遊戯王GX ~氷結の花~   作:大海

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五話目~。
内容は、まあタイトル通りですわ。

一人TFキャラが出ます。ただTFしたこと無いから性格違うかも。
その時は……

許せ。

あとは、軽く原作に無い展開が入るかも。

ほんじゃ、行ってらっしゃい。



第五話 制服を着ろ

視点:あずさ

 

 シャカシャカシャカシャカ……

 

 わたし達は今、梓くんの部屋にいます。

 ちなみにわたしを含めて部屋にいるのは九人。十代くん、翔くん、隼人くん、明日香ちゃん、ももえちゃん、ジュンコちゃんが並んで正座して、その前で梓くんがお茶を点てています。

 そして、最後の一人ですが……

 

「どうぞ」

 お茶を作り、梓くんはその最後の一人にお茶を出しました。

「頂戴致します」

 お茶を受け取ったのは、緑色の髪に眼鏡を掛けた、一年生の委員長、『原 麗華』ちゃんです。

 麗華ちゃんはお茶を取ると、手の平で回して一気に飲み干します。その一つ一つの動きが凄く丁寧で、とても上品に見えました。

「結構なお手前で」

 何と言うか、全部が全部礼儀正しいなぁ。そこのところは見習いたい。

「それで、私にお話と言うのは?」

 ここでやっと本題。

 そもそもここへは、私が麗華ちゃんから梓くんのことを聞かれて、部屋を案内することになったんですが、その時たまたま明日香ちゃん達三人も同行することになった次第なのです。ちなみに十代くん達はわたし達の来る前から遊びに来ていました。

「お話は一つ。梓さん、あなたの服装に関してです」

 うん、まあ、予想通りと言うか、真面目な麗華ちゃんの考えそうなことだよね。

「この服装は、まずいですか?」

「当然です」

 毅然とした態度で、正座したまま梓くんを真っ直ぐ見つめる姿、何だか格好良いな。

「この学校では制服が指定されていることはご存知ですね?」

「もちろん。この学校ほど制服に特徴の見られる場所も珍しいですから」

 確かにね。季節用って訳でも無しに制服が三つも四つもある学校なんてそうそう無いよ。

「しかもあなたはオベリスクブルーのはず。なのに、どうして制服を着ないのでしょう?」

 別に寮は関係ないような気もするけど。

「私は元々、家族全員が普段から着物を着ているような家系で育ってきて、制服のような洋装はほとんどしてこなかったものですから。実際に制服は着てみましたが、とても落ち着かなかったので、クロノス先生に御許可を頂き、こう言った服装をしている次第です」

 家族全員着物なんだ。どんな家系なんだろう。

「家庭の事情にとやかく言うつもりはありません。しかし、ここが学園である以上、最低限のルールというものは遵守しなければなりません。制服はその一つです。私や、あなたが生徒である以上、ルールは守らなければなりません。着てみたら落ち着かなかったというのは、ルールを破って良い理由としては、少し弱いかと思われます」

 さすが委員長。言うことが真っ当で反論の余地が無い。

 と思ったけど、梓くんは笑いながらまた言った。

「確かにルールは守らなければなりません。しかし、私はそのルールを破る許可は頂いておりますし、ルールを破ったことでの最低限の責任は果たしているつもりです。何より、確かに制服は定められているとはいえ、強制されている訳でもない。実際に学生手帳を見てみましたが、服装に関してもそれほど強い決まりはありませんよ」

 梓くん、成績トップだしね。それに、十代くんなんかも着崩してるし。

「つまり、あなたはあくまで制服を着る気は無いと」

「一言で言えば、そうなりますね」

 麗華ちゃんは真剣な顔だけど、梓くんは終始笑顔で対応してる。けど、何だか二人の間に火花みたいな物が見える気が……

「……良いでしょう。これ以上は話し合いでは解決できそうにありません。なので、私と勝負して下さい」

 やっぱりそうなった。

「良いでしょう」

 

 

 ~十分後~

 

 パチ

 

「王手。これで積みです」

「く、やはりあそこで飛車を取られたのが痛かった……て、何で将棋をしているんですか!!」

「勝負をして欲しいと言われたので」

「誰が将棋をしようと言いました!?」

「ああ、確かに。すみません」

 

 

 ~更に十分後~

 

「チェックメイト」

「く、まさかチェスまでたしなんでおられるとは……」

「理屈は将棋と同じですからね」

「特にルークの使い方がお見事で……て、何でチェスなんですか!!」

「これもダメですか?」

「そもそもボードゲームで勝負すること無いでしょう!! ここは決闘アカデミアですよ!!」

「確かにそうですね。ではカードで決めましょう」

「始めからそうして下さい」

 

 

 ~そして三分後~

 

「スペードのロイヤルストレートフラッシュ。私の勝ちですね」

「そう思いますか?」

「当然です。これ以上の役などありません」

「……どうやらあなたは忘れているようだ。『ジョーカー』という存在を」

「なっ!! 9の、ファイブカード!?」

「私の勝ちのようですね」

「くぅ、まさかカードでも負けるなんて……カードですけど!!」

「さっきからどうしたのですか?」

「ここは決闘アカデミアですよ!! 何かを決める際は普通決闘でしょう!!」

「それならそうだとはっきり言って下されば良かったのに。他にも囲碁に花札、麻雀も用意もしておりましたのに」

「どれも分かりません!! 第一麻雀は四人でする物でしょう!! あと二人はどうする気ですか!?」

「何のためにあずささん達と一緒にいらっしゃったのですか?」

「少なくとも麻雀をたしなむためではありません!!」

「まあとにかく決闘の準備を行いましょうか」

「お話はここまでですか!? 今までのお話しはスルーする気ですか!?」

「時間は一時間後、決闘場で行いましょう」

「……本当にスルーするんですね」

 

「終わったか?」

 十代くんが眠そうに尋ねた。わたし達は七人全員、とっくに正座も崩して適当にくつろいでる。

「ええ。では確認致しましょう。あなたが勝った場合、私は明日から制服を着ることをお約束します」

「そうして下さると助かります」

 麗華ちゃんも普段通りに戻ったみたい。

「そして私が勝った場合、あなたは明日一日を着物で過ごして頂きます」

 ブッ!!

「な、なぜそうなるんですか!?」

「決闘に賭けごとを持ち込むのなら、お互いに何らかの利益不利益があって然るべきです。なので、あなたにも相応の代償を背負って頂かなければ。そうでなければ、私もこの決闘には応じかねます」

 人に何かを頼むなら同じ条件でってことか。何だか梓くんらしくない。そんなに制服が嫌なのかな。

 って、そうなるとさっきまでの勝負って……

「……分かりました。明日一日だけですよね」

「ええ。幸い明日は休日ですし、ちょうど良いのでは?」

「……では、今から一時間後、決闘場で」

 そして麗華ちゃんは出ていきました。

 

「私達も行きましょうか」

 明日香ちゃんがジュンコちゃんとももえちゃんに話し掛けた。

「ええ? まだ梓さんとあまりお話しておりませんのに……」

 ももえちゃん、気持ちは分かるけど……

「ここにいたら梓くんの邪魔になっちゃうよ」

「そうよ。麗華の様子も気になるし、早く行きましょう」

 

「じゃあ、俺達も行くか」

「そうっスね」

「んだなぁ」

 十代くん達も立ち上がった。決闘者にとって、決闘前の時間は凄く大事だってみんな知ってるもん。

「それでは一時間後、決闘場で」

「おお! 頑張れよ!」

「応援してるっスよ」

 十代くんと翔くんがそう話し掛けて、わたし達は部屋を出ました。

 

 

 

視点:外

 十代達が梓の部屋を出て数分後、アカデミアでは、ある騒ぎが起きていた。

 

「委員長と梓さんが決闘をするそうです」

「梓さんが負けたら、明日から着物はやめて制服を着るって」

 

「梓さんが、制服!?」

「そんな……梓さんが着物を着なくなるの!?」

 

「梓さんの制服……」

「梓さんが制服……」

 

『梓さんの制服……』

『梓さんが制服……』

 

 

『絶対見たい!!』

『絶対ダメだ!!』

 

 

 

視点:あずさ

 一時間が経ち、決闘場に来ました。真ん中に梓くんと麗華ちゃんが向かい合っていますが、その前から既に凄いことになっています。

 

「委員長! 勝って下さい!!」

「梓さんに制服を!!」

 

「梓さん! 勝ってくれ!!」

「梓さんは着物を着てこそですわ!!」

 

 みんな凄いなあ。制服派は女子がほとんどで、男子もちょっと混じってるな。着物派は男女が入り混じってる。

「梓さ~ん!」

「頑張ってくださ~い!」

 ジュンコちゃんとももえちゃんは普通に梓くんを応援してる。十代君達も、もちろんわたしも梓くんを応援します。

 

「では、始めましょう」

「お願いします」

 

 始まる!

 

『決闘!!』

 

 

麗華

LP:4000

手札:5枚

 場:無し

 

LP:4000

手札:5枚

 場:無し

 

 

「先行は私です。私のターン!」

 

麗華

手札:5→6

 

「私は永続魔法『悪夢の拷問部屋』を発動。そして魔法カード『デス・メテオ』発動! 梓さんに1000ポイントのダメージ! そして拷問部屋の効果で更に300ポイントのダメージです!」

「いきなりですか」

 

LP:4000→2700

 

「更に魔法カード『昼夜の大火事』! 梓さんに800ポイントのダメージ! 拷問部屋の効果で更に300ポイントのダメージ!」

 

LP:2700→1600

 

「まだまだ! 永続魔法『波動キャノン』発動! そして『プロミネンス・ドラゴン』を召喚!」

 

『プロミネンス・ドラゴン』

 守備力1000

 

「そして装備カード『ミスト・ボディ』をプロミネンス・ドラゴンに装備! これでプロミネンス・ドラゴンは戦闘では破壊されません。ターンエンド。そしてエンドフェイズ時、あなたに500ポイント、『悪夢の拷問部屋』の効果と合わせ800ポイントのダメージを与えます」

「これはこれは……」

 

LP:1600→800

 

「一ターン目で手札全てを使い切りますか……」

「ターンエンド」

 

 

麗華

LP:4000

手札:0枚

場 :モンスター

   『プロミネンス・ドラゴン』守備力1000

   魔法・罠

    永続魔法『悪夢の拷問部屋』

    永続魔法『波動キャノン』

    装備魔法『ミスト・ボディ』

 

LP:800

手札:5枚

場 :モンスター

    無し

   魔法・罠

    無し

 

 

「『波動キャノン』は墓地に送ることで、発動から経過したスタンバイフェイズの数だけ1000ポイントのダメージを与える。つまり、私に残されているのは……」

「あと一ターンです」

 

 す、すごい。麗華ちゃんがバーンデッキを使うっていうのは聞いてたけど、ここまでの火力があるなんて。梓くんがあそこまでライフを削られるところ、初めて見た。

 

「委員長さすがです!」

「勝負ありですわー!!」

「梓さんの制服姿//////」

 

「梓さん!! 諦めるなー!!」

「頼む!! 勝ってくれー!!」

「梓さんが制服姿……」

 

 周りは相変わらずだし。でもどちらにせよ、梓くんはまだ諦めてないよ!

「私のターン」

 

手札:5→6

 

「さて、前のターン中に私を倒せなかったことは失敗でしたね」

「……?」

 失敗?

「どれだけ強い火力で熱したところで、燃やし尽くせない炎では意味がありません。現に、あなたの手札は0。もはや燃やすための種火すら残っていない」

「……その状態で何を言われても、負け惜しみにしか聞こえませんよ」

「そうでしょうね。ではお見せしましょう。一滴でも水を残した炎がどうなるか」

 それだけ言った直後、梓くんは手札からカードを一枚取った。

「このカードは、メインフェイズ1の開始時でしか発動できません。魔法カード『大寒波』を発動!」

「『大寒波』!?」

 梓くんがカードを掲げた瞬間、猛吹雪が起こる。そのまま二人のフィールドと、魔法・罠ゾーンがカードごと凍っちゃった!

「お互いに、次の私のドローフェイズ時まで、魔法・罠の効果の使用及び発動・セットを封じます」

「そんな! しかし、私の場には『プロミネンス・ドラゴン』がいます! それに、効果の使用が封じられるのは起動効果のみ。装備魔法と永続魔法による永続効果は無効になりません!」

 

 ???? ……えーと、どういうこと?

「要するに、発動とセットと、効果の使用の宣言が必要な『悪夢の拷問部屋』や『波動キャノン』を墓地へ送る効果は封じられるけど、『波動キャノン』のターンカウントと、既に発動されて効果が適用されている『ミスト・ボディ』効果は『大寒波』では無効にならないの」

 さっすが明日香ちゃん! 解説ありがとう!

 

「このカードは、相手フィールド上に存在するカードの枚数が私のフィールド上のカードより四枚以上多い場合、手札より特殊召喚できます。私の場は0、そしてあなたの場は4、よって、手札より『氷結界の交霊師』を特殊召喚!」

 

『氷結界の交霊師』

 攻撃力2200

 

「いきなりレベル7……」

 麗華ちゃんも顔をしかめてる。明日香ちゃんから聞いてはいたけど、すごい迫力だよ。

 

「そして、交霊師を生贄に捧げます!」

「な!」

 えぇ! せっかく呼んだレベル7なのに!?

「『氷結界の虎将 ライホウ』を召喚!」

 

『氷結界の虎将 ライホウ』

 攻撃力2100

 

「あなたが私を燃やし尽くすのが先か、私があなたを凍らせるのが先か。いずれにせよ、このターンでできることはここまでです。ターンエンド」

 

 

LP:800

手札:3枚

場 :モンスター

   『氷結界の虎将 ライホウ』攻撃力2100

   魔法・罠

    無し

 

麗華

LP:4000

手札:0枚

場 :モンスター

   『プロミネンス・ドラゴン』守備力1000

   魔法・罠

    永続魔法『悪夢の拷問部屋』

    永続魔法『波動キャノン』

    装備魔法『ミスト・ボディ』

 

 

 そっか。ライホウを呼びたかったんだね。

「少ない水でどれだけ厚く氷を張ろうと、私が全て蒸発させます! 私のターン!」

 

麗華

手札:0→1

 

(『火炎地獄』。相手ライフに1000ポイントのダメージを与え、自分は500ポイントのダメージを受ける。梓さんの残りライフは800ですが、『大寒波』の効果で発動はできない。それに、梓さんのフィールドにはライホウ。あれはこちらの手札を一枚捨てなければモンスター効果を無効にされてしまう。『プロミネンス・ドラゴン』を利用し、私の手札を消耗させるのが狙いですね……)

 

 麗華ちゃん、かなり考えてる。ライホウも交霊師も多分効果が知られちゃってる。わたしも知ってるしね。

 

「(どの道、次のターンで『波動キャノン』が使える。仮に破壊されたとしても、私のデッキなら、800ポイント以上のダメージを与えられるカードが来る確立は高い。しかし、確実に次で仕留めるために今は……)私はこのままターンエンド。エンドフェイズ、ライホウの効果で手札を捨て、『プロミネンス・ドラゴン』の効果で500ポイントのダメージです」

 

LP:800→300

 

 

麗華

LP:4000

手札:0枚

場 :モンスター

   『プロミネンス・ドラゴン』守備力1000

   魔法・罠

    永続魔法『悪夢の拷問部屋』

    永続魔法『波動キャノン』

    装備魔法『ミスト・ボディ』

 

LP:300

手札:3枚

場 :モンスター

   『氷結界の虎将 ライホウ』攻撃力2100

   魔法・罠

    無し

 

 

 拷問部屋が凍ってるおかげでギリギリ助かった。でももう梓くんのライフは風前の灯火だよ!!

「私のターン」

 

手札:3→4

 

 これでお互いに魔法カードが使える。

 

「魔法カード『天使の施し』を発動! カードを三枚ドローし、二枚を捨てる。更に、『死者蘇生』を発動! 『氷結界の交霊師』を特殊召喚!」

「なっ!」

 それがあったんだ! だからわざわざ交霊師を生贄に……

「交霊師を生贄に捧げ……」

 ってまたぁ!?

「『氷結界のロイヤル・ナイト』を召喚!」

 

『氷結界のロイヤル・ナイト』

 攻撃力2000

 

「このカードの召喚に成功した時、相手フィールド上に『アイス・コフュン・トークン』を攻撃表示で特殊召喚します」

 ロイヤル・ナイトが麗華ちゃんに向かって槍を構えた瞬間、麗華ちゃんのフィールドに氷の棺が現れた。

 

『アイス・コフュン・トークン』

 攻撃力1000

 

「これは、まさか的ですか!」

 なるほど。あの氷に攻撃すればダメージを与えられるからそのために!

「その通り。ただし、普通の的では終わりませんよ。私は墓地の交霊師、そしてたった今墓地へ送った『氷結界の水影』の二体を除外。現れよ冷狼(れいろう)、『フェンリル』を特殊召喚!」

 

『フェンリル』

 攻撃力1400

 

 おお! また新しい氷結界以外のモンスターだ!

 

「『フェンリル』!? そんな……」

 

 麗華ちゃんが急に声を上げた。え? どうしたの?

「まさかここで『フェンリル』を呼ぶなんてね」

 え!? 明日香ちゃんも知ってるの!?

「あのカードを呼ぶなんて、梓さんも中々……」

「ちょっとえげつないんだなぁ……」

 えぇー!?

 翔くんに隼人くんも知ってるの!? ももえちゃんとジュンコちゃんも分かってるって顔してるし、分かってないのってわたしと十代君だけ!?

 

「『フェンリル』で、『アイス・コフュン・トークン』を攻撃!」

 

 は!?

 

冷爪牙斬(れいそうがざん)!」

 

麗華

LP:4000→3600

 

 綺麗に斬られる氷の棺。真っ二つになって、砕けちゃった。

「私はカードを一枚セットし、ターンエンドです」

 

 

LP:300

手札:0枚

場 :モンスター

   『フェンリル』攻撃力1400

   『氷結界の虎将 ライホウ』攻撃力2100

   『氷結界のロイヤル・ナイト』攻撃力2000

   魔法・罠

    セット

 

麗華

LP:3600

手札:0枚

場 :モンスター

   『プロミネンス・ドラゴン』守備力1000

   魔法・罠

    永続魔法『悪夢の拷問部屋』

    永続魔法『波動キャノン』

    装備魔法『ミスト・ボディ』

 

 

「私のターンですが……」

 

 どうしたのかな? デッキからカードを引かないと……て、デッキが凍ってる!?

 

「……『フェンリル』が戦闘破壊した次の相手ターン、つまり私のターンのドローフェイズはスキップされます。メインフェイズ……」

 

 えぇー!? そんな効果あったの!?

「すげぇ!! 梓の奴、あんなカードまで持ってたのか!?」

 本当だよ!!

「何言ってるんスか? 兄貴」

 ん? 翔くんが十代くんを、呆れ顔で見てる?

「十代、あれは少なくともバトルシティ直後には出てたカードなんだな。みんな知ってるし、レアリティもそれほど高くないから、多分誰でも持ってるんだな」

 ……え? それ本当?

「かなり有名なカードよ。どうして知らないの?」

「うぐ……いいじゃねえか! 俺はE・HERO使いなんだから!」

 真っ赤になってる十代君。

 わたし……何も言わなくてよかった……

 

「く……ですが、いくらドローを封じられようと! メインフェイズ時、『波動キャノン』を墓地へ送り、発動後迎えたスタンバイフェイズの数×1000ポイントのダメージを……!」

「リバースカードオープン!」

「え?」

「速攻魔法『サイクロン』。墓地へ送る前に『波動キャノン』を破壊させて頂きます」

「なっ……!」

 毎度おなじみの万能速攻魔法! 『氷結界』に継ぐ梓くんの代名詞キター!!

「くぅ……ですが、それが手札にあったなら、なぜ前のターンに使わずわざわざセットなんて……」

「それは、その……」

 あれ? 急に梓くんは口ごもっちゃった。

「梓さん?」

「いえ、その……ただ破壊してしまうより、使う寸前で破壊した方が、面白い反応が……などということは、一切、考えてなど……」

「……」

 

『……』

 

 梓くんが黒い……

 

 

 

視点:麗華

 ……こほん。

 『フェンリル』、今倒しておかないと厄介なことになるかもしれませんね……

「私は『プロミネンス・ドラゴン』を攻撃表示に変更! バトル! 『プロミネンス・ドラゴン』で、『フェンリル』を攻撃します!」

 『フェンリル』に向かっていく『プロミネンス・ドラゴン』……

「……え?」

 なぜか『プロミネンス・ドラゴン』が立ち止まったかと思ったら、その体には長い体の生き物が巻きついています。

 

『プロミネンス・ドラゴン』

 攻撃力1500-500

 

 な! おまけに攻撃力まで下がってる!?

「墓地の『キラー・ラブカ』を除外し、効果を発動しました」

「まさか、『天使の施し』の時の二枚目のカードが……」

「その通り。こちらのモンスターが攻撃されたとき、このカードを除外することでその攻撃を無効にし、更に攻撃モンスターの攻撃力を500ポイントダウンさせます」

「そんなカードが……ターンエンドです!」

 

 

麗華

LP:3600

手札:0枚

場 :モンスター

   『プロミネンス・ドラゴン』攻撃力1500-500

   魔法・罠

    永続魔法『悪夢の拷問部屋』

    装備魔法『ミスト・ボディ』

 

LP:300

手札:0枚

場 :モンスター

   『フェンリル』攻撃力1400

   『氷結界の虎将 ライホウ』攻撃力2100

   『氷結界のロイヤル・ナイト』攻撃力2000

   魔法・罠

    無し

 

 

 削れない……たった300ポイントのライフが削れない……まるで、もう少しで蒸発しそうな水が、いつまで経っても残っているみたいに……

 

「私のターン」

 

手札:0→1

 

 違う。水どころじゃない。火なんてとっくに消えてる。火が消えて、段々凍って、その氷が、私の足元まで迫ってきてる!

 

「速攻魔法『サイクロン』!」

「に、二枚目!?」

「対象は『ミスト・ボディ』!」

 『サイクロン』が『ミスト・ボディ』を吹き飛ばしたその瞬間、ずっと霧丈の体をしていた『プロミネンス・ドラゴン』が、実体を持った普通の炎の龍に姿を変えた!

「『フェンリル』で、『プロミネンス・ドラゴン』を攻撃」

 『フェンリル』の方が小さいですが、大きなドラゴンの体に噛みついて、そこから凍らせて倒した!

 

麗華

LP:3600→3200

 

「ライホウで、麗華さんへダイレクトアタック! 冷奏円舞!」

 現実じゃない、単なるイメージなのは分かってる。けれど、確かに見えました。私の足元から、徐々に体中へと広がっていく氷が。

「きゃっ!」

 

麗華

LP:3200→1100

 

 そしてたった今、完全に氷つきました。

 

「……これが、一滴残った水の力ですか……」

「たとえ一滴でも、温度が下がれば物を凍らせることはできます。そこから広がることができれば、どんな物でも凍らせられます。ただ強いだけの炎で、全てを溶かすことは無理がありましたね」

 く……

「敗因は、ライホウの効果で捨てた『火炎地獄』。あれを捨てず温存し、前のターンで発動させることができれば私の負けでした」

 ……そう。私はあの時、冷静に考えていたようで、実は焦っていた。早く燃やさなくては大変なことになる。それが分かっていたから、目先のダメージばかりを意識して、冷静な判断ができていなかった。

 火力も時には調節しなければならない時もある。それを、忘れていました。まさに、自分で自分の火に焼かれた訳ですね。

 

「終わらせます。『氷結界のロイヤル・ナイト』で、ダイレクトアタック!」

 

 ……完敗です。

 

麗華

LP:1100→0

 

「良き決闘を、感謝致します」

 

 

 

視点:あずさ

 梓くんが勝っ……!

 

 

『きゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!』

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』

 

 

 うわ!!

 

 

「梓さん! さすがです!」

「やった! 梓さんが勝った!」

 

「梓さんの制服姿が……」

「ぜひ、見たかった……」

 

 

 ……みんな、考えることは同じってことかな。

 

 ……

 …………

 ………………

 

「そして一日後!」

「なに? あずさ、どうかした?」

「ううん。何でも無いよ明日香ちゃん」

 昨日と同じメンバーで、今梓くんの部屋にいます。

 

「完了しました」

 

 浴室の方から梓くんの声が聞こえました。

 ……にしてもよく考えたら、男子の梓くんが、女子の麗華ちゃんの着付けをするのに誰も何も言わないって……

 これが梓くんクオリティってやつか!

「さあ、ご披露しましょう」

 先に梓くんが出てきた。

「や、やはり少々落ち着きませんね……」

「それは私が制服を着た時と同じ気持ちです」

 梓くんの言った後で、麗華ちゃんは出てきた……

 

「おぉー!」

「あら、似合ってるじゃない」

「可愛いよ! 麗華ちゃん!」

「似合ってるっス」

「んだなぁ」

「綺麗ですよ」

「中々良いじゃない!」

 

 みんなが口々に感想を言ってる。

 麗華ちゃんは顔を赤くしてるけど、その緑色の着物凄く似合ってるよ! 着物に似合うよう髪型も変えて、髪止めで飾り付けもしてる。

 やっぱり和服って良いよね~。

「これで、今日一日過ごせばいいのですね////」

「ええ」

「良いな良いなぁ」

「よくありません! 恥ずかしいだけですよ……////」

「どうしてだよ。凄く似合ってるのに」

「う、嬉しくありません……////」

 そんなに恥ずかしがらなくても、似合ってるのに。十代くんなんか羨ましそうに見てるし。

「よければ十代さんも着てみますか?」

 

『え!?』

 

 全員の声が唱和した。

「お! いいのか?」

 十代くん以外はね。

「はい。ただあいにく、女性用しかありませんが」

 やっぱり。でも、二回目になるけど梓くん、男子なのに女性用だけって……

「いいって! 梓の着る服なら多分俺でも着れるだろう。それに、委員長を見てたら俺も着てみたくなってきたぜ!」

「兄貴……」

「十代……」

 翔くんと隼人くんは呆れてるよ。まあ、普通そうだよね。

「せっかくだ。二人も着てみようぜ!」

『えぇ!!』

 翔くん達も!?

「いいっすよ! 僕じゃ身長が低くて無理っス!」

「俺は体がでか過ぎるんだなぁ!」

「大丈夫ですよ。何とかできます」

 梓くん、満面の笑みだ。着付けってそんなに楽しいものなのかな?

「よし! じゃあ着せてくれ。二人とも行こうぜ!」

「兄貴~~~~」

「十代~~~~」

 そうして、三人は浴室に入っていきました。

 

 

「に、似合ってる/////」

 赤色の着物を着た十代くんに、明日香ちゃんが赤くなりながら言ってる。

 うん。元々中世的な顔立ちだし、それを差し引いても凄く似合ってるよ。

「そうか! 似合うか!」

「隼人さんが完了しました」

 今度は隼人くん。

「ど、どうかな?////」

 おぉ~。

「可愛いじゃねえか!」

 体は大きいけど、元々コアラみたいに可愛い顔してたし、ピンクの着物がその可愛いさを引き立ててる。

 そうやって、しばらくみんなで盛り上がってる内に、また梓くんの声が。

「翔さんが完了しました」

「随分時間が掛かったな」

「ええ。とても着付けのしがいがありましたよ」

 それだけ大変だったってこと? そう思ったけど、出てきた翔くんを見て、すぐに違うって分かった。

 

『だ、だれ!?』

 

 全員分かってるんだよ! 翔くんが着物を着てるっていうのは十分に! でも、本当に別人みたいに変わってたんだもん!

「みんな、どうかしたんスか?」

 その声と言葉で、改めて翔くんだということを認識できた。けど、やっぱりさっきまでとは全然違う。

 翔くんの髪の色に合わせた水色の着物だけど、着物だけじゃなくて、他もいじってる。髪の毛はオールバックにして後ろで一本に縛って、前髪で隠れてたおでこを全部出して、その髪に色々飾り付けして、眼鏡を外してる。

 いじってるのはたったそれだけなのに、とにかく梓くんとは違うタイプの、可愛い女の子に見えた。

 翔くんて、意外に目が大きかったんだなぁ。おまけに肌も白くて滑々だし。

「翔、鏡見てみるんだなぁ」

 言いながら隼人くんが手鏡を手渡して、翔くんはそれを見てみたけど、目を細めながら何度も鏡を前後に動かしてる。

「……眼鏡が無いからほとんど見えないっス」

 あちゃー……さすがに梓くんもコンタクトレンズは持ってないだろうからね。

 

「翔君……////」

 あれ? ももえちゃんが凄くうっとりしてる。

「翔……」

 十代くんもボオーっとなってるや。もしかしてあんなタイプが好きなのかな?

 ……何ていうか、変な気を起こさないといいけど……

 

「梓!!」

 うわ! 急に明日香ちゃんが声を上げた。

「わ、私も着たいわ!!/////」

 顔を赤くしてる。どうやら、翔くんに見とれてる十代くんを見て、焦ってるみたい。

「何をそんなに焦っているのですか?」

「!!/////」

 梓くんは笑ってる。まあ、分かり易いもんね。

「この際、全員で着てみますか?」

「そうね」

「ぜひ、お願いします」

 ジュンコちゃんとももえちゃんも承諾した。もちろん、わたしも着てみたいしね。

 

(あずささんの着物姿/////)

 

 あれ? 何だか梓くんの顔が赤いような……

 

 

「ももえちゃんもジュンコちゃんも凄く良いよ!」

 それぞれジュンコちゃんが黄色、ももえちゃんがオレンジの着物を着てる。やっぱ凄く似合ってるよ。

「あずささんに明日香さんも、よく似合っていますよ」

 ももえちゃんに言われた。

「ど、どうかしら、十代/////」

「おお! めちゃくちゃ綺麗じゃねえか!」

「//////」

 十代くんの言葉に、白い着物の明日香ちゃんは真っ赤になってる。十代くん、無邪気なだけに罪だねぇ。

 ちなみにわたしは紫色。

 でも……

「梓、少しきついみたい……」

「実は、わたしも……」

 わたしと明日香ちゃんには少し小さかったのかな?

「少し大きめの物を選んだつもりでしたが、お二人ともどこがきついのですか?」

 う……

 答え辛いけど……

「えっと……お腹が……」

「わたしは胸が苦しい」

 

 ズゥーン……

 

 どうしてだか、明日香ちゃんが部屋の隅に座り込んだ。落ち込んでる?

 そこに十代くんが話し掛けて、元気になったから良かったけどね。

 

「あずささんは、気痩せする人なのか、見た目以上に胸が大きいですからね」

 

 え!?

「な、ちょ、いきなりなに言うの!?////」

「ちなみに大きさはどのくらいで?」

 えぇ~えぇー!?////

「いや、それは……////」

「大きさは?」

「だから、それは……////」

「どのくらいで?」

 ///////

「……F////」

「正直にお願いします」

 ///////////////

「…………G/////」

「よろしい」

「よろしいじゃないよ!! 言わせないでよ恥ずかしい!! ていうか何で私のカップ数分かったの!?/////」

「今までも着付けの経験はありましたから、見れば大体は分かります」

「じゃあ何で聞くかな!?/////」

「恥ずかしがるあずささんが可愛らしくてつい////」

 /////////////////

 もぉ~~~~~~~!!//////////

 

「梓さん、普通にセクハラっスよ……」

「やっぱり少し、性格悪いんだなぁ……」

 

 ……

 …………

 ………………

 

 そして、わたし達はこの格好で学園を歩くことになりました。

 

「あれは、委員長!? 凄くお綺麗です!」

「あ、明日香さんが着物を着ている!!」

「十代、何だその格好!? あははは!!」

「可愛いぞ隼人! ふふふふ……」

 

 それぞれ声を掛けられて、十代くんなんか笑顔で手を振ってる。

 でも、一番の注目を浴びているのは二人。一人目は……

 

「あ、あの美少女は一体……」

「あんな可愛い子が、アカデミアにいたのか?」

 

 言わずもがな翔くんです。眼鏡が無くて真っ直ぐ歩けないからももえちゃんに手を引かれてる。

「みんな誰のこと言ってるんスかね? みんな美少女だと思うっスけど」

 周りが見えてないもんだから、自分が今大注目されてることに気付いてない。

 ももえちゃんはさっきから満面の笑顔で翔くんを見てるけど、これは……

 

 そして、もう一人はというと、

 

「きゃー!! 梓さーん!!」

「イイ!! もの凄くイイです!!」

「ああ、私をだ……」

「ウホッ! 良い男!」

 

 先頭を歩く梓くん。みんなが着物を着てる以上、自分も知らんぷりをしてる訳には行かないって、制服に着替えた。制服に合わせて髪型も変えてる。何だか色々間違ってる気もするけど。

 でも、制服姿の梓くん、着物を着てる時とは違って、綺麗だけど凄く格好良い////

 

 こうしてわたし達は、まるで大名行列みたいに、梓くんを先頭にしながら学園を歩きました。

 

 ……

 …………

 ……………… 

 

 

 そしてそれ以降、アカデミアではしばらく、謎の水色の髪の美少女の存在が話題になりました。

 正体はどこの誰なのか。

 そしてその答えは、翔くん以外の私達と、あなただけしか知りません。

 

 

 

 




お疲れ様です。

そんなわけで、梓のせいで無意識にフラグを建てたうえに話題にされた翔くんでした。

ちなみに『キラー・ラブカ』の効果はアニメ効果ね。
OCGじゃ、水、魚、海竜の三種族限定。『フェンリル』は獣族だから本当は無理。
まあ氷結界なら水族や海竜族もいるから使えないことも無いけれど。

んじゃ、次話まで待っててね。

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