ぺディグリーすかーれっと   作:葉虎

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パルプンテが詰まったから、気晴らしに昔、Arcadiaで書いてたハンター物の続きを書き始めている。

正直、気晴らしなんで細かいことは特に考えていない。


第1話

「おぎゃぁ?」

 

目を開けると、見覚えのない天井が見えた。

 

いや、そんな王道的な感想は置いといて……

 

「おぎゃぁ!?おぎゃぁ!?」(なんだ!?何処だよここ!?)

 

ってか!?

 

「おぎゃ!?おぎゃぁ、おぎゃぁ!!」(って!?喋れてもいねぇし!)

 

そういえば、身体も動かない!?

 

なんで!?何が一体どうなってるんだよ!!

 

「あら?もうお腹が空いたのかしら?」

 

そんな感じで一人で混乱中に、聞こえてきた穏やかな女性の声。

 

俺の顔を覗き込んで微笑みを浮かべている。

 

「おぎゃぁ~おぎゃ、おぎゃぁ」(ほへぇ~、えらい別嬪さんじゃのぉ。優しそうだし)

 

色白の肌に、整った顔立ち。さらには赤みがかった茶色い瞳には慈愛を思わせるやさしい輝き。

 

そんな女性の用紙にうっとりと見惚れていると。

 

「お、おぎゃ!?、おぎゃぁ!!おぎゃぁ!!」(なっ、ちょっ!?うえぇええ!?)

 

なんと、徐に女性は着ていた着物の前を崩し、小ぶりだが形の良い胸を晒し…

 

「ふふ、たんとお飲み」

 

俺の口を胸元へと運んだ。

 

そして、俺の意思とは関係なく体が動き、むしゃぶる用にその胸に吸いつき、母乳を飲み始める。

 

もう大パニックだ。訳がわからない。某RPGでメタパニ喰らったら、こうなるんだろうな。

 

混乱の中、口元だけは動いており、しばらくして女性は軽く俺の背中を叩いてゲップをさせた後、再び布団に寝かせて去っていった。

 

 

 

しばらくの間、混乱した頭を冷やしてくると今の状況が何となく読めてくる。

 

信じられないだろうが、今の俺は赤子だ。

 

そして、さっきの女性は母親と推測する。

 

其処まで分かったところで最大の難問。何故この状況になったのか?その原因について考えてみたが…

 

「おぎゃぁ~」(分かるわけねぇじゃん)

 

いやだが、諦めるのは早い。とりあえず赤子になる前で最も新たしい記録を掘り起こしてみよう。

 

 

赤子になる前の俺の名は前沢巧、性別は男、21歳の大学生だった。

 

趣味はアニメやゲーム、漫画など俗にいうオタクだ。

 

そうそう、だんだんと思いだしてきたぞ。

 

確か、新作のエロゲーを買いに行ったんだよ。

 

んで、予約忘れてて内心諦めてた初回限定のポスターが手に入って、ウキウキ気分で帰路に着いてて…

 

横断歩道を渡っているときに、信号無視した車が突っ込んで来たんだ……

 

そこで記憶が途切れている。

 

 

もしかして…俺、死んだ?

 

いや、もしかしなくてもあの状況で避けられたとは思えない。

 

これが夢だって可能性も……いや、それはねぇな。

 

さっき、女性の腕に抱かれた時の感触は本物だったし。

 

となると…前にネットで見たSSの設定にあった…

 

転生したとか?

 

いや、ありえねーだろ!?でも、現にこんな現象が起こってるしなぁ…

 

……待てよ。もしかしてこれは運がいいのではないだろうか?

 

前沢巧は間違いなく事故にあった。最悪死亡しており、良くても五体満足では居られないだろう。

 

お先真っ暗だ……そんな矢先に赤子に転生。

 

一から人生をやり直せる!

 

さらに言えば、あの母親を見るに、俺は相当な美形に成長する可能性が高い。

 

さすれば、可愛い彼女もGET出来る!

 

うっほっー、いいことづくめじゃん!!

 

少々、短絡的な思考かとは思うが、ポジティブに考えなければやってられん。

 

ってな訳で、俺の第二の人生は幕を開けた。

 

 

それからの日々は恥辱と屈辱に満ち、また退屈だった。

 

家族構成は俺と母の二人だけ。父親は居ないみたいだ。死んだのか、別れたのかは定かではないがまぁ、態々聞くこともないだろう。

 

んで持って俺は赤子。一人ではなぁんにも出来ないのらー。

 

必然的に、シモの世話から何から全部あの別嬪のお母様がやってくださった。

 

わかるか?俺の精神年齢は二十歳過ぎの成人。

 

そんな俺が、そう年の変わらない…ストライクゾーンど真ん中の女性にケツの穴から、何から全部見られて…

 

も、もうお嫁にいけん…

 

羞恥から自殺でも図ろうか?などと馬鹿な事を考えたこともある。

 

さらに、辛かったのが退屈な日々。

 

毎日毎日、食って寝て、天井を眺める……マジ退屈だって―の!!

 

だが!?そんな日々もとうとう終わりを告げるのだ!!

 

ハイハイから直立。さらには覚束ないが言語をマスターし、もっと言うと足取りは危ないが二足歩行をマスターした。

 

今は、家の中のみだがそう遠くないうちに外に出る事になるだろう。

 

うぉおお!!自由が俺を待ってるぜぇーーー!!

 

っと、忘れてた。遅ればせながら俺の第二の名前はクランと言うらしい。美人のお母様の名前はトリス。ファミリーネームが無いというのは少々特殊だと思う。

 

まぁ、それを知るためにまずは自分の周りの世界を知るための情報収集だな!

 

 

 

三歳になり、俺は美人のお母様から外出の許可が出た。

 

ただし、あまり遠くへは行かない事や、お昼と夕方には必ず家に帰ってご飯を食べること!を約束された…まぁ、できる限りは守るつもりでいる。何せ、このお母様は俺を愛情を持って此処まで育ててくれたからだ。

 

「いってきまーす!!」

 

俺は笑顔で手を振り見送ってくれるお母様に元気よく返事を返し家から飛び出した。

 

 

 

元の世界の母親はガキの頃から殆ど家には居なかった。俺のことは放置プレイ。家にはカップラーメンが詰まった段ボールが数十個積んであり、好きな物を食えという感じだった。

んでもって、本人は若いツバメの元へといそいそと出かけていくのだ。マジで死ねばいいのに。

 

そして親父。うちの親父も接待だのなんだの言ってはいるが、不倫しているのがヴァレヴァレだね。ワイシャツに口紅の後や香水の匂い。さらには、キスマーク。隠す気があったのだろうか?はたはた疑問ではある。

 

互いに好きなことをやり放題。まぁ、どちらも気づいてて知らん振りしてたんだろう。離婚をしなかったのが不思議なくらいだが、きっとそれもメンドクサイとか碌でもない理由なのだろう。あんな親だし。

 

……今思うと、よくグレなかったな俺。

 

そんな事を考えながら歩いていると……

 

「!?痛っ!?」

 

バイィーンと何かにぶつかり弾き飛ばされた。

 

弾かれた拍子に尻もちをついてしまい、尻が痛い。

 

一体なんだと尻を摩りながら立ち上がってみると…

 

「……何もない?」

 

そう目の前にはただただ草原が続いているだけで何もない。

 

だが、確かに何かに弾かれたのだ。

 

恐る恐る指を伸ばし、ツンツンしてみる。

 

指先にはブニブニっとした感触。

 

間違いない、何かある。

 

見えない、透明な…それで居て弾力のある壁みたいなのが…

 

脇道にそれて先に進もうにも、同様に壁に阻まれる。

 

何が何だか分からないが、小癪な…我が自由への道を阻むか!

 

妙な感じでテンションが上がっている俺は、意地でも突破してやろうと。地面に落ちていた手頃の石を思い切り投げ!万が一弾きかえってきた場合に備えて、即地面に伏せるが…予想に反して…

 

「あれ?」

 

石は壁など無かったかの様にすっ飛んで行き、壁の向こう側に落ちた。

 

ぺたぺたと触ってみれば、やはり壁の感触がする。

 

石には反応しないのだろうか?

 

試しに先ほどよりも大きい、石を手に持って、壁に向かって打ちすえてみるが…

 

「のわっ!?」

 

やはり弾かれる。

 

どうやらこの壁は俺に反応しているみたいだ。

 

ならば!

 

「道具なんぞに頼らず、この身一つで突破してやろうではないか!」

 

何度も突貫しては弾かれる。

 

いつもならとっくに諦めるのだが、三回目位から小さな罅が入る音が聞こえたのだ。

 

可能性は0じゃないと思うと、まぁ、人間てのは頑張れる物で…

 

「ふーっ、ふーっ」

 

砂埃だらけで服は汚れてしまっているが、もうちょっとだ…。

 

罅が入る音がだんだん大きくなって行くのが聞こえる。

 

だが、その前にそろそろ休憩を入れたいと思う。

 

もう、喉がカラカラだ。

 

 

近くにあった綺麗な小川で水を飲もうと、しゃがみ込み…そこで水面に顔が映る。

 

そう、瞳が赤く染まった俺の顔が……

 

 

「……な、なんじゃこりゃーー!!」

 

元々の俺…クランの瞳は赤みがった茶色だったはず。しかし、今の俺の瞳は真赤…いや、正確に言えば緋色。

 

白目なら充血してると判断して、そんなに騒ぐ事はない無いとは思うが、瞳となると絶対にヤバイ。瞳の色が変わる病気で思い浮かぶのは、白内障しかり、緑内障しかり…ほっとけば失明に至る眼病だ。

 

ドンドン血の気が引いていく、第二の人生でいきなり失明なんて冗談じゃない!

 

とりあえず医者だ!!まだ間に合う!!こういうのは初期治療は大事なはずだ!

 

俺はお母様に病状を訴え、医者に行こうと急いで来た道を駆けだした。

 

 

 

家に帰って、泣き喚きながらお母様に病状を訴えるが…

 

「それなら心配することはないわよ」

 

女神のような微笑みで、俺の頭を撫でながら優しい声色で告げる。

 

「私たちの一族はね、興奮したりすると瞳の色が緋色に変色するのよ。だからこれは生まれ持っての体質。心配することはないわ」

 

なぁんだ。そうだったのか…HAHAHA!取り乱したりして、俺って奴は…てへっ!?

って、待てぇぇいい!!なんかどっかで聞き覚えのある設定なんですけども…

 

「ね、ねぇ、お母様。僕たちの一族って……何て言う一族?」

 

俺の問いに対する答えで、俺の疑惑は確信をもった。

 

何故なら、返ってきた答えは記憶の中にある。とある漫画の悲劇の一族の名前だったから。

 

その名前は……

 

「クルタ族よ」

 

緋色の瞳×クルタ族×ハンターハンターかよ!!

 

よりにもよってH×Hの世界だと!?

 

あの死が隣り合わせの危ない世界に転生してしまわれた…と、そういうことですか神様ぁ!

 

しかも、あのチート的強さの盗賊団、幻影旅団に狙われるクルタ族の人間かぁ…一族絶望フラグ……あっはっは♪終わったな俺の第二の人生!!

 

 

その後、元気のない俺を心配するお母様だったが、俺は「大丈夫!遊びに行ってくるね!」とカラ元気を見せ、家から飛び出した。

 

そして、先ほどの見えない壁まで続く道を、とぼとぼ歩きながら考えを巡らせる。

 

ちくしょ…せめて大人になって、お母様譲りのこの容姿で女の子とエッチな事を思う存分やりたかった。

 

もう、死ぬ前に目の前の美人のお母様を押し倒してしまおうか?でもなぁ、今のこの身体じゃ。そんな腕力も無いしなぁ。

 

っと、そこでハタと気がついた。

 

幻影旅団が襲ってくるのは何時なんだろうと…

 

現時点でクルタ族である俺やお母様が生存している事から、未来の出来事なんだろうが……

 

仮に…もし仮にだ、今から十年後とか、二十年後とかだったら?

 

俺は大人に成長し、念願の女の子との色々な事が出来てしまう…

 

いや、運がよければ俺が生きているうちの出来事ではないかもしれない。

 

天寿を全うできる可能性もある訳だ!

 

いいぞ、希望が出てきた。

 

となると、幻影旅団が何時頃攻めてくるまでにどの程度の猶予があるかを調べなければ、ライフプランも立てようがない。

 

正直、H×Hの時系列…ましてや原作以前なんて殆ど知らない……だが、ひとつだけ確定事項がある。

 

それはクラピカの存在。

 

H×Hの内容を思いだすと、旅団に襲われたのはクラピカが10~12歳位だった頃の話だったと思った。まぁ、俺の勝手な想像かもしれないがそんなに前後はしないはずだ。

 

仮にクラピカが生まれていなかった場合は、生まれるまでの年月+10年位までは旅団は襲ってこない…。

 

一筋の光明が見えた。

 

クラピカが居るのかどうかを確認せねば!

 

クルタ族は閉鎖的な土地で生きてきた少数の民族。この近くに他のクルタ族の人間が居るはずだ。

 

よし、そうと決まったら、あの忌々しい壁を突破し、虱潰しに探し回ってみよう。

 

願わくば、クラピカよ…生まれているなよ!!

 

 


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