二宮隊の夏   作:てしてし

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16.鈍い刃ー前編ー

ーマップ下部ー

「よし、堤はベイルアウトしろ。」

 

先の戦闘で口からこぼれたタバコを拾い上げながら諏訪は言った。

 

「まだやれます!」

 

食い下がる堤のトリオン体からは未だ相当量のトリオン粒子が漏れ出していた。

 

「このままトリオン切れで二宮に点が入るのは癪だ。後は俺に任せろ。」

 

堤が、隊長の"任せろ"と言う一言に抗えるはずもない。これこそ諏訪の求心力が成せる技である。

 

「……了解!後頼みます。ベイルアウト!」

 

堤の離脱を見届けつつ、諏訪はタバコを咥えなおす。

 

「さぁ、もう一丁いくぜ!」

 

栞)二宮隊長敗れる!あまりの衝撃に、会場内のどよめきが収まりません!東さん、今の戦闘をどうご覧になりましたか?

 

東)全員がバッグワームを起動して、包囲。二宮が攻撃に転じるや、笹森・堤の順に囮になって突撃、最終的に諏訪のフルアタック一発に繋げたー

 

戦術と言うにはかなり荒削りに過ぎるーしかし、ランク戦とは言え、これほど捨て身の戦いぶりが出来る胆力、それから土壇場で見せた確かな連携力。どちらも諏訪隊の持ち味を十二分に出した結果だと言えますね。

 

栞)なるほど!では逆に二宮隊長の敗因とは何でしょう、じゃあ太刀川さん。

 

餅)う〜ん、孤軍奮闘の中で結果的に3人ベイルアウトに追い込んでるからな〜。別にコレと言った失敗はしてないだろ。まぁ、しいて言えば、オペレーターの対応が遅かったこと位か?冷見にしては珍しい。

 

栞)あ〜、もしかしたら亜紀ちゃん、まだ病み上がりなのかも……

 

餅)アレ?もしかして俺、なんか今まずい事言った?

 

東)まあ、いずれにしても、戦略的効果は別にして、諏訪隊が犠牲の割には得点が伸びていないこと、それから二宮隊が得点に加えて残存戦力の面でも他二隊を大きく突き放している事は事実です。

 

栞)ここで得点のおさらいです。二宮隊、2得点1アウト。諏訪隊、1得点2アウト。来馬隊、無得点1アウトとなっています。さあ、ここから勝負は佳境。勝敗の行方はマップ上部の戦いに集約されます。太刀川さん、この、高台を取った村上・別役ペアと、それに喰らい付く犬飼・辻ペアとの戦い。ぶっちゃけてどっちに軍配が上がると思いますか?

 

餅)う〜ん、これまた難しい質問を……宇佐美、お前さっきからわざとやってるだろ!

 

栞)あはは、ばれたか〜。

 

餅)本来ならば、練度で遥かに勝る犬飼と辻が圧倒するところだが……やはり、高台を活かした狙撃が上手く効いているな。コレのせいで2人共大きく踏み込めない。加えて、村上の立ち回りだ。2人を相手取った剣捌きも見事だが、スラスターを使って高低差を上手く利用している。こりゃ、中々決着はつかんぞ。

 

栞)おお、さすが戦闘の解説はお見事ですね〜!

 

餅)ま、俺は一位だからな。

 

東)ただ、この膠着も長くは続かないと思いますよ。

 

栞)と、言うと?

 

餅)諏訪さんが上がって来るからな。だが、それは二隊とも分かってるはずだ。問題はどちらが先に仕掛けるか、だな。

 

東)恐らく、仕掛けるとすれば二宮隊でしょう。戦闘の上では確かに互角に見えますが、その実、高台の優位を維持し続けなければいけない来馬隊に対して、ポイントのアドバンテージがある二宮隊の2人は、これまで無理に攻め立てる必要がなかった。ただ、諏訪の動き次第では二隊とも状況がひっくり返る恐れがあります。となると、仕掛ける余力のない来馬隊と、状況打破の必要性が出てきた二宮隊。先に動く方は明白ですね。

 

餅)やっぱ、すげぇな!

 

栞)なるほど!さあ、予言通り二宮隊が先に仕掛けるのか!そして、勝負の鍵を握る漢、諏訪隊長はどう出るか?ますます目が離せません!

 

ーマップ上部ー

幾たびの攻防を繰り返し、再び村上先輩は屋根上に陣取り、俺たち二人はそれを見上げていた。

 

(諏訪さんがレーダー上から消えました……)

 

ひゃみさんの声が震えている。無理もない。あの二宮さんが落とされたのだからー

 

犬飼先輩が直上に銃口を向けた。俺もすぐさま居合の構えをとる。

 

"ここで仕掛ける"

 

内部通話など使わなくても分かる。阿吽の呼吸と言う奴だ。

 

ガガガガガガガー

 

犬飼先輩の放った"ハウンド"が、一旦上空に打ち上げられ、村上先輩へと一気に降り注ぐ。村上先輩は、左手に携えた"盾(レイガスト)"を頭上にかざしてカバー。そこへ無言で放たれた俺の"旋空"が襲い掛かるー

と、村上先輩は視界から消えた。即ち、一歩後ろに後退して斬撃をやり過ごした。すかさず犬飼先輩が屋根上へと駆け上がり、俺もすぐさま追撃に加わる。

 

"キラッ!"

 

音より速く、その光弾は迫った。

 

"ガキン!"

 

しかし、別役が放った"イーグレット"の銃弾は、再び犬飼先輩の集中シールドに弾かれる。屋根の端に立って、盾を張った先輩の背を飛び越え、向かいの村上先輩に全霊を込めて斬りかかる。

 

"ガキ!"

 

防がれたー

と思った刹那、俺の身体は斬撃を受け止めた"レイガスト"によって孤月ごと吹っ飛ばされる。

 

"スラスター……⁈"

 

理解した所で、崩れた体勢を整えることも出来ず、そのま後方の犬飼先輩へとぶつかり、二人共々地上に落下する。

 

ザッー

すぐさま、着地姿勢を整える。そこへー

 

"ドン!"

 

イーグレットの弾丸が、犬飼先輩の左肘から下を吹き飛ばした。

 

「あちゃー、やっぱり正攻法じゃダメみたいだね。」

 

傷口を右手で押さえつつ、普段と変わらぬトーンで先輩は言う。

 

これで、また状況が一つ悪くなった。これまでは、諏訪さんが俺たちと鈴鳴のどちらに仕掛けてくるかは、あくまでイーブンだったのだが、こちらに手負が出たのならば話は変わるだろう。

 

"もう猶予は無い。"

 

「犬飼先輩は狙撃手を落としてください、」

 

孤月を握る力が一層強まる。

 

「ここは……俺が抑えます!」

 

 

 

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