている大きな眼。

 こんな生物を、見たことがない!

 

『さあ、どうするか決めよ。大人しく自分たちの世界に帰るのなら、今は見逃してやる』

 

 再び、頭の中に「声」が響いた。

 異世界から来た者たちが、その威圧感に圧倒されていた。

 ただその場に立っているだけだ。

 それなのに、圧倒される。

 絶対的な力の差が、そこにあった。

 皇居に避難した住人、銀座に駆けつけている自衛隊、そして誰かが撮影した映像を見ているテレビの前の人々。

 その全てが、存在を認知していた。

 バルタン星人が足踏みするごとに、銀座の大地が揺れた。

 バルタン星人が嗤うごとに、空が震えているようだった。

 映像は広まっていく。

 日本を超えて、世界中に広まっていく。

 

『さあ、どうする?』

 

 もう一度頭に流れた誰何の言葉に、異世界の軍隊が動きを見せた。

 彼らは無謀にも、バルタンに戦いを挑んできた。

 沈黙した銀座の街並みに、軍の司令官と思しき男の怒声が響いた。

 それに呼応するように、騎士たちが、蛮族が、飛龍たちが手を上げる。

 剣を振り上げ、バルタン星人に向かってくる。

 ローブ姿の人々から、色とりどりの魔法が放たれた。

 人を乗せた竜の口から、炎が吐き出された。

 足元に殺到した蛮族たちが、それぞれの得物を振りかざす。

 だが悲しいかな、バルタンの強靭な皮膚には傷一つつけることは叶わない。

 逆に蛮族たち、騎士たちが振りかざした武器は、折れたり欠けたりして使い物にならなくなっている。

 魔法も炎も、バルタンの巨大さから見れば屁のようなものだった。

 

『それが答えか――――』

 

 いいだろう、と声が響いた。

 次の瞬間、そこにいた人々の体が()()()()()

 人も、獣も、自動車も、地面に固定されていないものがすべて、重力に逆らうように空へと浮かび上がっていく。

 人々は体が制御できないまま、宙を漂っていく。

 そこらかしこで様々な悲鳴が上がっている。

 バルタン星人はその光景を目にして、無機質な目で笑っていた。

 あの特徴的な笑い声をあげて、彼だけは重力があるように振舞っている。

 竜が宙を泳ぎ、バルタンに火を吐いた。

 バルタンは煩わしそうに鋏を振るうと、ハエを追い払うように竜をビルに墜落させてしまった。

 力なくうなだれた竜は、再び重力に逆らうように風船のように宙に浮かんでいく。

 

『どうした、これは戦争だろう?』

 

 頭の中に流れ込んで声が、こちらを煽り立てる。

 違うと、異世界からの侵略者たちは皆が顔を引きつらせながら思った。

 こんな戦いが、あってたまるかと。

 地面があんなにも遠いものとは知らなった。

 宙に浮かぶ我々が、これほどまでに無力な存在とは知らなった。

 そして眼前で笑っているこの「化物」は、一体なんなんだ?

 無力感、悲壮感、そして絶望。

 彼らの心は、それらの感情を混ぜ合わせたような様相を醸し出していた。

 

 遠目に見えるバルタン星人が引き起こした銀座の情景に、人々は複雑な思いを抱いていた。

 バルタン星人は本当にいたのか。

 ――――何しに来たのか。

 ――――地球を侵略しに来たのか。

 ――――ウルトラマンはいるのか。

 ――――銀座は大丈夫なのか。

 それぞれが眼前で、テレビの映像の前で思いを抱いていた。

 彼らはパニックのさなかにいた。

 今日だけでも、異世界からの侵略者に加え、創作の住人であった宇宙人が現れたのだ。 

 混乱、それが収まってもこの動揺はしばらくおさまらないだろう。

 

 自衛隊は事態の推移を少し離れたところから見守っていた。

 先に近づいた部隊が、反重力の領域に引っかかり、宙ぶらりんとなってしまったからである

 近づくことは困難、及び国民がいる銀座の街中への火薬兵器の使用は許可が下りず、遠目から様子を伺うよりほかなかった、

 

 『さあ、どうしてくれようか―――――』

 

 その声に侵略者たちは顔を青く染める。

 ―――――と、そこに、

 

「――――――ジュワッ!!」

 

 空に裂け目が現れ、そこから蒼い戦士がやってきた。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 ウルトラマンゼロ。

 かのウルトラセブンの実子であり、光の国の若きホープである。

 上半身が青く、下半身が赤を基調とした珍しい体色をしており、父譲りの『ゼロスラッガー』を頭に二本も装備している。

 土を巻き上げ地面に降り立った彼の体には、銀色の鎧が装備されていた。

 とある光の神からゼロにもたらされた「ウルティメイトイージス」は、ゼロに比類なき力をもたらし、次元の壁さえ突破することを可能にする。

 彼がこの次元にやってこれたのも、そのウルティメイトイージスのおかげである。

 人々が見ている中、巨人が立ち上がった。

 

『バルタン星人!こんなところにまで何しに来やがった!?』

 

 人々にはウルトラマンとバルタンの会話は聞こえない。

 彼らは一種の思念波、テレパスで会話をしている。

 仮に霊感、超能力を持つ人間であったとしても、そのテレパスの強さに瞬時に頭が破裂してしまうことだろう。

 人々は突然現れたもう一人の巨人に対して、爆発的な反応を見せた。

 多くの人々はケータイやスマートフォンを向けて写真や動画を撮っていた。

 多くの人々が、バルタンの脅威から助かると、心をほっと落ち着かせていた。

 多くの人々が、()のバルタン星人をウルトラマンが倒してくれると、思い込んでいた。

 バルタン星人がその光景に鼻を鳴らすと、ゆっくりと反重力を元に戻していった。

 徐々に地面が近づいていき、宙に浮いていたモノが再び重力の支配下に置かれる。

 少しして、完全に元に戻ると、浮かんでいた人々は皆涙を流して地面に立つ喜びを各々に感じ取った。

 

『上で話そう』

 

 テレパスでそう言い残し、バルタン星人が空を飛ぶ。

 それをウルトラマンゼロが追う。

 二体の巨人を見送る中で、事態の推移を伺っていた自衛隊が異世界の軍隊めがけて突撃する。

 もはや、抵抗する力もなく、侵略者たちは大多数がお縄についたのだった。

 

 さて、上空では二人の巨人が向かい合っていた。

 ウルトラマンゼロは、奇妙に思っていた。

 目の前のバルタン星人から、敵意がまったく感じられないのである。

 バルタンの脅威となる二つの鋏も、力なく垂れさがっている。

 先ほど()()()()()()()反重力を解いたことといい、奇妙に思えていた。

 

『さて、話をしようとはいったが、我々には時間がない』

『どういうことだ?』

『光の一族である君はこの地球上では長時間活動することができないし、ぐずぐずしていると人間がここにやってくるだろう』

『人間たちに見られると何かまずいことでもあるのか?』

『それにはまず()()()()の話をしなければならない。……しかしその時間すら惜しい。よって場所を変えることにする』

『――――なっ』

 

 二人が光に包まれる。

 あまりのまばゆさにゼロは目を閉じた。

 光が収まり、ゼロが目を開けるとそこは一畳間の小さなアパートの中だった。

 体も人間台に縮小しており、部屋の中がちょうどいい大きさとなっている。

 

『ここは?』

『私の今住んでいる家だ。――――ああ、あった。これだ』

 

 バルタンは何やらガサゴソ探っていると、そこからさびれた指輪を取り出し、ゼロに投げ渡した。

 

『これは?』

『人間の姿に化けるための指輪だ。入力してあるデータは、地球の青年のものだ。それを付けたまえ』

『なんでこんなものを……』

『ウルトラ戦士の体で外を見回るわけにはいかないだろう。心配しなくても、私は逃げない。騙されたと思ってつけてみたまえ』

 

 訝しめながらもゼロは人差し指につけると、光が彼の身体を包んでいく。

 瞬く間に精悍な顔だちをした男性の姿へと変身した。

 バルタン星人も自分のアイテムを使って、人間体――――寺島鋏魅の姿に変わっていった。

 

「さあ、行こうか」

 

 バルタン星人―――寺島はゼロが服を身につけると、アパートの出口の扉を開いて外に出ようとする。

 

「どこに行くんだ?」

「近所の喫茶店だ。そこで話をしよう」

 

 そう言ってゼロを連れてまだ陽があたる道を歩き出した。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 『銀座事件』はその日のどの夕刊の一面にも印刷されていた。

 詳しいことはまだ分かっておらず、『門』に対する情報もそれほど多くはなかった。

 これまで空想の産物であったファンタジー世界との接触は、人々に大きな衝撃を与えた。

 しかしそれよりも大きな一面を飾ったのは、二つの巨人の姿だった。

 とある新聞には、こう見出しがつけられていた。

 

『僕らの街に、ウルトラマンがやってきた!!』

 

 

 

 

 


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