東方氷娘記 番外   作:亜莉守

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氷娘邂逅録(番外編)
氷娘表裏夢


 

――― 随分と馴れ馴れしい夢を見る。

 

目が覚めてみれば、僕は何処かわからない学校の屋上に居た。どう見ても懐かしの鉄筋コンクリート造りの学校です。

 

「……ここどこ」

 

思わず呟いたけど誰も答えてなんてくれない。

 

「知らないところっていうべきか、全然どこかわからないんだけど」

 

この前の陽炎の一件ともまた違うし、どう考えたって僕の知っている場所じゃない。

 

「……誰かの心の中?」

 

そんな回答が頭をよぎった。するとポンと誰かが肩を叩いてにゅっと横から顔を覗かせる。

 

「せーかーい」

「え、うわっ……えっと、君は誰? 平行世界の僕?」

 

そこに居たのは茶色の長い髪に茶色と赤のオッドアイ、服装は囚人服のような白黒の上の服にオレンジ色の上着を着て下には白い半ズボンを穿いて、白黒のニーソを穿いた僕よりも一つか二つ年上っぽい女の子だ。

 

「ちぇー、良い驚きっぷりには感謝感激雨霰だけど、気が付いてないとかあんたよっぽど鈍……逆か、鈍くなきゃやってらんないよねー」

「いや、だから誰?」

 

本当に誰だろう? こんな知り合い居ないんだけど……しいて言うなら「彼ら」に顔の造詣が似ている気がしなくはないけど。

 

「はぁ、理性(ぼく)は随分と知りたがりなんだねぇ」

「ちょ、今なんかとんでもない字にルビふられなかった?!」

 

思わずそうツッコんだ。ルビふられているって何で分かったんだ僕?!

 

「おお、メタいね。さっすがだね!」

「いや、え? えええええ?!」

 

 

―― 少女錯乱中。

 

 

しばらくして彼女が聞いてきた。

 

「落ち着いたか?」

「ま、まあね……てかメタいとか言っていいの?」

 

てかメタいって、言っちゃっていいの? 色んな意味でダメじゃね?

 

「えー、今回のこれは蛇足兼俺得話だぜ? それなのにメタくならなくてどうする」

「はぁ、なんでさ」

 

思わず行きつけの定食屋の店長の口癖が出てしまう。本当にどうしてこうなってるの?

 

「ふふーん、本能(ボク)が登場ってことは常識なんて投げて捨てるような話になること間違いなしだしねー」

「とりあえず、君誰? それでここどこ」

 

もう一回聞き直す。結局ここどこだかも、この人誰なのかも聞いてない。

 

「ノリ悪いなぁ。はいはいじゃあ説明するよ。ここは君の心の中、僕は君の本能、君は君の理性 ドゥーユーアンダースタン?」

「アイムノットアンダースタン!! 訳が分からないよ!?」

 

いきなり英語になるのも本能と理性とか言われても分からないし。彼女は呆れたように肩をすくめてから言う。

 

「じゃあ噛み砕いて説明するけど、ここは君の心の中、魂の原風景と取ってくれても構わないね。で、ここに居る顔は君そっくりだけど見かけは全然違う僕は君の本能だ。君が『世界』からの縛りを受けなければこの姿になっていたかもしれないって奴さ」

「えっと、ここが心なのは理解できた。でも理性と本能って??」

 

心の中っていうのは納得しよう。シロウとかの一件もあるし。でも本能と理性を理解しろって方が無理っていうか……。

 

「僕らってさー、ぶちゃけ『世界』から物凄く縛られてるんだよね。外見とか?」

「う」

 

痛い所を突かれた。思わず顔が引きつる。

 

「でしょー? でも『世界』だって人間の本能は縛れない。いや、縛ってしまうことはできないってところか。理性は縛れるだろうけど」

「つまり、縛られてるのが僕で縛られてないのが君ってこと?」

 

噛み砕ききってみればこういうことだったらしい。

 

「ま、そういうこと」

「だったとしても何でこんなとこで僕らは邂逅してるわけ? 普通ありえないよね」

 

理性があったら本能は押さえつけられるものだし、本能が強いときには理性は無いものなんだから出会えるわけがない。

 

「うん、理性があったら本能は表に出ない。これは原則だよ。でも、そうも言ってられないっていうかさー。ぶっちゃけた話、君と僕が乖離しすぎて二重人格化? まあ、僕は表に立つのなんて面倒だしやる気ないけど」

「に、二重人格?!」

 

マジで? 流石にそんなことあり得るの??

 

「あ、物の例えだから。別にそこはいいのさ、ところで僕の外見見て気が付かない?」

 

彼女は得意そうに一回転してみせる。うーん、思いつくこと?

 

「えっと、某戦士と勇者の勇者さんin牢屋みたいな恰好してるね」

「そこじゃないよ。どっちかっていうと魔王モードの彼みたいに目が赤いとこ突っ込んでほしかった」

 

さっきも言った通り彼女の目はオッドアイだ。左目が鮮血のように赤い。

 

「え、そっち? 中二か何かなのかと思って放っておいたんだけど」

「はぁ、根本は同じはずなのに目の色まで変わったらそれはカラコン入れてるか、何かでしょうがもう」

 

彼女が呆れた。そうは言っても普通そういう考えにいたる方が普通じゃない?

 

「で、なんで?」

「いやぁ、ぶっちゃけた話だけど。君がフランとバトった時に僕もフランのアレにちょっとばかし当てられちゃってさー……ここは俗にいうあれだよあれ『ブラックルーム』だね」

 

ブラックルームってまさか……アレ?

 

「つまりちょっとばかし気が触れちゃったと?」

「まあ、そういうこと。でもまあ君が居る時点で気が触れてるのなんざどうでもいいことになるわけだけど」

「へ?」

 

思わず固まる。気が触れているのが大丈夫とかどういうことなの?

 

「だってさ、君は『恐怖に打ち勝つ勇気がある』人間だからね」

「どうも?」

 

一応褒められているらしい。

 

「そういうわけ、今回の邂逅は偶然だけど今度は君のピンチ救ってやるよ。じゃあね!」

「え、うわっ」

 

彼女が笑って去って行った後、いきなり目が眩んだ。

 

 

―― 少女起床中。

 

 

パチッと目を覚ます。

 

「……夢かい」

 

思わずそう言ってしまった。いや、夢でよかったって思うべきなんだろうけど。

 

「というか色々とおかしいでしょうに」

「……」

「『恐怖に打ち勝つ勇気がある』……か」

 

はじめて邂逅した本能がそう言ってくれたことになんとない感慨を覚えた。でもそれより先にちょっと思ったことがある。

 

「それにしてもまあ」

 

思わず空を睨みつけて言った。

 

「……世界恨むぞゴラァ」

 

思わずそんなことを言ってしまう。ぶっちゃけてしまおう。彼女の高身長っぷりと発育の良さにちょっとだけだけど嫉妬した。世界の縛りさえなければ自分もああなったかもしれないのだ。やっぱちょっと恨むぞ世界。





元々からの設定をようやく庫出しできた件

明乃の理性と本能ネタは元々ありました。主な理由は『フランの狂気をどうするか』だったはず。まさか心象世界に入り込んで弾幕勝負って話になるなんて思ってなかったので、まさかのこの状況。本当の邂逅はもっと早いはずだったのですがこうなった。

元々だと両目赤色でもっと狂気じみてた性格だったのですが、なんだか明乃を傍から見る傍観者兼理解者みたいなポジショニングになりました。

本編の書き貯めが思うようにできない件。どうしようorz
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