二宮隊の夏   作:てしてし

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3.止まない雨ー後編ー

「やめてください!」

 

ひゃみさんが声を荒げるのを見たのはそれが初めてだった。

 

事件は1時間ほど前に起きた。前述の通り二宮さん、犬飼先輩、僕、ひゃみさんの四人は退去を命ぜられた作戦室の整理を、皆一言も交わさずに黙々と、いや鬱々と行っていた。とは言うものの、(今となっては皮肉でしかないのだが)二宮隊の作戦室はそのシンプルさでA級1位と噂されるほどである。各々のちょっとした私物を段ボールにしまえばそれで終わりである。僕がちょうど、プレシオサウルスの模型を緩衝材(いわゆるプチプチ)で包んでいる時だった。

 

「ドサッ」

 

無音の室内で突如発された無造作な音は、ほか三人の注目を集めるには十分だった。みると、二宮さんが大きなビニール袋に鳩原先輩の私物を乱雑に入れていた。

 

「何……してるんですか?」

 

ひゃみさんの顔は引きつっていた。二宮さんは、その手を止めることなく、振り返りもせずに吐き捨てるように言い放つ。

 

「見ての通りだ。」

 

その刹那だった。

 

「やめてください!」

 

室内の時間が止まったのがはっきりと分かった。どうやらそれは二宮さんも犬飼先輩も一緒だったらしい。我に帰ると、目を見開く3人に背を向け、部屋を掛け出るひゃみさんの後姿があった。

 

 

「……あ〜、あとは俺がやっとくから、辻ちゃんはもう帰りなよ」

 

犬飼先輩である。

 

「え、でもー

 

「いいから、いいから」

そう言って不気味な笑みを浮かべながら、先輩は僕の頭をホールドし、耳元で囁いてきた。

 

「ひゃみちゃんのフォロー、ヨ・ロ・シ・ク☆」

 

「ちょっ、犬飼先輩、」

 

顔を赤らめる僕の背中を先輩はグイグイ押してきて、とうとう僕は部屋の外に押し出された。

 

「おつかれ〜」

 

「お疲れ様です。」

 

ニヤニヤする先輩に、不機嫌を装った挨拶をしながら部屋を後にする。不思議とさっきまでの陰鬱な気持ちが和らいでいたのは、先輩のお陰かもしれない。

 

その足で僕は迷い無く玄関を目指して走る。玄関の前にはふらふらと生気無く歩くひゃみさんの姿があった。彼女は外の激しい雨にすら気付いていないのだろうか、傘すら持たずに、自動で開いた扉から出ようとした。

 

ほとんど反射的だった。僕は一気に彼女に駆け寄るとその左腕を摑んで引き止めていた。彼女は驚いた顔をこちらに向けたが、僕自身もまた、自らの行動に驚愕していた。混乱する司令塔が、から回る口にやっとのことで発させた言葉は、

 

「……か、かぜ、ひくよ」

 

だった。

 

 

今、思い出しても、あの時と同じように顔が火照る。曇天による仄暗い車内の中で僕はふと、左肩に微かな重みを感じた。目を移すとひゃみさんは僕の肩に頭を預けて、寝息をたてていた。僕は身体を硬直させ、より一層頬を赤らめるのだった。

 

熱を冷ますべく再び窓の外に目をやる。

雨は、まだ止まない。

 

 

 

 

 




辻 新之助

年齢 16歳
誕生日 8月16日
身長 178cm
血液型 B型
星座 ぺんぎん座
好きなもの 恐竜・シュークリーム・ バターどら焼き
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