ぺディグリーすかーれっと   作:葉虎

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第4話

スッとそのまま気配を消し……

 

そろり…そろりと近づく。

 

射程内に獲物が入った瞬間に地を蹴る。

 

そして……

 

「兎ちゃんゲット~~」

 

草むらに隠れていた野兎チャンをとっ捕まえた。

 

 

絶の修行を初めて早一年。

 

ようやく絶を習得することができた。

 

と言うのも、お母様のお使いで家の裏にある森の中で食材を探すようになり、肉を習得するため野生の動物と追いかけっこをしているうちに、気がついたら使えるようになっていた訳だが…

 

「ふっ、これも愛のなせる業か…」

 

愛しいお母様の頼みだ、果たさない訳にはいかない。

 

もう俺はお母様にメロメロだ。あの人が言うなら神だって殺せそうだ。

 

今日の兎の耳を獲ったどー。状態でがっしり掴んで意気揚々と帰路に着いた。

 

 

纏、絶、練。念の初歩である四大行を収めてきた訳ですけれども、残すところは最後の一つ。

 

夕食後、俺はお母様の前の前に正座で座っていた。

 

目の前には水の入ったグラス。水面に葉っぱを浮かべて…

 

「では、これより発の修練に入ります」

 

とのお母様の凛々しい声の元、行われるのはあの水見式である。

 

うっわ、マジ緊張する。とうとうこの時が来ちゃったよ!!

 

自分の系統が分かっちゃうわけだよ。

 

個人的には操作系希望!何が何でも操作系!!理由?んなもん女の子にいけないことし放題ヤホー!!に決まってるやんけ!

 

従順な子にするように操作したり、ツンデレ風に操作したり……

 

ブラボー、操作系ブラボー!!

 

っと、落ち着け~落ち着くんだ俺。

 

深呼吸をし、気分を落ち着かせる。

 

「では、クラン。グラスの脇に両手をかざして練を行いなさい」

 

うっし、んじゃやりますか…。

 

「はぁあああ!!」

 

掛け声とともに練を行う…

 

操作系の証は、水に浮かんでいる葉っぱが動く。

 

なので…

 

葉っぱ動けー!葉っぱ動けー!!

 

そう念じながら、ひたすら水に浮かんでる葉っぱを凝視する。

 

 

……水の量、変化なし。強化系セーフ。

 

……水の色、変化なし。放出系もセーフ。

 

……不純物、現れず。具現化系もセーフ。

 

……葉っぱ、動かず!!って、えぇ!!そ、操作系のゆ、夢が……。いや、まだだ、まだ終わらんよ。

 

「クラン、練を止めて水を舐めて…「いえ、お母様!まだです!まだ練が足りません!!」…そ、そうですか…」

 

俺の必死具合に若干戸惑いを見せるお母様を横目に、俺は一層気合いを入れるが…

 

やはり、葉っぱは動かず……。

 

お、終わった。俺の操作系……。

 

俺は絶望感に浸りながらも、お母様に言われて水を舐めてみるが…

 

この味、知ってる……

 

カル○スだ!!

 

しかも、気合いを入れまくって練を行ったためか水で薄めていない状態の。

 

懐かしいなぁ…後で薄めて飲もうかな……。

 

しばしカルピスに感激し、先の絶望感を忘れかけていた処で…

 

「水の味が変わるのは変化系の証です。ふふ、クランは私と同じ変化系ですね」

 

お母様に残酷な現実を突きつけられた。

 

そして、六角形を書きながら各系統についての説明を行っていく。お母様。

 

変化系のところに100と書いて、それぞれ隣り合う強化系と具現化系の所に80、放出系の所に60、特質系に0と書いていき、変化系から最も遠い位置にある、俺が望んでいた操作系の所に40と最後に加えた。この数値は自分が属する系統と他の系統の習得度の割合を数値化したものである。

 

はぁ、よりによって一番遠い変化系かよ。

 

放出系あたりなら80はイケるから、放出そっちのけで操作系の修行も出来たんだろうが…40じゃなぁ。

 

人間どころか生物すら操作するのも難しそうだ。精々、無機物を動かすくらいだろう。

 

っと、いかん。落ち込むのは後にして説明を聞かないと。

 

とはいえ、説明の内容は原作にある知識と似たような物。ようするに変化系を中心に相性のいい、具現化、強化系に属するような能力を考えなさいってな訳だ。

 

続いて制約と誓約の説明を受ける。まぁ、ようするに使用時に自分でルールを決めてそのルールが厳しかったり、破った場合の罰が重ければ重いほど、強くなるよ。っていう説明だ。

 

んで、ひとしきり説明を終えると…お母様は俺にこのまま座して待つように告げ、カ○ピス味の水が入ったグラスを持って部屋を出て行く。

 

はて?なんじゃろか。つか、それ捨てちゃうの!?後で飲もうと思ったのに……まぁ、後でまた作ればいいか…

 

とまぁ、そんな事を考えながらも黙ってお母様の帰りを待つ。

 

お母様はさほど時間をかけず、直に戻ってきた。

 

手には、先ほどと同じく水見式で使った葉っぱを浮かべた水が入ったグラス。そして、脇には木でできた籠のようなものを抱えていた。

 

お母様は俺の体面に座って水を置き…

 

「発の修行の前に…クラン、あなたに話さねばならないことがあります。」

 

「はい、なんでしょうか?」

 

籠からガサゴソと物音が聞こえるのが、凄く気になる。

 

「ですが、その前に…クラン。あなたにはもう一度、水見式をやってもらいます。正し…」

 

お母様が籠の中を開けて、中身を取り出す。その中に入っていたのは……

 

「ひっ!?」

 

チロチロと長い舌、ウネウネと気持ち悪い身体に目つきの悪い目。

 

俺がこの世で最も嫌いな生物である…

 

「へ、蛇!!」

 

声を上げると共にズザザッと距離を取る。

 

お母様は、俺の反応を見てから蛇を再び籠に仕舞うと…

 

「クラン!今の状態で水見式を行いなさい!」

 

と、俺に急かした。

 

何が何だか分からないまま、意識の7割を蛇の入った籠に向けつつ練を行う。

 

すると…なんという事でしょう!

 

先ほど、あれだけやっても動かなかった葉っぱがクルクルと動き始めた。

 

いや、変化はそれだけでなく、水の色は白くなり、シュワワっと泡が発生し、グラスからはドバドバと白く、泡が入った水が溢れ出したではないか!

 

「一体、何がどうなって…」

 

「クラン」

 

困惑気味にお母様に問いかければ、お母様は懐から手鏡を取り出し、俺の姿を写す。

 

うぅ~ん、お母様譲りの中々の美形じゃて…って、ちゃうわ!

 

着眼点は其処ではなく、俺の瞳の色である。

 

そう、俺の瞳は見事な緋色に染まっていた。

 

 

 

瞳の色が落ち着き、水見式の後始末をして再びお母様と対峙する。

 

「クラン、これから話す事は私達クルタ族が持つ緋の眼の秘密についてです」

 

そう言ってから話始めたお母様の話は、俺の想像を遥かに超えていた。

 

 

緋の眼……発動時の眼球は七大美色の1つに数えられており、鑑賞品としての価値があるため、闇市場において高値で売買されている。これは原作にでも触れられていた部分だが、それはあくまで表向きの話。

真の価値は、原作でクラピカがウボォーギン相手に披露したあの能力。

 

絶対時間【エンペラータイム】全ての系統の力を100引き出せる。という能力にあった。

 

これはクラピカのみならず、クルタ族は緋の眼発動時に特質系となり、この能力が発動するらしい。

 

ゆえに……クルタ族はあらゆる念の研究機関から狙われているそうだ。

 

通常1系統しか極められないとされ、自らの才能に左右される念の系統がだ、その全ての系統を極められるとしたら?そのメカニズムを解明しようとするのは当然だろう。

 

そう言った者たちから逃れるために、クルタ族は集落を作り隠れ住んで居るのだという。

 

説明が終わり、お母様が

 

「あなたの能力は自分自身で見つけなさい。自分の身を守れるように…」

 

との言葉で締めくくった。

 

 

 

そして、その夜は当然寝られる訳もなく、俺は寝床で今後について考える。

 

ちょっ、ちょっっと待ってくださいよ!

 

幻影旅団を退けたとしても……念の研究者だって!?

 

捕まったらきっとホルマリン漬けに……いやいや冗談じゃない!

 

絶対にバレないようにせねば!

 

って、そもそも目下最大の懸念である旅団の皆さんを何とかしなければ元も子も無いじゃん!

 

最近、念に夢中ですっかり忘れてたけど……一刻も早くクラピカの情報を収集し、生存対策を練らないと。

 

最悪の場合は、生存確定のクラピカと一緒にいれば生き残れるんじゃね?とも考えたが、仮にクラピカ一人しか生き残れない方法だった場合は即座にアウトだし……。そもそも、お母様を残して自分だけ生き残る位なら、自爆テロ敢行して即座に後を追うがね。

 

でもなぁ、自分一人だけならまだしもお母様も一緒となると難易度は段違いに高くなる。

旅団の襲撃を確定事項と捕えている俺は、先手が取れるし、準備もできるが。お母様になんと説明したもんだろう。っとなる訳だ。

 

つーか、お母様なら自らを盾に俺を逃がす。位の事はしそうだ。まぁ、だからこそ俺はお母様が大好きなんだけどな。

 

一番のハッピーエンドは旅団を逆に壊滅させるって事だ。後顧の憂いも少なくなるし、だけど…絶対に無理。俺がどんなイカス発を考えたとしても、団員は複数いるしなぁ。

 

それこそ、発動終了時に死ぬ。位の制約を念に付与する必要がある。

 

ま、いい面もあったけどな。

 

緋の眼がもたらす恩恵。全部の系統の力を100%引き出せる。

 

そう、全部の系統のだ。もちろん操作系も!!

 

ふっ、天運は我にあり!!

 

それが唯一の励みとなる。旅団を退けた暁には念でエロいことし放題というご褒美が待っているのだ。

 

辛い事は忘れ、ウハウハの未来に着いて思いを馳せつつ、俺は眠りへと落ちて行った。

 

 

 

翌日から、四大行をマスターした俺の鍛錬は若干変化した。

 

まず、凝の応用技である流を用いた組み手。原作でゴンとキルアがやってたやつ。相手はお母様。

 

ビスケが行っていた修行方法をそのままパクリ、相手をお母様にお願いした。お母様は効率がいい修行法ですねと褒めてくれたが、パクリであるため内心複雑である。まぁ、頭を撫でて貰えたからいいや。

 

流は念を使う上で非常に大事なオーラ配分の技術だし、頑張って技術を磨かないといけない。今んとこ、滅茶苦茶アバウトだがね。だって、何パーセントを右足にとか…測定器もないのにそんなん感覚で行うしかないし。

 

んで、次に周…これは家の手伝いで斧ではなく包丁を借りて、薪割りを行うという修行法を思いついた。包丁でスッパスッパと薪が割れるのはかなり気分がいいが、調子に乗って何度かぶっ倒れては、お母様に無理をするなと怒られた。

 

あと系統別の修行も行っている。これもビスケのやっていた事をパクリ、オーラを変化させて数字を作ったり、石割りをしたり、変化系、強化系の系統の修行をしている。具現化系については、クラピカみたいにイメージ修行を行うべきなのだが、生憎と何を具現化させるか決めていない為、そこから考える事にした。

 

ビスケの言っていた通りに、一日一系統。変→強→変→具→変のローテーションで行っている。

 

そして最後、一日の最後には練を持続させるという応用技。防御の要である堅の時間を伸ばすという修行を行っている。

 

これは寝る直前に、ぶっ倒れるまで練を続けるという何とも身体に悪そうな鍛錬をしていたりする。

 

 

こんな感じで日々、メキメキと俺の力が向上していくのを手ごたえとして感じ、苦しいがとても楽しく、充実した毎日を送っているが………あれ?

 

なんか、忘れてるような……


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