ぺディグリーすかーれっと   作:葉虎

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人生はままならないものなのさ


第18話

 

グリードアイランドから無事、出てきた俺は。

 

二回目のハンター試験を受けていた。

 

またペーパーテストだったらどうしよう…。

 

そんな戦々恐々としていると一次試験が始まる……。

 

今回の一次試験は体力測定染みた試験。成績が良い順から上位100名が抜けられる。

 

その試験にホッとしつつ、俺は楽々突破した。

 

そして二次試験である。

 

「二次試験の内容を説明する。まず、くじを引き二人一組になって貰う。そして、目の前にある森の中で一週間サバイバルをしてもらう。その間、こちらが指定した魔獣を狩って貰う。指定する魔獣には何らかの材料の素材が取れるのでそれを取ってくる事。後、ペアが一人でも欠けたら失格だ。あぁ、そうそう一応リタイアも出来るぞ。その時はそのペアも自動的に失格となるが…」

 

2人一組かぁ……。女の子が良いなぁ。

 

「ちょ、ちょっと待てよ!!なんでペアなんだよ?そいつが使えなかったら俺まで失格になるじゃねーか!」

 

試験官の質問に一人の男が食って掛かる…

 

「ハンターとなって仕事をする際には、チームを組む事もある。当然、人それぞれ能力、性格が違う。だが、一緒に仕事をし、成功させる以上…即席チームでチームワークが求められることがあるんだ。これはそれを見るための試験だ。」

 

ほうほう…。

 

つまりはコミュ力も試されるという訳ですな……。

 

……あれ?欠片も自信がないんだが…

 

 

「………」

 

「何を見ているんだね?そうか、君も僕の美貌に見とれてしまっているのだね?だがすまない。いくら恋多き僕でも…男は守備範囲外なんだ……」

 

……なんてくじ運が無いんだ俺……。変なのと組んでしまった。

 

此れでイケメンならまだ許せる。だが…

 

「どうしたんだね?」

 

別にイケメンという訳では無い。不細工という訳でもないんだが……。まあいい…一週間の辛抱だ。

 

「俺の名前はセタンタ。宜しく」

 

取りなえず名乗る。偽名だが……。

 

俺は前世から偽名が使えるならば偽名で名前を書くことが多かった。つか、殆どそうだった。

 

カラオケしかり、レストランしかり…

 

なんか本名を見知らぬ人間に知られるのが…嫌だったからだ。

 

なので、ハンター試験でも偽名を使っている。

 

偽名の由来は、クラン→クランの猛犬→セタンタだ。蒼い槍兵の兄貴の名前を借りた。

 

「そうか…僕の名前はジョルジュという。」

 

簡単に自己紹介を済ませ…俺達は森へと入って行くのだった。

 

「さて…早速だけどこれからどうする?」

 

「何にしてもまずはサバイバルだ。水、食料の確保が最優先だろう」

 

ふむ、その意見には賛成だ。

 

最も【強欲な小学生の巾着袋(ジャイアニズムポーチ!)】の中にストックはあるから俺にはその必要がないんだが……。

 

まぁいい、付き合おう。

 

「では手分けして探すとしよう。」

 

「……いや、それは危険じゃないか?まだこの森にはどんな生物が居るか分からない。」

 

俺は念が使えるから大丈夫だが…ジョルジュ…君の身が。

 

「なんだ?セタンタは臆病者だな。ならば僕が一人で探してくるからそこで待っているといい。」

 

「……は?いや、ちょ…待っ」

 

ガサガサと森を掻き分けて行ってしまう。

 

後を追う事も考えたが、あそこまで自信満々に言い切るんだ。大丈夫だろう。

 

それでも不安なので円を展開してみる。

 

今の俺の円は最大300メートルまで行ける。

 

けど…

 

「……拙いな」

 

どれがジョルジュか分からない。

 

ちらほらと他の受験生の動きは感じるが識別する方法がないのだ。

 

進行方向上に居るかと思えば、居ないし…どうやら道を逸れたらしい。

 

「此処で俺まで動いたら…合流できなくなりそうだな」

 

取りあえずこの場で待機する事にし、ジョルジュが来るのを待った…。

 

そして待つことしばし…

 

誰かがこちらに向かってきている。

 

恐らくはジョルジュ。ふぅ無事だったか…

 

「おかえりジョルジュ…無事だった……か?」

 

だが、出てきたのはグラサン、黒いスーツの男。

 

嫌な予感がする…。

 

「受験番号263番のセタンタさん、受験番号313のジョルジュさんがリタイアを申告したため、失格とします」

 

……What?

 

…………え?

 

……え?

 

な、何してくれてるのジョルジュぇ!

 

無理そうならそう言えよ。この野郎。

 

まだ始まってからなにもしてねーぞ。

 

俺らリタイア一番乗りなんじゃねーの……。

 

こうして…

 

俺の二回目のハンター試験は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

癒されよう。

 

あれから俺は試験のショックを引きずりつつも、なんとかグリードアイランドに戻ってきた。

 

外に出てしまったのでカードはすべて消えてしまったため、面倒だがモンスターを倒し、多少のお金を得てスペルカードを買い。

 

「磁力オン…オリバー!」

 

磁力を使用する。だが…

 

「……対象のプレイヤーが存在しません。磁力は破棄されます」

 

……なんだって?

 

慌てて、名簿を使用してみる。

 

オリバー ●

 

「……ナニィイイ!?」

 

なんだ?なにがあったんだオリバぁーーー。

 

あ、他の同士は居る。何か知ってるかも。

 

でも、磁力はもうない……。

 

あ、でも…

 

「交信オン…サクラバ」

 

別に直接会う必要はない。話すだけで十分。

 

しかし、サクラバに話を聞くも知らないという。

 

他の同士も知らないらしく、むしろ逆に聞かれた。

 

なんでも、俺も同時期に外に出ていたので二人して何かあったのだと心配していたらしい。

 

礼を述べて、交信を終了する。

 

「何があったんだ…オリバー」

 

せめて、生きて外に出たんならいいんだが…。

 

 

それから、俺はオリバーという友を失った悲しさを埋めるように…

 

アイアイで遊んだ。

 

女の子と遊んでは、空いた時間で念の修行をする毎日。

 

瞬く間に時間と攻略した女の子のカードは溜まって行き……。

 

気が付けば、一年が過ぎ……、ハンター試験の試験日も過ぎてしまい……。

 

その甲斐あってか、十枚コンプリートを果たし、宿屋のお姉さんのムフフなイベントも堪能したが…

 

どこか…悲しかった。

 

ヤルこともやったので、外に出て今度こそハンター試験を受けようとも思ったが…。

 

申し込みをしておらず、その年の試験は受けられず……。

 

 

 

 

「……どうしてこうなった」

 

避けようと思っていた原作のハンター試験を受ける羽目になってしまった。

 

何故分かるかって?だって、視線を感じるんだ。

 

居るんだよ。

 

あの変態ピエロが…。

 

あとカタカタいってる人も居るし…

 

そんな中…

 

「失礼します…お久しぶりですね」

 

声を掛けられた。

 

その透き通るような声の持ち主を確認して息を飲む。

 

綺麗な黒髪ロング。

 

和服越しでも分かる豊満な乳房。

 

透き通るような白い肌。

 

折れるかと思うような細い腰。

 

そして意思を感じさせるような切れ長の瞳…

 

そんな美貌を持つ女性は笑みを浮かべてそこに立っていた。

 

誰かに…似ている。

 

それも気になったが、もうひとつ気になった。

 

眼が笑っていない。

 

「ちっとも連絡がつかず。消息も知れず……。とある目的の為、ハンター試験を受験をし、ついでにあなたの情報も集めてみようと思っていたのですが…よもや…こんな場所で何をやっているのでしょう?まさか…まだ受かっていなかったとか?

……なるほど、聞きしに勝るハンター試験……あなた程の実力者が落ち続けるとはよっぽどの難関なのでしょう。まぁ、それはよいです。こうして会えたのですから僥倖とも言えます。」

 

な、何だろう。

 

何でこの女性は殺気立っているのだろう。

 

そしてその殺気に反応し、どこぞの変態がトランプを投げつけてくるが…女性は事もなげに、手に持った日本刀でそれを細切れにする。

 

そして何事も無かったのように…

 

「……携帯電話はどうしましたか?」

 

そんな質問を俺に投げかけてくる。

 

へ?携帯……そういえば…

 

最初にグリードアイランドに入る際に、

【強欲な小学生の巾着袋(ジャイアニズムポーチ!)】に仕舞っておいた携帯電話。

 

別段、使用する機会がないのでそのまま忘れていた。

 

それを巾着袋から取り出すのを見るやいなや

 

ヒュンっと風切音がする…

 

「ーーっ!?」

 

「……紙一重ですか。鈍ったんじゃありませんか?」

 

……避けた。避けたはいいが……何故斬りかかってくる?

 

「いきなり何を…」

 

「何をですか…いいえ、この数年。連絡が付かずに心配していたいたいけな少女を思えば……思わず斬りかかっても仕方がないもの。ましてや、その相手が腑抜けになっているとは……殺しても良いと思いません?」

 

ふふふ…と笑みを浮かべる女性。

 

相変わらず目は笑っていない。

 

そして…

 

膨れ上がっていく殺気。

 

それに呼応するかのように別方向からも禍々しいオーラを感じるが…それは後回しだ。

 

「お、おい…」

 

先ほどとは違い、日本刀に周を行っている時点で女性の真剣さが伺える。

 

ん?なんかパズルのピースが…

 

和服の黒髪美人。

 

携帯電話…

 

日本刀に……周。

 

………あぁ、もしかして

 

「……オウカ?」

 

「何故疑問形なのかはさておき、そうですよ。ひょっとして今、気づいたんですか?」

 

あぁ、やっぱりそうなのか…

 

考えてみれば、俺の電話の番号知ってるのってオウカ位だし……。

 

……あれ?泣きたくなってきた

 

「ちょ、ちょっ…私に会えたのが嬉しいのは分かりますが何も泣くことは…」

 

不覚にも涙を流したらしい俺に狼狽するオウカ。

 

殺気と共にオーラも四散し…

 

「はぁ……わかりました。許してあげますから。まったく、こんなにヘタレに成り下がっているとは…」

 

はぁ…とため息と共にそう漏らしたのだった。




主人公暗黒時代。

主人公がどんどん屑みたいな人間に……。

それを更生させるのがヒロインの愛の力なのさ!(此処、エコーお願いします)

さて、果たして主人公は真人間になれるのか?

そして、お決まりのこのセリフを言わせて頂こう。

合格?させねぇよ…

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