学園艦の恋愛事情   作:阿良良木歴

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今回メッチャ短いです。
あと大遅刻です。

どうしても今年の書き納めがしたかったんです。

あと最終章第1話、メッチャ面白かったです。


クリスマスに纏わるエトセトラ

ーープレゼントーー

 

 

「クリスマス会、楽しかったね!」

「そうだな。騒ぎに巻き込まれたのは大変だったけどな」

 

今日は12月24日、クリスマス・イブ。いつもの宮本や武部達とのクリスマス会も無事終わり、今は帰路についている。夜風が冷たく、首をすぼめる。夜道を女の子1人で帰らせる訳もなく、俺は西住と一緒に歩いていた。

 

「そういえば、金城君はプレゼント何が当たったの?」

「俺は秋山の……なんかよく分からない奴だ」

 

一応各国のレーションの詰め合わせとは聞いたし、聞いてもいないことも聞かされた。正直、背中に背負った鞄が無かったら量が多くて持って帰れなかった。

 

「そういう西住はなんだったんだ?」

「私は華さんの押し花の栞」

「五十鈴らしいな」

 

取り留めない会話をしている内に、西住の寮の前に到着した。

 

「ぁ。着いちゃった」

「そうだな」

「「……」」

 

互いに無言になり、動かなくなった。……心の中で気合いを入れて、緊張を解す様に、白く染まる息を吐き出す。背負った鞄を前に持ってきて中から目当ての物を取り出す。

 

「西住、渡したいものがあるんだ」

「え?」

「ほら。まあなんだ。クリスマスプレゼントってやつだ」

「あ、ありがとう。でも、いいの?私だけ……」

「他の奴にも渡してあるから、気にするな」

「……そうなんだ。……開けてもいい?」

「ああ」

 

何故か少しシュンとした西住は、プレゼントの包装を丁寧に開け始めた。勿論、他の奴にも渡したが、選び方は適当だったし、西住に渡した物ほど気合いも入れてない。……正直、西住に渡したのもこれで良かったのか不安ではあるが。

 

「わぁあ!ボコだ!」

「気に入って貰えたようだな」

「うん!」

 

さっきの表情から一転、満面の笑みを浮かべる西住。俺が渡したのは包帯グルグル巻のクマーーボコられクマのボコのヌイグルミだ。それもクリスマス限定のサンタ衣装の奴だ。

ハロウィンでボコが好きなのを知り、そういうのに詳しそうな従姉妹に電話をした。……そこから3時間くらいボコについて熱弁されたのは割愛しよう。そうしてどういうのを選ぶかを決めて、今日渡すことに成功した。

 

「ありがとう、大事にするね」

「そうしてくれると助かる」

 

幸せそうにボコをギュッと抱き締める西住を見て、こちらも幸せな気持ちになってくる。それにしても、ボコられクマのボコのヌイグルミ……予想以上に高かった。まあ、幸せそうな西住を見れただけで良かったとしよう。

 

「じゃあ、また新学期でな」

「あ、待って!」

 

目的を達成した俺はそのまま立ち去ろうとしたが、西住からの待ったと共に首に柔らかい何かが巻きついた。

 

「これ、マフラーか」

「そうだよ。金城君、いつも首寒そうにしてたから……その、私もプレゼント用意してたの」

「そうだったのか。ありがとう」

「いえいえ。私、いつも迷惑掛けてるから、そのお礼も込めてだよ」

 

そう言いながら俺の首に白いマフラーを巻いていく。身長差のせいで上目遣いで少し背伸びをする西住。時折、巻きにくかったのか手袋を外した西住の手が頬に触れ、柔らかい感触と温もりに鼓動が高鳴る。

 

「はい。巻けました」

「すまない、ここまでやってもらって」

「いいよ、私が好きでやったことだから。……それとね」

 

そこで言葉を区切り、俺の肩を掴んで一気に顔を近づけた西住が耳元で囁く。

 

「このプレゼントは金城君だけにしかあげてないよ?」

「っ!?」

「それじゃあ、また年明けにね!」

 

顔を真っ赤にした西住は、そのまま逃げるように寮の中へと入っていった。呆然とした俺は、

 

「……そういえば、初詣で会うんだったか」

 

そんな場違いな事を呟いていた。

 

 

***

 

 

ーーサンタクロースーー

 

 

ーーピンポーン。

 

ボルシチの家で開催したクリスマス会も終わって、それぞれ家に帰ってのんびりしていた時、不意にチャイムが鳴った。何なのよ、私はもう眠いのに。

 

「はぁい!今開けるわよ!」

「よ、カチューシャ。メリークリスマス」

「ぼ、ボルシチ!?」

「とりあえず入れてくれ。寒さで死にそう……」

 

玄関の外に居たのは、白くておっきな袋を背負いサンタの衣装に身を包んだボルシチだった。聞くとサンタ衣装でここまで来たとか。なにしてんのよアンタは!?

とりあえず部屋に招き入れた私は、紅茶を出そうとした。……紅茶ってどうすればいいのかしら?

 

「ああいいよ、紅茶は。すぐに帰るからさ」

「じゃあなんで来たのよ?」

「お前……去年自分が何言ったか忘れたのか?」

「去年?」

 

そこで薄ら思い出した。去年、風紀委員副委員長になったばかりのボルシチが全校生徒にささやかだけどクリスマスプレゼントを用意して配っていたのを見て、ちょっと妬いたんだった。可愛い子とかに渡す時デレデレしてたのも気に食わなかったんだっけ。

 

「そん時カチューシャ言っただろ。

『全校生徒にあげるなら、私に千個のプレゼントを寄越しなさいよ!』

ってさ」

「そんな事、言ったかもしれないわね。……ってまさか!」

「そのまさかだよ。つっても流石に千個は無理だったし、どれもこれも安物なんだけどな」

 

そう言ってボルシチは、袋の中から次々とプレゼントを出し始めた。全部出し切る頃には床が見えなくなっていた。

 

「こんなたくさん。……その、ありがと」

「良いってべつに。それに今年はカチューシャの為だけに用意したからな」

「え?」

「他の奴らには悪いけど、まあ諦めてくれって事で」

 

何故か眠そうなボルシチはそこまで言うと、ソファに持たれかかったまま俯いてしまった。

 

「ボルシチ、眠いの?」

「ああ、昨日の昼から予約したプレゼント、とか遠くまで探しに行ったやつとかあって。寝てなかったから……」

「そこまでしてくれなくても……良かったのに」

「俺が、した、かっただけ……」

「……ボルシチ?」

 

ボルシチは遂にソファに寝転んで寝てしまった。私は毛布を押し入れから引っ張り出してボルシチに掛ける。安らかな寝息を立てるボルシチ。静かにいくつかのプレゼントを開けてみると、ボルシチと一緒にいる時に欲しいと言った事があるものばかりだった。……こんなに貰っても、返せないわよ、バカ。

 

「これはお礼。……お礼なんだから」

 

そう自分に言い聞かせながら。ゆっくりとボルシチの頬にくちづけを落とす。

 

「ありがとう、ボルシチ。アンタのそういうところ、大好きよ」

 

私の言葉は誰にも聞かれず、静かな夜に溶けていった。

 

 

ーー真っ赤な髪のトナカイさんーー

 

 

『メリークリスマスですわ~!』

「野薔薇。テメェ、一旦落ち着け!」

『ローズヒップですわ!!』

「拡声器使って叫ぶんじゃねぇ!!」

 

土煙を巻き上げ、爆走するクルセイダー。どこから持ってきたのか、スピーカーで大音量のクリスマスソングを流し、拡声器でメリークリスマスを叫ぶローズヒップ。その後ろで、ソリに見立てた荷車にしがみつくスミス。それもそのはず、クルセイダーの暴走により荷車は予想不能な動きで飛び回っていた。決してパンジャンドラムなどでは無い。

 

そんな暴走をすること、約1時間。

 

「ふぅ。プレゼントを配り終えましたわ!」

「配るっつうより投げてたけどな」

「速さは大事ですわ!」

「速すぎて誰も受け取れてねぇだろうが!」

 

停車したクルセイダーの前でいつものようにローズヒップとスミスは言い争っていた。上下が逆転するような荷車に乗っていたにも関わらずケロッとしているスミスは流石と言うべきか……。

今回の暴走、もといクリスマスプレゼントの配布は、ダージリン主催によるものだった。曰く『クリスマスとは、ちょっとした余分のことを誰かのためにしてあげること』らしく、その役割を与えられたのがローズヒップとスミスで、セバスチャンが作った手作りのお菓子や編み物を手当り次第に全校生徒に配っていた。ちなみに、ローズヒップはトナカイの着ぐるみ、スミスはサンタの衣装に白い付け髭で学園艦を走り回っていたのだった。

 

「まあこれで終わりだな」

「そうですわね。早くダージリン様の所に帰ってティータイムですわ!」

「まあ待て野薔薇」

「だからローズヒップですゎ……ふぇ?」

 

元気良く走り出そうとするローズヒップの手を取り、自分の方へ引き寄せるスミス。いつもとは違う、優しい引っ張り方にローズヒップは頬を染めた。そんな事も気にせずスミスはローズヒップの首に手を回す。

 

「じっとしてな」

「す、スミス!いったい何を!?」

「うし。完了」

「……え?」

 

一瞬の出来事過ぎて理解が追い付かないローズヒップは無意識に触れられた首筋に手を当てる。そこには皮で出来たチョーカーの感触があった。チャラり、とアクセントの月のモチーフが揺れる。

 

「こ、これは……?」

「あん?クリスマスプレゼントだよ。オレからのな」

「い、意味わかってますの!?」

「ああ?」

 

ネックレスやチョーカーをプレゼントする意味。それは、「束縛したい」「あなたを独占したい」等の意味がある。それをオレンジペコから聞いていたローズヒップは、期待と不安で心臓を高鳴らせていた。

 

「そんなもんオレが知る訳ねぇだろ」

「……ですわよね」

「だけどな」

「きゃあっ!」

 

予想通りの返答に落胆したローズヒップだったが、間を置かずスミスに抱き寄せられ、鼓動が再燃する。

 

「チョーカーっつうのは要は首輪だ。つまり、オレはお前に首輪を掛けたわけだ」

「ーーっ!」

「つまり野薔薇。お前はオレのものだ。好き勝手な事はやらせねぇ、ずっとオレの傍にいろ」

「……はい」

 

プロポーズにも似たスミスの発言に、ローズヒップの頭は沸騰し、頷くことしか出来なくなっていた。為されるがままスミスに手を引かれ、ダージリンが居る部屋へと連行される顔を真っ赤にしたローズヒップ。そんな様子のローズヒップを横目に見ながらスミスは、

 

(田尻に「そんなにローズヒップの面倒を見るのが大変なら、首輪でも付ければ良いじゃない」なんて適当言われたと思ったが。案外上手くいくもんだな)

 

と、斜め上の感想を出しているのだった。

 

 




今年もありがとうございました。
良いお年を!
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