さぁてぇ、どうなってくかなぁ～。
それじゃ早速、行ってらっしゃい。
視点：外
「お嬢ちゃん。俺と決闘してくれるかい？」
長い黒髪と長身、切り揃えられたあごひげ、周囲に隙を見せない、寡黙という言葉がよく似合う佇まい。
ダンディな二枚目という言葉が似合う男性が、星華の前に立っていた。
「外部からの参加者か。良かろう。名を名乗れ」
「……『デシューツ・ルー』だ。お嬢ちゃんの名前も教えてくれよ」
「『小日向星華』だ。さあ、私を倒してみせろ！」
『決闘！』
デシューツ・ルー
ＬＰ：4000
手札：5枚
場 ：無し
星華
ＬＰ：4000
手札：5枚
場 ：無し
「俺の先行だ。ドロー！」
デシューツ・ルー
手札：5→6
「まずは……一枚カードを伏せる。更にモンスターをセット。ターンエンドだ」
デシューツ・ルー
ＬＰ：4000
手札：4枚
場 ：モンスター
セット
魔法・罠
セット
「初手としては無難な局面だな……私のターン」
星華
手札：5→6
「うむ……『レアル・ジェネクス・ターボ』を召喚」
『レアル・ジェネクス・ターボ』
レベル4
攻撃力1500
「こいつの召喚に成功した時、デッキからレベル1の『ジェネクス』モンスターを手札に加える。私はデッキから、レベル1の『ジェネクス・パワー・プランナー』を手札に加える」
星華
手札：5→6
「バトルだ。『レアル・ジェネクス・ターボ』で、セットモンスターを攻撃！」
向かっていった『レアル・ジェネクス・ターボ』の拳が、裏側のカードにぶつかる。
だが、それは硬い音と共に弾き返された。
「セットモンスターは『アステカの石像』だ。こいつを攻撃したことで発生する反射ダメージは倍になるぜ！」
『アステカの石像』
レベル4
守備力2000
「ちっ……」
星華
ＬＰ：4000→3000
「……私はカードを二枚伏せる。ターンエンド」
星華
ＬＰ：3000
手札：4枚
場 ：モンスター
『レアル・ジェネクス・ターボ』攻撃力1500
魔法・罠
セット
セット
デシューツ・ルー
ＬＰ：4000
手札：4枚
場 ：モンスター
『アステカの石像』守備力2000
魔法・罠
セット
「俺のターンだ。ドロー」
デシューツ・ルー
手札：4→5
「『アステカの石像』を生贄に捧げ、『キャッスル・ゲート』召喚！」
いかにも硬そうな、巨大な石像が消えた次の瞬間、現れたのは、これまたいかにも硬そうな、巨大な門。そんな門の上には顔が、左右には、短い両腕がくっついている、そんなモンスターだった。
『キャッスル・ゲート』
レベル6
攻撃力0
「レベル6で、攻撃力0？」
「攻撃力0だと思って安心するなよ。こいつには攻撃表示でなければ使えない強力な効果があるからな。次はこいつだ！ 魔法カード『洗脳－ブレインコントロール』！ 800のライフを払い、お前の場のモンスターをもらうぜ！」
デシューツ・ルー
ＬＰ：4000→3200
ライフの減少と共に、星華の場のモンスターが彼のフィールドへ移動した。
「これでお前の場はがら空きだ。バトル！ 『レアル・ジェネクス・ターボ』で、ダイレクトアタックだ！」
その命令に従い、前のターンに星華のフィールドで起きた光景が再現される。
だがそれは、防がれることも同じだった。
「永続罠『血の代償』。こいつでライフを500支払い、手札の『ジェネクス・パワー・プランナー』を召喚する」
星華
ＬＰ：3000→2500
『ジェネクス・パワー・プランナー』
レベル1
守備力200
「こいつが召喚に成功した時、デッキから、レベル3の『ジェネクス』を手札に加えられる。私はデッキから、レベル3の『レアル・ジェネクス・マグナ』を手札に加える」
星華
手札：3→4
「……ちっ、守備モンスターを呼ばれちまったか。だが、まあいい。『レアル・ジェネクス・ターボ』、その小っこい機械を破壊しな」
再び命令に従い、召喚された機械をその拳で粉砕した。
「バトルは終了。このままターンエンドしちまえば、洗脳の効果で奪ったモンスターは相手の場に戻っちまう……だが……」
「それをさせないための、『キャッスル・ゲート』の効果、か？」
星華が言うと、男は面白そうに微笑した。
「さすがだな。その通りだ。『キャッスル・ゲート』の特殊能力発動！！」
デシューツ・ルーが叫んだと同時に、『レアル・ジェネクス・ターボ』は『キャッスル・ゲート』の後ろへ回り、姿を消した。
「開門！」
その直後、『キャッスル・ゲート』の扉が開き、そこから、武骨に光る、昔ながらの黒い大砲が顔を出した。
「
それが火を、ではなく、消えた『レアル・ジェネクス・ターボ』を噴き、それが星華の懐へと飛び込んだ。
「がぁ……！」
星華
ＬＰ：2500→1000
「これが『キャッスル・ゲート』の能力だ！ こいつが攻撃表示の時、一ターンに一度レベル5以下のモンスターを生贄に捧げることで、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える！」
「く……！」
「一枚伏せてターンエンド。ちなみに『キャッスル・ゲート』は戦闘破壊できねーからな」
デシューツ・ルー
ＬＰ：3200
手札：2枚
場 ：モンスター
『キャッスル・ゲート』攻撃力0
魔法・罠
セット
星華
ＬＰ：1000
手札：4枚
場 ：モンスター
無し
魔法・罠
永続罠『血の代償』
セット
（とにかく守りを固めるデッキか。全体の攻撃力の低さを、コントロール奪取で補うのが狙い。となると……）
「……私のターン！」
星華
手札：4→5
「私は手札からレベル8の『A・O・J コズミック・クローザー』を捨て、『マシンナーズ・フォートレス』を召喚する！」
星華
手札：5→4
『マシンナーズ・フォートレス』
レベル7
攻撃力2500
「レベル7のモンスターだと！？」
「貴様の『キャッスル・ゲート』は攻撃表示。このまま攻撃して大ダメージを喰らわせてやる！」
「……くくく」
星華が逆転のカードを召喚したにも関わらず、デシューツ・ルーは、笑っていた。
「だーっはははは！ 伏せカードオープン！ 罠カード『強引な取引き』！」
「『強引な取引き』……！」
「相手がモンスターを召喚した時、俺の場のモンスター全てを墓地へ送りライフを半分支払うことで、相手の場のモンスター全てのコントロールを得ることができる！」
デシューツ・ルー
ＬＰ：3200→1600
彼の宣言通り、ライフを半分とし、彼の場の『キャッスル・ゲート』が消えたと同時に、星華の場の巨大な要塞は移動した。
「絆なんて脆いもんだなぁ、えーっ！？ さあ、ターンエンドを宣言しな！ あんたの可愛い仲間がとどめを刺しに行くぜ！」
「……ふ」
彼が叫んだ時、星華も直前の彼と同じように、笑った。
「な、なんだ？」
「いや、すまない。あまりにも予想通りの展開だったもので、つい笑ってしまった」
「予想通り、だと……？」
「そうだ。貴様のデッキを見るに、どうせモンスターは防御系ばかりで攻撃系のモンスターなど、皆無か数えるほどしか入っていまい？ 攻撃に足りない分は、相手モンスターを奪うことで補う戦法。だから、伏せカードもコントロール奪取系かと思いそのカードだと思った。罠のコントロール奪取カードは少ないからな」
「ほう……で？ だったらどうするんだよ？」
「こうする。私は魔法カード『融合』を発動」
「『融合』！？」
「手札の機械族『A・ジェネクス・チェンジャー』と、炎族『レアル・ジェネクス・マグナ』を融合！」
「融合召喚！ 『起爆獣ヴァルカノン』！」
『起爆獣ヴァルカノン』
レベル6
攻撃力2300
「……な、なんだ。そんなカードじゃあ、お前のモンスターは倒せねえぞ」
「いいや。倒せるさ。こいつの融合召喚に成功した時、相手の場のモンスター一体を選択し、こいつと共に破壊。墓地へ送る。そして、相手は墓地へ送られたモンスターの攻撃力分のダメージを喰らう」
「何だと！？」
「この時、『マシンナーズ・フォートレス』が効果モンスターの効果の対象となったことで、貴様は私の手札を確認して一枚捨てることができる。もっとも、今の私の手札はゼロだが」
「ぐぅ……」
「仮にも自分のモンスターに対して申し訳ないが……ヴァルカノン！ 『マシンナーズ・フォートレス』と共に起爆しろ！ 誘爆！」
星華が叫ぶと同時に、ヴァルカノンがコズミック・クローザーにしがみつく。その瞬間、ヴァルカノンの背中の導火線に火が点き、数秒後、二体の機械は大爆発を起こした。
「だが……罠発動『ホーリーライフバリア』！ 手札を一枚捨てることで、このターン、俺が受ける全てのダメージをゼロにする！ 手札の『機動砦のギア・ゴーレム』を捨てる！」
デシューツ・ルー
手札：2→1
手札が捨てられた瞬間、彼の目の前に透明なバリアが張り巡らされる。
「ダメージへの対策も万全というわけか……だが、惜しかったな。カウンター罠『ギャクタン』。罠カードの発動を無効にし、それをデッキに戻す」
「なっ……！」
その言葉の通り、目の前のバリアは消滅する。
結果、二体の機械が起こした爆発は、問題なくデシューツ・ルーを飲み込んだ。
「うわああああああああ！！」
デシューツ・ルー
ＬＰ：1600→0
「……俺の敗けだ」
敗北したデシューツ・ルーは、ポケットからメダルを取り出し、星華に手渡した。
「まさか初戦敗退とはな……ま、せいぜい頑張れよ」
「……一つ、尋ねたい」
「ん？ なんだよ？」
「貴様、『カードプロフェッサー』か？」
「……ほう？」
星華が質問すると、デシューツ・ルーは、感心の声を上げた。
「よく知ってるな。決闘アカデミアじゃそんなことまで教えてんのかよ？」
「アカデミアでは習わん。知っているとしたら、教師か一部の物好きな生徒、あとは私のような、アメリカにいたことのある決闘者くらいだろうな」
「いくら知ってても、それでなぜ俺がそうだと分かったんだ？」
その質問に、星華は一瞬、言葉に詰まる。だが、話したところで困ることは無いと、答えることにした。
「今言ったように、私はかつてアメリカにいた。決闘大会も何度も見たことがある。決闘モンスターズ発祥の地なだけに、この日本以上に大規模大会は盛んに行われているからな。そして、そんな大会で、大会を盛り上げたり、莫大な賞金が惜しくなった主催者に雇われ、裏で大会を操作する。そんな『カードプロフェッサー』の中で、貴様の顔には見覚えがあった」
「……お嬢ちゃん」
星華の話しに、微笑みを浮かべているその顔に、警戒が宿った。
「本当に何者だ？ 俺の顔に、アメリカのそんな裏事情まで知ってるなんてよ……」
「……気にするな。言ったろう。生徒でも物好きは知っている。私はアメリカ出身で、そんなことを調べた物好きだ、というだけのことにすぎん」
「ふーん……」
怪訝に満ちた声。だが、星華は怯むことは無い。
「私も聞きたい。この大会にはプロやセミプロも多数参加することは周知のことだ。だが、お前達カードプロフェッサーまで、何のためにこの大会に出場している？」
「……さてな。まあ、プロも参加する大会を裏から操作する、なんて芸当は、必然的にプロと同じか同等以上の実力が無きゃとてもできねえ。そんな連中に、可愛い生徒達をしごいてほしいって、この大会の主催者先生が考えるのも、ある意味当然な愛情かもしれねえわな」
「……」
「……まあ、どうでもいいか」
未だ、納得できかねている星華に対して、彼は純粋な笑みを見せた。
「じゃあな」
その一言を最後に、彼は背中を向け、去っていった。
「……」
残された星華は決闘を振り返り、考える。
（……今回は運が良かった。やはり、シンクロを封じた状態は辛い。そもそもこのデッキ自体、シンクロを前提としたカード群な上、カード同士のシナジーが薄くて上手く回らない。それらの欠点を補うために、『マシンナーズ』や融合モンスターを取り入れたが……はっきり言って、無い方がよく回る……）
共に闘うと決めたデッキ。それを、上手く使いこなせない自分に対する怒りと、このまま戦って行けるだろうかという不安感。
（こいつらには悪いが……最悪、デッキをまるごと変えることも、視野に入れる必要があるかもしれん……）
……
…………
………………
「あ～あぁ……三人掛かりで襲ってきておいて、弱すぎでしょ！」
『……てか、シンクロも使わずにワンターンスリーキルかますお前も大概だと思うぞ？』
絡んできたホワイト寮の男子三人を、今言った通りの状況で倒したあずさは、やや憤慨しながら歩いていた。
『まあそもそも、このアカデミアの生徒でシンクロ使わなきゃ勝てない奴なんざ、それこそ梓くらいしかいねえだろうしな？ そうでなくともお前、実質アカデミア最強だし』
「まったく……言いたくないけど、もっと強くなる努力しなよ。わたしと違って伸びしろあるんだからさぁ」
『いくら伸びしろがあろうが、本人にやる気が無いんじゃ変わらねえわな……』
「情けない……」
『……』
いつもと同じように、シエンと悪態を吐きあいながら歩いていく。そんな二人を見ながら、キザンは微笑んでいた。
（修学旅行へ行く以前までは、シエンとさえほとんど話せないほど落ち込んでいたのにな……元気になって、本当に良かった……）
目の前の
「あーあっ！ たくよぉ……」
歩いているあずさの前から、そんなぞんざいな声が響いてきた。
見ると、その男は金髪の上にターバンを巻いていた。
着ているコートは足首までの長さがあるが、袖は無く、前を全開にし、二の腕に上半身と、露出の多い服装をしていた。
そんなワイルドな風貌の男は、あずさにも聞こえるほどの大きな声で、悪態をつきながら歩いていた。
「未来のプロ決闘者養成学校だと聞いて、どんな強えやつがいるかと思って来てみりゃ……たかが魔法カード一枚であっさり動けなくなりやがって。三対一で俺のライフに傷一つつけられねえとか、将来性無さすぎだろう」
話しを聞く限り、この男もあずさと同じく、一人で三人を相手に勝利してきたらしい。
そんな男と、通りがかったあずさの目が合った。
「……他にどんな奴がいるかと思えば、ただのガキじゃねえか……」
「む……」
そのぞんざいな物言いに、直前の決闘でただでさえ不機嫌だったあずさは、カチンと来た。
「ただのガキか、せっかくだから試してみたら？」
そう言いつつ、決闘ディスクを展開する。
「……けっ、面倒くせえ。だが、暇潰しくらいにはなるか？」
男も気だるげな態度そのままで、決闘ディスクを構えた。
「この『メンド・シーノ』の遊び相手くらいにはなってくれよ？ ガキ」
「……」
『決闘！』
メンド・シーノ
ＬＰ：4000
手札：5枚
場 ：無し
あずさ
ＬＰ：4000
手札：5枚
場 ：無し
「くくく……俺が先行を取らせてもらうぜ。ドロー」
メンド・シーノ
手札：5→6
「『フライングマンティス』を召喚」
『フライングマンティス』
レベル4
攻撃力1500
「更に、こいつを発動するぜ。永続魔法『レイバー・ペイン』！」
「『レイバー・ペイン』？」
「このカードはな、お互いに新しいモンスターを通常召喚すると、そのつど1000ポイントライフを支払わなきゃならないカードだぜ」
「一体の通常召喚で、1000ポイント……」
「モンスター召喚は慎重にしろよ。何せ、ライフを1000ポイント削られるんだからな」
「……」
「まあ、このカードには俺も困っちまうが……そこでこれだ。フィールド魔法『カマキリの
そのカードを発動した瞬間、メンド・シーノのフィールドに巨大な卵が出現した。
「自分フィールドに『カマキリ』がいる時、自分のターンに一度『ベビーカマキリトークン』を呼び出す卵だぜ。こいつで『レイバー・ペイン』の影響を受けることなく、俺はモンスターを召喚し続けられるぜ！」
「……」
「このコンボには、さっきの学生どもも何もできなくなっちまってなぁ。三人とも、今のお前みたいに黙りこくって、落ち込みながら勝手に自滅していったぜ。赤、黄、青と揃って棒立ちしてる様は正に信号機だったな。まったく情けねぇ！ だッハハハハ！」
顔に手を当て、背中を沿って大笑いする。そんな男の姿を、あずさは無言で見つめる。
「俺は更にカードを二枚伏せ、ターンエンド」
メンド・シーノ
ＬＰ：4000
手札：1枚
場 ：モンスター
『フライングマンティス』攻撃力1500
魔法・罠
永続魔法『レイバー・ペイン』
セット
セット
フィールド魔法『カマキリの卵鞘－エッグ・シェル－』
「……わたしのターン」
あずさ
手札：5→6
「……確かに、大抵の決闘者は困っちゃうようなカードだけど、わたしにはあんまり刺さらないなぁ」
「……なに？」
「私も永続魔法発動。『六武の門』、『六武衆の結束』、『紫炎の道場』」
「うお！ 三枚……俺より一枚多い、だと……？」
「そっちは永続魔法とフィールド魔法だけどね……ていうか、そこは張り合うとこじゃないでしょ。更に私は、『レイバー・ペイン』の効果でライフを1000ポイント支払って、『真六武衆－カゲキ』召喚」
あずさ
ＬＰ：4000→3000
『真六武衆－カゲキ』
レベル3
攻撃力200
「……はっ！ ライフ1000ポイント支払ってまで召喚したのが、たかが攻撃力200のモンスターかよ！」
「それだけの価値があるんだなぁ。カゲキの効果。このカードの召喚に成功した時、手札から六武衆一体を特殊召喚できる。『六武衆－ヤイチ』召喚」
『六武衆－ヤイチ』
レベル3
攻撃力1300
「『レイバー・ペイン』の効果でライフが削られるのは、通常召喚だけ。特殊召喚でライフは引かれない、だよね？」
「く……そういうことかよ……」
「『六武衆』達が召喚、特殊召喚される度、門に二つ、結束と道場に一つずつ、武士道カウンターが乗るよ」
『六部の門』
武士道カウンター：0→2→4
『六武衆の結束』
武士道カウンター：0→1→2
『紫炎の道場』
武士道カウンター：0→1→2
「更に、カゲキは場に自分以外の六武衆がいる時、攻撃力が1500ポイントアップする」
『真六武衆－カゲキ』
攻撃力200+1500
「ちっ……超えてきやがったか……」
「ヤイチの効果。場にヤイチ以外の六武衆がいる時、このターン攻撃できなくなる代わりにフィールドにセットされた魔法か罠カード一枚を破壊できる。わたしはこの効果で……そっちから見て左側のカードを破壊！」
ヤイチが矢を取り出し、それを構え狙いを定める。
それを見て、メンド・シーノは笑った。
「だったら破壊される前に使うまでだぜ。罠発動『強制脱出装置』！ こいつの効果でフィールド上のモンスター一体を手札に戻す。俺はこの効果で、そうだな……ヤイチを手札に戻すぜ！」
矢が届くより先に表になったカードの効果により、ヤイチはあずさの手札に戻った。
あずさ
手札：1→2
「六武衆は消えた。これでカゲキの攻撃力は元通りだな」
『真六武衆－カゲキ』
攻撃力200
「……だったら、『六武の門』の効果。このカードから武士道カウンターを四つ取り除いて、デッキから六武衆一体を手札に加える。わたしはこの効果で、『六武衆の師範』を手札に加える」
『六武の門』
武士道カウンター：4→0
あずさ
手札：2→3
「ここで、『六武衆の結束』の効果。このカードを墓地へ送って、乗ってる武士道カウンターの数だけカードをドロー」
あずさ
手札：3→5
「もう一枚、結束を発動。そして『六武衆の師範』は、自分の場に六武衆がいる時、特殊召喚できる」
『六武衆の師範』
レベル5
攻撃力2100
『真六武衆－カゲキ』
攻撃力200+1500
『六武の門』
武士道カウンター：0→2
『紫炎の道場』
武士道カウンター：2→3
『六武衆の結束』
武士道カウンター：0→1
「『紫炎の道場』の効果！ このカードを墓地へ送って、乗ってる武士道カウンターの数分のレベル以下の六武衆か、『紫炎』の名前を持つ効果モンスターをデッキから特殊召喚できる。武士道カウンターは三つ。わたしが呼び出すのは、レベル3の『六武衆－カモン』！」
『六武衆－カモン』
レベル3
攻撃力1500
『六武の門』
武士道カウンター：2→4
『六武衆の結束』
武士道カウンター：1→2
「……ちっ、なんて展開力だよ……」
「結束を墓地へ送って、カードを二枚ドロー」
あずさ
手札：3→5
「カモンの効果！ 一ターンに一度、攻撃を放棄することで場の表側の魔法、罠カードを破壊できる。この効果で……よし、『レイバー・ペイン』を破壊！」
先程のヤイチがそうしたように、今度のカモンは火薬に火を点け、それを『レイバー・ペイン』に飛ばし、破壊した。
「魔法カード『増援』。デッキから、レベル4以下の戦士族を手札に加える。わたしはレベル4の『真六武衆－キザン』を手札に。そしてこのカードも、自分の場に六武衆がいることで、特殊召喚できる。来て！ 『真六武衆－キザン』！」
『真六武衆－キザン』
レベル4
攻撃力1800+300
『六武の門』
武士道カウンター：4→6
「場にキザン以外の六武衆が二体以上いる時、キザンの攻撃力は300ポイントアップする。さあ、バトルだよ！ まずは『六武衆の師範』で、『フライングマンティス』を……」
「この瞬間、罠発動『威嚇する咆哮』！」
「な……！」
「これでテメーはこのターン、攻撃できねえからな」
「……じゃあ、バトルフェイズを終了。カードを一枚伏せて、ターンエンド」
あずさ
ＬＰ：3000
手札：3枚
場 ：モンスター
『真六武衆－キザン』攻撃力1800+300
『六武衆－カモン』攻撃力1500
『六武衆の師範』攻撃力2100
『真六武衆－カゲキ』攻撃力200+1500
魔法・罠
永続魔法『六武の門』武士道カウンター：6
セット
メンド・シーノ
ＬＰ：4000
手札：1枚
場 ：モンスター
『フライングマンティス』攻撃力1500
魔法・罠
フィールド魔法『カマキリの卵鞘－エッグ・シェル－』
「……さっきまでの雑魚どもとは違うようだな。今は不利だが、勝ちにいかせてもらうぜ。俺のターン！」
メンド・シーノ
手札：1→2
「……魔法カード『天使の施し』。カードを三枚ドローし、二枚捨てる。更に、『強欲な壺』。カードを二枚ドロー」
メンド・シーノ
手札：1→3
「そしてこの瞬間、『カマキリの卵鞘』の効果により、『ベビーカマキリトークン』一体が特殊召喚される」
『ベビーカマキリトークン』
レベル1
攻撃力500
「そして、こいつを発動させてもらうぜ。速攻魔法『エネミーコントローラー』！ 第二の効果で、ベビーカマキリを生贄に、テメーの師範をいただくぜ！」
「なっ！」
ベビーカマキリが光りになると共に、あずさの場の『六武衆の師範』が移動する。
そこで、彼のフィールドのカマキリと並び立った。
「さあ、いくぜ。装備魔法『早すぎた埋葬』！ ライフを800払い、墓地のモンスター一体を特殊召喚できる。来い！ 『デスサイズ・キラー』！」
メンド・シーノ
ＬＰ：4000→3200
彼のライフを糧に、墓地からモンスターが現れる。
名前の通りの大鎌を両手に、六本の足で地面を穿つ、緑色の髑髏殻のモンスター。
巨大かつ凶悪な見た目のモンスターが、あずさのフィールドを見下ろした。
『デスサイズ・キラー』
レベル8
攻撃力2300
「うぅ、上級モンスターが来ちゃった……強そー」
「さあ、バトルだ！ まずはテメーのジジイで、『六武衆－カモン』を攻撃！」
師範の一太刀がカモンを襲った。
あずさ
ＬＰ：3000→2400
「くぅ……カモンの効果！ このカードが破壊される時、代わりに自分フィールドの別の六武衆を破壊できる。カゲキを破壊！」
切り裂かれ、消滅するはずだったカモンの代わりに、カゲキが消滅した。
「そっちを守ったか……六武衆の数が減ったことで、キザンの攻撃力は元に戻る」
『真六武衆－キザン』
攻撃力1800
「続いて、『デスサイズ・キラー』で、『六武衆－カモン』を攻撃！ この瞬間！ 『デスサイズ・キラー』の効果発動！」
「効果……？」
「自軍のモンスターを生贄にすることで、いつでもその生贄の攻撃力と同じだけ攻撃力をアップさせる。師範を生贄だ！」
高らかに宣言したことで、『六武衆の師範』が光に変わった。
『デスサイズ・キラー』
攻撃力2300+2100
「攻撃力4400！？」
「
今度は巨大な大鎌がカモンに振り下ろされた。
「うわぁ……！ 速攻魔法発動！ 『禁じられた聖槍』！ モンスター一体の攻撃力を800ダウンさせて、そのモンスターはこのターン、魔法・罠の効果を受けなくなる！」
カードが表になったと同時に、頭上に現れた聖槍が、『デスサイズ・キラー』の胸を貫いた。
『デスサイズ・キラー』
攻撃力2300+2100-800
「ちぃ……！ だが、攻撃力はまだ3600もあるぜ！」
絶叫のもと振り下ろされた大鎌が、カモンを襲った。
「うああ……！」
あずさ
ＬＰ：2400→300
「……けっ、『フライングマンティス』の攻撃力じゃ、キザンには敵わねえ……」
（奴の伏せカードを警戒して『フライングマンティス』を温存しておいたのがアダになっちまったか……）
「手間取らせやがって！ カードを一枚伏せ、ターンエンドだ！」
メンド・シーノ
ＬＰ：3200
手札：0枚
場 ：モンスター
『デスサイズ・キラー』攻撃力2300+2100
『フライングマンティス』攻撃力1500
魔法・罠
装備魔法『早すぎた埋葬』
セット
フィールド魔法『カマキリの卵鞘－エッグ・シェル－』
あずさ
ＬＰ：500
手札：3枚
場 ：モンスター
『真六武衆－キザン』攻撃力1800
魔法・罠
永続魔法『六武の門』武士道カウンター：6
「いやぁ、実際の所、学生にしてはよくやったぜ。その展開力にはちょっぴり驚いたしな。十分楽しめた。だがお遊びもここまでだ。大人しく、負けろ！」
「……わたしのターン」
あずさ
手札：3→4
「……わたしも魔法カード『強欲な壺』。カードを二枚ドロー」
あずさ
手札：3→5
「……確かに、手間取らせちゃったね……」
「……ん？」
「前のターンで、わたしを倒せなかったのはまずかったよ」
「なに？」
「速攻魔法『六武衆の荒行』！ 場の六武衆一体を選択して、エンドフェイズに破壊する代わりに、選択したモンスターと同じ攻撃力を持つ六武衆をデッキから特殊召喚する。わたしはキザンを選択して、攻撃力1800の『六武衆－ザンジ』を特殊召喚！」
『六武衆－ザンジ』
レベル4
攻撃力1800
『六武の門』
武士道カウンター：6→8
「更に、魔法カード『戦士の生還』。このカードの効果で、墓地から戦士族一体を手札に加える。墓地から『真六武衆－カゲキ』を手札に加える。もう一度、『真六武衆－カゲキ』を召喚。更に、効果で『六武衆－ヤイチ』を特殊召喚」
『真六武衆－カゲキ』
レベル3
攻撃力200+1500
『六武衆－ヤイチ』
レベル3
攻撃力1300
『六武の門』
武士道カウンター：8→10→12
「……またこれかよ……」
『六武衆－ヤイチ』
攻撃力1300
『真六武衆－カゲキ』
攻撃力1700
『六武衆－ザンジ』
攻撃力1800
『真六武衆－キザン』
攻撃力1800+300
「……だが、そんなにモンスターを並べたところで、俺の『デスサイズ・キラー』には敵わねえじゃねえか。何のための手間だよ？ あーん？」
「すぐに分かるよ」
「なに？」
「そっちの真似しちゃう。魔法カード『受け継がれる力』！ このカードの効果で、『六武衆－ザンジ』を墓地へ送って、『真六武衆－キザン』の攻撃力をアップさせる」
『真六武衆－キザン』
攻撃力1800+300+1800
「攻撃力3900か。だが、それだけじゃ足りねえな」
「まだだよ。ここで『六武の門』の効果も使う。自分フィールドの武士道カウンターを二つ取り除くごとに、自分の場の、六武衆か紫炎の攻撃力を、エンドフェイズまで500ポイントアップさせる。キザンを対象に、『六武の門』に乗ってる武士道カウンターを、十二個全部取り除く！」
『六武の門』
武士道カウンター：12→0
『真六武衆－キザン』
攻撃力1800+300+1800+500×6
「攻撃力6900！？」
「バトルだよ！ 『真六武衆－キザン』で、『デスサイズ・キラー』を攻撃！」
「ちっ……『デスサイズ・キラー』の効果で、『フライングマンティス』を生贄にする！」
『デスサイズ・キラー』
攻撃力2300+2100+1500
「それでも、攻撃力は5900。紫炎の方が高い！」
「いいや……永続罠『リビングデッドの呼び声』！ 墓地の『フライングマンティス』を蘇生！」
『フライングマンティス』
レベル4
攻撃力1500
「こいつも生贄だ！」
『デスサイズ・キラー』
攻撃力2300+2500+1500+1500
「攻撃力7400……！」
「だっハハハハ！ これでお前の攻撃は通らねえぜ！ もっとも、場のモンスターの数が変わったことで巻き戻しが発生するがな。それでも、このターンを終了すれば紫炎の攻撃力は元に戻る。『デスサイズ・キラー』の攻撃でジ・エンドだなぁ！」
「……なに勘違いしてんの？」
「ひょ？」
「まだわたしはバトルフェイズを終了してないよ」
「なに言ってやがる？ お前の場に『デスサイズ・キラー』を超えるモンスターは……」
「『真六武衆－キザン』で、『デスサイズ・キラー』を攻撃！」
「はぁ？ その攻撃力差で何を……残りの手札一枚、まさか！」
「そのまさか！ この瞬間、速攻魔法『突進』！ 自分のモンスター一体の攻撃力を、700ポイント上げる。対象はもちろん、『真六武衆－キザン』！」
『真六武衆－キザン』
攻撃力1800+300+1800+500×6+700
「攻撃力、7600だと……」
一旦は攻撃を止めたキザンが、再び走っていく。
鎌と刀がぶつかり合い、鍔迫り合い、押し合いになる。だが徐々に、キザンの刀が大鎌を押し返し、『デスサイズ・キラー』の身を大鎌ごと切り裂いた。
「ば、バカな……」
メンド・シーノ
ＬＰ：3200→3000
「残ったヤイチとカゲキで……おお！ ピッタリ3000。ダイレクトアタック！」
メンド・シーノ
ＬＰ：3000→0
決闘が終わり、メンド・シーノは満足した様子でメダルを差し出した。
「完敗だぜ。あれだけ攻撃力を上げたのに、最後にはそれすら超えられるなんてよ」
「ふふ……わたしも楽しかったよ。展開が取り柄なデッキだから展開ばっかりしてきたけど、あんな単純な攻撃力勝負したの、すごい久しぶり……」
感慨深げに決闘を振り返る彼に対して、あずさもまた応える。
「俺の伏せカードを破壊しなかったのも、攻撃力勝負を楽しむためだったわけか」
「……ん？」
「俺が伏せておいた『リビングデッドの呼び声』、あの時点じゃ俺の墓地にモンスターはいなかったから、ヤイチの伏せカード破壊効果に合わせて発動することもできなかった。それを読んでて、敢えて破壊しなかったんだろう？ そもそも、効果使っちまったら、ヤイチは攻撃できなくなって、俺へのとどめに足りなくなっちまうしな」
「……そそそ、そーだよ！ それで破壊しちゃってもつまんないからね。いやー、破壊しないで正解だったよー。おかげで楽しかった。あははははー……」
（忘れてやがったなこいつ……褒めて損した……）
そんな感じで、二人で簡単に会話をした後で、彼は背中を向け去っていった。
「……危なかったー。上手くデッキが回んなきゃ敗けてたよー……ありがとうね、みんな。特にキザン、お疲れさま」
『……ふ』
決闘で使われた真六武衆の二人、特にキザンは、嬉しそうに微笑んでいた。
『俺を出せばもっと早く終わったんじゃねえか？』
「出せるか！ あんたシンクロモンスターなんだから！ アカデミアの生徒ならいざ知らず、外部の人に向かって出したらそれだけで大騒ぎになるよ！」
『……俺も出されなかったし……』
『僕達もだよね、ミズホ……』
『ええ……』
「エニシもシナイもミズホも、いちいち落ち込まないの。仕様がないでしょう、呼べる局面が全然なかったんだからさぁ。文句があるなら決闘考えるのがド下手な作者に言って」
そうして、しばらく真六武衆達との会話を楽しんで、再び歩き出した。
「さーて……大会はまだ始まったばかりだし、どんどん行こうっと！」
弾んだ声を上げながら、あずさは歩を進めていった。
お疲れ～。
ド下手でごめんね……
今更ながら、やっぱ攻撃力の表記、変えるべきやろうか……
計算式だけ書いて合計書かないって、実際どうなのかしら。
合計値だけ書いてもどんな強化されたか分かんなくなるから計算式にしてるんだけどや。
本当に今更だけど……
まあいいや。んじゃ早速、オリカ行こうオリカ。
『強引な取引き』
通常罠
相手がモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚した時、自分フィールド上に存在する全てのモンスターを生け贄に捧げ、ライフポイントを半分払って発動する。
相手フィールド上に存在する全てのモンスターのコントロールを得る。
遊戯王Rにて、デシューツ・ルーが使用。
コストは結構なもんにも見えるが、自分の場が一体だけの時にも使えるから相手が大量展開してたら、そら益のがデカいわな。
発動タイミング的に自分のターンに使うことはあんま無さげだが……
もし使ったら、とどめの一撃になるわな。アクセルシンクロとかに対して……
『レイバー・ペイン』
永続魔法
お互いのプレイヤーは1000ライフポイント払わなければ、モンスターを通常召喚する事ができない。
遊戯王Rにて、メンド・シーノが使用。
当時ならともかく、特殊召喚手段が豊富になり過ぎた昨今では、あんま強いカードとは言えない効果になっちまったね。
とは言え貼られたら地味に困るし、永続魔法だから二枚、三枚とも増えると馬鹿にはできない。
専用のメタバーンを組めば、十分に脅威じゃなかろうかと思いますわ。
『カマキリの卵鞘－エッグ・シェル－』
フィールド魔法
自分フィールド上に「カマキリ」または「マンティス」と名のついたモンスターが存在する場合に発動する事ができる。
自分のスタンバイフェイズ毎に「ベビーカマキリトークン」（昆虫族・風・星1・攻/守500）1体を特殊召喚する。
当然、メンド・シーノが使用。
『スライム増殖炉』よりゃマシだが、ぶっちゃけどう使えばいいのか……
作中みたく、『レイバー・ペイン』と組み合わせて使う手もあるけど、それだけライフを節約したいことも無いしね。
ライフ4000スタートだからある意味仕方ないが……
そもそも、OCGにはほとんどいないんだよなぁ、『カマキリ』に『マンティス』……
ほんじゃあ次は、原作効果。
『デスサイズ・キラー』
自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げる。
このカードの攻撃力は生贄に捧げたモンスターの攻撃力分アップする。
この効果は相手ターンでも発動する事ができる。
そらぁ、メンド・シーノが使用。
生贄が昆虫族以外でもいけるうえ、攻撃力をそのまま吸収、上昇は永続、しかも誘発即時効果。
このままじゃあ、少なくとも戦闘ではほぼ無敵だから、最上級とは言え確かに強過ぎる。
過ぎるが、だからって……OCGは弱くし過ぎ。
何より、なぜ『カマキリ』『マンティス』ではない……
以上。
ポセイドンと言い、地獄百足と言い、女王様と言い、こいつと言い……
なんで漫画出身の切り札級昆虫族は、軒並み変な弱体化されるわけ？
弱体化自体はともかく、弱体化させすぎたり、わけの分からんデメリット効果つけたり、せっかくの長所も台無しにしたり……
KONAMIは昆虫が嫌いなん？
大海自身、虫はあんま好きじゃないけど、それでも酷過ぎだぁな。
そんなことを書きながら感じましたわ。
まあこんな感じで、しばらくは雑魚ラッシュが続くから、読んでて退屈かも分かりません。
それでも極力、面白い物が書けるよう頑張るよ。
てなわけで、次話まで待ってて。