東方氷娘記 番外   作:亜莉守

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※この小説は蓬莱人形様の「東方刹那烏 ~the Moment of Crow~」とのコラボです
※※訂正は蓬莱人形様のみ受け付けます。誤字修正に関してはどなたでもどうぞ



氷娘刹那録

気が付いたらなんか道の真ん中に私は立っていた。ここは何処なんだ? 里とかなり違うし、はっまさか私は自覚のない瞬間移動術でも身につけたというのだろうか。そんなことをつらつらと考えていた私のお腹が鳴った。そういえば昼ご飯食べてない気が。ふと、目に着いた食堂へと入る。

 

「いらっしゃい」

「いらっしゃーい」

 

中では褐色の肌に白髪という日本人離れした青年と黒く長い髪の赤い目の女の子が出迎えた。ちょうど昼時みたいで結構混んでいる。黒髪の女の子が注文を取りにやってきた。

 

「なに注文する?」

「えっと、なんかおすすめあるか?」

 

ここの店は全然知らないことだし、料理人に任せた方がいいはず。

 

「今の時期ならそうめんとかあるよ? それとも冷やし中華?」

「へぇ、そんなのあるのか。えっと、冷やし中華で」

 

私が注文すれば女の子は明るくよく通る声で厨房の方を向いて注文を繰り返した。

 

「はいよー、冷やし中華1!」

「分かった」

 

青年が返事をして作り始める。どうやら彼が作っているらしい。

 

「はい、お待たせー」

 

しばらくして女の子が実に美味しそうな冷やし中華を持ってきた。何だか後光が差しているようにも見えなくはない。思わず目を見張った。

 

「ありがとう……美味しそうだな」

「当然!」

 

女の子は笑って胸を張ってそう言った。よし、いただくとしよう。

 

 

―― 青年食事中。

 

 

「ご馳走様、えっと代金は何処に出せば」

 

会計用のカウンターなどは何処にもない。きょろきょろとしていると私よりも後に入ってきた茶色の髪に青みがかった茶色の目の女の子が話しかけてきた。

 

「あ、お会計だね」

「ああ」

 

その子が手を挙げて忙しそうに動き回ってる女の子に声をかけた。

 

「闇乃ー、こっちの人会計だって」

 

すると女の子はすぐに気が付いてこちらへとやってきた。なるほど、そうすればよかったのか。

 

「あ、りょうかーい。明乃ありがと、今人手が足りなくてさー」

「そうなんだ」

 

どうやら彼女たちは知り合いならしい。顔だちとかがよく似ているからもしかしたら親戚関係なのかもしれないな。

 

「これで足りるか?」

「まいどー……ってちょっと待って。これは……」

 

私が差し出したお金を見て女の子が固まる。私の代わりに会計を呼んでくれた彼女も私の手を覗き込んで驚いた顔をした。

 

「どうしたの? ……これって」

「どうかしたのか?」

 

何か不味いことでもあったのだろうか?

 

「いや、ごめん。これは支払いには使えないや」

「え、そうなのか?!」

 

里では普通に使ってるのに?!

 

「うん、これ昔のお金だよね。慧音さんが最近は廃れたがとか言って見本代わりに見せてもらったことがあるよ」

「え? 私はこれ普通に使ってるぞ?」

 

一昔前とは心外だと思う。そこへ褐色の肌に白髪の青年がこちらへとやってきた。手にはフライパンらしきものが握られている。

 

「おい、闇乃! 注文が……どうした?」

「あ、シロウ 厨房いいの?」

 

青い方の女の子が彼に問いかけた。

 

「それどころじゃないんだ。闇乃、急いでくれ」

 

見れば店はまだまだ混んでいるようだ。ここの店は何人で動かしているのだろうか?

 

「とりあえずこれで会計は無理……と、どうしたものか」

「あ、いいこと思いついた。お兄さん、接客できる?」

 

青い女の子が少し悩むしぐさをしている間に黒い少女が何かを思いついたと言わんばかりににぃっと笑った。マズイ、これは嫌なことが起こる前触れに違いない。

 

「な、なんだ? いきなり」

「とりあえず、注文とって、会計っぽい人に声かけて、商品運べば終わりだから。がんばれ」

「は?」

 

いきなり何を言い出すんだこの子は。女の子は青年の方を向いて言った。

 

「店長、この人ちょうど手持ちがないみたいでさー。手伝いしてくれるってさ」

「え、ちょ」

 

急に何でそんなことになった?! 青年がおかしいと言ってくれるだろうと期待して彼の方を向けば。

 

「そうか、それなら早くしてくれ」

「ええええ?!」

 

……見事に退路は断たれてしまった。近くで青い方の女の子が「どんまい」と小さく言っていたが、それに答える暇などなく私は前掛けを渡され手伝いへと駆り出されてしまった。

 

 

―― 青年接客中。

 

 

昼時も過ぎたらしく客が減った。ようやく手伝いから解放された私は開いているテーブルにぐってりとうつぶせた。青い方の女の子が私の反対側に座ってから苦笑して言った。

 

「お兄さん、お疲れ様」

「あ、ああ いきなりこんなことになるなんて」

「まあ、シロウも闇乃も結構こき使ったもんねー。それ、僕のおごりだから食べていいよ」

 

目の前にはかなり美味しそうなケーキのようなものが置かれた。

 

「あ、いや」

「いいから、お金に関してはフォローできないけど闇乃がいきなり巻き込んだのは事実だし」

「君みたいな子どもにおごってもらうわけには」

 

どう見たってこの子は十歳にも満たないほどの女の子だろう。大の大人が子どもに奢ってもらうわけには。そう女の子に告げると女の子は少々不機嫌そうな顔で言った。

 

「……見た目はこどもでも今はきっちりお金持ってる僕のほうが優位ってもんじゃない? っていうよりもお金があんな状態なのによく食べに来ようって思えたほうが不思議っていうか」

「私は普通にこれを使っているんだけどな」

 

そう女の子に言うと女の子は完璧に呆れた様子で言った。

 

「はぁ、とりあえず食べてよ。僕は食べる気ないから」

「そ、そうか」

 

 

―― 青年喫食中。

 

 

さて、代金の問題もどうにかなったことだしお暇させてもらおう。

 

「では、世話になったな」

「じゃあねー」

 

青い方の女の子が私のことを見送ってくれた。後の二人は多分店の片づけに追われているのだろう。

私が出て行った後にこんな会話がなされていたことは私は知らない。

 

「……ところだけど、あのお兄さん何者?」

「とりあえず里の人間でないことは確かだな。それからかなりの手練れだ」

「うん、僕も見たことがないよ」

 

 

―― 青年移動中。

 

 

しばらく歩いているとふっと目の前に誰かが現れた。

 

「はぁ、ようやく見つけたわ」

「え? スキマババア?」

 

東方の八雲紫だ。ってことはここは幻想郷か? 私がそう呟くと八雲紫は静かに怒る。発してくる殺気はかなり怖い。

 

「誰がババアよ。全く、異界から入り込んだ何者かが居るって聞いて慌てたわ。あなた、天狗の里の住人ね」

「ええ、というかここどこなんだ?」

 

幻想郷ということは見当がついたが、わかったのはそれだけでそれ以上のことは何もわからない。そう聞くと八雲紫は涼やかな笑顔で笑った。

 

「『今』のあなたは知らなくていいことよ。それじゃあね」

「え? うわっ?!」

 

いきなり足下に現れたスキマに足を取られて私は落下した。『一名様幻想郷外ごあんなーい』とかそんなのが聞こえたような気がしたようなしなかったような。

 

 

―― 青年落下中。

 

 

私は気が付けば里の外れの草原に寝転がっていた。

 

「いつつ、あれ?」

 

私は一体何をしていたのだろう? 確か、見知らぬ場所に居てそこの食堂で食べたらお金が使えず手伝う羽目になって、その後で誰かに逢って……誰だっけ?

私が思い出せずに首を傾げていると柊がやってきた。

 

「一体どうしたのよ。こんなところで寝転がって」

「私はなんでここに居るんだ?」

「そんなの私が知るわけないでしょう。里の中に戻るわよ」

「あ、ああ」

 

ふと、冷やし中華が食べたいなと思った。何故だったかは忘れたけど。





終始雰囲気小説申し訳ございませんでした。

一応時系列としては我が家はシロウと闇乃が幻想郷入り後、定食屋を切り盛りしている時点。蓬莱人形様の方が刹那君が里で過ごしている時を想定しております。


蓬莱人形様コラボの許可ありがとうございました。
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