※Fate/Stay nightとのクロスオーバーです。
ゴウンゴウンと歯車の廻る音で目が覚めた。
「ここどこ?」
遠くに歯車が見える。赤い空、荒れた地面、ちょっと向こうに丘が見えた。地面にはたくさん何かが突き刺さっている。大きさや長さもまちまちだけど一つだけ共通点を見つけた。
「剣ばっかりだ」
とりあえず、丘の上に向かって歩き始めた。近づいていくにつれて、周りの剣の様子が変わっていく。
「いや、鋏って」
これって剣になるの? だんだんと日用品になっていっている気がする。
「カッターもある。それに……鞘?」
青と金で彩られたきれいな鞘だ。中には剣も入っている。これだけは刺さっていないで置かれていた。
「あ」
「………」
丘の上で人を見つけた。あの人だ。腕もあるし、全身が普通、たぶんあの人の心みたいなものなんだ。そう、僕は思った。
「おーい」
「………」
返事がない。ただの屍のようだ。
「気が付いてない」
しばらく僕は待つことにした。
―― 少女待機中。
「ひまだよ。大体ここは何処なのさ」
呟いてみたけど、この人は答えてくれない。
「そろそろこの人に気が付いてもらうしかないか」
スペルカードを取り出す。どうやらスペルカードは使えるらしい。
殴符『アイスストライク』
氷でできたハンマーを取り出す。ハリセンのつもりだったんだけど、あれ? まあいいか。
「いい加減に気づけぇぇぇぇ」
渾身の一撃が目を閉じて、そこに突っ立っていたこの人に決まった。
「はぐぁっ」
口から奇声を出して、倒れる。あ
「あ、気絶させてしまった」
―― 少女再度待機中。
ちょっとしてから、目を覚ました。ぼんやりとした目でその人は僕を見た。
「あれ? オレは何で」
「目、覚めたみたいだね」
僕が言えばその人は驚いたように目を見開く。
「あんた、誰だ?」
「んー……説明が面倒なので教えない」
「おい」
ナイスツッコミ、まあそれでも教えませんが。
「ところでさ、ここどこ?」
この人なら知ってるかなって思った。だって最初からいたし。
「さあな、オレも知らない」
「そっか、ところでお兄さんは誰?」
この人本当に誰なのさ。草原で倒れていたし、大けがしてたし。そんなことを考えていると
「オレ? オレは………」
そう呟いてる。どうかしたのかな?
「どうしたの?」
「わからない。オレって誰だっけ」
「はぁ?!」
思わず叫んでしまう。なんで?!
「わからない。わからないんだよ」
「記憶喪失って奴?」
「わからない」
それすらもわからないんだ。体がちょっとだけ透けてる。あ、もう追い出されるんだ。
「お兄さんが助けてほしいならそれに『応える』からさ、後で? 会おうよお兄さん」
「は?」
お兄さんがぽかんとしている。そんなお兄さんに僕は笑った。
「じゃあね」
―― 少女覚醒中。
目が覚めた。僕はお兄さんの手を握ったまま眠っていたらしい。
「……それにしてもまたかい」
フランの時といい、僕は人の心の中に入ることができるのではないだろうか?
「まだ目、覚まさないし」
お兄さんの顔をまじまじと見てみる。
「なーんかどこかで見たことあるんだよね?」
どこだっけなぁ。あんまり覚えがないし。そう考えているとお兄さんの頭が少しだけ震えた。
「ん?」
「あ、起きた」
ようやくだね。目元の包帯が外れてないのにお兄さんはこっちのほうに首を向けた。
「目、覚めた? 自分が誰かわかる?」
目元の包帯を外しながら僕は尋ねる。
心のほうは記憶がなかったみたいだけど、こっちのほうは何か記憶があるかもしれないし。
「すまない、ここは何処だ? それに私は一体……」
お兄さんの一人称ってこれだっけ? 確かオレとか言っていた気が。
「(あれ?)ここは幻想郷の薬屋兼診療所、永遠亭 お兄さんは?」
「私は……すまない、記憶が混乱しているようだ」
やっぱりか、僕らが会話している声がしたらしくて誰かが入ってきた。
「あら、起きたのね」
「あ、えっと?」
赤と青が半々になってる不思議な服を着た銀髪の女の人だ。こんな人永遠亭にいたんだ。
「永琳よ。初めましてよね。明乃」
「どうも、今回はありがとうございました」
ああ、薬担当の永琳さんか。永琳さんはお兄さんを見ながらつぶやいた。
「構わないわよ。それにしても片腕がなくなってるのによくまともで居られるわね」
「?」
それはどういうことだろう。
「体の一部がなくなると一種の違和感みたいなので精神的にまいることがあるの」
「へぇ、そんなの初めて知りました」
そんなことってあるんだ。でも、まあ当然か。あるはずのものがなくなるって辛いはずだし。
僕たちが会話をしているとお兄さんが声をかけてきた。
「すまない、君たちは何者なんだ?」
「あ、そっか 僕は明乃、まあ一般人だよ」
他に言いようがないし、氷精の娘も通じないだろうし。
「貴方を一般人と呼ぶ人間がどこに居るのかしらね。私は八意永琳、この永遠亭の主治医をしているわ」
「そうか、助けてくれたことには礼を言おう。しかし、私のような人間を助けたところで意味などないのではないかね?」
いや、なんでだよ。
「はぁ、何言ってるのさ。目の前で血だらけで倒れてたら普通に助けない?」
「明乃、あなたの考え方も少し珍しいわよ」
そう? と首を傾げれば永琳さんはええ、と首を縦に振った。そっか珍しいのか。でも、しょうがないじゃないか『呼ばれて』なくても人助けはする主義だし。
「とりあえず、しばらくは大人しくしてもらうわよ。これは強制、医者のいうことは聞くこといいわね」
「わかった」
「明乃もこっちへいらっしゃい、患者に負担かけないためにもね」
永琳さんに引きずられて僕はその部屋を後にした。
―― 少女移動中。
別の部屋にて
「とりあえずはあれだけ回復したけど腕はどうにもならないわ」
「そうですか」
やっぱりそうなんだ。でも片目や足が治っているだけでもいいか。
「そう落ち込まないの。あなたが連れてこなかったらもっと酷い状況になったかもしれないわね。でもそれ以上に酷いところがあるかもしれない」
「へ?」
永琳さんの言葉に驚くどういうことだろう?
「精神的な所は医者が完璧に治すっていうのは無理ね。たぶん彼、精神的な面で凄いことになってるわ」
「すごいこと?」
思わずオウム返しにしてしまった。いったい何?
「もしかしたら記憶が戻らないかもっていうこと、たぶん彼の記憶喪失は精神面からかもしれないわ」
「……精神面」
心すら自分が誰なのかを忘れていた。もしかしたらお兄さんには忘れたい過去があるからかもしれない。
「そういうこと、でね。少し提案なのだけどお見舞い来てくれないかしら」
「お見舞い……ですか?」
急になんでお見舞いなんて言葉が出たのだろう?
「ええ、少しでも彼の精神状態を良くするためにもね」
「まあ、そんなことであれば」
それでお兄さんが救われるのであれば、まあいいかなって思った。