決闘回いくでよ~。
さ~あ、行ってらっしゃい。
視点:外
「あずさ……」
歩きながら、本人も気付かぬ間に、その名を口走っていた。
別段、その名を持つ少女のことを、特別だと認識していた自覚は無い。
ただ、自分がプロ決闘者だからと特別視することも無く、明るくのんびりした態度をそのままに、自然な雰囲気で話しをしてくれるのが、とても楽しかった。
自分に作ってくれた料理や弁当、驚くほど美味いというわけではないが、素朴で愛情に溢れた、何度でも食べたくなる、魅力的な味だった。
気が付けば、あまり来られないアカデミアという場所で、そんな彼女に会うことが、一番の楽しみとなっていた。
あずさと話をする。あずさの料理を食べる。あずさと共に過ごす……
そんな、知らぬ間に得ていた楽しみと、最後に見た彼女の姿を見て、自身でも気付かぬ間に、彼女を、特別な感情で意識していた、ということを思い知らされた。
あの時彼女は、一人の決闘者を、命懸けで救い出そうとし、その身を抱き締めていた。
自分と同じくHEROを、彼女と同じく、シンクロモンスターを使用し、怖ろしいまでの力で相手を追い詰める、二年生最強、アカデミア最凶と名高い決闘者。
しかし、最凶の力を持っていながら、目の前に現れた、過去という恐怖に負け、決闘を捨てて敗走し、同時に正気まで失い、狂ってしまった敗北者。
そんな男のことを、彼女は心底愛していることを、あの時の姿が教えていた。
狂い、喚き、壊れ、世界をも壊そうとした男だというのに、そんな彼のことを命懸けで救い出し、正気に戻す。
そんなこと、その男への愛情が無ければできるわけがない。
それが分かった途端、エドの心に、生まれてから今日まで経験したことのない、敗北感という痛みが生まれた。
決闘に敗けた時の痛みとは違う、だが、下手をすればそれ以上に心を抉る痛み……
(これが、失恋というものなんだな……)
最後に二人を見た時、エドは、梓の号泣する声の中、黙ってクルーザーまで帰った。
そこで、まだ失恋だと気付かぬまま、冷蔵庫に保管してあった飲み物を全て飲み干した。
それまでも、二人の間のただならぬ雰囲気は察していたが、それをはっきりと確信させられた後で、何とも言い難い気持ちになった。
絶世の美女……な顔をした男と、素朴で純粋な少女。
聞いただけなら釣り合いは取れそうに無いが、今思えば、あれだけお似合いのカップルも無かったように思える。
端的に言えば、エドは、平家あずさを、水瀬梓に取られたことが……
否、平家あずさの心が、自分に出会うよりとうの昔に、水瀬梓のものになっていることが許せなかった。
水瀬梓と、小日向星華の二人を見る度、なぜか悲しげな表情を見せていた気がしていたのは、気のせいではなく、事実だったのだと気付かされた。
そして、そんな失恋の中にあり、しばらくプロの活動でアカデミアを離れた身ながら、それでも、彼女への思いを忘れることはできなくて、そんな心のまま歩いていた。
(あずさの作った料理……また食べたいな……)
そんなことを考えていた時、それは、目に映った。
「あれは……!」
『決闘!』
斎王
LP:4000
手札:5枚
場 :無し
あずさ
LP:4000
手札:5枚
場 :無し
「あずさ!」
決闘が開始された直後、あずさの名を呼ぶ声が響く。
振り返ると、エドが、二人に向かって走ってきていた。
「あ、エドくん。お久しぶり」
「久しぶり……ではなく、なぜ君が斎王と決闘を……?」
「気にしないで。すぐに終わらせるよ。終わったらまたお弁当作ってあげるから」
「あずさ……」
「では、私の先行、ドロー」
斎王
手札:5→6
「……『アルカナフォース
『アルカナフォースI-THE MAGICIAN』
レベル4
攻撃力1100
「……え? なにそれ?」
斎王の前に、白い色をした、不気味な見た目のモンスターが出現する。
それと同時に、そのモンスターが描かれたカードが頭上に現れ、回転を始めた。
「『アルカナフォース』は、回転の止まったカードの向きによってその効果が変わる。ザ・マジシャンが正位置の場合、魔法カードが発動された時、そのターンのエンドフェイズまで、元々の攻撃力は倍になる。逆位置の場合、魔法カードが発動する度、相手はライフポイントを500回復する」
「えらく運任せなカード使うね……」
「さあ、回転を止めるのは貴方です。ストップを宣言して下さい」
「……ストップ」
カードを見ながら、何気なく宣言する。カードの回転は徐々に遅くなり、やがて、止まる。
「正位置の効果により、魔法カードが発動された時、このカードの元々の攻撃力は倍になる」
「……」
「更に、魔法カード『運命の選択』を発動します。貴方は私の手札から一枚を選び、それがモンスターカードであった場合、私のフィールドに特殊召喚されます」
説明しながら、手札を見せる。斎王の手札は四枚。
「そっちから見て、左端のカードで」
その宣言で、斎王はニヤリと笑った。
「……当たりです。『アルカナフォース
『アルカナフォースVI‐THE LOVERS』
レベル4
守備力1600
「また、不気味な恋人だねぇ……ストップ」
あずさの悪態をよそに、カードは回転を止めた。
「ラヴァーズの逆位置の効果。私はアルカナフォースを生贄召喚できなくなります。もっとも、今の私の手札に、アルカナフォースの上級モンスターは存在しませんが」
「大してデメリットになってない……」
「ええ。正位置であろうが逆位置であろうが、姿が違えど大きな違いは無い。それは、貴方と言う存在も同じなのでは?」
「……は?」
「さて、魔法カードを発動したことで、ザ・マジシャンの攻撃力は、このターン倍になりますが、先行は攻撃できないので意味はありませんね。私はこれでターンエンド」
斎王
LP:4000
手札:3枚
場 :モンスター
『アルカナフォースI-THE MAGICIAN』攻撃力1100
『アルカナフォースVI‐THELOVERS』守備力1600
魔法・罠
無し
「……わたしのターン、ドロー」
あずさ
手札:5→6
「……なんかよく分かんないけど、とにかく、全部焦土に変える。永続魔法『六武衆の結束』、『六武の門』発動!」
あずさの発動の宣言により、あずさの後ろに、お馴染みの門が出現した。
「六武衆が召喚、特殊召喚される度、この二枚のカードにそれぞれ武士道カウンターが乗る」
「貴方が魔法カードを発動したことで、ザ・マジシャンの効果発動。このカードの元々の攻撃力は倍となる」
『アルカナフォースI-THE MAGICIAN』
攻撃力1100×2
「だからどうしたの? わたしは『真六武衆-カゲキ』召喚」
『真六武衆-カゲキ』
レベル3
攻撃力200
「この瞬間、結束に一つ、門に二つ、武士道カウンターが乗る」
『六武衆の結束』
武士道カウンター:0→1
『六武の門』
武士道カウンター:0→2
「そして、カゲキの効果。このカードの召喚に成功した時、手札のレベル4以下の六武衆一体を特殊召喚できる。レベル4の『六武衆-ザンジ』召喚! そしてこの瞬間、自身を除く六武衆が場にいることで、カゲキの攻撃力は1500アップ」
『六武衆-ザンジ』
レベル4
攻撃力1800
『真六武衆-カゲキ』
攻撃力200+1500
『六武衆の結束』
武士道カウンター:1→2
『六武の門』
武士道カウンター:2→4
「ここで、『六武衆の結束』の効果。最大二個まで武士道カウンターの乗ったこのカードを墓地へ送って、このカードに乗った武士道カウンターの数だけ、カードをドロー」
あずさ
手札:2→4
「更に、『六武の門』の効果。このカードに乗った武士道カウンターを四つ取り除いて、デッキ、または墓地から六武衆を一体、手札に加えられる」
『六武の門』
武士道カウンター:4→0
「デッキから、『真六武衆-キザン』を手札に」
あずさ
手札:4→5
「フィールドに六武衆がいることで、『真六武衆-キザン』を特殊召喚。キザンの効果。フィールドにこのカード以外の六武衆が二体以上いる時、攻撃力を300ポイントアップ」
『真六武衆-キザン』
レベル4
攻撃力1800+300
『六武の門』
武士道カウンター:0→2
「もう一回、『六武の門』の効果。武士道カウンターを二つ取り除いて、六武衆一体の攻撃力を500ポイントアップさせる。キザンの攻撃力を、500アップ」
『真六武衆-キザン』
攻撃力1800+300+500
「攻撃力2600……」
「まだだよ。このカードは、自分フィールドに六武衆が二体以上存在する時、特殊召喚できる。『大将軍 紫炎』を、特殊召喚!」
『大将軍 紫炎』
レベル7
攻撃力2500
「ほぉ、これは……」
『真六武衆-カゲキ』
攻撃力200+1500
『六武衆-ザンジ』
攻撃力1800
『真六武衆-キザン』
攻撃力1800+300+500
『大将軍 紫炎』
攻撃力2500
「アカデミアの棟焦……噂には聞いておりましたが、なるほど。全てを焦土に変えるほどの力……感服いたします」
「エドくん、君のマネージャーさんに対して申しわけないけど、このターンで決めるからね」
観戦しているエドに断りを入れつつ、勝負を終わらせるための宣言を行った。
「バトル! 『真六武衆-キザン』で、ザ・マジシャンを攻撃、漆鎧の剣勢!」
キザンは宣言に従い、白い顔を向ける魔術師に向かい、その身を切り裂いた。
斎王
LP:4000→3600
「そして……せっかくデメリットになってるのを破壊するのも勿体ない気はするけど、カゲキでラヴァーズを攻撃、雷刃四方破斬!」
同じく向かっていったカゲキの四つの刃が、守備体勢を取る、不気味な見た目の恋人を切り裂いた。
「……フフフ、役に立たぬと断じられた恋人は、やがてその絆を断ち切られる運命。たった今、貴方が自らの手で、不気味な姿だと断じた恋人を切り裂いたように」
「……さっきからなに言ってんの。言いたいことがあるならはっきり言えば?」
あずさのそんな指摘に、斎王は一度、目を閉じる。そして、語り始めた。
「水瀬梓さん……」
「……!」
「決闘の前、貴方は言っていましたね。これ以上、彼を虐めるような真似はするなと。貴方は、彼のことを守ってあげたいと思っている。彼に対する脅威を、全て自分がその身に受けることを望んでいる。自らの身が壊れてしまうことも厭わない。それほどまでに、彼のことを思っている」
「……」
あずさの表情は変わらない。表情を曇らせたのは、後ろでそれを聞いていた、エドだった。
「だが、本当はそれ以上にこう思っているのでは?」
「……」
「誰にも渡したくない。自分だけを見て欲しい。心の奥底ではそう思っていながらも、彼の平穏と幸せを優先し、自分の気持ち、そして、存在を軽んじている。本当は、今すぐにでも彼の元へ駆けつけたいのに……」
「言いたいことがそれだけなら、もう終わらせるよ! 『六武衆-ザンジ』、ダイレクトアタック! 照刃閃!」
斎王の言葉を遮りながら、攻撃宣言を行う。ザンジは光の薙刀を斎王へ向け、切り裂いた。
「ぐぅ……」
斎王
LP:3600→1800
「これで終わり! 『大将軍 紫炎』で、ダイレクトアタック! 獄炎・紫の太刀!」
最後に、赤い鎧を纏った将軍が、刀を構える。
鎧が、刃が、灼熱の炎を纏い、斎王へ向けられ、振われた。
……しかし、
「……へ?」
その光景に、思わず声が出た。
斎王の全身から、白い光が出たように見えた。そして、そんな斎王に向かって振り下ろされた刃は、その光に受け止められた。
「なに? どういうこと?」
「私は手札より、『アルカナフォース
斎王
手札:3→2
「防がれたか……けど、速攻魔法『六武衆の荒行』! 自分フィールドの六武衆、カゲキを選択して発動。選択したモンスターと同じ攻撃力を持つ六武衆を、デッキから特殊召喚する。カゲキの攻撃力は1700。『六武衆-イロウ』を召喚」
『六武衆-イロウ』
レベル4
攻撃力1700
『六武の門』
武士道カウンター:0→2
「イロウでダイレクトアタック。影断!」
「ぐっ……」
斎王
LP:1800→100
斎王のライフを100まで追い詰めたものの、あずさの表情に、余裕は無かった。
(ライフが残っちゃった。攻撃力1700なら、攻撃力がアップするエニシが呼べたんだけど……結束の効果でドローしちゃったからなぁ……)
「カードを一枚伏せる。ターンエンドと同時に、キザンの攻撃力は元に戻って、荒行の効果で選択されたカゲキは破壊される」
あずさ
LP:4000
手札:1枚
場 :モンスター
『大将軍 紫炎』攻撃力2500
『真六武衆-キザン』攻撃力1800+300
『六武衆-ザンジ』攻撃力1800
『六武衆-イロウ』攻撃力1700
魔法・罠
永続魔法『六武の門』武士道カウンター:2
セット
斎王
LP:100
手札:2枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
無し
(あずさ、圧倒的に有利ではあるが……)
(勝負を焦り過ぎだ……)
決闘を観戦していたエドが、そして、フィールドに残ったキザンが、それぞれ思った。
「私のターン」
斎王
手札:2→3
「言っておくけど、わたしの場に『大将軍 紫炎』がいる限り、相手は魔法・罠カードを、一ターンに一度しか発動できなくなるからね」
「ほう……では、このカードはいかがかな? 魔法カード『スート・オブ・ソード
その魔法カードも、アルカナフォース達と同じように、斎王の頭上で回転を始めた。
「このカードが正位置で止まったなら相手フィールドの、逆位置なら、自分フィールドのモンスター全てを破壊する」
「なっ……! 全破壊じゃ、紫炎の身代わりの効果も意味がない……」
「さあ、止めて下さい……」
前のターンまでには確かにあった余裕が、あずさの中から消え去り、その回転に集中させられた。
「……ストップ!」
同じように、カードの回転は徐々に遅くなり、やがて停止……
「な、正位置……!」
「これが、あなたの運命なのです」
あずさの驚愕と、斎王の微笑みが、あずさの場の、全てのモンスターの破壊と重なった。
「キザン……!」
『……すまん、あずさ……』
キザンの最後の言葉と、がら空きとなったフィールド。あずさは、言葉を失った。
「偶然ではない。これが、あなたの運命なのです」
「……っ」
ライフの差は歴然としていながら、余裕を崩さず、あずさにそんな言葉を投げ掛ける。そんな態度のせいで、元々良い印象を持っていなかった斎王という存在が、余計に癪に障る。
「たまたまギャンブル効果が上手くいったからって、自惚れないで! まだ決闘は終わってないんだから!」
「そう。決闘は終わっていない。そして、貴方もまだ、自分自身が終わっていないと思っている。そう、思い込んでいる」
「……は?」
「だが、貴方自身の終わりを望んでいるのは、他でもない、貴方自身なのではありませんか?」
「は……?」
余裕も態度も、決して崩すことはない。ただ、変わらぬ声を、あずさに対して掛け続ける。
「先程も申し上げたが、貴方は本当は今すぐにでも、彼の元へ駆けつけたいのでしょう? だが、自分が今あるべきと考える立場を重視し、それを、彼に近づかない理由としている」
「なに、言ってるの……?」
「貴方が守りたいと思っているもの、それは彼ではなく、貴方自身だ、ということです」
「……なにそれ……」
明らかな動揺を見せるあずさに対して、斎王は続けた。
「貴方は、彼が傷つかないようにと、自分が周囲から恐れられ、傷つけられる存在となることを選んだ。そうすることで、彼が傷つかないようにし、彼のことを守っている……そうやって、彼にとって、必要な存在であるということを示し、安心を得ている」
「……へ?」
「今、彼のそばには、自分ではない誰かが常に寄り添っている。それを分かっているから、あなたは自分にしかできないことだと、自分だけが持っている圧倒的な力に物を言わせ、あなたにしかできない手段を講じている。いつか、彼が部屋から出てきた時、自分が彼にとって必要な存在であったと認めてもらうために。そして、彼にとっての、最愛の存在としての立場を勝ち取るために……」
「ち、違う……」
否定しながらも、その表情には明らかな動揺が広がり、声は、震えていた。
「貴方が真に怖れていること。それは、彼が傷つき、苦しむことではない。彼が、貴方以外の誰かを選び、彼に必要無いと断じられること。だから貴方は、彼に認めてもらうため、その拳で彼にとっての脅威全てを壊そうとしている。本当に壊してしまいたいものが、今も彼のそばに寄り添っているというのに……」
「違う……」
「何より、本当に不気味で怖ろしいのは、カードではなく、自分自身だと自覚しているのに……」
「違う! さっきから勝手なこと言わないで!」
これ以上は聞かないよう、大声を出しながら、拳を振う。
それだけで、怪力に押された空気は風を起こし、地面の落ち葉を舞わせた。
「早く決闘を進めてよ! 次のターンで、必ず決着を着けてやるから!」
「あずさ……」
そんなふうに全力で声を上げるあずさの姿に、エドはまた、その胸に、得体の知れぬ痛みを感じた。
その悲鳴が図星であるか、それはあずさにしか分からない。
それでも、必死で否定しようとするさまは、図星であることの証にしか見えない。
そんなあずさに対する、悲哀と愛情。そして、水瀬梓に対する嫉妬心。それが、胸の中で顔を出していた。
「魔法カード『カップ・オブ・エース』」
再び斎王の頭上で、カードが回り出した。
「このカードが正位置で止まったなら自分が、逆位置なら、相手がカードを二枚ドローする」
「……ストップ」
その宣言により、カードは停止する。
「正位置の効果。カードを二枚ドロー」
斎王
手札:1→3
「魔法カード『ネクロ・サクリファイス』。自分の墓地からモンスターを一体、または二体を選択。選択したモンスターを相手フィールドに特殊召喚する。表示形式は、貴方が決めることができます。『アルカナフォースXIV-TEMPERANCE』」
「……攻撃表示」
『アルカナフォースXIV-TEMPERANCE』
レベル6
攻撃力2400
召喚されると同時に、先程までと同じように、今度はあずさの頭上でカードが回転を始めた。
「ストップ」
斎王の宣言により、同じようにカードは回転を止める。
「正位置の効果。貴方が受ける戦闘ダメージは、全て半分となる」
「半分……喜んでいいの? これ……」
「『ネクロ・サクリファイス』の効果には続きがあります。この効果で特殊召喚したモンスターの数だけ、生贄召喚の生贄の数を減らすことができる。レベル5の『アルカナフォース
『アルカナフォースVIII-STRENGTH』
レベル5
攻撃力1800
「……ストップ」
再びカードが回転を止める。
「……正位置の効果。相手フィールドのモンスター一体のコントロールを得る」
「うそ……!」
それまであずさの前に立っていた節制のモンスターが、斎王の前の、力の隣に並んだ。
「バトル。ストレングス、テンパランスで、ダイレクトアタック」
力と節制が、あずさに向かっていく。
「と、罠発動『六武衆推参!』! 墓地の六武衆一体を特殊召喚する」
『真六武衆-カゲキ』
レベル4
守備力2000
「ほう……テンパランスで、カゲキを破壊。ストレングスで、ダイレクトアタック」
節制の爪がカゲキを引き裂き、力の発した光線が、あずさの身を貫いた。
「うぅ……!」
あずさ
LP:4000→2200
「あずさ!」
ダメージを受けたことで、エドが声を上げた。
「……大丈夫大丈夫」
先程まで、強烈な表情を斎王に向けておきながら、エドに対しては、そんな優しい声を、柔和な表情で掛けた。
「次のターンで逆転するからさ」
「あずさ……」
「残念ですが、この決闘は、このターンで終わりです」
そんな二人を嘲笑うかのように、斎王が声を上げた。
「テンパランスを対象に、魔法カード『エース・オブ・ソード』を発動」
何度と見た光景が、再び繰り返される。斎王の頭上で、魔法カードが回転を始める。
「正位置なら相手が、逆位置なら、自分が選択したモンスターの攻撃力分のダメージを受ける」
「て、ことは……」
「テンパランスの攻撃力は2400。ダメージを受けた方の敗北となる」
「……」
それを聞き、さしものあずさも、額に汗を光らせる。
敗ければ、この男は梓を狙うことだろう。
この選択での失敗は、絶対に許されない……
「焦っていますね」
再び、斎王の声が聞こえてきた。
「それは、決闘の敗北に対する焦りですか? それとも、それ以外の……?」
「ちょっと黙って! 今止めるから!」
それ以上の言葉は、聞きたくなかった。視線をカードのみに合わせ、タイミングを見極め、集中する……
「ストップ!」
今まで以上に、力を込めて叫ぶ。
カードは徐々に、回る速度を失っていく。
速度を失い、回転は止まる……
「逆位置の効果。私は2400ポイントのダメージを受ける」
斎王の宣言と同時に、カードから放たれた光が、斎王へとぶつかる。
そして、斎王の残されたライフを削り取った。
斎王
LP:100→0
「約束です。私はこのまま立ち去りましょう」
それだけを言い残し、斎王は、あっさりとその場を去っていった。
(……まだ、今はその時ではないと、運命が言っているのか? いずれにせよ、さすがは三人の王が一人にして、最強の存在……『
「あずさ……?」
決闘に勝利した、あずさは、その場に立ちすくんでいた。
エドの声にも耳を貸さず、ただ、足下を見つめていた。
「……」
(わたしは……誰のために、頑張ってるんだっけ……?)
「あずさ?」
再び声を掛けられ、あずさは、その顔を見る。
エドは、心底心配そうな表情を、あずさに向けていた。
「……ああ、ごめんごめん。大丈夫だよ。わたしは、全然大丈夫だから……」
言いながら、視線を逸らす表情は、酷く悲しく、哀れで、見ていられないものだった。
「……えへへ。すぐにお弁当作ってあげるからさ。待っててね」
そして、いつも見せる笑顔を残して、その場を去っていった。
優しく、強く、柔らかな笑顔。
しかし、斎王の話を聞いて、思い返すと、その笑顔は、無理やり作られたものにしか見えなくて……
「……」
去っていくあずさの、小さな背中を見ながら思う。
悲愴感に溢れたその身を、抱き締めてあげることができたなら……
しかし、実行には移せなかった。
あずさのことを思う気持ちは、誰にも負けない自信がある。
だとしても、そんな彼女に本命がいることを知っている。お互いに、深く思い合っていることも知っている。
そして今は、その本命が原因で、深い傷をその胸に抱えてしまっている。
今のエドは、愛しいと思う彼女の傷つく様を、ただ眺めているしかない。
見えなくなるまで眺めた後で、斎王の去っていった方向――レッド寮の方角へと走った。
「……」
去っていきながら、何度も、斎王の言葉を反芻する。
どんなにごまかしても、どんなに正論を自分に言い聞かせても、第三者からの言葉は、自身の言葉以上に胸に突き刺さる。
その胸の痛みが、認めたくは無い事実だということを示していた。
それでも、彼女が変わらずにいられるのは、ただ一つの、純粋な思いからだった。
「……よし」
振り返りながら、ホワイト寮を見上げる。ただ一箇所の青い部分を見て、次にすべきことを見つめた。
「梓くんは、わたしが守るから……」
それは、青の部屋の住民だけでなく、迷い始めている自分自身に、言い聞かせる言葉でもあった。
……
…………
………………
「大体世の納豆嫌いの方々は、必要以上にその匂いとネバネバを敬遠しすぎているのです。納豆は発酵……はっきり言ってしまえば、わざと腐らせて作っているのだから、臭うし、糸を引くのは当然です。そりゃあ他の食材や料理でも、腐ってしまえば臭うし糸は引きます。だとしても、それが美味しさと化しているのが、納豆という偉大な食品なのです。そんな納豆と相対している以上、そう言った食品としての事実は受け入れてしかるべきではないでしょうか。そりゃあ匂いやネバネバは気持ちが悪いという人の気持ちも分からないではありません。私の場合は、臭いものや腐っていた物には慣れていたので元より平気でしたが、それを踏まえて、納豆という食品の味というものを分かって頂きたい、ということです。食べ方は様々あります。単純におかずの一種として食べる人もおりますし、ご飯にかき混ぜて食べて頂くと言う方もおられます。納豆を使った料理というのも、いくつもあります。だからまずは、匂いやネバネバを嫌悪する前に、そういったものを受け入れる努力をして欲しいというのが本音です。以前テレビを見ていて、納豆嫌いを告白しようという企画の元、そう言った方々に向けての納豆を使った美味しい料理を作ると言う番組がありましたが、あれこそ正に愚の骨頂です。彼らが納豆を食べさせたいがために何をしたかと言うと、納豆の特色であるある匂いとネバネバを全て消し去って、挙句納豆としての原型すら崩して作った料理ですよ。重要な匂いやネバネバを取り去って作った料理を食べさせて、それが美味しいから納豆嫌いを克服しただなんて、そんなことが言えますか? 言えませんでしょう? 言わせはしませんよそんなこと。そんなもの、納豆料理ではなく、ただの古い大豆を使った料理でしかないのですから。あ、お手洗い行きます?」
「……いや」
「そもそも大豆というものは、畑のステーキと呼ばれるほどにタンパク質が豊富であることは知られております。しかし、納豆はタンパク質は勿論ですが、発酵食品としての栄養価を豊富に備えているのです。最も有名なところでは、血液をサラサラにしてくれるナットウキナーゼ、それに加え、各種アミノ酸や植物性には少ないビタミンB群が豊富で、疲労回復にも大いに役立ってくれます。その他の細かい栄養素については省略いたしますが、納豆のネバネバには肌の潤いを保つ美肌効果、更には骨粗鬆症のリスクを減らして下さる効能までも納豆には含まれている。それらの恐るべき栄養価が、普通の大豆にある栄養素に加えて備わっているのです。納豆というものはそれだけ偉大且つ贅沢な食品と言えます。それをたかだか匂いやネバネバが気持ち悪いから食べられない? こんな勿体ないお話しがありますか? 工夫のやり様はいくらでもあるでしょうに。最近ではその匂いが控えめである納豆も普通に売っております。それすらネバネバを敬遠して遠ざけようとする始末です。あんなに美味しい物を最大の特徴ゆえに食べようともしない。はっきり言いますが、そんな人は、人生の九割方を損しております。納豆は人生です。納豆は命です。納豆は、日本の誇りです! そんな納豆を嫌うことなど……」
「ふむ……ふむ……」
二時間後、入浴の後、星華は梓の作った夕食を食べ、その後に簡単な談話を楽しんだ後、眠りについた。
お疲れ~。
んじゃ~オリカ~。
『アルカナフォースVIII-STRENGTH』
レベル5
光属性 天使族
攻撃力1800 守備力1800
このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、コイントスを1回行い、その裏表によって以下の効果を得る。
●表:相手フィールド上のモンスター1体のコントロールを得る。
●裏:相手はこのカードを除く自分フィールド上のモンスター全てのコントロールを得る。
斎王が使用。
効果は強いけどステータスが微妙。
まあ、効果が両極端というのは、『アルカナフォース』全部に言えることではあるが、わざわざ生贄用意してまで出すほどの価値はねーかな。
そんなモンスターです。
『運命の選択』
通常魔法
自分の手札から相手はカード1枚をランダムに選択する。
それがモンスターカードだった場合、自分フィールド上に特殊召喚する。
同じく斎王が使用。
手札を全部モンスターにしてしまえば百パー特殊召喚可。
レベルの制限も無いから、フィールドの状況によっちゃあ逆転も可能だろうね。
OCG化するとしたら、やっぱレベル4以下とかかなぁ……
『スート・オブ・ソードX』
通常魔法
コイントスを1回行う。
表が出た場合、相手フィールド上のモンスターを全て破壊する。
裏が出た場合、自分フィールド上のモンスターを全て破壊する。
斎王がやっぱ使用。
サンボルか『避雷針』か……
まあ、それだけです。
『ネクロ・サクリファイス』
通常魔法
自分の墓地からモンスターを2体まで選択し、相手フィールド上に特殊召喚する(表示形式は相手が決めてよい)。
この効果で特殊召喚したモンスターの数だけ、生け贄召喚のための生け贄の数を減らす事ができる。
ええ、まあ、斎王が使用。
相手が表示形式を決められるという、あんま聞いたことない制約付き。
当時ならともかく、今時そんな危険を冒してまで召喚したいモンスターってのも少ないから、あんま強くはないかな。
『エース・オブ・ソード』
通常魔法
フィールド上のモンスター1体を選択し、コイントスを1回行う。
表が出た場合、選択したモンスター1体の攻撃力分のダメージを相手は受ける。
裏が出た場合、選択したモンスター1体の攻撃力分のダメージを自分は受ける。
そりゃあ、まあ……斎王が使用。
モンスターが吹っ飛ばない代わりに、片方が吹っ飛ぶ『破壊輪』。
ただデッキによっては、『破壊輪』の代わりにとどめの一撃になるかも分かりませんな。
以上。
近年になって、未OCGがどんどんOCG化してることだし、斎王のカードもしてほしいよね。
ついでに欠番のアルカナフォースも全部出さないかな。魔法や罠でも良いから。
まあ、出ても使わないとは思うけどね。
そんなわけで、次話まで待ってて。