遊戯王GX ~氷結の花~   作:大海

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四話完結~。

……
本当に書くこと無いな……

……
……うん。

行ってらっしゃい。



第四話 月一試験開始 ~心氾~

視点:万丈目

 

「万丈目!!」

 

 !?

「これでお互いライフは1000ポイントずつ。でもここで俺が攻撃力1000以上のモンスターを引いたら面白いよな~?」

「何を戯言を!! そう簡単に……!!」

「でも引いたら面白いよな~!?」

 くっ、そんな簡単に引けてたまるか! 奴の使うE・HEROはほとんどが低攻撃力のモンスター。奴が今まで使ったカードを考えれば、確率は……

「ドロー!」

 どうだ……

「……ふ」

 !!

「俺はこのカード、フェザーマンを召喚し、プレイヤーにダイレクトアタック!!」

 バカな!!

 

「ぐあぁぁぁぁ!!」

 

 そんな……この俺が、レッドの十代ごときに……

 

 

 情けない、情けない……

 そんな気持ちばかりが湧いてくる。

 ブルーのエリートであるこの俺が、レッドの落ちこぼれである十代に負けた……

 しかも、ただ負けただけではない。あれだけのレアカードを使って負けた……

 今まで俺様は強いと、自分を信じてここまで来た。おかげで俺はエリートになれた。

 今まで負け無しだった。誰にも負けなかった。

 

 なのに今日、オシリスレッドの遊城十代に負けた……

 

 俺は今まで、何をやってきたんだ……?

 

 俺は今まで、間違っていたのか……?

 

 あまりの情けない気持ちに、体から力が抜け、ひざが床へ落ちていく……

 

 

「……さん……」

 

 ……!!

 

「準さん……」

 

 突然、俺の名を呼ぶ声が聞こえた。

 この声、知っている。

 俺に憧れ、俺を応援してくれた男。誰よりも純粋な目で、俺のことを見ていた男の声だ。

 心配してくれているのか? 決闘前に、あれだけ大層なことを言っておいて、結局敗北してしまった俺のことを……?

 

 その時、俺は思い出した。俺が奴に語った言葉。

 

(人間て奴は少しでも弱気になった時、そんな自分に身を委ねそうになる)

 

 そうだ。今の俺がまさにそれだ。

 負けたことで心が折れそうになり、そのまま自分でへし折ってしまおうとしている。そうしてしまえば一番楽だから。自分に言い訳もしないまま、苦しむ必要も無い。そうしてしまえば、屈辱と落胆とを引き換えに、心の平穏を迎えることができるからだ。

 

(例え決闘に負けても、自分にさえ負けなければ、今の決闘で敗者になろうとまた戦える)

 

 ……そうだ。俺は今、自分に敗北しようとしている。そうやって敗者としての全てを受け入れ、楽になろうとしている。

 

 ダメだ! ここで心が折れれば、俺は二度と自分を取り戻せなくなるぞ!

 こんなことでは、あいつに合わせる顔が無い!

 俺に本気で憧れているあいつに……

 俺を本当のエリートだと信じ、そんな俺を目指してくれているあいつに……!

 俺の方こそ憧れそうになるほど、誰よりも純粋に決闘や人と向き合えるあいつに!

 

 

 地に着きそうになった手足を何とか踏ん張り、俺はそのまま仁王立ちの体勢を作る。

「まさか、貴様がここまでやるとはな」

 悔しくてたまらない。本当は認めたくない。

 だが、心を強く持て。

 俺様は、万丈目準だ。

「今日の所は勝ちを譲っておいてやる。だが、次にやる時はこうはいかない。その日を楽しみにしておくことだ」

 そう言い放つと、十代は俺に笑顔を向けた。

「おお! また決闘しような!」

 ……ふ、やはり頭はガキのようだな。たった今まであった悔しさの気持ちが、一気に軽くなっていく。

 まあいい。覚えておくといい。この次は負けんぞ!

 

 そしてその直後、鮫島校長が十代のラーイエロー昇格を決定する旨を発表した。

 

 

 

視点:梓

 準さん、とても気高いです。やはりあなたは私の目標だ。改めて、尊敬申し上げます。

「十代くん強かったね~」

 あずささんが言ってきました。そうですね。友人の勝利もまた、喜ばしいことです。

 

「それデーハ! 続いて女子の部を開始致しますノーネ!」

 

 おっと。

「いよいよあずささんの出番ですね」

「うん! わたし頑張るよ!」

 言いながらガッツポーズを見せるあずささん。

 可愛いです……////

 

「始めーに、セニョーラ平家、決闘場に降りるノーネ!」

 

 て、いきなりですか……

「おぉ、トップバッターだ! じゃあ梓くん、行ってくるね」

「はい。頑張って下さい」

 そしてあずささんは私に手を振りながら、決闘場へと降りていきました。

 

 はぁ……やっぱり可愛い~////

 

 

 

視点:あずさ

 梓くんと別れて決闘場に降りた後、対戦相手と向かい合いました。

 

「……」

 

 ……なぜか、さっきからすっごい睨まれてます。

「えっと、どうかした?」

「……」

 何も答えない。けど、これだけは分かる。この人、凄く怒ってる……

 

「あなた!!」

 

「はい!?」

 いきなり叫ばれた! なに? わたし何かしたっけ!? えぇっと、えぇっとぉ……

 

「あなた、梓さんとはどんな関係なの!?」

 

 へ?

「その、水瀬梓さん?」

「他にどの梓さんがいるっていうのよ!!」

 ……わたし、平家あずさです……

「どんな関係って……一応、友達だけど……」

「本当かしら?」

「う、うん。どうして?」

「なら聞くけど、あなたは今日、どうして梓さんと一緒に遅刻してきたの?」

 それは……

 

 /////////

 

 本当のことなんて恥ずかしくて言えない////

 とっさに考えた嘘を言うことにしました。

「その、たまたま二人揃って寝坊しちゃって……」

 

「うそ!! 私は普通の登校時間、女子寮前で梓さんと話してるわ!! 私だけじゃなくて大勢の女子がね!!」

 

 うそぉ!!

 

「そうですわ! 梓さんは誰かを待っているかのようでしたわ!!」

「まさか、あなたじゃないわよね!!」

「どういうことなのか説明しなさい!!」

 

 うわぁ、周りからも大声が……

 でも、そんな時間からわたしのこと待ってくれてたんだ。

 嬉しい……

 

 て、それ所じゃなくて!!

「それだけではなく、あなたはここに来る直前まで梓さんと親しげに話していたわね!」

「いや、だからそれはただ友達だから……」

「本当にそれだけ!?」

 怖いよ! そんなに怒鳴らないでよ!!

「本当だってぇ~、怒らないでよぉ~……」

 

「泣くんじゃない!! 泣いて許されることではないの!!」

 

「梓さんとはどんな関係なの!?」

「本当にただの友達なわけ!?」

「ごまかしてると承知しないわよ!!」

 

 みんなが一斉に叫んできた。クロノス先生はオロオロしてるだけだし。

 あぁ~、どうしよぉ~……

 

 

「静まりなさい!!」

 

『……!!』

 

 突然、そんな声が決闘場に響いた。

 その声の方を見ると、梓くんが立ち上がっていた。

「今騒いでいた方々全員にお聞きしたい。あなた方は今、何のためにここにいるのです?」

 それはとても高く通る声で、さっきと同じ、決闘場に響いていた。

「ここにあなた方は決闘をしにきたのではないのですか? それとも、ただ私を見にきたのですか? もしそうなら、私ごときで良ければいくらでもお見せしましょう。今すぐ決闘ディスクとデッキを置いて、私のそばまで来て下さい!」

 とても真剣な顔してる。それは凶王化してた時とは違う意味で、とても怖い顔だ。

「これから決闘をしようという人を、ただ見たい物と関わっていたというだけで(さげす)み、動揺させ、(はずかし)める。そんな下らない行為で決闘者の心を傷つけるあなた方は、私の前で決闘者でいること事体おこがましい!! ただ私のことが気になるというのなら、決闘などせず私を見ていればいいのです!! それがあなた方の望みなのでしょう!?」

 

「さあ、今すぐここまで来なさい!!」

 

『……』

 

 ……凄い迫力。会場中が沈黙に包まれてる。

 あれだけ騒いでた女子達が、梓くんを見て何も言えなくなっちゃってる。

 梓くんは言いたいことを全部言い終えたのか、今度はわたし達の前にいる、クロノス先生に目を向けた。

「クロノス先生、すみませんが私はこれで失礼致します。ここにいては皆様方の邪魔になるようなので」

 それだけ言って、梓くんは歩き始めた……

 ……え? 本当に行っちゃうの!?

 

「いや、わたしは全然気にしてないよ!!」

 

 気が付いたら、梓くんに向かって叫んじゃってた。

「そりゃ、正直みんなに怒られたのは怖かったけど、別にそこまで深刻なことじゃないし、梓くんが怒るようなことじゃないよ!」

 そう笑いながら言ってあげる。けど、本心は違った。

 梓くんには、梓くんだけには、わたしの決闘を見て欲しかった。梓くんとの決闘以来、梓くんと少しでも並んで立ちたくて、それまで何となくしかしてこなかった勉強をたくさんした。

 それに、梓くんにはどこにも行って欲しくなかった。わたしの近くにいて欲しいって思ったんだ。

「だから、機嫌直して座って、ね? わたしは大丈夫だから」

 大丈夫だから、わたしの決闘を見てて。お願い……

 

「……」

 

 梓くんは答えなかった。代わりに、席に座り直した。

 良かった。

 わたしはホッと胸を撫で下ろしながら、相手の子と向き合いました。

「じゃあ、始めよう」

「……その、悪かったわ」

「ううん、気にしてないよ! それより早く始めよう!」

 素直に謝ってくれて良かったよ。さあ、楽しい決闘しようね。

 

『決闘!!』

 

 

女子

LP:4000

手札:5枚

 場:無し

 

あずさ

LP:4000

手札:5枚

 場:無し

 

 

 

視点:十代

 やれやれ。さっきの梓にはビビったぜ。梓が怒鳴る所なんて凶王化以来だから忘れてた。

 

(……)

 

 急に、隣に座ってる梓から声が聞こえてきた。ジッと決闘を見てるみたいだけど、何かブツブツ呟いてる?

 何だと思って、耳を澄ませると……

 

(……許さない……あずささんを傷つけた者共を許さない……一人残らず斬滅してやる……一人残らず(ひざまず)かせ這いつくばらせ泥を食わせ、羞恥と屈辱を与え苦しめのたうち回した(のち)に殺す。許さない、許さない、許さない、許さない……)

 

「……」

 

 やべぇええええええええええええええ!!

 梓の奴、軽く凶王化してんじゃねーか!!

 今は多分ブツブツ言って自分を抑えてんだ。けど、このままじゃ大暴れかねないぞ!!

 

 何とか勝ってくれ!! あずさ~~~~~!!

 

 

 

視点:あずさ

「先行は私よ。私のターン! ドロー!」

 

女子

手札:5→6

 

 さて、この子のデッキは……

「私は手札から『切り込み隊長』を召喚!」

 

『切り込み隊長』

 攻撃力1200

 

 おお! ()しくも『戦士族』デッキ対決だ!

「『切り込み隊長』の効果! 召喚に成功した時、手札からレベル4以下のモンスター一体を特殊召喚する。私は二体目の『切り込み隊長』を召喚!」

 

『切り込み隊長』

 攻撃力1200

 

 え! 一ターン目からいきなり!?

「『切り込み隊長』が場にある限り、あなたは『切り込み隊長』以外の戦士族モンスターを攻撃できない。『切り込み隊長』は二体いるから、あなたは攻撃できないわ」

 うぅ……戦士族だから攻撃型かなって思ってたけど、いきなり防御を固められた。

「二枚伏せてターンエンド」

 

女子

LP:4000

手札:2枚

場 :モンスター

   『切り込み隊長』攻撃力1200

   『切り込み隊長』攻撃力1200

   魔法・罠

    セット

    セット

 

「わたしのターン!」

 

あずさ

手札:5→6

 

 うぅ……今の手札にあのロックを崩すカードは無い……

 が!!

「わたしは永続魔法カード『六武の門』と『六武衆の結束』を発動するよ!」

「『六武衆』デッキ……」

 ふふふふ、前準備は整った。

「更に『二重召喚(デュアル・サモン)』を発動! これでわたしはこのターン、二回の通常召喚ができる! 手札から『六武衆-ヤイチ』と『六武衆-ヤリザ』を召喚!」

 

『六武衆-ヤリザ』

 攻撃力1000

『六武衆-ヤイチ』

 攻撃力1300

 

(六武衆……私のデッキとはあまり相性が良くないわ……)

「二体の六武衆の召喚に成功したから、二枚のカードに武士道カウンターがそれぞれ乗る!」

 

『六武の門』

 武士道カウンター:0→4

『六武衆の結束』

 武士道カウンター:0→2

 

「『六武衆の結束』の効果! このカードを墓地に送って、乗ってる武士道カウンターの数だけカードをドロー!」

 

あずさ

手札:1→3

 

「まずはヤイチの効果! フィールドにヤイチ以外の六武衆がいる時、セットカード一枚を破壊するよ!」

 ヤイチの矢がセットカードを貫く。破壊したのは……『炸裂装甲(リアクティブ・アーマー)』! やった! 当たった!

「そして、ヤリザの効果! 場にヤリザ以外の六武衆がいる時、このカードはダイレクトアタックができる!」

「くぅ!」

「ヤリザでダイレクトアタック! 鋭槍全貫(えいそうぜんか)!」

「きゃ!」

 

女子

LP:4000→3000

 

「カードを伏せて、ターンエンド!」

 

 

あずさ

LP:4000

手札:2枚

場 :モンスター

   『六武衆-ヤイチ』攻撃力1300

   『六武衆-ヤリザ』攻撃力1000

   魔法・罠

    永続魔法『六武の門』(武士道カウンター:4)

    セット

 

女子

LP:3000

手札:2枚

場 :モンスター

   『切り込み隊長』攻撃力1200

   『切り込み隊長』攻撃力1200

   魔法・罠

    セット

 

 

 『切り込み隊長』を破壊しなくても、このままヤリザで攻撃していけば……

 

「私のターン!」

 

女子

手札:2→3

 

「このカードが破壊されなかったのはついていたわ」

 ……へ? 残ってるカード、『炸裂装甲』より便利なカードなの?

 でも、ヤリザの攻撃には反応しなかったよね?

「私は手札から『封魔の伝承者』を召喚!」

 

『封魔の伝承者』

 攻撃力1700

 

 ボロボロの服装と、大きな袋を背負った剣士。

 何だろう? あまり見かけないカードだ。

「そして罠カード発動! 『連鎖破壊(チェーン・デストラクション)』!」

 え!?

「攻撃力2000以下のモンスターの召喚、反転召喚、特殊召喚に成功した時、そのプレイヤーのデッキに存在する同名カードを全て破壊する。私のデッキにはもう二体の『封魔の伝承者』がいる。よってこの二枚を破壊、墓地に送る」

 それが、『炸裂装甲』以上に重要なカード? でも、カードを墓地に送るだけじゃ意味なんて……

「『封魔の伝承者』の効果発動。このカードの召喚、反転召喚、特殊召喚に成功した時、属性を宣言する。宣言された属性のモンスターに攻撃する時、そのモンスターはダメージ計算を行わず破壊できる。そして宣言は、墓地の『封魔の伝承者』の数だけ行う!」

 !! そのために『連鎖破壊』!?

「六武衆は属性がばらついているから、この子とはあまり相性が良くないのよね。まあ攻撃力はこっちの方が高いからそこは良いんだけど」

 それで六武衆を見て嫌な顔してたんだ。

「そうね……炎と、光属性を宣言」

 光属性はザンジ、炎は……紫炎!

 迷ってるようで六武衆の切り札を分かってるよこの人!

「バトル! 伝承者でヤイチを、『切り込み隊長』の一体でヤリザを攻撃!」

 

あずさ

LP:4000→3400

 

 うぅ、数少ないロックを突破するカードが……

「そして、もう一体の『切り込み隊長』でダイレクトアタック!」

「うわぁ!!」

 

あずさ

LP:3400→2200

 

「カードを二枚伏せて、ターンエンド」

 

 

女子

LP:3000

手札:0枚

場 :モンスター

   『封魔の伝承者』攻撃力1700

   『切り込み隊長』攻撃力1200

   『切り込み隊長』攻撃力1200

   魔法・罠

    セット

    セット

 

あずさ

LP:2200

手札:2枚

場 :モンスター

    無し

   魔法・罠

    永続魔法『六武の門』(武士道カウンター:4)

    セット

 

 

 『切り込み隊長』で守って、『封魔の伝承者』で確実にモンスターを破壊かぁ。何気にバランスが取れてるなぁ

「わたしのターン!」

 

あずさ

手札:2→3

 

 『大将軍 紫炎』……

 伏せてある『諸刃の活人剣術』でヤリザとヤイチを呼び出せばすぐに特殊召喚できるけど、攻撃できないし、エンドフェイズには破壊されて、攻撃力分のダメージを受けちゃう。

 あのロックを崩すには……まずい。何も思い浮かばない。

 あ、でもあのカードなら……

「わたしは『六武の門』の効果。武士道カウンターを四つ取り除いて、デッキから六武衆を手札に加える。デッキから『六武衆の師範』を手札に加えるよ!」

 

『六武の門』

 武士道カウンター:4→0

 

あずさ

手札:3→4

 

「『六武衆の侍従』を守備表示! 効果で『六武衆の師範』を特殊召喚!」

 

『六武衆の侍従』

 守備力2000

『六武衆の師範』

 攻撃力2100

 

『六武の門』

 武士道カウンター:0→4

 

 よし、これで一応の守りは万全。

 伝承者の効果で宣言したのは光と炎。仮に効果を使われたとしても、師範は相手のカード効果で破壊されたら手札に戻る効果がある。侍従は守備力が2000。師範もいるから一ターンは生き残る。

「カードを伏せて、ターンエンド……」

 

「エンドフェイズに罠発動!」

 

 え?

「『強制脱出装置』。『封魔の伝承者』を手札に戻す」

 

女子

手札:0→1

 

 わざわざ手札に戻すって……あ!!

「一度召喚したら、宣言した属性そのままで戦っていくって考えてたでしょう」

 うぅ、おっしゃる通りです……

 

 

あずさ

LP:2200

手札:1枚

場 :モンスター

   『六武衆の侍従』守備力2000

   『六武衆の師範』攻撃力2100

   魔法・罠

    永続魔法『六武の門』(武士道カウンター:4)

    セット

    セット

 

女子

LP:3000

手札:1枚(封魔の伝承者)

場 :モンスター

   『切り込み隊長』攻撃力1200

   『切り込み隊長』攻撃力1200

   魔法・罠

    セット

 

 

「私のターン!」

 

女子

手札:1→2

 

「『封魔の伝承者』を再び召喚! 宣言は地と炎!」

 

『封魔の伝承者』

 攻撃力1700

 

 やっぱそうだよね……

「罠発動! 『リビングデッドの呼び声』! これで墓地の『封魔の伝承者』を特殊召喚!」

 

『封魔の伝承者』

 攻撃力1700

 

 二体目!?

「宣言は一回。地属性を宣言」

 ここで地属性を宣言するってことは、師範の効果を分かってる上で、伏せカードも読まれてる!?

「続いて『強欲な壺』を発動! カードを二枚ドロー!」

 

女子

手札:0→2

 

「速攻魔法『魔法効果の矢』を発動! 相手フィールド上に表側表示で存在する魔法カードを全て破壊し、破壊した数につき500ポイントのダメージを与える! 『六武の門』は破壊させてもらうわ!」

「うぅ……」

 

あずさ

LP:2200→1700

 

 うぅ、これでサーチもできなくなっちゃった……

「永続魔法『連合軍』! 自分フィールド上の戦士族、魔法使い族一体につき、自分フィールド上の戦士族モンスターの攻撃力は200ポイントアップする! 私のフィールドの戦士族は4体、よって、800ポイントアップ!」

 まずい!

 

『封魔の伝承者』

 攻撃力1700+800

『封魔の伝承者』

 攻撃力1700+800

『切り込み隊長』

 攻撃力1200+800

『切り込み隊長』

 攻撃力1200+800

 

「このターンで決めるわ! 『封魔の伝承者』で、『六武衆の師範』を攻撃!」

「罠発動! 『和睦の使者』! これでわたしの受ける戦闘ダメージは0になって、モンスターは戦闘では破壊されない!」

「けど、伝承者の効果でどのみち破壊してもらうわ!」

 伝承者に切りつけられて、やられる師範。

 そうなんだよ。『和睦の使者』で戦闘破壊とダメージからは守れても、効果破壊までは守れないんだよぉ~。

「師範の効果。このカードが相手カードの効果で破壊された時、六武衆と名の付くモンスター一体を手札に加える。わたしはこの効果で、師範自身を手札に加えるよ」

 

あずさ

手札:1→2

 

「もう一体の伝承者で、侍従に攻撃!」

 こっちも破壊された!

「このターンで決められるって思ったけど、まあいいわ。次こそ倒す。ターンエンド」

 

 

女子

LP:3000

手札:0枚

場 :モンスター

   『封魔の伝承者』攻撃力1700+800

   『封魔の伝承者』攻撃力1700+800

   『切り込み隊長』攻撃力1200+800

   『切り込み隊長』攻撃力1200+800

   魔法・罠

    永続罠『リビングデッドの呼び声』

    永続魔法『連合軍』

 

あずさ

LP:1700

手札:2枚

場 :モンスター

    無し

   魔法・罠

    セット

 

 

 うぅ、どうしよう……

 手札は紫炎と師範の二枚だけだし、『切り込み隊長』のロックが効いてて攻撃もできない。そもそも『連合軍』で攻撃力が上がってて戦闘破壊だって難しいし。

 このロックを一気に突破できるカードなんて……

 あぁ! ある!!

 んだけど……『六武の門』も破壊されちゃって、このドローでそれを引く確率なんて……

 あぁー、また凡ミスだよぉ!! どうしてさっきカウンターが四つ貯まってたのに、破壊される前にサーチしなかったんだろぉ~!!

 

「諦めて降参(サレンダー)する?」

 

 対戦相手の人が話し掛けてきた。

 降参……まあ、それも一つの手だよね。だって、実際にもう手が無いし。ここから逆転なんて、奇跡でも起きない限り無理だよ。

 

 

 ……あれ? 確かこういう場面、前に見たことあったような……

 確か、手札は今のわたしより少ない、一枚しかなくて、フィールドにはモンスターも魔法・罠も無くて、なのに、ずっと自信満々で、しかも、たった一度のドローで全部ひっくり返した。

 ……

 はっ!

 わたしはとっさに、梓くんの方を見た。

 梓くんは、わたしを見て笑ってる。わたしのこと、信じてくれてるんだ。

 

 ……そうだ。梓くんは、いつでもデッキを信じて闘ってた。昨夜も言ってたもん。

 

 ……

 …………

 ………………

 

「梓くん、決闘者に一番必要な物って何なのかな?」

 勉強の合間に聞いてみた、答えの無い質問。でも、梓くんは迷わず答えた。

「カード達との絆、でしょうか」

「絆?」

「ええ。共に戦うと誓い、幾千とあるカードの中から選び抜き、四十枚にまとめることで完成したデッキ。今まで様々な苦難を共に乗り越え、共に戦ってきたデッキのカード達。そんな彼らと築き上げてきた絆。それを信じることができるなら、自然とデッキは応えてくれる。少なくとも、私はそう信じながら決闘をしております」

「絆……」

「ありきたりな答えで申し訳ありません」

「ううん、全然だよ……」

 

 

 とても、梓くんらしい答えだと思う。けど、そうだよね。わたしだって、絆の力の強さは知ってる。それを信じて、ずっと六武衆達と戦ってきたんだもん。こんなところで降参して、カード達との絆を無下にしていいわけ無いよね!

 

 

(体中を殴り蹴り穿ち縛り上げ締めつけ間接という間接を外し髪を引き抜き生爪を剥がし全身の皮を剥ぎ両腕を捩じり足股を裂き二十本の指を折り鼓膜を破り両耳を削ぎ落とし両の目を抉り舌を引き抜き腹を裂き(はらわた)を引きずり出し心臓を握り潰し頭を割り脳髄を抉り殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す……)

 

(もうやめて~、梓、お願いだからそれ以上はやめて~)

 

 

「続けるよ。ドロー!」

 

あずさ

手札2→3

 

 引いたカードは……

 ……きてくれた!!

「このターンで、君のモンスターを全部倒す!」

「な!」

「わたしは、『六武衆の露払い』を召喚!」

 

『六武衆の露払い』

 攻撃力1600

 

「そして、罠発動! 『諸刃の活人剣術』!」

 目の前が光ったと思ったら、そこから光る弓矢と、光る槍を持った二人の武将。

 

『六武衆-ヤイチ』

 攻撃力1300

『六武衆-ヤリザ』

 攻撃力1000

 

「な、何でこの二体が!?」

「『諸刃の活人剣術』の効果は、墓地から二体の六武衆を攻撃表示で特殊召喚できる。ただ、エンドフェイズに破壊して、攻撃力の合計分のダメージを受けちゃうけどね」

「『切り込み隊長』効果で攻撃もできないのに、自滅する気!?」

「ううん。破壊する前にフィールドから離れればダメージは受けないんだよ」

「え?」

「『六武衆の露払い』の効果! フィールド上のこのカード以外の六武衆を生贄に捧げることで、相手フィールド上のモンスター一体を破壊できる!」

「そんなっ!」

「わたしは『六武衆-ヤリザ』を生贄に捧げて、『切り込み隊長』を破壊!」

 露払いの脇差で、『切り込み隊長』は静かに刺し貫かれた。

 

『封魔の伝承者』

 攻撃力1700+600

『封魔の伝承者』

 攻撃力1700+600

『切り込み隊長』

 攻撃力1200+600

 

「まだだよ! ヤイチを生贄にして、『封魔の伝承者』を破壊!」

 今度は伝承者。その表情は痛みとかじゃなくて、ただ驚いて倒れた。

 

『封魔の伝承者』

 攻撃力1700+400

『切り込み隊長』

 攻撃力1200+400

 

「伝承者が……」

「『封魔の伝承者』は確かに強力な戦闘での効果があるけど、こっちから攻撃する分には無防備になっちゃう。だから『切り込み隊長』で守りを固めたんだよね」

 返事はしてくれないけど、代わりに顔が歪んで、その答えが正しいって教えてくれてる。

「わたしは手札から『六武衆の師範』を特殊召喚!」

 

『六武衆の師範』

 攻撃力2100

 

「そして、六武衆と名の付くモンスターが二体いるから、手札から『大将軍 紫炎』を特殊召喚!」

 

『大将軍 紫炎』

 攻撃力2500

 

「バトル! 『六武衆の師範』で『切り込み隊長』を攻撃! 壮凱の剣勢!」

「うっ!」

 

女子

LP:3000→2500

 

『封魔の伝承者』

 攻撃力1700+200

 

「続いて、紫炎で『封魔の伝承者』を攻撃! 獄炎・紫の太刀!」

「くぅ……」

 

女子

LP:2500→1900

 

「最後に、露払いでダイレクトアタック! 疾切華(とうせっか)!」

「きゃ!」

 

女子

LP:1900→300

 

「これがわたしと、六武衆達との絆の力だよ! ターンエンド!」

 

 

あずさ

LP:1700

手札:0枚

場 :モンスター

   『大将軍 紫炎』攻撃力2500

   『六武衆の師範』攻撃力2100

   『六武衆の露払い』攻撃力1600

   魔法・罠

    無し

 

女子

LP:300

手札:0枚

場 :モンスター

    無し

   魔法・罠

    永続魔法『連合軍』

 

 

(絆……)

 

 

 

視点:女子

 絆……

 

 私にだって!!

「ドロー!!」

 

女子

手札:0→1

 

「魔法カード『戦士の生還』! 墓地から戦士族モンスターを一枚、手札に加える!」

 私が選ぶのは、今日までずっと一緒に戦ってきて、ずっと一緒にいてくれた、最愛のカード!

「『封魔の伝承者』を手札に加えて、そのまま召喚!」

 

『封魔の伝承者』

 攻撃力1700+200

 

「墓地の伝承者は二枚! 属性は地属性と炎属性!!」

「ここでまた召喚するなんて、すごい……」

 私だって、絆の強さなら負けないわ!

「バトル! 紫炎に攻撃! 封魔聖斬剣!!」

 向かっていく伝承者。私のエースカードで、彼女のエースカードだけは倒してみせる!

 

「……紫炎の効果発動」

 

 !!

「紫炎が破壊される時、フィールド上の六武衆一体を代わりに破壊できる。わたしは『六武衆の露払い』を破壊!」

 紫炎の前に立ちはだかり、伝承者に斬られる、露払い。

 

 紫炎を……倒せなかった……

 

 もうどの道、私に手は無い。

「……ターンエンド」

 

 

女子

LP:300

手札:0枚

場 :モンスター

   『封魔の伝承者』攻撃力1700+200

   魔法・罠

    永続魔法『連合軍』

 

あずさ

LP:1700

手札:0枚

場 :モンスター

   『大将軍 紫炎』攻撃力2500

   『六武衆の師範』攻撃力2100

   魔法・罠

    無し

 

 

「わたしのターン!」

 

あずさ

手札:0→1

 

「『六武衆-カモン』を召喚!」

 

『六武衆-カモン』

 攻撃力1500

 

「フィールド上にカモン以外の六武衆がいる時、相手フィールド上の表側表示の魔法・罠を一枚破壊できる。『連合軍』を破壊!」

 カモンの投げた爆弾で、爆発する『連合軍』。

「ねえ」

 

 ……?

 

「とっても楽しかったよ! またやろうね!」

 

 ……ふふ。私も楽しかったわ。全力で戦って、あなたも最後まで全力で相手をしてくれた。悔いは無いわ。

 不意に、『封魔の伝承者』を見る。

 笑っているように見えた。あなたも楽しかったのね。

 けど、ごめんなさい。あなたを勝たせてあげられなかった。

 次は絶対に負けない。だから、これからも一緒に戦っていきましょう……

 

「紫炎で伝承者を攻撃! 獄炎・紫の太刀!」

 

女子

LP:300→0

 

 

 

視点:あずさ

 

『わぁあああああああああああ!!』

 

 わたし達の決闘に、みんながすごい拍手を送ってくれた。さっきまでわたしに怒鳴ってた女子達も、今は笑ってくれてる。

 わたしは最後に対戦相手の人と握手をして、その場を離れた。

 あ、名前聞いてないや。まあ、いいか……

 

 

「梓くーん」

 梓くんの隣の席に戻ると、梓くんはいつもの笑顔を見せてくれた。

 はぁ~、この笑顔を見ただけで癒されちゃうよ~////

 ただ、気になったのが、ここに来る途中、十代くんの顔色が妙に青くて、何だかほっとしてたことかな。風邪でも引いてたのかな?

 

 その後、明日香ちゃん達の決闘も終わって、月一試験は無事に終了しました。

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

 

視点:外

 

「梓くん! どうしよう!」

「どうしたのですか、あずささん!? まさか、筆記で赤点でも……」

「筆記で満点取っちゃった!!」

「極端な人!!」

 

 

 

 




お疲れ様です。
この後少し本編から離れて、何話かオリジナル入れていきたいと思ってます。
ん? 本編をやれ? 堅いこと言うない。
うんじゃら次まで待っててね。

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