二宮隊の夏   作:てしてし

18 / 18
お待たせしました(誰も待っていない)、更新再開です!

こんなときだからこそ、みんなでまった〜りSS読んだり、書いたりしながら葦原先生の復活を気長に待ちましょう*\(^o^)/*

(あと、いまさらながら、ひゃみさんってB型なんだね。ちょっと意外)


18.曇天の霹靂

栞)下馬評を大きく覆して、二宮隊を下した諏訪隊。東さん。改めて振り返ってみて、この戦いのターニングポイントはどこだったのでしょうか?

 

東)やはり、諏訪隊が二宮に総攻撃をかけた場面ですね。仮に、あそこで諏訪が笹森を見捨てて、上の戦闘に乱入していれば、2人落としてかつ無傷の二宮が、犬飼・辻に合流していたでしょうから、二宮隊の勝利は確実だったでしょう。犠牲を度外視した一発勝負が、結果的に戦略的効果を生んだ、というわけです。

 

栞)マップ選択権を活かして健闘するものの、残念ながら最下位だった鈴鳴第一・来馬隊についてはいかがですか?太刀川さん。

 

餅)個人的には村上の覚醒が印象的だったが……今回の鈴鳴の得点の影の立役者は来馬だな。

 

栞)ほうほう。

 

餅)攻撃してきたのが二宮だと分かった時点で、バッグワームを使って隠れる、という選択肢もあったわけだが来馬はあえて踏みとどまって時間を稼いだ。結局、序盤に落とされこそしたが、その間に用意してきたフォーメーションが無事完成したってわけだ。

 

東)村上と太一の、地形を活かした連携攻撃もまた見事でした。

 

栞)では最後に"まさか"の惜敗を喫した二宮隊についてはいかがでしょう?

 

東)やはり仕方が無い事とは言え、他二隊に対して、圧倒的な連携の機能不全が見受けられました。それはオペレーターも含めて、です。確かに、3点を取ったというのは充分な戦果に見えますが、これはチームの得点と言うより個人のスタンドプレーの合算と呼ぶにふさわしい。勿論、個人個人の力量が高いことは事実ですが……しかし、それだけでは二宮隊が再び上に上がることはないでしょう。空いた"穴"をそのままにしたままでは……

 

餅)"見た目の傷口"は小さいが、"真の傷"はもっとずっと深いとこまで達していたってとこだな。

 

栞)…………。

 

東)いずれにしても、二宮隊は今後、戦術を大幅に見直す必要があると思いますよ……

 

 

 

凍てつくような静けさの中で、モニターから解説の音声が淡々と漏れていた。しかし、その言葉は一言たりとも、僕の頭には入ってこない。

 

"さあ、気になる二宮隊の次回の相手は……B級暫定10位の人見隊、同じく12位の影浦隊です。次こそ最下位からの脱却なるか二宮隊、そして東さんの初陣はどうなるのか、要注目のラウンド2は四日後の6/5です!ー"

 

それを最後に室内は完全な静寂に包まれた。

 

あのとき、少しでも削れていれば……

あのとき、少しでも踏ん張れていれば……

あのとき、あのとき……

 

全ての悔恨の念が鉛となって、心の奥底に沈んでゆく。

 

沈黙。まるで室内が石化したかのような沈黙。

 

長く続いたその静寂の中で、最初に僕の耳に届いたのは、蛍の鳴き声のようにか細いものだった。

 

「すいませんでした……」

 

辛うじて絞りだされたひゃみさんの声に応えるものはいなかった。

 

違う、悪いのは全て僕だ。分かっている、分かっているのに、口が開かない。いや、口だけじゃない。僕の体全てが石化したように動かなかった。

 

「まあ、初戦なんだしさ、切り換えてこうよ。ね。」

 

優しく諭そうとする犬飼先輩とは対象的に、冷蔵庫前に立つ二宮さんは依然としてひゃみさんに背を向けていた。

 

そんな無機質な背を見据えて、ひゃみさんは思いもよらない言葉を発した。

 

「この隊を……二宮隊を抜けさせて下さい。」

 

 

 

それからのことは、あまりよく覚えていない。今の僕にはあの日の出来事が、夢だったのか現実だったのかすら定かではない。あれからもう、四日も経つというのに……

 

そんな呆然とした頭の中にも、ハッキリと残っているのはあの日のひゃみさんの横顔だ。

 

隊を抜けたいと言ったその悲壮な声とは対象的な、毅然とした眼差し、されども、漏れ出しそうな苦悶を抑え込むかのように引き結ばれた唇。

 

その余りに、真摯で、かつ、苦悶に充ちた美しさに、僕も犬飼先輩も容易に声がかけられなかった。

 

だが、そんな彼女に対しても、やはり二宮さんは無機質に応じた。

 

「好きにしろ。」

 

その途端、表情の均衡が崩れた彼女の瞳から、堰を切ったように涙が溢れ出した。

 

それからだ。一切合財の記憶の輪郭がぼやけ出したのは。

 

気付いた時には、ひゃみさんは部屋にはおらず、二宮さんは遂に、一度も後ろを振り返ることはなかった。

 

"間も無く試合開始です。出場者は転送準備を行って下さい。"

 

静かにトリガーを握る。今の僕には、換装せずとも捨て去るような雑念はない。もっとも、これは無心と言うよりも、心の中の何か大事なものを落っことした感覚と呼ぶに相応しい。

 

そうして、僕の意識は置き去りにされたまま、B級ランク戦第二戦が幕を開けた。

 

 

 

 




氷見 亜季

年齢 16歳
誕生日 1月25日
身長 155cm
血液型 B型
星座 かえる座
好きなもの 酢豚、ヨーグルト、風呂
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。