ぺディグリーすかーれっと   作:葉虎

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前言い訳

スランプ時に書いたからちょっとおかしい所があるかも。

正直、妥協した。

拘ると気晴らしに書いてるのに止まっちゃうから。

とりあえずやりたい様に突っ走る。

プロットなんてものはない。




第7話

俺は甘く見ていた……。

 

【幸福の青い鳥の鳥籠(ハピネスアレスト)】の能力を。

 

ただ、結界を作るだけじゃない。その能力の真骨頂は、お母様が緋の眼を発動した時に発揮された。

 

まず、変化形に属するこの能力は通常時ならば、お母様の手から離れた時点で徐々に劣化していく。

 

オーラを手元から切り離すのは放出系に該当する能力だからだ。

 

しかし、緋の眼発動時に作成した結界はその限りではなく、維持し続ける事が可能である。

 

それだけならまだいい。問題はここから…、真骨頂は操作系と特質系の能力にあった。

 

緋の眼発動時、お母様はその両系統の能力で応用することで結界の中の環境を好き勝手に操作できるのだ。

 

正確には【幸福の青い鳥の鳥籠】とは別の能力で、

 

【鳥籠の幸福空間(ケージオブエンヴァイロメント)】という能力らしい。

 

つまり、どういうことかというと…

 

「お、重い……苦しい……、し、死ぬ…」

 

結界内の空気の量、重力を操作。そして四次元空間に。

 

さらには時間操作。こっちの中と外の時間の流れが異なり、こっちの1日は外では1時間。

 

その結果、これ何て精神と時の部屋?の完成である。

 

制約として、結界内にいる人間全員が操作する環境の内容に同意しないといけないので、戦闘では使えないのだが…。

 

 

つか、何で俺はこんな過酷な訓練をしているのだろうか?

 

 

事の起こりは数日前の事である。

 

 

 

旅団に対する死亡フラグに対して、俺の取った方針は、戦闘ではなく逃走である。

 

その為の第一歩として、外の世界でグリードアイランドをパクって来ようと考え、

体調が回復したお母様に外出の許可を願い出たのだが…。

 

にっこり、見惚れるほどの綺麗な笑顔で…却下された。

 

切々と外の世界がいかに危険か…ましてや緋の眼を持っている俺らにとっては、なおさら危険な事を語られた。

 

しかしだ。この男クラン。如何に美女に弱く、お母様の頼みなら二つ返事で聞き届けてしまうほどの愛情を持ってしても、その頼みだけは聞くことはできない。

 

何故ならば、お母様自身の命に関わるのだから…ついでに俺も。

 

……あれ?優先順位逆じゃね?ま、まぁともかくだ。そんな理由で食い下がった。

 

何時もなら素直にいう事を聞くのに珍しくも我儘を引っ込めない俺に驚いていたものの、かと言って一人息子を外に出すことを許容できるはずもなく。

 

お母様自身は外に出る気はない。

 

結果、平行線である。

 

 

このままでは分が悪いと感じ、正直気乗りはしなかったが、夜遅く俺はこっそりと家を出て、一人旅立つことにした。

 

お母様は怒るだろうか?それとも泣いてしまうのだろうか?

 

後ろ暗い気持ちになったが、此処は心を鬼にする。

 

死亡フラグさえ折ってしまえば、後は何でもいう事を聞くし、好きなだけ怒られるつもりだ。

 

そうして、意気揚々と、現在位置も分からず、適当に同じ方向に走れば、道に出て道に沿えば町に着くだろうと、甘い考えで駆け出そうとした所で……。

 

お馴染みの結界にバィイインと弾かれた。

 

だが、此処で諦める訳には行かない。

 

念は使用者の心の機微に左右されることがある。

 

今までにないほどの決意を固めた俺の念は、火事場の馬鹿力と言うべき力を発揮し、

 

俺のオーラを集中し、硬で強化した俺の拳は結界を突き破った。

 

肩で荒くする呼吸を整えつつ、いざ出発しようとした所で…

 

「こんな遅くに何処へ行くのですか?」

 

凛とした、よく通る聞き覚えのある声が耳に届いた。

 

ギギギっと首を動かし、声の発信源たる背後を振り向けば。

 

綺麗な微笑み…しかし眼だけは笑っていないお母様の姿が……。

 

ってか、眼が緋色になっているんですが?

 

「な、なんで…」

 

「私の結界は円の役割も果たします。触れたものが居れば把握できますよ。」

 

ましてや、あんな強引に結界を破ればなおさら…との事。

 

ま、マジか……。

 

だ、だが、諦める訳には行かない。まだ大丈夫だと、逃げようとするが無慈悲にも…

 

【幸福の青い鳥の鳥籠】

 

俺が渾身の力で突破した結界を再度作成されて…。

 

「さて、クラン。話があるので付いてきなさい。」

 

お母様の柔らかい掌が俺の手を掴み、そのままズルズルと引きずられるように家まで連行された。

 

俺の見通しは甘かった。そして悟った。

 

お母様からは逃げられない。

 

そして始まるお説教。ブリザードのような冷気を感じつつも、俺は素直にそれを受ける。

 

黙って行こうとした事は確かに俺に非があるからだ。

 

だけど…

 

「…それでも……俺は外に行きたい」

 

此れだけは譲るわけには行かない。

 

そんな俺の態度にお母様は一つ溜息を吐くと…条件を満たせば外の世界に出ても良いと許可をくれた。

 

その条件とは、お母様を倒す事である。

 

「外に出ても問題ないように強くなりなさい」

 

そんな約束を交わしたのだった。

 

 

当然、現状では勝てる見込みなどは無く。お母様が修行を付けてくれる事になり…

 

その結果、以前よりもはるかに厳しさが増して…

 

「現状に至る……っと」

 

つまりは自業自得…。

 

現在は週に三回。実戦訓練と称し、修行前にお母様との模擬戦がありそこでお母様に勝つことが出来れば俺は外に出られる訳なのだが…。

 

「遠い……な」

 

正直、話にならないレベルである。

 

お母様強すぎ。

 

現状、お母様との戦闘は殆ど体術のみで行っているのだが、何をやっても無効化される。

 

お母様の戦闘スタイルは相手の力を利用し、受け流したのちのカウンターだ。

 

カウンターも拳というより手の掌を利用した内部浸透系の攻撃。

 

ほぼそれで毎回やられる。

 

だが、俺も進歩していない訳じゃない。

 

お母様から体術を学び、そしてこの過酷な環境での修行と念の向上。

 

その結果、最初は一瞬で一発カウンターで伸されていたのに、今では少しは持続するようになった。

 

って言っても、こっちの攻撃は相変わらず通らないんだけど…。

 

やはり発を開発するしかないのか?……いや、駄目だそれでは後悔する。

 

正直、俺は戦闘系の能力など欲していない。

 

死亡フラグを折ってしまえば、後はハンターライセンスでも売って、のんびりとニート生活を送る予定だ。

 

その際には彼女が欲しい。

 

そう、俺の能力はそういう生活面での補助関連で作るべきなのだ。

 

断じて、戦う為ではない。

 

確かに死んだら元も子もないかもしれん。

 

だが、それでも此処で安易に発に頼るわけには……行かないのだ。

 

大丈夫だ。俺は変化系……隣り合う強化系の能力を駆使すればどうにかなる。

 

だって、相手も変化系で戦闘用の発じゃないんだもの。此れならなんとかなる……はずだ。

 

それにこの訓練だってそう。

 

当初、お母様は結界を作る時に空気だけ薄くして心肺機能を鍛えようとした。

 

その説明を受けた時に俺は、前世の漫画知識から精神と時の部屋を思いつき、重力の操作と空間の操作と時間の操作を付け加えた。

 

んで、出来上がったのがこの精神と時の部屋もどきだ。

 

時間操作を加える際、お母様は良い顔しなかったが、学校へもきちんと通う事を条件に渋々追加してくれた。

 

つか、時間操作は必須だ。何故なら俺に残された時間は少ない。

 

つまるところ、現在のこの状況は自業自得と言っていいだろう。

 

重力はまだ精々1.5倍程度なのだがそれでも辛い。

 

100倍?無理。あいつら人間じゃねーよ。あ、サイヤ人…って宇宙人でしたね~。

 

そんな事を考えつつ、今日のノルマを消化したので、結界から出る事にする。

 

この結界から出る際にの正しい手順は、お母様が設定した出口から普通に出ることが出来る。

 

凝を使えば結界の一部分のオーラの色が違って見えて、其処が出口。

 

因みに出口を設定しないっていう事も可能らしい。

 

弱い念能力者ならばそれで閉じ込める事も可能。幼少の頃の俺のようにね。

 

 

話を元に戻す。そんなこんなで、修行を続けていたのだが…流石、漫画の世界と言えばいいのか、恐らく才能なんてないであろう俺でさえ驚異的なスピードで進歩しつつある。

 

そしてその力量差に唖然とした。

 

今までは気が付かなかった。

 

別にお母様はオーラを隠してなどおらず自然としてそこにある。

 

だが、修行の成果で徐々に強くなっているせいか感じ取れるようになったのだ。

 

お母様の保有する莫大なオーラの量を。

 

俺の基準は自分を始め、学校に行く途中の道すがらで見かけた人達なんだが、その人達のオーラの量に比べて、俺のオーラの方が格段にあった為、若干の優越感に浸っていたのだが…

 

お母様は次元が違った。

 

 

これなら、お母様なら旅団を返り討ちに出来るんじゃないだろうか?とも思ったが、旅団の人間も…まさかとは思うがお母様と同等…あるいはそれ以上のオーラを持っていたりするのだろうか?

 

会った事は当然ながらないため、判断に苦しむが…もしそうだった場合、俺は一目散に逃げる。

 

それほどまでに違う。

 

オーラの量が全てという訳では無いが…突き詰めれば小手先の技術よりもパワーである。

 

長年念の研鑚を続けてきた…技術なら世界最高峰のネテロ会長が、生まれて一年もたたない蟻の王に負けたように。

 

当然の如く俺は惨敗した。

 

 

 

翌日、修行の疲れが取れないまま、俺は学校へと歩いていた。

 

「あ、おはよう!クラン!!」

 

そんなよろよろな俺にバシンっと後ろから背中を叩いてきたのは…

 

「…おはよう…って、相変わらずガサツな女だな」

 

しかも手に凝使ってなかったか?

 

俺の背中を叩いてケラケラ笑っている女の名はリエルという。

 

長い金髪に碧眼。透き通るような白い肌。そして詰め物をしているかのような頬とお腹。

 

そう彼女はぽっちゃりさんである。いや…もうデ○と言っても良いかもしれない。

 

この女との馴れ染めは、ただ単に俺と同様、念が使えるってだけで多少話す程度だ。

 

念が使えるかどうかは一目見ればわかる。何故なら大体の人間が纏をしているから。

 

纏をわざと使っていない人がいる可能性もあるので、完ぺきとは言えないが……ともかく、リエルは纏を使っているので念能力者だ。

 

因みに系統は知らない。

 

基本的にあまりクルタ族の人間とは関わらないようにしている為、情報が少ないのだ。

 

まぁ、リエルの場合は向こうから何かとちょっかいを掛けてくるのだが適当に流している。

 

下手に仲良くなっても……待ち受けているのは悲しい別れだ。

 

自分の能力は弁えている。すべての人間を救うなんて出来ない。つか、お母様一人どころか、現状では自分の命すら危うい状態なのだ。

 

他の人間まで救う余裕なんてない。

 

しかしお構いなしにリエルは話しかけてくる。

 

「そんな事言っていると、女の子に嫌われるよ?」

 

「…望むところだ。何ならリエル。お前ももう話しかけてくれなくていいぞ。」

 

「またそういう事言う!!私以外に友達なんて居ないくせに!!」

 

「……悪いがお前も友達とは思っていない。つかあまり近寄るな。暑苦しい」

 

我ながら酷い言葉のオンパレードだ。

 

嫌われるために業とやって入るんだけど。

 

最初は愛想悪く対応してたのだが、話しかけるのを止める気配が無かったので、思い来て

拒絶した。

 

それからというもの事あるごとに嫌われるように暴言を吐きまくっているのだが…

 

あいつは寄ってくる。まさか…このとしてMに目覚めてるんじゃなかろうな?

 

「ひっどーい!!」

 

「悔しかったら痩せてから……って、待て!硬は止めろ!!」

 

硬で強化され振るわれた右拳を、当然のように避ける。

 

つかこの女も大概だな。

 

泣く位の事は言っていると思うのだが…あれか?Mなのか?

 

そんな事を考えつつも、二発目を放とうと拳を振りかぶったので、慌てて逃げ出す。

 

リエルも逃すまいと追っては来るが、差は一瞬で開きどんどん広がる。

 

伊達にあの訓練をこなしちゃいない。ましてや、女…さらには肥満体系になんて追いつかれてたまるか。

 

でも、学校で鉢合わせたら煩いんだろうなとか考えつつ、そのまま速度を落とすことなく駆けて行くのだった。

 

 

 

駆けて行くあいつを必死になって追いかける。

 

けど、その差は見る見る開いて…あっという間にその姿を捉える事が出来なくなってしまった。

 

な、なんて速いのよ…

 

私は追いかけるのをやめて、一旦立ち止まり呼吸を整えつつ考える。

 

考えるのは…あいつ……クランの事だ。

 

私があいつに興味を持ったのは入学当初。私と同じようにオーラを身に留めている男の子……クランの姿を見たからだ。

 

私が念に目覚めた後、同世代の事は一緒に遊ばなく…ううん、遊べなくなった。

 

念の事は他言無用。さらに、まだ念の制御が覚束ない私は誤って他者を傷つけかねないからだ。

 

初心者の拙い念は、同じ能力者から見れば大した事ないけど、非念能力者は違う。

 

一歩間違えれば死の危険がある。

 

そんな理由で念を使えない人との接触は能力が制御できるまで避けてきた。

 

ある程度、慣れてきて両親から許しを得ても…私は何か間違えて他者を傷つける事が怖かった。

 

そんな時だ。あいつと会ったのは。

 

あいつは念が使える。しかも私よりも綺麗な纏をしていた。

 

だから、あいつならば大丈夫なのではないか?

 

そう考えて私は、あいつに話しかけてみたのだ。

 

 

「私リエルって言うんだ。宜しくね」

 

「クラン…」

 

なのにあいつは…精一杯勇気を振り絞って…意を決して話しかけたのにそっけなかった。

 

それからというもの、私は事あるごとに話しかけ続けた。

 

あいつは無視こそしなかったものの、一言、二言返事を返すだけ……。

 

そんな状態がしばらく続いた後……。

 

「…うぜぇ……話しかけてくるな」

 

何時ものように話しかけた私に対して、あいつが初めて悪口を言った。

 

ショックだった……。

 

その日、家に帰って泣いている私に両親が心配し事情を説明した。

 

「ふふ…リエル。お父さんちょっと芝刈りに行ってくるよ」

 

そう言って、お父さんは納屋から鉈、斧、鎌などを持ってくると、それを大き目な布袋に入れ始める。

 

練を使っているのかオーラが凄い事になっている。

 

準備を整え、今すぐ駆け出そうとした所で、お母さんがフライパンにオーラを纏わせて、お父さんを叩いた。後で聞いたら、周という応用技らしい。

 

そして、気絶したお父さんを放置して、お母さんは優しく私に話しかける。

 

「ふふ、その子はね。きっとリエルの事が好きなのよ」

 

「え?」

 

そんな訳ない。だって、好きならあんな酷い事は言わないはず…

 

「男の子はね。恥ずかしがり屋さんなの。恥ずかしくて、つい好きな子を苛めちゃうのよ」

 

きっと、リエルとお話しするのが恥ずかしくて、そんな事を言ったんじゃないかしら?

 

とお母さんは言う。

 

そういえば…同じクラスのシン君が、クラスで一番可愛いアルちゃんに毛虫を見せたり、スカートをめくったりして苛めている。

 

でも、他の人がアルちゃんに意地悪しようとすると、その前に立ちはだかってアルちゃんを庇おうとする。

 

そして、顔を真っ赤にしてアルちゃんにお礼を言われて、そっぽを向いているのを見たことがある。

 

あれも、そういう事なの?

 

「だからね。悪口に惑わされたら駄目よ」

 

そうお母さんは微笑んだ。

 

そっか……。

 

あ、あいつ……私の事が…。

 

うん。だったら許してあげよう。

 

でも、ちょっとくらい反撃してもいいよね♪


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