展開が急すぎるのは作者の実力の限界。
そして、段々と速度が上がってきた。
速く…もっと速く!
お母様との模擬戦。重力修行もソコソコ慣れて、今は3倍の環境で修行中である。
能力は格段に向上している。
お母様を倒すならば、あの柔術じみた体術を突破しないと駄目だ。
技術面では勝負にならない。パワーでも柳の如く受け流される。
ならば…速度ならどうだ!?
通常重力下で、以前よりも格段に速くなった俺の体術。
さらに蹴り足時にオーラを足に集中させることで、高速の移動術を身に着けた。
イメージ的には瞬動術だ。
「…くっ」
そんな俺の攻撃は何時もと同様に受け流…いや、違う。
流されてない。これはガードされた?
いけると判断するよりも、若干の違和感を感じる。
だが…その一瞬の隙をついて、お母様の掌に顎先を撃ち抜かれて意識が暗転した。
大丈夫……まだ、大丈夫。
私は愛しい息子であるクランを膝の上に乗せ、その髪を撫でる。
クランが何故、里を出たいのかは分かりません。
ただ、外の世界には危険がたくさんあります。まして、私たちはクルタ族。その緋色の眼を狙う者達も出てくることでしょう。
そういった者達を退ける為にも、力が必要です。
それに私の身体の事も……。
ゆっくりと…病に蝕まれている身体。
普通に静かに過ごすだけなら、数年は生きることが出来るでしょう。
しかし、オーラの消耗が激しい発を使用すれば、その分、時を削ることになります…。
ですが、私はクランに伝えねばなりません。
私の……いいえ、私の家系に受け継がれる全てを。
最近、お母様の顔色が悪い気がする。
隠してはいるが、夜に声を殺して咳をしている事も俺は知っている。
風邪だろうか?もしくはもっと悪い病気とか…。
正直、医療技術であまりクルタ族は頼れない。
俺が前に風邪を引いたときには、クソ苦い…毒なんじゃないか?と思わせる丸薬を飲まされた。
聞いた話によると、森で撮った数種の薬草を炒って作ったらしいが……。
そんな効いているかどうか分からない薬をお母様に試すわけには行かない。
なので…。
俺の本来の能力…変化形の能力を開発した。
その名も…。
【モグリの医者の愛用薬(ケミカル・オブ・ブラックジャック)】
効果は自身のオーラを薬物に変化させる能力。
名前の由来は、手術料に高額なお金を請求するモグリの天才外科医とトランプのブラックジャックから。
変化させられるのは、トランプのA~Kまでの13種類と特殊な条件下でのみ変化可能な、
JOKERたる1種類の系、14種類の薬効だ。
この能力にした事は後悔していない。
お母様を治す際にひらめいたインスピレーションもそうだし。俺もこの先、病気が怪我をしないとは言い切れない。
それに…催淫剤や精力剤と言ったそっち方面でも活躍する事、間違いなしだからだ。
さらに、さらに変化系は系統的に放出系から若干離れていることもあり、通常はオーラを身体から話した際に能力が劣化するのだが、緋の眼がそれを解決してくれた。
つまり、何が言いたいかってい言うと、緋の眼状態で能力を使用すれば保存が効くのだ。
薬の効果は、変化させたオーラを対象の身体にぶっかければ発言する。
緋の眼未使用時は直接俺が触れながらやらないと行けないんだが、使用時は瓶などに詰めたオーラを振りかければOKである。
この能力により、修行の効率も格段に上がった。
しかし、お母様の体調は治らない。
風邪じゃなかったんだろうか?
一応薬効はその辺で適当に捕まえた動物類で試したり、自分の身体で試している。
いや、最初は全部動物で試そうとは思ったんだけどね、風邪とか分からなかったんだ。
だから、動物で試せるのは動物で試して、無理なのは…ちょっと怖いが自分の身体で試した訳だ。
風邪位ならそんなにリスクは無いし。
いずれにせよ、お母様に飲ませる前に自分の身体で効果は調べる予定である。
流石にいずれは死ぬとは言え、そこら辺のクルタ族の人間を人体実験に使うのは気が引けるしな。
将来的に此処から出られたら、犯罪者などを捕縛して実験してみるのがリスクが少なくて良いかもしれない。
ほら、なんだっけ?えっと…あのハンター試験でゴン達と試合してた奴らみたいに。
あいつらみたいな非念能力者なら捕まえるのは容易だしな。
「時間です。もういいですよ」
っと、呼ばれたので考え事を止める。
ふむ…正直気乗りしない……というか面倒臭いんだが。
「どうしました?もうみなさん隠れていますよ?」
うん。それは分かってる。だから、とっとと終わらせるために。
「じゃぁ、行ってきます」
円を使うか……。
現在、クルタ族…俺の通う学校では、レクリエーションの一環なのか…鬼ごっこを進行中。
今回、面倒くさくも鬼になってしまった。クラン事、俺は鬼としての責務を果たすため、学内を捜索する事にした。
別に円を使わなくても、子供の気配…ましてや絶を使用していないのだ。簡単に見つける事ができる。
しかし、あえて円を使う。こっちの方が早い上に練習にもなるからだ。
取りあえず使ってみたところ、範囲内に数人いるみたいだ。その中で生意気にも絶を使っている奴がいる。
恐らくリエルだろう。
しかも近い……。どうやら俺の動きを観察しているらしい。
ふむ…。
何かと絡んでくるリエルだ。此処は無視をして、適当にそこらの子供を捕まえるのがいいだろう。
だけど……駄目だな。これは俺の性格だ。
絶を使って完全に油断しているだろう…あいつの驚く顔をみてみるのもいいな。
やる気がなさそうに歩いているあいつの姿を、隠れつつ伺う。
今の私はオーラを絶っている…所謂、絶の状態だ。
そうそう見つける事が出来ない。
なのに……。
「ほい、タッチ。」
曲がり角を曲がって、あいつの姿が見えなくなり、その後を追おうとした所で後ろから声を掛けられた。
なんで?どうして?絶を使っていたのに。
私の絶は完ぺきだった。そもそも絶は得意だ。お父さんからも褒められた。
あいつにその理由を聞こうとしたが、もう姿はない。
気配も感じない……恐らく絶を使われた。
上等だ。やられたらやり返す。
そして、どうやって私を見つけたのか洗いざらい吐かせてやる。
その後、時間いっぱい。私は鬼としてあいつを探し続けた…。
他の子を見つけても捕まえる事もせずに。
結局見つからず。先生からは真面目に鬼をやらなかったとして怒られた。
止めとけばよかった…。
「で?どうやって見つけたの!?絶を使ってたのに!」
学校帰り、ほんのちょっとの茶目っ気を出したせいで、一層リエルに絡まれていたりする。
あぁ、この性格が憎い。
何時ものように若干きつめの暴言を吐いて、追いやろうとするのだがまったく聞く耳持たない。
仕方がない…しつこいし…。
「円だよ。円を使ったんだ」
「円?」
怪訝そうな顔をするリエル。ふむ、まだ円が使えないのか。
「念は何処まで覚えた?」
「今は、練を練習中だけど…」
なるほど…応用技はおろか、四大行もまだなのか。
「そうか…円は纏と練の応用技だ。」
「……私にも使える?」
「分からん。取りあえず、まずは基本の四大行を修めてからだな」
話は終わりだとばかりに歩き出す。それにそろそろ分岐点……リエルも自分の家に帰……。
「って、なんで着いて来るんだよ?」
「私に念を教えなさいよ」
「だが断る。人に教えるほど念を修めた訳じゃないし。俺も自分の修行がある」
リエルの頼みをきっぱり断って、俺は家に着くなり修行を開始するのだった。
最も、最近はお母様を倒すための修行というより、治す為の発の修行を重点的に行っている。
っていっても、お母様を倒す修行も並行して続けている。基本的に堅や流などを初めとする応用技は毎日行い、系統別のローテーションで、
変→強→変→具→変の際に変化形の修行時に治すための発の練度を挙げ、強化、具現化の修行時に各応用技をさらに修行するようにしている。
だが……お母様の具合はよくならない。
むしろ、徐々に悪化していっているように思える。
やっぱり、普通の風邪じゃない。
正直、能力を使うのも辛そうなので、使わせないようにしている。結界の中の環境は変わらないままだが、お母様の命を削る訳には行かない。
そんな日々を送っていたのだが……その日、俺はお母様に呼び出された。
「クラン、あなたの発で今まで作った薬を全部出しなさい。」
何故だ?能力を一通り説明して、お母様の病に関係ありそうなのは試してみたが、効かなかったはずだ。
そう、怪訝に思うも、具現化した巾着袋から薬を取出し、並べていく。
そしてすべて並べ終えた事を告げると、お母様は話を続けた。
「さて、クラン。今日呼んだのはあなたに重要な事を話さなければならないからです。」
「重要な事ですか?」
「はい、それは私の家系……この血に受け継がれた能力と義務についてです。」
そしてお母様は語りだす。
事の始まりは、お母様の祖父。俺の曾爺さんにあたる人だそうだ。
その人は若くして念に目覚め、それ以降研鑚を積んできた。
その能力は途轍もなく協力で並ぶ者は無しと言われていたらしい……。あくまでクルタ族の間でだけだが……。
だが、念能力は奥が深い。学べば学ぶほど、その終着点は見えない。
いくら念により寿命が向上した所で限りがある。生あるものは何時かは死ぬ。
なので、曾爺さんは最後に自身の残りの全てを費やし、ある一つの能力を完成させた。
それは、自身の念能力の全てを後世に継承する能力。
念を極める。そんな壮大で無謀ともいえる夢を後世に託したのだ。
「では、お母様は曾爺様、爺様に続く三代目の継承者なのですか?」
「いいえ、私は二代目です。」
話を聞くと、曾爺様は最初、お婆ちゃんに当たる人に能力の継承を行うつもりだったらしい。
何故、お婆ちゃんかというと、この能力の条件に継承できるのは能力を使用した血縁者のみ。
俺の爺ちゃんは婿だったそうで、曾爺様との血のつながりがない。
その為に爺ちゃんは継承ができない。だから、婆ちゃんを継承者にしようとした。
だが…婆ちゃんはお母様を生んだ後に亡くなってしまい。
血縁者はお母様一人になってしまった。なので、お母様が継承をしたということだ。
「あなたが三代目です。そして、あなたも妻を得て子を無し、後世に伝えて行かなくてはなりません。」
そして、お母様は目をつぶり短く息を吐き練を行う。
それと同時に開かれた目…その瞳の色は緋色に染まっていた。
【受け継がれる神様の特典(ネンハイチダイニシテナラズ)】
いや、違う。練じゃない。
お母様から迸る莫大なオーラ……それが錬に見えるだけだ。
そのオーラは胸の前で翳した両手の中間の空間に集まって行き。
バレーボールくらいの球体となる。
あれ?なんか既視感……こんなのどっかで見たことあるぞ。
漫画で……確か同じ原作者の。
そんな俺の疑問は…お母様からゆっくりとまるでパスをするように球体が渡されて。
俺の身体に吸い込まれていった。
「……これで終わり?」
なんかあっけない。別段変わったような事は…っ!?
「ぐぁっ!?」
唐突に…パァンと弾けるように額が割れる。
な、何…っだ…これ…
「ぐぁあああっ!?」
熱い…そして痛い。
身体が膨張するような感覚。そして、一気にそれがはじけ…。
あちこちで皮膚が弾ける。
立っても居られず、膝を付く。
そして、流れ込んだ来る情報の数々。
何がなんだか……分からない。
だが、体中を蝕む数々の痛み。
その痛みから逃れようと這うようにして、予めお母様から出して置くように言われた、俺の能力で作り出した薬のへ行き片っ端から薬を浴びていく。
だが、収まらない痛み。
余りの激痛に気を失う事も出来ない。
俺は痛みと流れ込んでくる情報で混乱し、現実がなんなのかもよく分からなくなり…。
本能的に…ただただ薬を浴びながらのた打ち回った。
どれほど、そうしていただろう。
段々と気が狂いそうになる。
だが、流れ込んできていた情報…それが止まり、今は身体を蝕まむ痛みだけが残っている。
そんな俺の視界にある一つの光景が目に入る。
あれはなんなのだろう?
何かがある。白い何かが…。
あそこにある動かない白いナニカ。
いや違う…あれは見覚えがある。
そう、あれは服だ。見慣れた……俺の一番大切な人が着ている服。
何故、あんなところに服が落ちているんだ?
いや違う…服じゃない。盛り上がっている。
あれは…人なんじゃないか?
あの服を着ているのは大切な…お母様何じゃないのか?
何故?お母様は動かないのか……。
流れ込んでいた情報が整理され、それは曾爺様とお母様の念に関する知識だと知り…。
その中には能力に関する知識もあった。
そして…そこにはお母様が先ほど使った能力に関する知識も当然にあった。
【受け継がれる神様の特典(ネンハイチダイニシテナラズ)】
自身の念能力の全てを血縁者に受け継ぐ能力。
そして…その使用者は……。
念能力の全てが無くなりオーラを使い切った状態となる。
つまりは…
「お、お母様?…」
ポツリと声が漏れる。
オーラを使い切る。それがどういった状態なのか……。
念を覚える際の方法は二つある。ゆっくり起こすか…無理やり起こすか。
そして、無理やり起こす場合の方法を取った場合。
無尽蔵にあふれるオーラを纏で留める事が出来ないと、オーラを使い切った状態となり。
死に…至る。
「お母様…お母様!?」
その無事を確認しようとするが…。
「ぐっ…痛っ。」
痛みで身体が上手く動かない。
なんで…
「…け」
俺は行かなくちゃいけないんだ。
「どけ…」
カッと頭の中が真っ白になる。
「邪魔するな…どけぇえええ!!」
叫びと同時に立ち上がる。
それに呼応するように俺のオーラが爆発し…。
気が付くと痛みは既に無く。
俺はお母様を抱きかかえていた。
「お、お母様…?」
それは見る影もなかった。
あの白く若々しかったお母様は皺枯れ…骨と皮のようになり。
それでもその顔は満足そうに…
息を引き取っていた。
「なんで?俺はこんな能力よりも……」
あなたに生きていて欲しかったのに…
「うぁ…うぁあああああ!!」
この日…
俺は莫大な力を得ると共に……。
この世で最も最愛な母を失った。
能力がバンバン出ております。
最初はもっと制約と付けようとしたんだよ……。
つか考えたんだよ。
でも、説明文を書いてて分かりずらかったんだ。
だからいいや…といっそのこと制約なんて知るものかと。
原作でもカルトみたいな本物のチート能力者いるしいいよね?とか思っちゃったんだ。