学園艦の恋愛事情   作:阿良良木歴

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大洗学園艦
隣の席の軍神様


俺の隣の席には戦車道全国大会で優勝し、世間からは軍神と呼ばれている女の子がいる。

 

名前は西住みほ。明るい茶髪のボブカットでおっとりしたタレ目、ふわふわした雰囲気。その見た目の通り頻繁に机から物を落とし、何も無いところで良く転ぶ。とても軍神なんて呼ばれる人物には見えない、普通の女の子だ。戦車道の家元とという所には共感を覚えるが、それだけ。

 

頬杖を着きながら横目でチラリと見る。一生懸命黒板に書かれた内容を書き写している。が、消しゴムを取ろうとして手で弾き、その消しゴムは変則的に跳ねながらオレの足元に到達した。困った様に眉を曲げた彼女の姿を見て、小さく溜息を吐き足元の消しゴムを拾い上げる。

 

「あ、ありがとう。いつもごめんね?」

 

「気にすんな。……っと、でもまあ。多少気をつけな」

 

「あ、あはは。ごめんなさい……」

 

消しゴムを渡す際、机に置かれたシャーペンを袖に引っ掛けまたも落下させた。地面に落ちる前に掴み取り消しゴムとセットで手渡すと、申し訳なさそうに謝りしょんぼりしていた。

 

前に向き直った俺は大きく欠伸をして気だるげに黒板を見つめた。

 

 

***

 

 

隣の席の男の子は私に消しゴムとシャーペンを手渡すと眠そうな表情で大きなあくびをした。半開きの瞳で頬杖を着きながらぼんやりと黒板を眺めている。

 

そんな授業中はぼんやりしている彼、金城鋭治(かねしろ えいじ)君は剣道の全国覇者みたいで、世界大会でも無類の強さを誇り優勝したのだとか。付いた異名は『剣鬼』。なんでも家が剣道の道場をやっているらしいので、ちょっと話してみたいと思ってます。

 

チラリと彼を見ます。背中辺りまで伸ばした黒い髪。黒い切れ長な瞳も今は眠たげに半開きになっている。それなのに周りに纏う空気は少しピリピリしていて、エリカさんみたいで少し苦手です。口調もぶっきらぼうでちょっと怖いですし。

 

それでも困った時は助けてくれるし、さり気ない気遣いができる人。怖いのか優しいのかわからない、ちょっと気になる不思議な人です。

 

黒板の文字をノートに写しながらも、自然と彼に視線が吸い寄せられていました。

 

 

***

 

 

「ああ~終わったぁ」

 

俺はゆっくり体を伸ばし席を立つ。朝の鍛錬で疲れた体でよく寝ずに午前中の授業を乗り越えられたと思う。

 

「おーい金城~、学食行こうぜ!」

 

「ああ、今行く」

 

扉の近くで同じ剣道部の宮本が俺を呼ぶ。隣の席の西住は、同じクラスの武部や五十鈴と話していて動く気配はない。特に気にすることでもないので、そのまま宮本と合流して学食に向かう。

 

「お前さぁ、そのナイフみたいな雰囲気なんとか出来ねぇの?」

 

「……出してるつもりがそもそも無い」

 

道中、宮本がいつもの様に文句を言ってくるが自分で意識している訳でもない事はどうしようもない。

 

『お前はいつもピリピリしてる』『抜き身の刃みたいで怖い』『寄らば斬る、みたいな雰囲気で近寄り難い』

 

俺がいつもみんなに言われている言葉だ。自分では意識したことが無いので、言われる度に少し傷ついていたりもする。表情が顔に出にくくぶっきらぼうな喋り方にも問題があるらしいが、どちらも生まれつきで、改善が難しい。なのでふわふわした雰囲気で周りを温かくする西住は少しばかり羨ましい。

 

「そんなんじゃ彼女出来ないぞ?」

 

「余計なお世話だ。別に好きな女子がいる訳でもない」

 

学食について早々戯言を吐かす宮本に蹴りを入れつつ、迷いながらも鯖の味噌煮定食の食券を購入した。宮本は今日も醤油ラーメン大盛りだった。

 

「つっても、お前顔はいいんだし告白くらいはあるだろ?」

 

「無くもないが、好きでも無い女子と恋仲にはなれない」

 

「お堅いことで」

 

鯖の味噌煮定食と醤油ラーメン大盛りを受け取った俺達は、4人がけのこじんまりとした席が全て埋まっていたため、何人も座れるような長テーブルに腰を降ろした。対面に座り他愛の無い会話をしながら箸を進める。少し経ち徐々に学食の空席が埋まり始めた頃。

 

「こーちゃん!隣、座ってもいい?」

 

「お、さおりんじゃん!いいよ、使え使え」

 

武部が宮本に声を掛け、武部のグループが混ざったことにより一気に大所帯となった。具体的に言えば俺の隣に西住、宮本の隣に武部。西住の先に秋山と冷泉、武部の先に五十鈴となっている。なんでも宮本と武部、それと冷泉は幼馴染みらしい。なのでこういった合流なんかは少なくない。少なくないんだが、

 

「お、お邪魔します」

 

「おう」

 

何故かいつも西住は俺の隣に座る。こんな愛想の無い奴より宮本の隣に座れば良いものを。今も宮本の話で盛り上がってみんな笑っている。俺は黙って食事を終え、暖かいお茶を啜る。途中、西住が水を零しそうになったり、箸を落としそうになったりをフォローしながら話に耳を傾ける。が、何故か会話がピタリと止み俺にみんなの視線が集まっていた。

 

「……なんだよ」

 

「いや~お前はいつも西住ちゃんを気にかけてるなぁって」

 

「そうか?」

 

宮本の言葉に首を傾げる。確かに何しでかすかわからないし、抜けているところがあるから目が離せない。その事を伝えると何故か宮本と武部がニヤニヤし始めた。西住も赤くなって俯いてしまい、変な雰囲気になってしまう。

 

「あのなぁ、困ってる奴がいたら助けるのが普通だろ」

 

「まあお前はそういうヤツだわな。後輩の面倒見も良いしな」

 

「そういうことだ。西住も気にすんな、コイツらはなんでも恋バナに持っていきたがる恋愛脳だから」

 

「うん。ありがとう」

 

まだ頬が赤いものの微笑みながらお礼を言う姿を確認した後、お盆を持って立ち上がる。

 

「おいおい、どこ行くんだよ?」

 

「鍛錬。今日は部活ねぇから昼にやってすぐ帰る様にするんだよ」

 

返答を聞かずに立ち去る。俺がいると西住がまた困りそうだとか、そういうことを考えた訳では無い。

 

 

***

 

 

「相変わらずの剣道バカだなぁ、アイツは」

 

「あはは、でも金城君らしいです」

 

金城君がいなくなった後も宮本君と沙織さん中心で話が進みます。ですが、

 

「でも、アイツが優しくする女子は西住ちゃんくらいなんだよなぁ。こりゃひょっとすると……」

 

「やだもー!でも、みぽりん的には金城君どうなの!?」

 

「ふぇ!?えぇと……」

 

その話の内容が私と金城君のことなので困ってしまいます。

 

「アイツ、剣道バカだけど。顔良し性格良しの優良物件だと思うんだけど!」

 

「もう、押し付けたりしない!で、みぽりんの好みのタイプってどういう人?」

 

「あの、あうぅ……」

 

「……やめろ馬鹿ふたり。困っているだろ」

 

「「ええ~気になるじゃん!」」

 

「……自分たちに出来てから言え」

 

「「それは言うなぁ!!」」

 

麻子さんが助け舟を出してくれたおかげで、なんとか話題は変わったけれど頭の中ではぐるぐると考えてしまってます。

 

授業中ふと気づくと見ていたり、登下校の時に目で探している。体育で活躍してる姿に目は奪われてるし、言葉を交わす度にドキドキしています。これが沙織さんの言う恋、なのかな?

 

答えはまだ、出そうにありません。

 

 

***

 

 

人気の無い校庭の片隅で雑念を斬るように竹刀を振るう。

 

「フッ!」

 

西住の困った表情が、瞑った瞼に映し出される。

 

「ハァッ!」

 

渡す時に触れた指先が、体のどこよりも熱を持つ。

 

「あああっ!!」

 

さっき学食で見た、微笑みが脳に焼き付いて離れない。

 

「ハァハァ……。ああ、クソ」

 

どれだけ無関心を装い、自分を誤魔化そうとしても。どうやら自分に嘘はつけないみたいだ。席が隣ということもあり、ずっと偽ってきた。だが、俺もあっちも全国大会が終わり交流する機会が増えた事でついに抑えが効かなくなったようだ。目標回数をこなし、草の上に寝転がる。

 

「……好き、なのだろうな。この感情は」

 

俺は、西住みほに惚れている。




いろんなガルパンの恋愛ものを読んで自分も書きたくなったバカ者です。好きなだけ罵ってください。

あとガルパンの最終章が制作されると聞いたテンションも混ざってます。反省も後悔もしてませんw

気に入って頂けたらまた次の機会に。
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