それはある日、里へ買い出しに出かけたときのこと。饅頭屋で饅頭を買いに来たらお店のおばあちゃん(孫みたいに可愛がってくれる。時々おまけで饅頭を増やしてくれる優しいおばあちゃんだ)が言った。
「おや、明乃ちゃん 昨日はありがとうねぇ。おまんじゅう美味しかったかい?」
「へ?」
そこに通りかかった材木屋のおじいちゃん(チルノの家を増築するときにお世話になった)がさらに言う。
「おお、明乃ちゃん 昨日は荷物運ぶの手伝ってくれてありがとうな」
「あれ?!」
その後も僕はいわれのないことで感謝されまくった。
―― 少女困惑中。
「へぇ、明乃の偽物な」
「偽物ってわけじゃないんだろうけど……そっくりさん? 何か昨日里中で人助けしてたみたいでさ、僕には覚えがないんだよね」
避暑地に逃げ込んでいる魔理沙のところに思わず駆け込んだ。魔理沙は驚きはしたけど普通に出迎えてくれて僕の話を聞いてくれた。
「ドッペルゲンガー……とかか?」
「え、勘弁してよ。同じ顔した人に三人会うと死ぬっていうじゃないか」
もうすでに一人会ってるんだけど、その人は男だったけど。魔理沙には僕の声は届かなかったらしい。手をポンと合わせてこう言いだした。
「興味湧いてきたぜ。明乃、探しに行こうぜドッペルゲンガー!」
「ええっ?!」
―― 少女情報収集中。
人里の寺子屋に僕たちは来ていた。昨日、ドッペルゲンガーが子どもたちと遊んでいたらしい。だったら慧音さんも見ていると思ったので尋ねたのだ。事情を話すと慧音さんは少し考え込んでから言った。
「そういえば、あの明乃黒かった気が」
「「黒?」」
ちょっと待って、黒って何?!
「ああ、そういえば目の色が違った気が」
「「もうドッペルゲンガーじゃなないよね/だろ」」
二人で同時にツッコミを入れてしまうのは当然じゃないの?!
「それから髪も長かった気が」
「ちょおおおお」
「どうして見間違えたのかがわからん」
僕も分からないよ。現実逃避していると外から
どんがらがっしゃああああん
とてつもなく大きな破壊音が鳴り響いた。一体何?! 妖怪の襲撃?! あてている僕の耳に知り合いの声がした。
「待て! 無銭飲食などをする人間だったか明乃っ!!」
「ちょま」
外に出てみれば長い黒髪の女の子をシロウが追い回していた。何であれが僕に見えるの?
「待てぇぇぇぇい!! 僕がそんなことするかシロウのボケェェェェ」
キレた。思わずスペルカードを発動させる。
極氷術『アイシクルエデン』
黒髪の女の子とシロウの二人は突然凍った地面に滑って転んだ。そのまま動かない。
「……あ」
「やっちまったな」
「妹紅を呼んでくるか」
里凍らせてすみません。妹紅さんにも後で謝っておかないと。
―― 少女反省中。
今日は開かれていない寺子屋の一室に二枚の布団が敷かれた。一つは女の子の分、もう一つはシロウの分だ。本当にごめん。
「それにしてもこの子供は誰だ?」
「妙に明乃に似てるよな」
「全然似てないじゃないか!」
こんな長い髪してないし、肌白くないし、可愛くないし!
「そうか? 髪色とか髪の長さはともかく顔の形とかはよく似ているぞ」
「ん、んぅ?」
「あ、起きた」
女の子を覗き込む。すると女の子は笑って。
「あ、おりじなるだ」
「「「?!」」」
全員が驚く、そして女の子は僕の首に腕を回して。
「え、ちょ どういうこと?!」
「ぬふふー」
そのまま引き寄せた。潰さないように両腕に力を込めるけどそれでも引き寄せようとしてくる。
「結構力つよ、ってか抜けられない?!」
僕が騒いでいたらシロウが起きたらしい。ぼおっとした目でこちらを見てきた。
「オレは……あれ、明乃何やってんだ?」
目を丸くするシロウ、当然だよね。
「あー、シロウ凍らせてごめん、助けて」
「何故凍らせたのかはあとで聞くとして了解した」
シロウのおかげでどうにか腕から解放された。
「はぁぁぁ、助かった」
「で? 無銭飲食の挙句の果てに何故凍らせたのか聞かせてもらうぞ」
まだ無銭飲食犯だと思われてるのか僕。
「無銭飲食は知らないよ。大体さっきの騒ぎの時、ここ居たからね。魔理沙と慧音さんが証人だよ。凍らせた件に関しては反省している。ついカッとなってやったんだ」
「全く、それは犯罪に走る少年のような言い訳だぞ」
そーですかーだ。
「いいもん、暑さが理由で雨降らすような馬鹿だもん……あー、明久大丈夫かな?」
「一体それは誰だよ。それから雨降らすとか何処でやったんだぜ?」
平行世界の自分と同じ存在を思い出す。あー、雨降らしてすみませんでした。
「内緒、それにしてもこの子誰?」
そもそもの問題はそこだよ。
「見事に議論が元に戻ったな」
「やっぱ明乃に似てないか?」
「そう?」
似てないと思うんだけど。
「とりあえずこいつが例のドッペルゲンガーってことであってると思うぜ」
「だよね」
「ドッペルゲンガー?」
シロウが首を傾げる。あ、シロウは知らないのか。
「昨日のことなんだけど、僕は饅頭屋のおばあちゃんを助け、材木屋のおじいちゃんの荷物運びを手伝い、里の子供と遊んで、他にもいろんなところで人助けをしていたそうな」
「君であればそういうことを平気ですると思うのだが」
僕はそういう風に見られてるのか。
「その日、僕は湖の真ん中にある真っ赤な吸血鬼の館で友達と
「あれ?」
「おかしいんだよ。僕はその日、人里に来ようと思ったって来れるわけがない」
人里から湖まではかなりの距離がある。それを移動するとか僕には無理なんだよね。
魔理沙と慧音さんが席を立つ。もう少し聞き込みをしてきてくれるらしい。
この子何者なんだろうなぁとか考えながら見てるとふと頭の中に画像が出てきた。
ケースの中から見たかのような世界、目の前では男が笑っている。その奥には何十枚にも張られた僕の写真、あれがオリジナル、僕のオリジナル
「っ」
「大丈夫か?」
「う、うん……」
つまり、この子って……
「あら、明乃が拾ってたのね」
「紫?!」
紫がスキマからにゅっと出て来た。
「明乃が拾うって……まあ、それも運命ってことかしら」
「紫……この子って、まさか?」
「そうよ。貴女のクローンよ。貴女が世界に『拒絶』される直前頃に作られたの、でも貴女は『拒絶』された。よって、この子も『拒絶』されてしまったの」
「じゃあ、何で今更幻想郷入りしたのさ?!」
時期が違い過ぎる。もう僕が幻想郷入りしてから1年半は過ぎてる。
「明乃は『拒絶』から何者かの意思によって救われていたわ。でもこの子は違う。自分の能力でここへ来たの多分貴女に会いに?」
「能力?」
この子も能力持ちなのか。
「ええ、憶測になるけど『運命に抗う程度の能力』ね。凄い能力だわ」
「どういう風に?」
いまいち分からないような?
「そうね。例えば今ここで貴女にお茶が掛かってしまう運命だったとするわね。それは貴女がどれだけ頑張っても不可避だったとする。でも、この子はそれにあらがうことができる。つまり貴女がお茶を被ってしまうってことを回避させることができるの」
分かったようなわからないような。シロウも似たような表情をしている。
「えと、つまり自分が死ぬって確定しててもそれに抗って回避できると」
「その方がわかりやすかったかしら?」
「うん」
「ごめんなさいね」
とりあえずとんでもない能力の持ち主のようだ。
「あー、あれ? 僕なんでここに居るんだろう」
気が付いたら彼女が起きていた。とりあえず自己紹介しないと。
「えと、はじめまして? 君は?」
「僕の名前は闇乃、よろしくオリジナル!」
「オリジナルって名前じゃないんだけど、僕の名前は明乃 よろしくね、闇乃」
これが僕と似ているようで全然に似てない彼女との邂逅だった。
―― 少女邂逅後。
それからちょっと経って、とある食堂に僕は足を運んだ。
「いらっしゃい、明乃」
「こんにちわー、闇乃」
闇乃はすっかりシロウのお店の看板娘になっていた。闇乃はとても料理が上手(食べに来ていた女性客を凹ませるくらい)で、人懐っこい性格が受けたらしい。
それから便利屋を始めたそうな。どんなことをやっているかは彼女は教えてくれない。とりあえずシロウが言うには人間にはありえないほどの身体能力を使っているらしい。今度適当にふらふらしてたら仕事場に出くわしたりして。
「今日は何がおすすめ?」
「そうめんとか食べる?」
闇乃が首をコテンと傾げた。僕じゃ絶対に無理だね。
「そうめんかぁ……たれとか選べる?」
「もちろん」
ならマンネリとかなさそうだね。
「じゃあ、それで」
「わかったよー」
彼女はパタパタと厨房へ向かった。その後ろ姿を見ながら思う。彼女が『拒絶』に抗ったのは別に僕のためじゃないのだろう、むしろ世界で生きたかったからこそ、この場所に来た。
幻想郷は全てを受け入れる京……闇乃みたいな人間も受け入れる京、願わくばその穏やかな日々が続くことを―――――
Dr.クロ様の投稿オリキャラ闇乃ちゃんが追加されました。
闇乃ちゃんのキャラ全く生かしてなくてすみませんorz
闇乃ちゃんのキャラシ(矢印は変更点)
名前:闇乃(やみの)
性別:女
年齢:明乃と同い年
性格:お人好しで面白がりな性格、怒るととても怖い
容姿:髪型はストレートの長髪で色は黒色。目の色は真紅色。それ以外は明乃と同じ容姿
詳細:幻想入りしてきた謎の少女。その正体は明乃のクローン。明乃が幻想入りしたために同じくいらない存在となり、幻想入りしてしまった。色々な人外生物のDNAを混じって作られているために身体能力や視力などが人外レベルのすごさ。喧嘩はもちろん超強い。
幾人ものの女子たちを絶望させるほどの美味しさの料理を作り出すほどの調理スキルを持つ
一人称は僕。二人称は君、さん付け、呼び捨て
能力:お任せします→『運命に抗う程度の能力』
時々明乃の回想などに登場するかも