二宮隊の夏   作:てしてし

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14.虎穴猛進ー前編ー

栞)マップは「市街地C」に決定!山の斜面に、道路を隔てて宅地が階段状に続く、全体的に勾配になったステージです。

 

東)高台を取れば、斜面になったマップ全体を広く見渡せるために、射程持ちにとっては非常に有難いマップですね。しかし、逆に言えば射程の無いアタッカーやガンナーにとっては、一瞬の隙が死を招く危険なマップだとも言えるでしょう。

 

餅)ふむふむ。

 

栞)さあ、各隊の転送が完了!二宮隊、注目の第一戦。諏訪隊、鈴鳴第一との三つ巴の戦い。スタートです!

 

ーマップ下部・中央ー

 

(一番高台に近いのは辻くん、その次がマップ中部右端の犬飼先輩です。)

 

(二宮さんどうします?)

 

漆黒のスーツをはためかせ、二宮は宅地を隔てる道路の中央に泰然と立つ。恐らく上からは丸見えであろう。

 

「辻は高台を抑えに行け。犬飼はその高度を維持して、上に上がろうとする敵を遊撃しろ。もし、どちらか一方が村上にあたった場合は、辻はそのままで、犬飼が辻と合流しろ。」

 

(犬飼、了解!)

 

(辻、了解。隊長はー)

 

「上と下の前後に敵がいる。堕とすのは容易いが、狙撃手の位置が割れるまでは足止めに徹する。」

 

通信を切るや、二宮はスーツのポケットに手を入れたまま、一塊の立方体を出現させる。鈍い光を放つそれは、今度は無数の三角錐に分かれて浮遊する。

 

追尾弾(ハウンド)

 

三角錐が今度は無数の光線となり、弧を描いて、家屋の屋根を越え、一段上の道路にトリオン弾の雨を降らせた。前方のレーダー反応は依然として健在だ。二宮は微動だにせず、第二撃のキューブを出現させた。

 

栞)口火を切ったのは、個人ランク総合2位の二宮隊長だ〜!

 

餅)ま、一位は俺だけどな。

 

栞)狙われた来馬隊長、一瞬だけ反撃に転じたものの、火力差を思い知ったのか、防戦一方。しかし、ジワジワと削られていきます。二宮隊長も宅地越しの攻撃は障害物が多いためか、中々決定打を与えることができない!

 

東)いや、この攻撃はただのポーズですね。二宮の攻撃スタイルだと否応無しに、上からの狙撃の的になってしまう。だから、あえて一番目立つ道の真ん中に居座り続けて狙撃を誘引してるのでしょう。

現に、二宮は片方のトリガーしか使用していません。

 

また、この位置にいれば後ろの笹森も道路を横断できませんから当然上には上がれない。結果的に、前と後、それから見えない狙撃手の三方にプレッシャーをかけている事になります。

 

栞)なるほど、さすがは個人ランク2位!

 

餅)ま、俺は一位だけどな。

 

栞)おおっと、この間に諏訪隊の諏訪隊長と堤隊員が合流。そして、マップ上部では、高台を抑えに行こうとする辻隊員と、それを阻止しようとする村上隊員が接近!

 

餅)いよいよだな。

 

 

ーマップ上部ー

 

(うわぁあ来馬先輩、大丈夫すっか⁈ヘルプ行きましょうか?)

 

(大丈夫。太一は何としても高台を抑えるんだ。そうしないとこのマップを選らんだ意味がなくなるぞ。)

 

(でも、このままじゃ……)

 

(もし僕が落ちたら、その分、鋼と太一で取り返してくれ。頼んだよ。)

 

(来馬先輩……分かったっす!)

 

「了解です。」

 

レイガストの基部を握る左手に力を込めて、覚悟を固めた隊長に敬意を抱きつつ返事を返す。足を止めることなく村上鋼は、全速でレーダー上の敵へと接近する。

 

"この角を曲がればー"

 

漆黒のスーツに身を包み、こちらに駆け上がってくる辻を視認する。村上は左手の"レイガスト"を起動させつつ、右手で"孤月"を抜いて構えの姿勢をとる。

 

同じく村上を視認した辻もまた、足を止めると孤月を抜き、そして通信を開く。

 

「犬飼先輩、早速で悪いんですが村上先輩と遭遇しました。援護お願いします。」

 

(了解〜、ちょっと待っててね。)

 

刹那、一気に踏み込んできた村上の孤月による斬撃が辻を襲う。

 

「くっ、」

 

寸でのところで、受け止めた辻だったが、そのまま押され気味で鍔迫り合いに持ち込まれる。目鼻の先の辻に対して、村上は鋭い一瞥を浴びせた。

 

「悪いが、この先は行かせない。」

 

ーマップ中部ー

 

「日佐人!そっちはどうだ⁈」

 

(駄目です。二宮さんが道の真ん中にいるんで、とても渡ってこれそうにないです。)

 

「今、攻撃受けてんのは誰か分かるか?」

 

(さっき、一瞬ハウンドの応射があったから来馬先輩で間違いないです。)

 

「諏訪さん、どうします?俺達だけで上行きますか?」

 

「いや、下に居んのが二宮と来馬だってことは、上は村上と、辻・犬コンビだってことだ。日佐人無しじゃどの道キチィ……しゃあねぇ、こうなりゃ一か八か、総攻撃で二宮退治といくぜ!」

 

一瞬の間が空いたあと両隊員は応える。

 

「了解」

 

その声は緊張によるものなのか震えていた。だがしかし、その声には確かに闘志が宿っていた。

 

 

 


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