二宮隊の夏   作:てしてし

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2.止まない雨ー中編ー

当然というか、いつも通りというか、バスの客席には誰も乗っていなかった。それもそのはず、ボーダー本部基地周辺には民家なんて一つもないのだから。よって、バスの利用者は警戒区域外と基地とを往来する人間、つまりはボーダー関係者に限られていた。しかしながら、成人の本部職員は自分のアシがあるし、アシのない、戦闘員の大半をしめる学生達もチャリ通を好んだため、実際にバスを利用しているのは、蓮乃辺市に住む自分やひゃみさんのような自宅から本部基地がかなり遠い学生の一部だけだった。

僕はいつも通り奥から2番目の奥側の席に座り、ひゃみさんもいつも通りその隣である通路側の席に座った。

 

肘を窓の桟にかけ、頬杖をついて窓の外を見る。と言っても、激しく打ち付ける雨がその視界を遮るのだが。

 

お互いが根っからの口下手、というより口数が少ない方なのでバスの中では特に世間話に花が咲くということもない。隣り合い、ただゆらゆらと揺られるだけの時間が流れる。ただそれだけの短くて、静かな時間、だが、それこそが今の僕の全てだった。

 

ただし、普段ならば心安らぐこの沈黙の間が、今日は苦痛の種だった。

 

「解散……しちゃうのかな?」

そのか細い声はいつになく震え、その眼差しは焦点を逸していた。

 

予想もしていなかった……といえば嘘になる。僕の知る限り、今迄ボーダー隊員の中で重要規律違反になった隊員はいないし、A級からB級に降格したチームなんて聞いたこともない。今しがた作戦室からの退去に勤しんでいた隊員達の絶望感が織りなす雰囲気は今思い出しても吐き気を催すほどだった。

 

 

「どうしたら良かったのかな……?何が間違ってたのかな……?」

彼女はぽつりぽつりと呟く。前を見据えているようで、何も見ていないようにも見える彼女は、果たして自分に問いかけたのだろうか、それとも彼女自身?応えるべきか、或いは何と応えるべきか決めかねる間に彼女は続ける。

 

「未来先輩は優しかった……強かった……いつも誰よりも気を配って……誰よりも皆の役に立とうとして……誰よりも努力してた……」

 

「そんな先輩に、私は甘えてばかりで……頼ってばかりで……先輩の悩み……辛さ……弱さに気付いてあげられなかった……」

 

「違うな……気付いた気になってた……少しでも力になれていると思ってた……」

 

「でも本当は……」

 

 

ひゃみさんの瞳から大粒の涙がぽろぽろと零れ落ちる。僕の頭の中では種々の想いが反響しあい、交錯しあい、それが言葉に結実することは遂になかった。ただただ異様に喉が渇く。

 

たとえ何が犠牲になったとしても、1番に護りたい人。その子が目の前で泣いているにも拘らず、僕は果てしなく無力だった。

 

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