遊戯王GX ~氷結の花~   作:大海

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百話目やー!!

……いやまあ、向こうも合わせると百話どころじゃねーんだけどよ……

まあいいや。とりあえず、お話しはタイトル通りの展開ですゆえ、良ければ読んでやってくんなさいな。

じゃ、いってらっしゃい。



第八話 英雄の帰還

視点:剣山

 拝啓、十代の兄貴様。

 元気ですかドン? 俺は、元気ザウルス。

 兄貴がいなくなってからというもの、目まぐるしい変化の毎日を送っているドン。

 まず、イエロー寮にいた丸藤先輩が、俺達の部屋に寝泊まりするようになったザウルス。理由は、先輩の持つ『ブラック・マジシャン・ガール』のカードを狙う生徒達が原因で、イエロー寮にいられなくなったことが理由ザウルス。

 今も時々現れるけど、その人達は全員、カミューラか、丸藤先輩の精霊……マナ? が、撃退しているドン。

 それで、カミューラと一緒に、丸藤先輩も台所に立って、食事を作るようになったザウルス。カミューラ一人でも美味い食事だったけど、二人になって効率が上がったからか、それともカミューラのテンションが上がったからか、とにかく、今まで以上に美味しくなったドン。

 だけど、それ以上に起きた変化が……

 

 

「なあ、これ見たか?」

「ああ、見た見た。あの謎の水色髪少女のだろ」

 

「あの時可愛いとは思ってたけど、こんな写真集が出るなんてなぁ……」

「しかも、『カードエクスクルーダー』の格好してた娘でもあったなんて……」

 

「はぁ~//// 萌えるぅ~////」

「可愛いし……うっ、これとか、中々エロい……////」

「ふぅ……////」

 

 

「……丸藤先輩」

「なに? 剣山君?」

「……美少女ザウルス」

「……お願い、言わないで////」

 今手に持ってる写真集の、『白魔導師ピケル』の格好した丸藤先輩を見ながら、正直にコメントしたら、先輩はそっぽ向いてしまったドン。

 というのも、前回のももえ先輩とカミューラとの決闘の後で、結局気絶した丸藤先輩を、そのままももえ先輩の部屋まで連れ込んだらしいけど(その時、丸藤先輩や梓先輩も一緒に女子寮の部屋に入れたのは、疑問に感じない方がいいかドン?)、そこで先輩達が話してた通り、コスプレ撮影会が始まったそうザウルス。

 最初こそ、気絶してるところに無理やり着せてる感じの写真もあったけど、

「途中から、ノリノリでポーズ取ってるドン。どうしたザウルス?」

「うぅ~……目が覚めたら、既にコスプレ撮影会が始まってて、嫌だったんだけど、カメラ向けられて、写真を撮られながら色々言われる度に段々気持ち良くなってきて、気付いたら、ノリノリで笑いながらポーズ取ってて……」

「完全にプロの技だドン……うわ、これとか、めちゃめちゃ色っぽいザウルス……」

 『ダンシングエルフ』の格好でセクシーポーズを決めてる写真を見ながら、そう言ったドン。

「……こうして見ると、丸藤先輩って体毛が薄いドン……」

「うん、まあ、確かに生まれつき薄いかなとは思ってたけど……」

「はぁ……うわ出た、『ハーピィ・ガール』。結構きわどいザウルス」

「……////」

 そして問題なのが、この写真集が今、アカデミア内でブームになってるってことザウルス。

 一番後ろのページを見ると……

 

 監修 浜口ももえ

 撮影 カミューラ

 演出 mana

 衣装 水瀬梓

 

 そして、

 

 モデル ショウ子ちゃん

 

 制作  ショウ子ちゃん応援団

 

 表紙を見ると、タイトルが『ショウ子ちゃん写真集』。

 何でも昔、一度だけ着たっていう、水色の着物を着て、髪型をオールバックにした丸藤先輩がポーズを取ってるドン。

 モデルの名前でほとんど正体バレバレだけど、言われなきゃ気付かないザウルス。眼鏡一つでここまで変わるものかドン……?

「丸藤先輩にこんな個性があったとは、気付かないもんだドン」

「……できることなら、一生気付きたくなかったよ……」

「……まあ、今の時代、俺みたいな厳ついのよりも、先輩や梓先輩みたいな可愛い顔した人の方がモテるザウルス」

「……それ、慰めてるつもり?」

「一応……」

 逆効果だったみたいだドン。

 そして、さっきも言った通り、今このアカデミアで、この『ショウ子ちゃん』の写真集がブームになっているザウルス。元々、昔一度だけ着た、水色の着物や、写真集でも着てる『カードエクスクルーダー』のコスプレで注目を集めてて、その美少女が誰か話題になってた時期があったらしいドン。

 そして、それが忘れられかけてた時にこんな写真集が出て、その時の話題が再燃。試しに値段を付けて売り出してみたら、五十冊くらい刷ってたのが十分で完売。その後増版しまくって大儲けしてるって、写真集を作ったももえ先輩や、撮影の中心らしったカミューラがウハウハしてたドン。

「お陰で僕も、モデル料ってことで売り上げの分け前もらったし……今度、ドローパンでも奢ってあげるよ……」

「アハハ、ありがたく、いただくザウルス……」

 実際、この写真集は、アカデミアの男子生徒のほとんどが持ってるドン。『ショウ子ちゃん応援団』の四人はもちろん、正体を知ってるっていう、三沢先輩や万丈目先輩、ジュンコ先輩や明日香先輩まで持ってるらしいし。みんなは知らないから盛り上がってるけど、正直この、謎の美少女『ショウ子ちゃん』の正体を知る身としては、複雑ザウルス……

 

「えへへ~//// ショウ子ちゃん、さいこぉ~////」

 

 俺達の隣では、実体化したマナが寝っ転がって、涎垂らしながら写真集眺めてるし……

「マナ、女の子なんだし、もう少し行儀よくしなよ……」

「すいませぇ~ん//// うへへへ////」

 丸藤先輩の言葉、全然聞こえてないザウルス。

 確かに今の姿勢、スカートの中が見えそうで、目のやり場に困るドン。

「……ちなみにこれ、また撮影するのかドン?」

「……うん。梓さんが新しいコスプレ衣装を作ったら、またやるって。おまけに今度は普通のと一緒に、1.5倍くらいの値段で安いグッズとかも付けた限定版とか、ただのTシャツに僕の写真をプリントして高く売り出すとかって、話してたよ……」

「完全にアイドルグッズの商法ザウルス……」

 何か、高一にして、そういう業界の裏側を見た気がするドン……

 もっとも、撮影の目的は、あくまでマナを含む三人が満足するためだろうけど。

「これ、もし正体がばれたら……大丈夫ザウルス?」

「さあ……まあ、間違いなくみんな怒るだろうね。けどそれ以前に、羞恥心で死ぬ自信があるかな……」

「あははは……」

 ……本当、丸藤先輩は、苦労人だドン……

 

「うへへへ……//// 翔さん、萌え~//// (ジュルリ)」

 

 その後、俺達イエロー寮の住人を連れ戻そうとする、カレー魔人こと、イエロー寮長の樺山先生と決闘をしたり、色々あったザウルス……

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

 

視点:アズサ

「……」

「おい、梓……」

『落ち着いて、ね、一旦落ち着こう……』

「……ご安心を。私は落ち着いていますとも……」

「落ち着いている割には……」

 星華姉さんは顔を引きつらせながら、周りを見てみる。

 梓の足下を中心に、地面が凍って、でっかい氷柱ができてるから。

「……クシッ」

『あぁあぁ……そんな薄着(そうび)で大丈夫か?』

「大丈夫だ。問題ない……」

『……』

「……」

 なんて、やり取りは置いといて、僕らは今、早朝のレッド寮にいる。いつも通り梓の早朝訓練に付き合ってる時、たまたま散歩してた星華姉さんに出会って、それで、デートがてらここまで来てみたら、そこには古い木の立札が地面に刺さってた。そこに書かれてることを要約すると……

『レッド寮の代表と学園側の代表が決闘して、レッド寮側が敗けた場合は問答無用でレッド寮を潰す、か……』

「ふむ……理不尽だな、これは。またクロノスとナポレオンの仕業か……」

「……」

 そりゃあ梓がキレるのも当然だよ。

「……明朝ということは、これからということか……」

「ああ、そうだろうな……」

「……決めた」

『何を?』

「この決闘、私が殺ります」

「おい、今、やる、の言葉がおかしくなかったか……?」

 なんて、星華姉さんがツッコミを入れた所で、梓は姉さんを担ぎ上げて、

「……て、ま・た・こ・れ……」

 

「かぁぁぁあああああああああああああああ!?」

 

 ちなみに、今回はちゃんとカードに戻ったから、置いてかれることはありませんでした。

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

 

視点:明日香

「フフフフ……往生際悪く本当に戦うつもりのようでアール」

 私を含めたレッド寮のメンバー、翔君、剣山君、三沢君の四人を前に、ナポレオン教頭が嘲笑しながら、そう話し掛けてきた。

「それで、そちらの代表は誰なのでアール?」

 その言葉に、私は名乗りを上げようと前に出る。今まであずさや十代達に頼りきりだったから、今回は私が闘うわ。

「わた……」

 

「私だぁあああああ!!」

 

「……!」

 と、声が重なったと思ったら、そんな怒声を上げる梓が、私達の間に走って割って入ってきた。

「な、ムッシュ梓……!」

「やはり貴様か、ナポレオン!」

「呼び捨て……!」

「ちょっと、梓、ここは私が……」

「許さない……レッド寮を潰すなど許しはしない!」

 ……私は?

 私の存在を無視して、梓はいつもの凶王な調子で、大声で叫ぶだけ。正直、背中に背負ってる星華さんのせいで迫力が半減してるけど、それでも凶行の様はそのままだわ。

 

(だから言ったのーネ。こんなことをすると、レッド寮に友人の多いセニョール梓が黙っていなイーと……)

(クロノス臨時は、こんな時に頼りないのでアール。黙って見ているのでアール)

 

「……こほん」

 と、私達にとってはお馴染みになった凶王を見ながら、ナポレオン教頭は一つ咳をして、梓に近づいた。

「ムッシュ梓、冷静になるのでアール」

 さっきは呼び捨てにされたことに怒ってたみたいだったのが、普通に話し掛けてる。

「少し落ち着いて考えるのでアール」

 そう切り出して、話しを始めた。

「あなたの優しい気持ちはよく分かっているのでアール。落ちこぼれのためにもそこまで怒るほど優しく、また決闘でも強いあなたはエリート中のエリートでアール。そんなエリートであるあなたが、いつまでもそのような優しさを与えていては、落ちこぼれの生徒達はつけあがるだけなのでアール。ここは一つ、心を鬼にして、落ちこぼれを切り捨てる覚悟こそ、エリートには必要な心意気なのでアール」

 そんな、もっともらしい説明をしてるけど……

「釈明はそれで終わりか?」

 梓には、逆効果みたい。

「ん?」

「だがそれ以上聞く気も無い」

 と、その左手には、いつもの日本刀が握られてた。そして、その柄に手を添えた瞬間、

 

 キンッ

 

 そんな、金属音がかろうじて聞こえた後、ナポレオン教頭のズボンが脱げた。

「な、何なのでアール! 私の、私のズボンのベルトが、途中で切れているのでアール!」

 まあ、やっぱ初見の人は驚くわよね。それにしてもナポレオン教頭、ハート柄のトランクスって……

「それほどまでに斬滅されたいようだな。ハゲチャビン……」

「は、ハゲ……!」

「ハゲチャビンて……ふふ……」

 と、思わず吹き出しちゃったけど、教頭にとっては笑い話にはならないわ。

「貴様は後から、気の済むまで斬滅してやる」

 そして、刀を教頭に向けながら、

 

「私の相手はどこだああああ!?」

 

「うぬぬぬ……」

 

「僕だ」

 

 と、ナポレオン教頭が怯んでる間に、声が聞こえてきた。その声に、梓は驚いた様子を見せながら、私達と一緒にそっちへ振り返ると、

「静かそうな見た目とは違って、中々血の気が多いようだな」

「あなたは……エド、さん……」

「平家あずさにリベンジできるかと思っていたが……まあいい。お前の力にも興味があったからな」

「……」

 さっきまで凄く怒って、テンションが上がってた梓が、表情を静めて、後ずさってる。

「どうした? まさか、まだ僕が怖いと言う気か?」

「……」

 どうやら図星みたいね。

 過去の自分の姿が怖い。梓はそう言っていた。そして、それが今でも変わらないということね。私達にはよく分からないけど、誰よりも過去の重さに苦しんでる梓だから感じる感覚なのでしょうね。

「……梓」

 表情を曇らせたまま黙っちゃった梓に対して、声を掛けたのは、星華さん。今度は気絶しなかったのね。

「奴が怖ろしいというのなら、私が変わってもいい」

「……」

 すごく真剣な顔で言ってる。梓のために、戦う覚悟をしている目ね。

 そんな、星華さんの提案に対して、梓の答えは、

「……いいえ」

 提案の拒否だった。

「レッド寮は、私が守ります……」

 不安とか怖さは全然消えていないみたいだけど、それでも、覚悟を決めたみたいに、エドを見た。

「私が、あなたの相手です。エド・フェニックスさん」

「良いだろう。では移動するぞ」

 そして、エドは先に、クロノス臨時校長と、ズボンを押さえてるナポレオン教頭と一緒に、決闘場へ入っていった。

 

「……良かったのか?」

 また、星華さんが梓に話し掛けてる。

「……ええ。私自身、いつまでも、過去に恐怖しているわけにはいきません。何より……」

「何より?」

「……結局のところ、彼の心を真に理解してあげられるのは、おそらくこのアカデミアで、私以外にはいないでしょうから……」

「そうか……」

 それはそうよね。二人みたいに、大切な誰か、それも肉親の命を、誰かに奪われるなんてこと、普通はそう経験することじゃないものね……

「それと、もう一つ」

「はい?」

 梓が返事をしたのを聞いて、星華さんは、真剣な顔のまま、言った。

「いい加減、私を下ろせ」

 

 ……

 …………

 ………………

 

 そして、決闘場に移動して、梓と、エドが向かい合う。

 

「水瀬梓。始める前に、一つ言っておく」

「何でしょう?」

「お前は僕が、過去のお前の姿だと言ったな。それで、自分と同じ目に遭うと分かっている。だから恐ろしいと」

「……ええ。そう言いました」

「はっきり言っておくが、僕はお前とは違う。お前がどんなことをして、ここまで来たのかは知らないが、それでも貴様が恐れるようなことには決してならない。僕は、お前のように、怒る以外に能の無い奴とは違う」

「……」

 

「あいつ、梓さんがどんな思いでずっと怒ってたのかも知らずに……」

「……分かっているのだろう」

 エドの言葉に、文句を言った翔君にそう言ったのは、星華さん。

「梓の過去を全く知らない私が言うのもどうかと思うが、二人とも、互いに事情は全く違うが、それでも根本的な思いは同じだ。お互いにその形をよく知っているからこそ、エドは、梓とは違うと、はっきり言っているのだろう」

 確かに、その言葉にも一理ある。けど……

「星華さんは、梓さんのこと何も知らないくせに、知ったようなこと言わないで欲しいっス」

 翔君、同意見ではあるけど、言い過ぎよ。

「……まあ、確かに、私はお前達のように、梓のことは、はっきり言って何も知らない。だが、それでも……」

 そう言いながら、視線を翔君から、梓達の方へ戻した。

「それでも、失う辛さくらいは、分かっているつもりだ」

「え……?」

 

「そうですね」

 

 と、星華さんが話してる間に、梓が、エドに返事を返していた。

 

「全く持って、その通り……その通りであることを、祈ります」

「なに……?」

「始めましょう」

 

 その言葉を合図に、二人は決闘ディスクに、デッキをセットした。

 遂に始まる……

 

「ちょっと待った!!」

 

『……!』

 この声は……

 声のした方を見ると、そこから走ってくる、茶色の髪と、赤色の制服。それは……

『十代!』

『兄貴!』

 

「十代さん……!」

「……?」

 

 十代は息を整えながら、私達に笑顔を向けた。そして、今まで何をしていたかを話し出した。

 正直、言ってることの半分は理解できなかったけど、何でも宇宙から来たっていう、新しいカード達でデッキを組んで、そのデッキは最初にエドに見せようと決めて、ここまで走ってきたらしいわ。

「だからさ、梓。この決闘、俺に譲ってくれ」

 そう言って、フィールドに立つ梓に向かって手を合わせた。

「私は一向に構いませんが……」

 そう言いながら、エドに視線を送る。するとエドも、

「良いだろう。『D-HERO』以上のHEROなど存在しないことを教えてやる」

 そう了承した。それを聞いた十代は、梓の持っていた(普通の)決闘ディスクを受け取って、エドと向かい合った。

 

「それではこれより、決闘を始めるのーネ!」

 

 クロノス先生の宣言で、二人は同時に、構えた。

 

「いくぞ、エド!」

 

『決闘!!』

 

 ……

 …………

 ………………

 

 結果だけ先に話すと、決闘は、十代が勝った。

 エドは以前の決闘でも使用した『D-HERO』を駆使した決闘を行なった。

 それに対抗した十代が使ったのは、新しく手に入れたっていう、『N(ネオスペーシアン)』、そして、『E・HERO ネオス』を主体としたデッキだった。

 

「バカな……HERO使いの僕でさえ、こんなE・HEROは、見たことがないぞ……!」

 

 十代の召喚した『E・HERO ネオス』に、エドはそんな声を出しながらうろたえていた。

 

「アズサ?」

『……いや、僕も知らない。あんなカード、僕の世界にも存在してないよ……』

「……ということは、あれはおそらく、十代さんだけが持つカードということか……」

 

 こっちでは、梓が独り言……いえ、多分アズサと会話してるのが聞こえた。

 そして更に、十代はそれだけでは終わらなかった。

 フィールドに並べたネオスとNで、『融合』魔法カードを使わずに、二体のモンスターをデッキに戻して行う融合召喚、『コンタクト融合』。それを使って新たなE・HEROを呼び出した。

 それで一度は勢いをつけたけど、戦闘が終わった後、せっかく特殊召喚した融合モンスターはデッキに戻ってしまった。

 

「まさか十代の奴、まだ新しいデッキを把握しきれてないのか?」

「これじゃあ、兄貴のフィールドがら空きだよ……」

 

「十代さん……」

『まあ、らしいっちゃらしいけど……』

「らしいのか?」

『うん……』

「そうか……」

 

 けど、十代はそれで諦めはしなかった。

 手札はゼロだったけど、すぐに手札を回復、更に、新たなNモンスターを次々に召喚していって、その効果を駆使してエドを驚かせた。

 けどエドも負けじと、次々に見たことのないD-HEROを呼び出して、十代を驚かせた。

 十代は、そんなエドとの決闘に、心から楽しんでいるようだった。

 そして、そんな十代に感化されたのか、エドも段々、楽しんでいるように見えた。そして最後には、笑いながら決闘するようになった。

 そんな決闘が続いて、最後は、エドの『D-HERO ドグマガイ』、十代の『E・HERO フレア・ネオス』、二体の強力モンスターがぶつかって、十代が決闘を制した。

 

「十代」

 

 決闘が終わった後、エドは、十代に話し掛けた。

 

「今日のところは、僕の敗けだ。だが、D-HEROが敗けたわけじゃない。僕のプレイが、未熟だっただけだ」

 

 ……あずさとの決闘でも、似たようなこと言ってたわよね……

 

「もちろん、誰もD-HEROが弱いなんて、思ってないさ。誰の心の中にもHEROはいる。自分にとって、最強のHEROがね」

「……」

 

『十代、良いこと言うねぇ……』

「同じHERO使いとしては、共感できる言葉ですか?」

『うん。僕の心にも、最強のHEROはいるからさ』

「アブソルートZeroですか?」

『いんや。僕の心の中の、最強のヒーローは……』

「……?」

『内緒』

「……」

 

 そして、エドは十代との話しを終えた後、クロノス先生と、ナポレオン教頭に声を掛けた。何でも、この学園を拠点にするということだった。

 その後で、クロノス先生と、ナポレオン教頭は帰ろうと立ち上がった……

 

 スゥ……

 

「な!」

「イィ!?」

「……どこへ行く気だ?」

 

 あ……ありのまま今起こったことを話すぜ! 『俺達が話しをしていたら梓がナポレオン教頭に対してキレていた』な……何を言っているのか分からねーと思うが、俺も何が起こったのか分からなかった……頭がどうにかなりそうだった……催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……

 

「貴様への斬滅は、まだ終わっていない……」

 

 そう言って、混乱してる俺……私達と、驚いてるエドやクロノス先生を前に、その胸倉を左手で掴んで、そのまま片手で持ち上げ……あ、ズボンが落ちた。

 

「ま、待つのでアール! もう決闘の決着はついたのでアール! これ以上、その話しは終わりなのでアール!」

「終わらせるのか?」

「ん?」

「レッド寮を廃止する。それを二度と行わず、この場で終わらせる。そうするのか?」

「も、もちろんなのでアール……!」

「……」

 

 ナポレオン教頭はそう言ったけど、梓はただ、ジッとその顔を見つめてるだけ。そして、

 

「嘘だな」

「な……!」

 

 嘘? どうして? 汗で見分けたの? それとも汗を舐めたの?

 

「貴様がいる限り、レッド寮の皆さんはいずれ、必ず居場所を失う。貴様ごときのせいで、そんなことになるくらいなら……」

 

 と、梓は言いながら、右手にアヌビス……違う、ドリー・ダガー……でもない、いつもの刀を、抜き身で取り出していた。そして、それを、ナポレオン教頭の首にあてがって……

 

「ま、待つのーネ! セニョール梓!」

 

 と、梓の言動に、さすがにクロノス先生が慌てて止めに入った。けど、その直後、

 

「そ、そう! 今日のことを提案したのは、クロノス臨時なのでアール!」

「アガ!?」

 

『えぇ!?』

 ぎゃにぃぃぃいいいい!?

 

「我輩はやめるよう言ったのでアール! しかし、クロノス臨時が無理やり話しを進めたのでアール! 悪いのはクロノス臨時でアール!」

「アダバ!」

 

 うそ、クロノス先生が……?

 

「もはや貴様の嘘は聞き飽きた……」

「は?」

 

「え?」

 

「クロノスはそんな真似はしない」

「セニョール梓……!」

「教育者として、肝心なところで優柔不断なきらいを見せるクロノスに、そんな決断が下せると思っているのか?」

「……」

 

 ……まあ、確かにね。

 落ち込んでいるクロノス先生には悪いけど、確かに、クロノス先生が、こんな大それたことするとは思えないわ……

 

「ぐぬぅ……」

 

 そしてどうやら、本当に嘘だったみたい。これはさすがに顔を見れば私でも分かる。

 

「貴様、真の意味で救いようがないな。貴様がいる限り、レッド寮の生徒達に安らぎは無い」

 

 本当。ナポレオン教頭は、レッド寮生の睡眠を妨げる『トラブル』であり『敵』ということね。

 おまけに、助かるためにクロノス先生まで出汁に使って。とても哀れ過ぎて、何も言えねえ……

 

「今この場で、眠れ……」

 

 そう言って、刀を持ち上げて……

 て、いや違う! 静観してる場合じゃなかった!

「梓、やめなさい!」

「梓!」

 

「セニョール梓! 待つのーネ!」

「お、おい、水瀬梓、それはいくらなんでもまずいぞ……!」」

「死ねえ!!」

 

 ガシッ

 

「……!」

 梓が、刀でナポレオン教頭を刺そうとした、その時だった。

 

「梓くん、いつも言ってるけどやり過ぎだよ……」

 

『あずさ(さん)!』

 うわあああ!! あずさが起きてるぅ~~~~~~~~っ!!

「ブラボー! おお……ブラボー!!」

「急にどうした? 明日香」

「……いえ、なんでもないわ十代……」

 ……何だか、梓が凶王化する度に別の自分が顔を出してる気がするわ。

 一度落ち着きましょう。素数を数えて落ち着きましょう。

 1、2、3、5、7、11……

 あら? 1って素数だったかしら?

 なんてことはどうでもいいわ! あずさが来てくれた!

「けど、朝に弱いあずさが、どうして……?」

「……マナに頼んで、呼んでもらったんだ」

 と、私が呟いた言葉に、翔君が答えてくれた。そう言えば、翔君にも精霊がいたのよね。

 まったく、こういう時、見えないっていうのも不便だと思うわ。

 

「……」

「梓くん、とりあえず、手を離そうか」

「しかし、このハゲチャビンを野放しにしていては、いずれまたレッド寮が……」

「ハゲ……? 確かにそうだけど、それでも殺しちゃダメ。他にも方法はあるでしょう」

「……ちっ」

 

 と、梓は顔を伏せながら舌打ちしたと思ったら、ナポレオン教頭を持ったまま、決闘場まで、ひとっ跳び。

 

「うおお!?」

 

 その様子に、エドは驚いた声を出してる。そう言えば、以前は見てなかったわね。

 と、思ってる間に梓はナポレオン教頭を放り投げた。

 

「決闘だ。今から、私と……」

「デュ、決闘? 我輩が、ムッシュ梓と……?」

「そうだ。私と貴様が、今から決闘する……」

「な、なぜそうなるのでアー……」

 

「貴様に拒否権は無い!! それとも斬滅されたいかああああああああ!?」

 

「……!!」

 

『……!!』

 そのものすごい怒声に、私達が驚いたのはもちろん、決闘場全体が震えた。

 おまけに梓の足下を中心に氷が広がったと思ったら、またすぐ割れるっていう光景まで。

「……なるほどな。これこそが、真の凶王の姿ということか……」

 そう、星華さんが納得した声を出してる。今まで見たこと無かったのかしら……

 

「……水瀬梓。あいつは、人間なのか……?」

「梓くんは人間だよ!!」

「……! す、すまない、失言だった……」

 

 エドが思わず漏らした言葉に、あずさは敏感に反応してる。

 まあ、二人の気持ちはよく分かるから、何とも言えないけれど。

 

「ぬぅ……決闘するなら、せめてズボンを……」

 

「構えろぉおおおおおおおおおおおお!!」

 

「あわわわわわ……!!」

 

 教頭は慌てながら決闘ディスクを構えたわ。

 

「これ以上大それたことを考えられないよう、私が貴様を叩き潰す……覚悟しろよ、ハゲチャビン……」

「ぬぬぬぬ……」

 

 ナポレオン教頭が、恐怖に脅えているのを無視しながら、二人は叫んだ。

 

『決闘!!』

 

 

 

 




お疲れ~。
それじゃ、次話で凶王梓と、ハゲチャビン教頭……失礼、ナポレオン教頭の決闘です。
てことで、ちょっと待ってて。







……せっかくの百話目なので、どうでもいいおまけつけときますわ。
興味があればどうぞ。



・おまけ


 どうでもいい情報を一つ。


 作中キャラの大っきさ。

 あずさ>マナ>>カミューラ≧星華>明日香>>ミズホ>>>>
 (越えられない壁)>>>>ジュンコ≧麗華>モモエ≧梓≧アズサ≧翔


 まああくまで大海のイメージだけどね。
 ちなみに、なんの? と聞かれても答えねえからな。


んじゃ今度こそ、ちょっと待ってて。

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