遊戯王GX ~氷結の花~   作:大海

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百一話~。
つっても前話の続き~。
さあ、張り切っていこ~。
行ってらっしゃい。



第八話 英雄の凱旋

視点:明日香

 

『決闘!!』

 

 

ナポレオン

LP:4000

手札:5枚

場 :無し

 

LP:4000

手札:5枚

場 :無し

 

 

「先行は貴様だ、ハゲチャビン……」

「ぐぬぬ……いい加減、ハゲチャビンと呼ぶなでアール……ドロー」

 

ナポレオン

手札:5→6

 

「……『トイ・ソルジャー』を召喚でアール」

 

『トイ・ソルジャー』

 レベル3

 攻撃力800

 

「おお、可愛いモンスターだな」

「……いや、あれは……」

「侮れないわ……」

 

「少しは決闘が分かるのでアールな。カードを四枚伏せ、ターンエンドなのでアール」

 

 

ナポレオン

LP:4000

手札:1枚

場 :モンスター

   『トイ・ソルジャー』攻撃力800

   魔法・罠

    セット

    セット

    セット

    セット

 

 

「さあ、ムッシュ梓のターンなのでアール。我輩の辞書に『敗北』という文字が無いことを教えてやるのでアール」

「私のターン、ドロー」

 

手札:5→6

 

「……」

 

 あら? 今、チラッとこっちを見たような……

 

「……魔法カード『天使の施し』を発動。カードを三枚ドローし、その後二枚を墓地へ捨てる。永続魔法『ウォーターハザード』発動。自分フィールドにモンスターが存在しない時、手札のレベル4以下の水属性モンスター一体を特殊召喚する。手札の『E・HERO オーシャン』を特殊召喚」

 

『E・HERO オーシャン』

 レベル4

 攻撃力1500

 

「あれは……!」

 

「おお! 久しぶりにフィールドで見たぜ、『E・HERO オーシャン』」

 

「更に、このカードを通常召喚。『E・HERO アイスエッジ』」

 

『E・HERO アイスエッジ』

 レベル3

 攻撃力800

 

「あの二体が、水瀬梓のE・HERO……」

 

「おお! アイスエッジもだ」

「……そう言えば、あの二体をあんなふうにフィールドに出したのって、これが初めてじゃない?」

「ああ。言われてみれば、今までは融合素材としてしか使われてこなかったな」

 まあ、普通に出すより、梓のエースだったアブソルートZeroの素材にした方が強力だものね。

 けどなんだか意外ね。今までみたいに、てっきり一ターン目からシンクロモンスターで攻めるものだと思っていたけど……

 

「ふふふ……ご立派な英雄が我が軍を見下ろすなら、一つ大砲の的にして、我が軍の士気を高めるのでアール。罠発動『トイ・キャノン』」

 

 その罠の発動で、二体の『トイ・ソルジャー』と一緒に大きな大砲がフィールドに現れた。

 

「この、『トイ・キャノン』の効果は、相手モンスター一体を守備表示に変えるのでアール」

 

 その説明で、『トイ・キャノン』はその照準を、『E・HERO オーシャン』に合わせた。

 

「てぇええー!」

 

 そして、発射された大砲がオーシャンにぶつかって、ひざを着かせちゃった。

 

『E・HERO オーシャン』

 守備力1200

 

「更にこのカードは、相手ライフを400ポイント奪うのでアール」

「……」

 

LP:4000→3600

 

「梓さんが、先制されちゃった!」

 

「ホホホホ! 更にいくでアール! 罠カード『ガリバー・チェーン』発動!」

 

 続けてカードを発動させて、今度は地面から出てきたいくつもの鎖が、オーシャンをがんじがらめに縛りつけた。

 

「ヌフフフフー、もしオーシャンを攻撃表示にすると、たちどころに破壊されるのでアール。もはやそのモンスターは、ただの案山子なのでアール。ンヘヘヘヘヘー」

「……」

「しかも、残ったアイスエッジの攻撃力は800。このままバトルしたところで、攻撃力の並ぶ『トイ・ソルジャー』と相打ちになるだけなのでアール」

「ならば戦闘などしない」

「ぅえ?」

「アイスエッジの効果。手札を一枚捨てることで、相手に直接攻撃できる」

 

手札:3→2

 

「バトルだ。アイスエッジで、ハゲチャビンにダイレクトアタック!」

「だ、だからハゲチャビンと呼ぶ、ぬぁあああ!」

 

 ハゲチャ……じゃなくて、ナポレオン教頭が言う間に、アイスエッジの小さな拳が届いた。

 

ナポレオン

LP:4000→3200

 

「そして、アイスエッジが直接攻撃によって相手に戦闘ダメージを与えた時、相手の場にセットされた魔法、罠カード一枚を破壊できる。真ん中のカードだ」

「うぅ……」

 

 梓が宣言すると、アイスエッジは氷柱を一つ飛ばして、それが宣言された真ん中のカードに刺さった。そして破壊されたのは、

 

「『落とし穴』……あれ? なんで発動しなかったんだ?」

「『落とし穴』の効果で破壊できるのは、召喚、反転召喚された攻撃力1000以上のモンスターだ。攻撃力1500のオーシャンは『ウォーターハザード』による特殊召喚、通常召喚されたアイスエッジは攻撃力が800。どちらも破壊は不可能だ」

「へぇー……」

「いずれにせよ、破壊しておいて正解なカードね。これで今後は安全にモンスターを展開できる」

 

「……カードをセット。これでターンエンド」

 

 

LP:3600

手札:1枚

場 :モンスター

   『E・HERO アイスエッジ』攻撃力800

   『E・HERO オーシャン』守備力1200

   魔法・罠

    永続魔法『ウォーターハザード』

    セット

 

ナポレオン

LP:3200

手札:1枚

場 :モンスター

   『トイ・ソルジャー』攻撃力800

   魔法・罠

    永続罠『ガリバー・チェーン』

    セット

 

 

「梓の奴、いつもの決闘とは違うな……」

「ええ。てっきり今回もワンターンキルを狙うか、一気にモンスターか伏せカードを並べて優位に立つのかと思ったけど……」

「何ていうか……普通な感じザウルス……」

 

「我輩のターン、ドロー」

 

ナポレオン

手札:1→2

 

「『トイ・ソルジャー』の効果発動。スタンバイフェイズに『トイ・ソルジャー』が存在している時、デッキから、同名カードを特殊召喚してもよいのでアール。我輩は、二体の『トイ・ソルジャー』を特殊召喚するのでアール」

 

『トイ・ソルジャー』

 レベル3

 攻撃力800

『トイ・ソルジャー』

 レベル3

 攻撃力800

 

「これでナポレオン教頭のフィールドには、三体の『トイ・ソルジャー』が並んだ」

「正に、美しき統率の取れし無敵の軍隊(カンパニー)ね」

「かんぱにー?」

「気にしないで……」

 

「時にムッシュ梓。あなたは戦に必要な力が、何かご存知でアールか?」

「……それを私に聞くのか?」

「聞いているのでアー……」

「兵力、士気、敵対心、策、奇策、団結、物資、情報、武器、兵器、欲求、願望、野望、渇望、希望、絶望、怒り、悲しみ、憎悪、力、力、力力力力力力力力……他にあるか?」

「……それは、一に戦略、二に機動力、そして最も重要なのは、決断力なのでアール」

「……御大層に何をのたまうかと思えば、そんな言葉にするまでもない当たり前の要素か。所詮ハゲチャビンの考えることなどその程度……」

「ぐぬぬ……我輩が言いたいのは、オシリスレッドなどにこだわっているムッシュ梓には、その力が無いということでアール!」

「……そう思うなら試してみろ。もっとも、強さと格式ばかりを重視する出来損ないの指揮官が、やれるものならな」

「はん! これを見ても同じことが言えるのでアール? 魔法発動『強行軍』! このターン、攻撃力を半分にする代わりに、相手プレイヤーに直接攻撃できるのでアール。二のえー、筒! 全体前へー、目標ムッシュ梓。駆け足始め!」

 

 教頭先生の言葉に忠実に従った『トイ・ソルジャー』達が、梓の前まで走る。けど走った後、息切れしながらばて始めた。

 

『トイ・ソルジャー』

 攻撃力800/2

『トイ・ソルジャー』

 攻撃力800/2

『トイ・ソルジャー』

 攻撃力800/2

 

「……随分と貧弱な強行軍だな。ハゲチャビンが大将では、軍の士気は低下するばかりか」

「はん! そんなことは、ガッテン承知の助でアール」

 

「ガッテン?」

「承知……」

「の助……?」

「教頭面白え」

 

「魔法発動『鼓笛隊』!」

 

 と、教頭が魔法を発動させた。そして、今度は太鼓やら笛やらを持った『トイ・ソルジャー』の行列が、梓の前まで行進していった。

 

「『鼓笛隊』は、攻撃力1000以下のモンスターの攻撃力を、二倍にするのでアール」

「ほぉ……」

 

『トイ・ソルジャー』

 攻撃力800/2×2

『トイ・ソルジャー』

 攻撃力800/2×2

『トイ・ソルジャー』

 攻撃力800/2×2

 

 攻撃力が戻った!

 

「全体、各個射撃用意、狙え! バタン!」

「……」

 

 そして、その宣言で、三体の『トイ・ソルジャー』の銃から、順にコルクが飛ぶ。

 

 パン

 パン

 パン

 

 ガン

「……」

 ガン

「……」

 ガン

「……がっ!!」

 

 二体目までの攻撃には平然としていた梓が、三体目の攻撃を受けた途端、その……下半身を押さえて、ひざを曲げてうずくまった。

「うぅわ……」

「あ、あれは痛いドン……」

「ああ。凶王と言えども……」

「ダメージ大きいっス……」

 

LP:3600→1200

 

「水瀬梓……男だったんだな」

「えぇ~、エドくん、今更……?」

「……いや、すまん。男だとは聞いていたが、あの顔にあの外見では、正直……」

「そりゃ梓くんはアカデミアの誰よりも綺麗な顔してるけど、あれでもれっきとした男の子だってば。実際に痛がってるし……」

「……凶王と言えど、弱点は同じというわけか……」

「星華さんまで。仮にも梓くんの恋人でしょうに……」

「……」

「なに? どうかしました?」

「いや……すまん……」

「……? 梓くーん、だいじょうぶー?」

「……! 梓ー、しっかりしろー」

 

『……梓、大丈夫かって?』

「お゛お゛お゛お゛お゛お゛ぉぉぉぉ……」

『あぁ……痛いんだよなぁそこ。僕も梓だったし、よく分かる……』

「ウッヒョヒョホホハハ。ムッシュ梓のライフは、風前の灯なのでアール」

「……」

「罠カード『不平等条約』を発動するのでアール。この条約は、ムッシュ梓がドローする度に、100ポイントのダメージを与える。そして、その度に我輩は100ポイント回復するという、美しくも不平等な条約なのでアール」

「……」

「グフフへへへ。ターンエンドでアール」

 

 

ナポレオン

LP:3200

手札:0枚

場 :モンスター

   『トイ・ソルジャー』攻撃力800

   『トイ・ソルジャー』攻撃力800

   『トイ・ソルジャー』攻撃力800

   魔法・罠

    永続罠『ガリバー・チェーン』

    永続罠『不平等条約』

 

LP:1200

手札:1枚

場 :モンスター

   『E・HERO アイスエッジ』攻撃力800

   『E・HERO オーシャン』守備力1200

   魔法・罠

    永続魔法『ウォーターハザード』

    セット

 

 

「ヒッヘッヘッヘッヘッヘ。いくら最強の二年生でも、教師に勝つ力までは有していなかったようでアールな」

「……く……」

「うん?」

「く……くっ、くくくふふふ……」

 

 梓のターンが回った瞬間、梓は、不気味な笑い声を上げながら、立ち上がった。

 

「……レッド寮を潰すなどと豪語するから、どれほどのものかと一ターンの猶予を与えてやったというのに……貴様の力など、所詮はこの程度か」

 

「……ここは、ビビるシーンドン……」

「だけど……」

「ビビり辛いな……」

 確かに。梓は言い訳やハッタリを言うような人じゃない。だから梓がああ言う以上、何かあるって、梓を知る人ならそう思って警戒する所よ。

 中腰で涙目になりながら、両手でタマキンを押さえてる体勢に目を瞑ればだけど……

 

「……はん! 負け惜しみは見苦しいのでアール」

「そう思うなら……たっぷりと思い知れ。私のターン」

 

手札:1→2

 

「この瞬間、『不平等条約』の効果発動。ムッシュ梓のライフを100ポイント削り、我輩のライフを100ポイント回復するのでアール」

 

LP:1200→1100

 

ナポレオン

LP:3200→3300

 

 まずいわね。教頭の場にモンスターが展開されてる上、ライフが少ないこの状況では、100ポイントでも貴重よ……

 

「そんなに私のライフが欲しいのなら、くれてやる。チューナーモンスター『深海のディーヴァ』を召喚!」

 

『深海のディーヴァ』チューナー

 レベル2

 攻撃力500

 

「チューナーだと!? では、まさかあいつも……!」

 

「『深海のディーヴァ』の効果。このカードの召喚に成功した時、デッキからレベル3以下の海流族モンスター一体を特殊召喚する。レベル1の『氷結界の輸送部隊』を、特殊召喚」

 

『氷結界の輸送部隊』

 レベル1

 守備力200

 

「カードを一枚伏せる。そして、伏せカード発動『命削りの宝札』! 手札が五枚になるよう、カードをドローし、五ターン後、手札を全て墓地へ捨てる」

「『命削りの宝札』!?」

 

手札:0→5

 

「そ、それは、前のターンに伏せていたカード。そんなカードを伏せていたのでアール? なぜ前のターンで発動させなかったのでアール?」

「使ったなら、ハゲチャビンなどすぐに終わらせられるからに決まっているだろうが」

「なぁ……! シカーシ、『不平等条約』の効果が発動するのでアール!」

「引いた枚数は五枚だが、ドローという行為は一度。よってダメージは100だ」

 

LP:1100→1000

 

ナポレオン教頭

LP:3300→3400

 

「そして、レベル3の『E・HERO アイスエッジ』に、レベル2の『深海のディーヴァ』をチューニング」

 

 宣言された二体のモンスターが飛び上がって、『深海のディーヴァ』が光に変わった。

 

「激流轟く海原(かいげん)の地より、清誕せしは神なる潮流……」

「シンクロ召喚! 母なる海の力『神海竜ギシルノドン』!」

 

『神海竜ギシルノドン』シンクロ

 レベル5

 攻撃力2300

 

「水瀬梓もまた、シンクロ召喚を……!」

「……あれ? 言ってなかった?」

「聞いていない。僕が聞いたのは、禁止カードを使ってまで勝とうとした、という事実だけだ」

「ああ、そっか……ごめんね、エドくん」

「いや、まあ、謝る必要はないが……」

 

「更に、『氷結界の輸送部隊』の効果。墓地に眠る二枚の『氷結界』と名のつくモンスターをデッキに戻し、お互いにカードを一枚ドローする。私は墓地に眠る『氷結界の水影』、『氷結界の虎将 ライホウ』をデッキに戻し、互いにドローする」

「『天使の施し』と、アイスエッジの効果で捨てた三枚のカードのどれかでアールな……」

 

手札:5→6

 

ナポレオン

手札:0→1

 

「『不平等条約』の効果も発動するのでアール!」

 

LP:1000→900

 

ナポレオン

LP:3400→3500

 

「更に魔法カード『ワン・フォー・ワン』を発動。手札のモンスター一枚を墓地へ送ることで、手札またはデッキに眠るレベル1のモンスター一体を特殊召喚する。私は手札の『フィッシュボーグ-ガンナー』を捨てることで、レベル1の『アンノウン・シンクロン』を特殊召喚する」

 

手札:5→4

 

『アンノウン・シンクロン』チューナー

 レベル1

 守備力0

 

「そして、墓地の水属性『氷結界の武士』と『深海のディーヴァ』の二体を除外することで、現れよ冷狼……『フェンリル』を特殊召喚」

 

『フェンリル』

 レベル4

 攻撃力1400

 

「レベル4の獣族『フェンリル』に、レベル1の闇属性『アンノウン・シンクロン』をチューニング」

 

 また、さっきと同じ光景が広がる。

 

暗士(あんし)凍士(とうし)交わりし時、永久凍土の時代が始まる。熱無き世界へ」

「シンクロ召喚! 冷たき魔人『氷結のフィッツジェラルド』!」

 

『氷結のフィッツジェラルド』シンクロ

 レベル5

 攻撃力2500

 

「二回連続でシンクロ召喚とは……!」

「……このくらいで驚いてたら、後が持たないよ」

「なに……?」

 

「この瞬間、ギシルノドンの効果を発動。フィールド上のレベル3以下のモンスターが墓地へ送られた時、このターンの間、このカードの攻撃力は3000となる」

 

『神海竜ギシルノドン』

 攻撃力2300→3000

 

「攻撃力3000!」

「永続魔法『生還の宝札』発動!」

「『生還の宝札』? 墓地からモンスターが蘇生される度、カードを一枚ドローできるカード……」

「そうだ。そして、私のフィールドにレベル3以下の水属性が存在する時、手札を一枚捨てることで、墓地のこのカードを特殊召喚できる。『氷結界の輸送部隊』のレベルは1。手札を一枚捨て、チューナーモンスター『フィッシュボーグ-ガンナー』特殊召喚」

 

手札:2→1

 

『フィッシュボーグ-ガンナー』チューナー

 レベル1

 守備力200

 

「宝札の効果でドロー」

 

手札:1→2

 

LP:900→800

 

ナポレオン

LP:3500→3600

 

「……魔法カード発動『強欲な壺』。カードを二枚ドロー」

 

手札:1→3

 

LP:800→700

 

ナポレオン

LP:3600→3700

 

「ライフダメージを完全に無視してるドン……」

「ああ。だが梓の場合、数値が僅かであることも踏まえれば、ダメージも回復も気にする必要が無いのだろう……」

 

「『フィッシュボーグ-ガンナー』をシンクロ素材とする場合、ガンナー以外のモンスターを水属性に統一しなければならない。そして、言うまでもないが、こんな鎖ごときでシンクロ召喚は止められない」

「ぬぅ……」

「レベル4の水属性『E・HERO オーシャン』と、レベル1の水属性『氷結界の輸送部隊』に、レベル1の『フィッシュボーグ-ガンナー』をチューニング」

 

 三度目の光景。今度は二体のモンスターが星に包まれたわ。

 

「凍てつく結界(ろうごく)より昇天せし翼の汝。全ての時を零へと帰せし、凍結回帰(とうけつかいき)の螺旋龍」

「シンクロ召喚! 舞え、『氷結界の龍 ブリューナク』!」

 

『氷結界の龍 ブリューナク』シンクロ

 レベル6

 攻撃力2300

 

「氷結界の、龍……!」

「相変わらず、美しい龍だ……」

「あれが梓くんのエースモンスターだよ」

「あれが……」

 

「対象がフィールドを離れたことで、永続罠である『ガリバー・チェーン』はただの案山子だ」

「うぬぬぬ……」

「まだだ。魔法カード『サルベージ』発動。墓地の攻撃力1500以下の水属性モンスター二枚を手札に加える。墓地のオーシャンと、『フェンリル』を手札に加える」

 

手札:2→4

 

「ブリューナクのモンスター効果発動。手札を一枚捨てることで、相手フィールドのカードを一枚、相手の手札に戻す。私は一枚の手札を捨て、ハゲチャビンの『不平等条約』を手札に戻す」

「なぁ!?」

 

手札:4→3

 

「凍結回帰!」

 

 梓が捨てた手札をブリューナクが吸い取った瞬間、ブリューナクが、怪しい霧でフィールドを包む。そして、その霧に包まれたハゲチャビン教頭のフィールドの永続罠『不平等条約』が、光になって消えた。

 

ハゲチャビン

手札:1→2

 

「『正義(ジャスティス)』は勝つ!」

「明日香?」

「気にしないで……」

 

「そして、魔法カード発動『ミラクル・フュージョン』!」

 

「あれは!!」

 

「フィールドまたは墓地のカードをゲームから除外することで、『E・HERO』の融合召喚を行う。墓地に眠る『E・HERO アイスエッジ』と、たった今捨てた水属性の『フェンリル』を除外。現れよ、氷結の英雄『E・HERO アブソルートZero』!」

 

『E・HERO アブソルートZero』融合

 レベル8

 攻撃力2500

 

「あれが、アブソルートZero……」

 

「Zeroはフィールド上の水属性モンスター一体につき、攻撃力を500ポイントアップさせる。フィールドには水属性のシンクロモンスターが三体。よって1500ポイントアップだ」

 

『E・HERO アブソルートZero』

 攻撃力2500+500×3

 

「あ、ああ……」

「更に魔法カード発動『融合』。手札の『E・HERO オーシャン』と、フィールドのアブソルートZeroを融合!」

「ハァ!?」

「再び現れよ! 氷結の英雄『E・HERO アブソルートZero』!」

 

『E・HERO アブソルートZero』融合

 レベル8

 攻撃力2500+500×3

 

「な! なぜわざわざ融合召喚したアブソルートZeroを融合素材にして、二体目のアブソルートZeroを……?」

「貴様の場のカードを見ろ」

「場……? こ、これは……!」

 

「何だあれは!?」

 

 そう言えば、エドやハゲチャビン教頭は初めて見るのよね。アブソルートZeroの持つ、攻撃力アップ以上の凶悪な効果を。

 

「Zeroがフィールドを離れた時、相手フィールドのモンスター全てを破壊する」

「はぁ!?」

氷結時代(アイス・エイジ)!!」

 

 驚いてる間に、三体の『トイ・ソルジャー』全てが氷漬けになって、そして、砕けた。

 

「そんな……我輩の、最強の軍が……」

「そしてもう一枚だ。伏せカード発動! 『ミラクル・フュージョン』!」

「に、二枚目……!」

「墓地の『E・HERO オーシャン』と、水属性『氷結界の輸送部隊』を除外! 氷結の英雄、『E・HERO アブソルートZero』!!」

 

『E・HERO アブソルートZero』融合

 レベル8

 攻撃力2500+500×3

 

「三回連続のシンクロ召喚に加えて、三回連続の融合召喚とは……」

「……それにしても、これはまた……」

 

『E・HERO アブソルートZero』

 攻撃力2500+500×3

『E・HERO アブソルートZero』

 攻撃力2500+500×3

『神海竜ギシルノドン』

 攻撃力2300→3000

『氷結のフィッツジェラルド』

 攻撃力2500

『氷結界の龍 ブリューナク』

 攻撃力2300

 

「あ……ああ、あ……」

 

 ハゲチャビン教頭はもう、その光景に目も口も開きっぱなし。

 まあ、私達も慣れてるとは言え、ほとんど同じような気持ちだけど……

 

「これが、水瀬梓の決闘……これを、平家あずさ。君は、破ったというのか……」

「うーん、まあね……それでもわたしとやった時は、禁止カードを使ってたって意味では、これよりもっと酷かったけど……」

「これを更に超える戦術を、君は……」

(平家あずさ……凶王を超える、統焦か。なるほど手強い……)

 

「そんな……我輩の辞書に、敗北という文字は……」

「ならば今刻め。敗北という文字を。私への恐怖と、絶望という文字と共に。そしてその辞書を、『無能なるハゲチャビン大辞典』とでも命名しろ! バトル!!」

「ひぃ!!」

「五体のモンスターで、ハゲチャビンにダイレクトアタック!!」

 

 フィールドは案山子になっただけの『ガリバー・チェーン』、手札は『不平等条約』と、何かしらのカードの二枚だけの状態のハゲチャビン教頭に、梓の容赦のない攻撃を、防ぐ手立ては無かった。

 

ハゲチャビン

LP:3700→0

 

 

「あ、相変わらず、凄いドン……」

「うむ、いつ見ても、本気を出した梓の決闘は強烈だな……」

「本当に、梓さんを怒らせないようにしなきゃね……」

 みんなが話してる間に、梓は無言で決闘ディスクを畳んで、フィールドを降りていた。

 

「……」

 

 歩きながら、客席に視線を送ってくる。

 

「……!////」

 

 と、突然顔を赤くして、目を背けたわ。多分あずさが笑い掛けたのね。

 まったく、凶王の力をあれだけ見せつけておいて、こういうところだけは愛いわね。

 

「梓」

 

 なんてこと考えてる間に、いつの間にか星華さんが、梓の元まで歩いていて、その手を掴んだ。

 

「行くぞ。早くせねば授業に遅れる」

「え? ですが今は、早朝……」

 

 そして、そのまま二人とも、決闘場から出ていった。

 

『……』

 

「大丈夫なのーネ? ハゲチャビン教頭、傷は浅いのーネ」

「う、うぅぬ……」

「何か言いたいのーネ? ハゲチャビン教頭……」

「うぬ……我輩の名は、ナポレオン、でアール……」

 

 二分後、そのまま私達は解散になった。

 そして、レッド寮存続の危機は、ここにひとまず幕を降ろします。

 しかし! それはまた、新たな冒険の時代の始まりでもあったのです……

 

「さっきからどうしたんだよ、明日香?」

「気にしないで……」

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

 

視点:外

 

 朝を迎え、万丈目が、朝食のために部屋を出ようとした時だった。

 

 コンコン……

 

「む……?」

 玄関を叩く音。こんな朝っぱらから誰が、何の用だろうか。そう疑問に思いながら、ボロボロのドアを開く。すると、そこにいたのは、

「おはようございます。準さん」

「あ、梓……?」

 別段、彼が訪ねてくることに驚きは無い。元々仲が良かったし、話しもよくしていた仲だ。梓を部屋へ招いた経験こそ無いが、彼の部屋を訪れ、茶を馳走になったこともあった。

 万丈目が気になったのは、梓が朝早くに自室を訪ねてきたことではない。

「なんだ? その大荷物は……?」

 その言葉の通り、梓はその背中と両手に、大きく膨らんだ風呂敷包みを持っていた。

 そして、万丈目に尋ねられ、梓は、満面の笑みで、答えた。

 

「ナポレオン教頭から、このレッド寮を守るために、しばらくこのお部屋に住まわせて頂きたいのですが」

 

「なんだ、同居か」

「はい。同居です」

「……同居?」

「同居」

「……」

 満面の笑みで、頼んでくる梓に、万丈目は、沈黙した。

 そして、それに対する驚愕の絶叫の声を上げるのは、この数秒後のことである。

 

 

 

 




お疲れ~。
んじゃオリカいくよ~。



『トイ・ソルジャー』
 レベル3
 地属性 戦士族 
 攻撃力800 守備力300
 自分のターンのスタンバイフェイズ時にこのカードが表側表示で存在する場合、デッキから「トイ・ソルジャー」を任意の数だけ表側攻撃表示で特殊召喚できる。

 遊戯王GXで、ナポレオンが使用。
 一ターン守る必要はあるものの、レベル3を三体並べられる。
 今ではエクシーズで使えるけれど、それでも時間が掛かるだろうね。そう考えると微妙なところですな。
 ちなみに遊戯王Rでも表遊戯が使用。
 ただ、向こうは攻撃力1500の通常モンスターで、全くの別物なんだけどね。


『トイ・キャノン』
 通常罠
 相手モンスターを守備表示に変更し、相手に400ポイントのダメージを与える。

 ナポレオンが使用。
 テキスト通りなら相手のモンスター全部が対象なんだろうけど、よく分かんなかったので作中での対象は一体にしました。
 ただどっちにしても微妙だ。ダメージも少ないですし、変更できるのは攻撃から守備のみですし。
 速攻魔法の『エネミーコントローラー』で十分でしょうな。


『ガリバー・チェーン』
 永続罠
 表示形式を変更したモンスター1体を対象にして発動する。
 対象となったモンスターを表側守備表示にする。
 そのモンスターが攻撃表示になった時、そのモンスターとこのカードを破壊する。

 ナポレオンが使用。
 一応、表示形式が守備に変更された場合でも発動は可能。
 ただ、これ使うくらいなら普通に除去カード使えば? という話ではあるけどね。


『強行軍』
 通常魔法
 このターン、モンスターの攻撃力を半分にする事で相手に直接攻撃できる。

 ナポレオンが使用。
 直接攻撃は強力ですが、総ダメージ量が半分になる。
 それでもレベルの制限が無いから、大型を並べればワンキルも可能。
 十分切り札に使えるでしょうな。まあライフ8000ならキツイけれども。 


『鼓笛隊』
 通常魔法
 このターン、攻撃力1000以下のモンスターの攻撃力を2倍にする。

 ナポレオンが使用。
 上の『強行軍』で攻撃力を下げておけば、元々の攻撃力が1000以上でも発動可能。
 この他色々と組み合わせれば色々と悪用もできるろうね。


『不平等条約』
 永続罠
 相手に直接攻撃によるダメージを与えた時に発動できる。
 相手プレイヤーはドローする度に100ポイントのダメージを受け、
 このカードのコントローラーはその度に100ポイントのライフを回復する。

 ナポレオンが使用。
 発動タイミングが限定的過ぎる上、数値がしょぼ過ぎ。
 何枚か合わせればいいかもだけど、何枚も積むカードでもないですしね。



以上。
まあそんなわけで、梓はレッド寮の、準の部屋に住むことになりました。
こっからどうなるかな~。
とまあそんな感じで、次話まで待ってて。

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