東方氷娘記 番外   作:亜莉守

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※弧狗狸さん様の『バカと八雲と人形使い』とコラボさせていただきました。
 訂正は弧狗狸さん様より受け付けます。
 誤字についての訂正は他の方もどうぞ、たまに訳の分からないミスやらかしてる可能性もあるので。


氷娘陽炎夢 前

 

博麗神社の奥の方、日が当たらなくて当たっているところよりは涼しい部屋に水を淹れたグラス(紫に頼んで現代から持って来てもらった。見た目が涼しいし)と水が入った氷のうを風呂敷でくるんだものを乗せたお盆を持って、僕は向かっていた。部屋に入ればこの神社の巫女である博麗霊夢が間に合わせで敷いた敷き布団の上で仰向けになっている。

 

「全くさ、熱中症って」

「ごめんなさい」

 

神社に遊びに来てみたらぐったりしている霊夢を見つけたんだよね。驚いて色々と確認してみたら典型的な熱中症になっていたんだ。本当に慌てたよ。

 

「謝って済むなら医者はいりません。はい、塩水、一気に飲まないように、それからこの氷を脇に挟んで」

 

すっかり板についた水を凍らせる技(パチュリーさんの見立てではちょっとした魔法だそう)で氷のうを作って、霊夢に渡す。

 

「うん、ありがとうね。明乃」

「はいはい、あーあポカリとかあったら楽なのになぁ」

 

あれって暑いときの栄養補給とかにちょうどよかったんだよね。こっちに来てから気が付いたけど。

 

「ぽかり? 何それ」

「適度に砂糖と塩の入った飲み物、下手に自分で濃度調節しないで済むから楽なんだよ。まあ、自分で作るし大丈夫だけどさ」

 

コツがわかるまで大変だったなぁ。今度、紫に頼んで粉タイプのやつ持って来てもらおう。

 

「こまめに水を取ること。なんだったら麦茶でもいいんだからね。味が大丈夫なら塩を入れるとなお良し」

「はぁい」

 

調子が良くなった霊夢にあれこれ指示を出してから家路につく。

 

「今年は無駄に暑いなぁ」

 

チルノは氷室に引きこもった。魔理沙は避暑地を求めて出かけて不在だ。紅魔館も窓全開だ。ついでにパチュリーさんの考案した風の魔法で涼しい風を循環させているらしい。僕も日傘を手放せなくなった。それから向日葵畑の水やり手伝うことになったし……これは関係ないか

 

「それにしても暑いなぁ」

 

ちょっと目眩がするけど気のせいだよね。

 

 

―― 少女移動中。

 

 

一方、その頃 別時空の幻想郷、博麗神社の参道にて

 

「……疲れた」

「おつかれ」

 

一人の少年が地面に突っ伏していた。そのままピクリともしない。

少年の名前は吉井明久、幻想郷の住民ではなく現代の住民である。彼には『現と幻を操る程度の能力』と言う特殊な能力があり、その力は強力だ。彼はその力を使いこなすため、狙ってくる妖怪から身を守るため、自分の大切なものを守るため、特訓を重ねていた。

傍にはこの神社の主である博麗霊夢が居た、先ほどまでは『妖怪の賢者』八雲紫も一緒に居たのだが何やら気になることがあるらしく先に姿を消していた。少しだけ余力が戻ったらしく、明久が起き上がる。

 

「今日は妙に暑いね」

「そうね、幻想郷にしては暑いかしら」

 

霊夢が眩しそうに目元に手を当て、空を見ながら言った。明久も同じように空を見て、何かを見つけた。

 

「ねえ、あれなんだろう?」

 

ふらふらと日傘を差した何かが飛んでいる。

 

「あ、落ちる」

 

明久は飛んで行き、落ちていきそうになるその何かを受け止めた。何故か日傘だけは手離していない。

かなり、幼い少女のようだ。レミリアやフランと同じくらいか一つ下くらいだろうか? 薄い茶色の髪、目は閉じられている。服装は青のチェックのノースリーブのパーカー、フードの部分だけが水色、インナーは白の半袖の縦襟だ。ズボンはホットパンツ、水色と白のストライプのニーズソックスを穿いていて、靴はブーツ。かなり現代っぽい服装だと明久は思った。

無事に着地して、改めて少女を見てみた。少し眠っているにしてはおかしいような……?

 

「よっと、ねえ大丈夫?」

「なんかこの子ぐったりしてるわよ」

「「……」」

 

霊夢と明久が顔を見合わせた。明久が宙を舞う、そしてちょっと振り返って霊夢に言った。

 

「え、永遠亭に連れて行ってくる!」

 

 

―― 少年移動中。

 

 

ふと、夢を見た。

 

夏の暑い日差しの中、陽炎がゆらゆらと揺れている。ここは何処なのだろう? 周りを見渡してみれば、もう一年ほど久しい現代の横断歩道だった。

 

「遊ぼうよ?」

 

誰かの声がした。振り返ってみるけど、誰も居ない。

 

「あそぼう」

 

また声がした。声のした方も向けば、誰かが居た。

 

「君は誰?」

 

僕が尋ねてもその『誰か』は笑っただけだった。

 

 

―― 少女昏睡中。

 

 

迷いの竹林の奥にある診療所『永遠亭』 少女を抱えた明久は迷わずにそこの門を叩いた。慌てて迎えに来てくれた鈴仙に事情を話して永琳を呼んでもらう。急患の話を聞いた彼女はすぐに来てくれた。

 

「まあ、典型的な日射病……って言いたいところだけとちょっと違うみたいね」

「え?」

 

あんな日差しの中でふらふらとしてたのだから、普通は日射病や熱中症のはずなのだが。

 

「どちらかというと精神的なものかしら? たぶん少ししたら目を覚ますと思うし待ってて頂戴」

「うん、わかった」

 

 

―― 少女回復中。

 

 

「えっと、あれ?」

 

淡い夢を見ていたようだ。ぼうっとしていると横から声がかかった。

 

「あ、目 覚めた?」

 

茶色の髪に茶色の目、服装はパーカーやズボンといった現代の物だ。とりあえず、知り合いじゃないことだけは確かだよね。

 

「……どちら様?」

「僕は吉井明久、明久でいいよ。君は?」

「……あー、僕は明乃 ところでここどこ?」

 

吉井って……なるほど、彼が本来の『僕』って言ったところか。まあ、その辺は置いておくとして。

 

「ここは幻想郷、それでここは永遠亭だよ」

「……そーなのかー。また幻想郷入りかい(ぼそっ」

 

今回で二回目だよね。てか、前回とは全然違う幻想郷に入ったみたいだ。思わず小声でツッコミを入れてしまう。ぼそっと言ったのが聞こえたのか彼は首を傾げた。

 

「ん、何か言った?」

「ううん、何でもないよ。なんで、僕はここにいるのかな?」

 

どう考えたって幻想郷入りする理由が見当たらないんだけど。前回は完ぺきに偶然だったし。あ、前回のことを踏まえたら理由を探す方が藪蛇なのか。

 

「うーん、ごめんねよくわからないや。わかってるのはふらふら飛んでたことだけかな」

「そうなんだ……本当にどうしよう」

 

さて、ここの紫を探すにはどうしたものかな? 考え込んでいると、彼が声をかけてきた。

 

「えっと、君って現代の子だよね?」

「え? あー、まあそうかな?」

 

もう幻想郷に住み始めて一年以上たってるけどね。思えば中三の冬に幻想郷に来て、早一年半、早かったなぁ。思い出に浸ってると、彼が声をかけてきた。

 

「紫に頼んで元の場所に戻してもらう? って言うか幻想郷が何かってわかってるかな?」

 

ああ、なるほど。年下だと思われてるんだね僕は、一応これでも僕は16だよ。未だに間違える人は多々だけど。ついにはレミリアにまで勘違いされるほどだったけど!!

 

「うーん、どうしよう?」

 

首を傾げたら彼は悩み始めた。うん、なんかごめんね。紫に会いに行きたいなぁ。そう考えたけど、それより先に何かが脳裏をかすめた。そうだ

 

「あのさ、幻想郷 案内してよ。」

 

彼は目を丸くした。でも、その後に笑って了承してくれた。

 

 

 

これは陽炎に彩られた真夏の幻想郷で誰かが僕らを『呼んだ』話。

 

 





相も変わらず前編後編になります。(もしかしたら中編もあるかも?)

いつもながらに雰囲気小説ですみません。

一応、時間軸設定は我が家が今日挙げた真夏記一話の後、『バカと八雲と人形使い』がコラボは終了後を仮設定としています。


―― 全ては陽炎が彩る幻想郷の幻想話。
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