遊戯王GX ~氷結の花~   作:大海

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第三話~。
今回はタイトル通り、久々の彼が登場します。
いやぁ、今回も面倒くさかったぁ~……
そんな面倒くさい決闘、どうぞ見てやっておくんな。
てことで、行ってらっしゃい。



    竜の咆哮

視点:外

(……アカデミアに帰ってきてから、色々あって忘れていましたが……)

 森の中を歩き、そこで適当に昇った木に腰掛けつつ、梓は、一枚のカードを眺めていた。

(まだ、この子にふさわしい決闘者を探していなかった……)

 童実野町で、偶然手に入れてしまったカード。

 この世には存在せず、生まれてこないはずだった。

 そんな、『光と闇の竜(ライトアンドダークネス・ドラゴン)』のカードを見つめながら、改めてその役目を自覚する。

「……よく考えてみれば、アカデミアに入学して以来、こういうことばかりしている気がしますね……」

 最初は入学と共に、なぜか自分の手元に舞い降りた、三種類のデッキにふさわしい決闘者を探していた。

 その人達は、入学して一年目が終わろうとしたところでようやく見つかった。

 デッキに比べれば、一枚のカードにふさわしい決闘者を探すことは、遥かに簡単なのかもしれない。

 だが逆に、たった一枚しか無いからこそ、見つけられるかどうか分からない。下手をすれば、永遠に見つけられないかもしれない……

 それでも、必ず見つけ出す。偶然とは言え、電脳世界から現実世界へ連れ出してしまった梓にとって、それは果たすべき責任だった。

(そのためには、ジェネックス……世界中から実力者達が集まるこの大会なら、そんな人が見つかる可能性は高い)

 

『そのカード……』

 カードを眺めているところに、いつもの服ではなく、梓が買ってきた服を着ているアズサが、後ろから抱き着きながら声を掛けてきた。

『……ちょっとだけど、気配を感じる』

「気配……? 精霊の気配ですか?」

 驚いて聞き返す梓に、アズサは曖昧な表情を浮かべていた。

『……正直、よく分かんない。けどもし精霊だとしたら、まだ完全には目覚めてない感じだね。この子にふさわしい決闘者が見つかったら、目覚めるのかも……』

「……」

 仮にこの子が精霊だというなら、探すことはより難しい。

 三種のデッキがそうだったように、決闘者を選ぶのはカードの方だった。だから、このカードが選ぶ決闘者。それを、見つけ出すしかない。

 もちろん、そんな人間が、プロ決闘者の中にいるとも限らない。

 もしかしたら、実は既に、アカデミアの生徒の中にいるのかもしれない。

 

(もしそうなら、その可能性がある決闘者……真っ先に思いつくのは……)

 

 

「Yeeeaaaaaaah!! Haaaaaaaaaaaaaah!!」

 

 梓が一人の人物を思い浮かべた瞬間、正にその人物の、聞き覚えのあり過ぎる声が木々の向こうから聞こえてきた。

 木から飛び降り、そちらへ走る。森を抜けた時、そこに彼はいた。

 

「You exerted yourself much(アンタはよくやったよ)……確かにメダルは頂いたからなぁ」

 

 大勢のブルー寮の実力者達が美白していく中、彼だけは、梓や星華と同じく白く染まることなく、青い制服のままでいた。

 そんな青い制服姿で、目の前に倒れている白の生徒からメダルを奪い、いつも通りの、明るい声を上げていた。

「噂のホワイト寮も大したこと無えな……ん?」

 と、彼もまた、彼を見つめる梓の姿に気付いた。

「Hey、梓さん。大会が始まって早々、森の中でsiesta(シエスタ)かい?」

「……クレスタ?」

「Ah……気にしなくていいぜ。それより……」

 井守ヒルトは喋りつつ、不敵な笑みを浮かべた。

「もう決闘はしたのかい?」

「……いいえ。まだ一人も……」

「まあ、アンタほどの男に挑もうって奴もアカデミアじゃ滅多にいねぇだろうがよぉ……」

 

「一日の内、最初に挑まれた決闘は拒否できねえ。そのルールは当然分かってるよなぁ」

「……ええ」

 

 その返事に、井守は決闘ディスクを構える。

「Shall we duel ?」

「良いでしょう」

 梓もまた、決闘ディスクにデッキをセットした。

(井守さん……どちらかと言えば守備的で、攻撃に耐えつつ大型モンスターを呼び出し倒すという決闘をしていたのが、二年生からは攻撃的な決闘に変わり、今では準さんや大地さんの次くらいの実力になったと聞きますが……彼はどうでしょうか……)

 今は自身のデッキケースに眠っている、二極の竜を思いながら、目の前の決闘者に目を向けた。

 

「Are you ready guy!?」

「……ん?」

「OK!! Let’s go!!」

 

決闘(duel)!!』

 

 

LP:4000

手札:5枚

場 :無し

 

井守

LP:4000

手札:5枚

場 :無し

 

 

「先行は私です。ドロー」

 

手札:5→6

 

「『氷結界の守護陣』を召喚」

 

『氷結界の守護陣』チューナー

 レベル3

 守備力1600

 

「自分フィールドに氷結界が存在する時、『氷結界の伝道師』は特殊召喚できます」

 

『氷結界の伝道師』

 レベル2

 守備力400

 

「この効果で特殊召喚したターン、私はレベル5のモンスターを特殊召喚できなくなります。カードを二枚伏せ、ターンエンド」

 

 

LP:4000

手札:2枚

場 :モンスター

   『氷結界の守護陣』守備力1600

   『氷結界の伝道師』守備力400

   魔法・罠

    セット

    セット

 

 

「ご存知でしょうが、場に守護陣とそれ以外の氷結界がいる限り、あなたは守護陣の守備力を超えるモンスターで攻撃できなくなります」

「Ha!! No problem!! My trun、Drow!!」

 

井守

手札:5→6

 

「Quick -play spell『Book of Moon』!! 『氷結界の守護陣』をSetしな!」

(……さすがに、この程度のロックは通じなくなってきましたか……)

 言われた通り、守護陣を裏側にセットし直した。

「そしてこいつだ! Come on!! 『Assault Wyvern』!!」

 

『Assault Wyvern』

 Level 4

 Atk 1800

 

「『Assault Wyvern』で、Setされた『氷結界の守護陣』へAttack!!」

 絶叫と共に突進していった『Assault Wyvern』の翼の刃が、裏側のカードを細切れにした。

「モンスターを戦闘破壊したこの瞬間、『Assault Wyvern』をTribute! Come on!! 『Crystal Dragon』!!」

 

『Crystal Dragon』

 Level 6

 Atk 2500

 

「Go!! 『Crystal Dragon』で、『氷結界の伝道師』へAttack!!」

 『Crystal Dragon』がその翼をはためかせる。

 そこから無数の水晶が飛んでいき、伝道師を襲った。

「Activate the Trigger Effect! こいつがバトルしたターンのバトルフェイズ、デッキから、レベル 8の竜を手札に加える。対象は、『Phantom Dragon』!!」

 

井守

手札:3→4

 

「二枚Set! End of my turn!!」

「伏せカード発動。速攻魔法『サイクロン』。井守さんから見て右側のカードを破壊します」

「Ha……」

 破壊されたのは、永続罠『Dragon’s Rage(竜の逆鱗)。』

 

 

井守

LP:4000

手札:2枚

場 :モンスター

   『Crystal Dragon(クリスタル・ドラゴン)』Atk 2500

   魔法・罠

    Set

 

LP:4000

手札:2枚

場 :モンスター

    無し

   魔法・罠

    セット

 

 

「私のターン、ドロー」

 

手札:2→3

 

「『天使の施し』発動。カードを三枚ドローし、二枚を捨てます。永続魔法『生還の宝札』。そして、私の場にモンスターがいない時、手札の水属性モンスター一枚を捨て、『フィッシュボーグ-アーチャー』を特殊召喚」

 

手札:2→1

 

『フィッシュボーグ-アーチャー』チューナー

 レベル3

 守備力300

 

「宝札の効果で、一枚ドロー」

 

手札:1→2

 

「この瞬間! 手札の『Phantom Dragon』のEffect! 相手がSpecial Summonした時、手札のこいつをSpecial Summon! Come on! 『Phantom Dragon』!!」

 

『Phantom Dragon』

 Level 8

 Atk 2300

 

「ただし、こいつがフィールドに存在する限り、俺は二ヵ所のモンスターゾーンが使用不可になっちまうがなぁ」

「ふむ……永続罠『リビングデッドの呼び声』。墓地より、『氷結界の伝道師』を特殊召喚します」

 

『氷結界の伝道師』

 レベル2

 攻撃力1000

 

手札:2→3

 

「そして、伝道師を生贄に捧げることで、墓地に眠る伝道師を除く氷結界を特殊召喚できます。私はこの効果により、今しがた墓地へ捨てた『氷結界の虎将 ガンターラ』を特殊召喚します」

 

『氷結界の虎将 ガンターラ』

 レベル7

 攻撃力2700

 

手札:3→4

 

(……ほう? このカード……)

「使ってみますか。スピリットモンスター『氷結界の神精霊』を召喚」

 

『氷結界の神精霊』スピリット

 レベル4

 攻撃力1600

 

「スピリット!? 幻のシリーズを、なんでアンタが!?」

「……まあ、色々ありまして。ではバトルフェイズです。グルナードで『ファントム・ドラゴン』を攻撃します。凍撃輪舞!」

 『ファントム・ドラゴン』に向かって、ガンターラの回し蹴りが飛ぶ。

 

Careless(ケアレス) you(迂闊じゃねえか)? Acrivate the Continuous Trap『Castle of Dragon Souls』!」

 

「……おおっ!」

 井守がカードを発動させた瞬間、彼の後ろから、巨大な岩が出現した。

 同時に、周囲の景色も変わり、真っ昼間の空が、月光に照らされる月夜に変わった。

 月を見上げた時、岩の頂上には西洋の城が月光を隠し、そしてその周囲の空を、何体ものドラゴン達が旋回していた。

「『Castle of Dragon Souls』はフィールドに一枚しか存在できねぇ。そして、一ターンに一度Graveyardに眠る竜一体を除外することで、自分フィールドのモンスター一体の攻撃力を、ターンエンド時まで700ポイントアップさせる効果を持つぜ!」

「なっ……」

「Graveyardの『Assault Wyvern』をBanish(除外)! Up Attack to 『Phantom Dragon』!!」

 墓地に眠る『Assault Wyvern』が墓地から回収され、同時にフィールドにその魂が舞い降りる。それが『Phantom Dragon』と一つに重なった。

 

『Phantom Dragon』

 Atk 2300+700

 

「攻撃力3000……!」

 ガンターラの攻撃はとどまることなく、『Phantom Dragon』にぶつかる。回し蹴りは難なく受け止められ、ガンターラは呆気なく反撃された。

「ぬぅ……」

 

LP:4000→3700

 

「……バトルを終了します。メインフェイズ、魔法カード『死者蘇生』を発動。ガンターラを再び特殊召喚。宝札の効果で一枚ドロー」

 

『氷結界の虎将 ガンターラ』

 レベル7

 攻撃力2700

 

手札:2→3

 

「一枚伏せます。これでターンを終了。そしてこのエンドフェイズ、ガンターラと神精霊の効果が発動されます。まずはガンターラの効果。墓地に眠る氷結界、『氷結界の守護陣』を特殊召喚」

 

『氷結界の守護陣』チューナー

 レベル3

 守備力1600

 

手札:2→3

 

「更に、スピリットモンスターである『氷結界の守護陣』は特殊召喚できず、召喚、リバースしたターンのエンドフェイズに手札に戻る効果があります」

「Ha! せっかくのスピリットモンスターも活躍できなかったな」

「いいえ。『氷結界の神精霊』は自分フィールドに他の氷結界が存在する時、その効果は相手フィールドのモンスター一体を手札に戻す効果に変わります」

「What’s!?」

「私はこの効果を使用し、『クリスタル・ドラゴン』を手札に戻します」

 老人の霊体の体から光が発生する。それが『Crystal Dragon』に降り注ぎ、姿を消滅させた。

 

井守

手札:1→2

 

「Shit! ……貴重な『死者蘇生』を使ってまでガンターラを呼んだ真の理由がそれか……」

 

 

LP:3700

手札:3枚

場 :モンスター

   『氷結界の虎将 ガンターラ』攻撃力2700

   『氷結界の神精霊』攻撃力1600

   『氷結界の守護陣』守備力1600

   『フィッシュボーグ-アーチャー』守備力300

   魔法・罠

    永続魔法『生還の宝札』

    永続罠『リビングデッドの呼び声』

    セット

 

井守

LP:4000

手札:2枚

場 :モンスター

   『Phantom Dragon』Atk 2300

    Cannot be used.

    Cannot be used.

   魔法・罠

    Continuous Trap『Castle of Dragon Souls(竜魂の城)』

 

 

「相変わらずHardなGuardだなぁ。だが、お得意のシンクロ召喚はどうしたよ?」

「……」

 もはや、アカデミア内では周知されている以上、当然抱かれる疑問だろう。

 生徒相手なら、使ってしまっても問題ないかもしれないが、それでも、使うことのできる者全員、滅多なことで使いたくはない。

 だが、その理由を説明すると長くなる。

 だから、こんな時に返す言葉は、これに限る。

「使わせてごらんなさい」

 決闘者によっては、嘗めているのかと逆上するか、使わせようと燃えるかの言葉。

 井守の場合は……

「面白れぇ……」

 典型的な後者だった。

 

「My Turn! Draw!」

 

井守

手札:2→3

 

「ずっと試してみたかったんだ。俺の竜と、アンタの龍、どっちが強えか。俺とアンタ、どっちがこのアカデミアの、最強のドラゴン使いかなぁ!!」

「え……いや、私別に、ドラゴン使いでは……」

「Activate the Normal Spell『Pot of Greed』! カードを二枚ドロー!」

 

井守

手札:2→4

 

「And Normal Spell『Soul Exchange』! 相手フィールドのモンスター一体をTributeできる。Targetは当然、アンタの場の『氷結界の守護陣』!」

「ぬぅ……!」

 梓のフィールドを守っていた氷の獣が、あっさり光と消滅してしまった。

「同時に俺のフィールドの『Phantom Dragon』もTribute、そしてTribute Summon(生贄召喚)! 『Pandemic Dragon』!!」

 

『Pandemic Dragon』

 Level 7

 Atk 2500

 

「『パンデミック・ドラゴン』……」

「こいつは一ターンに一度、俺のライフを餌にして、相手フィールドのモンスター一体の攻撃力を餌にしただけDownさせる。俺は200のライフを喰らわせ、ガンターラの攻撃力をDownだ!」

 

井守

LP:4000→3800

 

 井守のライフが削られる。と同時に、『パンデミック・ドラゴン』の背中のシンボルから、毒々しい緑色に光る粒子が飛んでいき、ガンターラの身に纏わりついた。

 

『氷結界の虎将 ガンターラ』

 攻撃力2700→2500

 

「更に! 一ターンに一度、こいつの攻撃力以下の攻撃力を持つモンスター一体を破壊する! ガンターラを破壊だあ!!」

 再び背中のシンボルが光り、そこから飛んでいった光がガンターラを貫いた。

「『Soul Exchange』を使ったターンはバトルができねぇ。一枚Set。End of My turn」

 

 

井守

LP:3800

手札:1枚

場 :モンスター

   『Pandemic Dragon』Atk 2500

   魔法・罠

    Continuous Trap『Castle of Dragon Souls』

    Set

 

LP:3700

手札:3枚

場 :モンスター

   『氷結界の神精霊』攻撃力1600

   『フィッシュボーグ-アーチャー』守備力300

   魔法・罠

    永続魔法『生還の宝札』

    永続罠『リビングデッドの呼び声』

    セット

 

 

「さすがですね……私のターン」

 

手札:3→4

 

「私は二体のモンスターを生贄に捧げ、『氷結界の虎将 グルナード』を召喚!」

 

『氷結界の虎将 グルナード』

 レベル8

 攻撃力2800

 

「グルナードが場にある限り、私は続けて氷結界を通常召喚できます。『氷結界の武士』を召喚」

 

『氷結界の武士』

 レベル4

 攻撃力1800

 

「更に、速攻魔法『収縮』。『パンデミック・ドラゴン』の攻撃力を、半分とします」

 

『Pandemic Dragon』

 Atk 2500/2

 

「Shit……これじゃあ『Castle of Dragon Souls』の効果を使っても意味がねえか……」

 体が半分のサイズに縮小してしまった自らのドラゴンに毒づいたが、そこへ梓が追い打ちを掛ける。

「バトルです。グルナードで、『パンデミック・ドラゴン』を攻撃。数多氷妖刀乱舞!」

 グルナードの周囲に、いくつもの氷の剣が出現し、その全てが『Pandemic Dragon』へ飛んでいった。

「だが、タダじゃあ終わらねえ。Acrivate the normal Trap『Malevolent Catastrophe』! 相手モンスターのAtack時、フィールドのSpell and Trapを全て破壊だぁ!」

 フィールドの中心から、『邪神の大災害』が発生する。それがフィールドの魔法、罠全てを飲み込む。その結果、『竜魂の城』は消滅し、周囲の景色は元に戻った。

「く……ならば、速攻魔法『非常食』! 『生還の宝札』と『リビングデッドの呼び声』を墓地へ送り、ライフを回復します」

 

LP:3700→5700

 

「そして、グルナードの攻撃は止まりません!」

「待ちな! この瞬間、『Castle of Dragon Souls』のLast Effect。こいつがGraveyardへ落ちた瞬間、Banishされた竜を一体、Special Summonされる。Come back! 『Assault Wyvern』!!」

 

『Assault Wyvern』

 Level 4

 Atk 1800

 

「構いません! グルナード!」

「ううおぉ……!」

 

井守

LP:3800→2250

 

「……残った『アサルトワイバーン』の攻撃力は、武士と互角……」

 

「いいや。アンタのフィールドをよく見てみなよ」

 その言葉に、梓は場のモンスターを見る。

「これは……!」

 

『氷結界の虎将 グルナード』

 攻撃力2800-1000

『氷結界の武士』

 攻撃力1800-1000

 

「『Pandemic Dragon』は破壊された瞬間、フィールドのモンスターの攻撃力を1000下げる」

「そんな効果が……私はこれでターン終了」

 

 

LP:5700

手札:1枚

場 :モンスター

   『氷結界の虎将 ガンターラ』攻撃力2800-1000

   『氷結界の武士』攻撃力1800-1000

   魔法・罠

    無し

 

井守

LP:2250

手札:1枚

場 :モンスター

   『Assault Wyvern』Atk 1800

   魔法・罠

    無し

 

 

「My turn! Draw!」

 

井守

手札:1→2

 

「Battle! 『Assault Wyvern』、『氷結界の武士』へAtack!」

 最初と同じように、『アサルトワイバーン』の翼が武士を切り裂いた。

「くっ……」

 

LP:5700→4700

 

「更に、『Assault Wyvern』をTribute! Come again! 『Crystal Dragon』!」

 

『Crystal Dragon』

 Level 6

 Atk 2500

 

「Atack! 『Crystal Dragon』!!」

 二度目となる水晶の雨。それに撃たれたグルナードは破壊された。

「ぐぅ……!」

 

LP:4700→4000

 

「Haaaah!! Activate the Effect! 『Tyrant Dragon』をSearch!」

 

井守

手札:1→2

 

「そして俺は、『Totem Dragon』をNormal Summon」

 

『Totem Dragon』

 Level 2

 Def 200

 

「End of My Turn」

 

 

井守

LP:2250

手札:1枚

場 :モンスター

   『Crystal Dragon』Atk 2500

   『Totem Dragon』Def 200

   魔法・罠

    無し

 

LP:4000

手札:1枚

場 :モンスター

    無し

   魔法・罠

    無し

 

 

「私のターン」

 

手札:1→2

 

「……『氷結界の水影』を召喚」

 

『氷結界の水影』チューナー

 レベル2

 攻撃力1200

 

「水影で、『ミンゲイドラゴン』を攻撃。氷結・斬影の形」

 水影がその場から消え、小さな『ミンゲイドラゴン』の前に降り立つ。

 両手のクナイを振りかざし、細切れにした。

「カードを一枚伏せます。ターンエンド」

 

 

LP:4000

手札:0枚

場 :モンスター

   『氷結界の水影』攻撃力1200

   魔法・罠

    セット

 

井守

LP:2250

手札:1枚

場 :モンスター

   『Crystal Dragon』Atk 2500

   魔法・罠

    無し

 

 

「防戦一方って感じだなぁ……凶王ともあろうものが、らしくねえなぁ……」

「決闘は劣勢なくらいが最も面白いものですよ」

「上等だ……My turn、Draw!」

 

井守

手札:1→2

 

「ケリを着けるぜ! 『Crystal Dragon』、『氷結界の水影』へAtack!」

 再び水晶の翼を翻す……だが、水晶の雨が降ることは無かった。

「なに!?」

「永続罠『デモンズ・チェーン』の効果です。相手モンスター一体の攻撃を封じ、更に効果を無効とします」

「さすがは凶王、簡単には行かねえか……End of My Turn」

 

 

井守

LP:2250

手札:2枚

場 :モンスター

   『Crystal Dragon』Atk 2500

   魔法・罠

    無し

 

LP:4000

手札:0枚

場 :モンスター

   『氷結界の水影』攻撃力1200

   魔法・罠

    永続罠『デモンズ・チェーン』

 

 

「私のターン、ドロー」

 

手札:0→1

 

「……『強欲な壺』。カードを二枚ドローします」

 

手札:0→2

 

「……来た。魔法カード『ミラクル・フュージョン』! 墓地に眠る『E・HERO アイスエッジ』と、『氷結界の神精霊』を除外し融合!」

「アイスエッジ!? ……最初の『天使の施し』か……」

「融合召喚! 現れよ、氷結の英雄『E・HERO アブソルートZero』!」

 

『E・HERO アブソルートZero』

 レベル8

 攻撃力2500+500

 

「ZeroはZeroを除いたフィールド上の水属性モンスターの数だけ攻撃力を上げます。バトルです! Zeroで、『クリスタル・ドラゴン』を攻撃! 瞬間氷結(フリージング・アット・モーメント)!」

 アブソルートZeroが突撃し、その氷の拳が水晶の竜を粉砕した。

「水影で、井守さんに直接攻撃!」

「ぐあぁ……!」

 

井守

LP:2250→1050

 

「これでターンを終了します」

 

 

LP:4000

手札:1枚

場 :モンスター

   『E・HERO アブソルートZero』攻撃力2500+500

   『氷結界の水影』攻撃力1200

   魔法・罠

    無し

 

井守

LP:1050

手札:2枚

場 :モンスター

    無し

   魔法・罠

    無し

 

 

「アンタ上等だ……ここまでハラハラする決闘は久しぶりだぜ」

「それは良かった」

「だがなぁ、こんなもんじゃまだ終われねえ! Winnerは俺だー! My turn!」

 

井守

手札:2→3

 

「自分フィールドにモンスターが存在せず、Guraveyardに眠るモンスターが竜のみの場合、Graveyardの『Totem Dragon』を特殊召喚できる」

 

『Totem Dragon』

 Level 2

 Def 200

 

「こいつは一体で二体分の竜の生贄になる」

(確か、彼の手札には、『クリスタル・ドラゴン』の効果で加わった『タイラント・ドラゴン』がいたはず……)

 

「さあ、これが俺の切り札だぜ……」

 その言葉と共に、井守は手札のカードを取った。

(……違う、『タイラント・ドラゴン』ではない……!)

 

「A violence Dragon of a niello……」

 

(黒鋼の暴竜よ……)

 

「A soul of the dragons which wander this world, eating……」

 

(現世に彷徨う竜どもの魂を喰らい……)

 

「And bring fall to my enemy……」

 

(我が敵に滅びをもたらせ……)

 

 井守の台詞。そして、梓が心中でそれを解読した瞬間、それはディスクにセットされた。

 

「Leave for the ground of this world!! Ultimate Destroyer『Gandora-X the Doragon of Demolition』!!」

 

 巨大な腕が大地を突き破った。全てを握り潰せるほどの、屈強な腕だった。

 巨大な翼が広がった。天空を裂き、空間さえも切り裂くほどの大翼だった。

 巨大な顔が持ち上がった。全てを破壊せんとするほどの、凶悪な顔だった。

 巨大な体躯を地面に押し上げた黒竜は、梓を睨みつけ、鋭い牙を光らせた。

 

『Gandora-X the Doragon of Demolition』

 Livel8

 Atk0

 

「現世の大地に姿を現せ、究極の破壊者……『破滅竜ガンドラX』……こんなカードを手札に……!」

「Gandora-Xの効果! こいつが手札からNormal Summon、Special Summonされた時、こいつ以外のフィールドのモンスター全てを破壊する!」

 ガンドラXの全体に散りばめられた、丸い結晶体。

 そこからいくつもの赤い光が飛び出した。

 それらは全て、梓のフィールドのモンスターに、例外なく降り注ぐ。

「そして! アンタはこの効果で破壊されたモンスターの中で、最も高い攻撃力分のダメージを受ける! つまり、アブソルートZeroの攻撃力3000ポイントをな!」

「ぐぅ……うあああああああああ……!!」

 

LP:4000→1000

 

「そして! Gandora-Xはこの効果で与えたダメージ分の攻撃力を得る!!」

「……ですが、Zeroがフィールドを離れたことで、あなたのガンドラXもまた破壊される! 氷結時代(アイス・エイジ)!!」

 二体の氷結の爆死。そして、直後に起こった、ガンドラXの凍結による崩壊。

 

「……」

「……」

 互いのフィールドが全て破壊され、互いに見つめ合う。

 今はまだ、井守のターン。

「『Totem Dragon』は自身の効果によりBunish……だが、俺にはまだ、こいつが残ってる。Activate the Spell『Dragon’s Mirror』!!」

「……! とうとう来ましたか……」

「Graveyardに眠る、『Assault Wyvern』、『Crystal Dragon』、『Phantom Dragon』、『Pandemic Dragon』、『Gandora-X the Doragon of Demolition』をBunish!」

 

「Come on!! My Supremacy!! 『Five-Headed Dragon』!!」

 

『Five-Headed Dragon』

 Level 12

 Atk 5000

 

「攻撃力5000……」

 それは、修学旅行中にも見たばかりのドラゴンだった。

 だが、電脳世界で対峙したそれとは、明らかに違っていた。

 彼らが召喚した五頭の竜からは、ただ卑しいだけの欲望しか感じなかった。

 だが、目の前の竜からそんなものは感じない。肌に感じるのは、ただただ純粋な決闘への情熱。そして、勝利への底知れぬ執念。決闘者として、どこまでも熱くなれる少年が持つ、心だった。

 

「『Five-Headed Dragon』で、ダイレクトアタック……」

 井守は静かに語る。そして、高らかに、力強く、梓を見つめた。

 

「This is “Five-God Dragon”!!」

 

 巨竜の五頭の口が、同時に輝く。

 そこから発生した光が、梓へと向けられ、そして、発射された……

 

「手札の『バトルフェーダー』を、特殊召喚!」

 

 梓が叫び、現れる、小さな悪魔。

 それが、自らの鐘を鳴らし、巨大なドラゴンの攻撃を止ませた。

「外したか……End of My Turn。そしてこの瞬間、Gandora-Xの効果で、俺のライフは半分喰われる……ぐぅ……!」

 

井守

LP:1050→525

 

 

井守

LP:525

手札:1枚

場 :モンスター

   『Five-Hedded Dragon』Atk 5000

   魔法・罠

    無し

 

LP:1000

手札:0枚

場 :モンスター

   『バトルフェーダー』守備力0

   魔法・罠

    無し

 

 

「……」

「……」

 

 お互いが感じていた。

 これが、最後のドローとなる……

「……私のターン、ドロー……」

 

手札:0→1

 

「……」

「……」

 互いに無言になりながら、梓はそのカードを、ディスクにセットした。

 

『氷結界の水影』チューナー

 レベル2

 攻撃力1200

 

「……HaHa」

 これだけ激しい決闘を繰り広げたのに、最後に呼び出したのは、自身の切り札に比べ、なんとも弱々しい。だが同時に、この決闘を終わらせる力を持ったモンスター。

 なんと呆気ない……

 だが同時に、なんと梓らしい……

 そんな、様々な感情が湧き出てきたから、思わず井守は、笑ってしまった。

 

「バトルです……『氷結界の水影』は、自分フィールドのモンスターがレベル2以下のモンスターのみの場合、相手に直接攻撃ができます」

「……」

「井守さんに、直接攻撃。氷結・斬影の形」

 氷の忍者が走る。

 途中立っていた、巨大な五頭の竜を素通りし、竜もまた、その存在に気付いていないかのようだった。

 そして、瞬きをする間に井守の目の前まで移動し、手に持つクナイを井守に振った。

 

井守

LP:525→0

 

 

「敗けちまったか。結局、シンクロは使わせられなかったな……」

 そうは言いながらも、満足げな表情を浮かべながら、ポケットからメダルを取り出した。

「まあ、せいぜい俺の分まで勝ち進んでくれよな」

「もちろんです……ヒルトさん」

 メダルを受け取りながら、梓は初めて、井守の名前を呼んだ。

「……じゃ、またな」

 そんな、梓からの何よりの賞賛に、井守……ヒルトは歓喜を抑えながら去っていった。

 

「……あれだけドラゴン達を巧みに操る実力、才能と情熱に溢れていながら、彼からは何も感じなかった……」

 羽蛾や竜崎、亮との決闘を思い出しながら、デッキケースからカードを取り出す。

「あなたが求めるのは、ヒルトさんではない、ということか……」

 今はもう見えなくなった、ヒルトの姿を思いながら、梓はまた、別の決闘者を探しに歩き始めた。

 

(……やはり、変態さんはいやですか……?)

 

 ……

 …………

 ………………

 

 星華にあずさ、そして梓が決闘を終えたのと同じ頃……

 

「余はこの斎王という男に全てを捧げるのだ!」

 北欧の小国、『ミズガルズ王国』の王子でありながら、同時に決闘の大ファンであり、決闘者のプロ資格を有するまでとなった男、『オージーン』。

 アカデミアに到着して早々、彼は斎王と決闘を行い、ワンターンキル……否、ゼロターンキルによって敗れてしまった。

 その直後、まるで人が変わったかのようになり、側近達の制止も聞かず、秘書の女性が手に持っていたケースを渡してしまった。

「斎王琢磨。そなたに余の未来を託そう」

 そして斎王も、それを喜んで受け取る。

 

 そんな様を、十代は、斎王の実力に感心しながら喜んで見ていた。

 翔に剣山は不気味に感じながら、斎王の手下となり下がった、万丈目は、ほくそ笑みながら眺めていた。

 

「頑張ったのになぁ……」

 そしてなぜか、三沢は陰で小さくなりながら、人差し指で地面を擦っていた。

 

(十代……今日のキミも美しい……)

 明日香は、十代を見ていた。

 

 

 

 




お疲れ~。

前もそうだったけど、わざわざ英語で書くとその都度入力文字変換しなきゃいけないから、普通に決闘書くより二倍疲れる……
……ん? なら日本語で書け?
それじゃあヒルトの個性が無くなっちゃうじゃんよ……

まあ、そんな感じで、次も書いていきまっさぁ。
それまで待ってて。

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