前に言った通り、今回は神のご登場ですわ。
てなことで、行ってらっしゃい。
視点:十代
「俺が行くぜ!」
一人の決闘者……て、呼んでいいのか分からないけど、そいつを前に、前に出た。
誰の前かって言うと、これがビックリだ。
決闘モンスターズの生みの親、『ペガサス・J・クロフォード』会長さんだ。
「……ああ。任せとけ」
俺のそばに現れた、相棒の『ハネクリボー』に頷きながら、俺は相手の男を見た。
今の状況を説明すると……
鮫島校長の放送の後、アカデミアの屋上にヘリが到着した。
それで、校長室に行ってみたら、そこにはビックリ! スーツを着た隼人がいた。
しかも、隣には決闘モンスターズの生みの親であるペガサス会長さんも。
で、会長さんの話によれば、なんでも
それで、そいつがジェネックスに紛れ込んでるから、そいつを捕まえにきたって話しだ。
コピーカードって言っても、それには本当の神の力が宿ってるらしい。
確かに、さっきも遠くからだったけど、かなり強い力を感じたからな。
それで、ひとまず隼人を俺の部屋に、翔と剣山の二人と一緒に置いてきて、会長さんを追い掛けてここまで来たってわけだ。
「良いだろう。相手になってやる」
『ミスター・フランツ』とかって呼ばれてた、眼鏡を掛けて白衣を着たおっさんも、決闘ディスクを構えながら俺の方を見た。
「いくぞ……」
コピーと言っても、神のカードを盗むなんて許せない。
俺には隼人から受け取った新カードもある。勝てるチャンスはある。
何より、神のカードと戦えるなんて、こんなワクワクすることはないぜ!
「来い!」
『デュエ……!!』
ドッザァァァァアアアアアアアアアアアアアアア!!
「おわあああ!!」
「What’s!?」
「なんだ!?」
……俺の目の前に、突然何かがぶっ飛んできた。
それで、俺まで後ろに、会長さんと同じ場所までぶっ飛んで、そんなことのせいで三人の声が重なった。
で、何がぶっ飛んできたかって……正直、ほとんど予想はしてたけど……
「梓!?」
巻き上がった土埃が晴れたと思ったら、そこには思った通り、青い着物の長い黒髪が立ってた。
「アズサ……Oh! 彼が隼人ボーイの友人、水瀬梓ボーイデースか?」
「え? 会長さん、梓のこと知ってるの?」
そう聞いたら、会長さんは頷いて答えた。
「十代ボーイのお話しと共に、梓ボーイのお話しも隼人ボーイからよく聞いおりいました。とても強く美しく、時にマッドで怖ろしく、しかし誰よりも優しい友人がいると」
「へぇ……ん? ボーイって、会長さん、梓が男って分かるの?」
今まで、初対面の奴は絶対に女子だって誤解してたのに……
「一目見て分かりました。彼はボーイデース。幼少の頃、顔つきがガールのように可愛いからと、親族達や、今は亡き恋人のシンディアから、着せ替え人形にされていた私にはよく分かりマース」
「……そ、そう……」
なんか、聞いちゃいけないこと聞いた気がした後で、梓を見ると……
「……やはり、悲鳴はあのデッキから聞こえる。そこにいるのですね」
梓は何か呟いた後で、決闘ディスクを構えた。
「……て、おい梓! この決闘は俺が……!」
「下がっていなさい十代さん。彼が何者かは知りませんが、なぜか彼だけは、私が倒さなければ気が治まりそうにありません」
「は? 何言ってるんだよ?」
「梓ボーイ! 彼は本当に危険なカードを持っているのデース! 今すぐ下がりなサーイ!」
会長さんも一緒になって叫んだけど、梓は振り返って、冷たい顔をしてた。
「どなたですか? そちらの方は……」
「どなたですか……?」
「Oh……私の知名度もとうとうその程度に落ちましたか。決闘の関係者であれば、顔と名前くらいは誰にも知られている自負があったのですが……」
そこは落ち込むところなの……?
「お前、決闘モンスターズの生みの親が誰かくらい知ってるだろう?」
「『
「……だれそれ?」
「Who is that?」
「失礼。『ペガサス・J・クロフォード』さん。それがあなたのお名前でしょう?」
「知ってんじゃねえか!」
「そんなことはどうでも良い。彼は私が倒します」
「どうでもいい……!」
「……て、おい!」
また会長さんがショックを受けて、俺が叫んでるのも無視して、決闘ディスクを構えた。
「私が相手です」
「誰だろうと構いはしない。神の力を見せてやる……」
……で、相手も了承しちまった。
「いや、だから……っ!」
『十代……』
て、また俺が叫ぼうとしたら、俺の隣にいつの間にかアズサが立ってた。
『ごめん……けど、もうああなったら止められない。ここは、梓に譲ってあげて……』
「譲れって……ていうか、一体どうしちまったんだよ、梓は? なんか、いつも以上に変だぞ?」
『僕にも分かんないよ。て言うか、いつも以上にって、どういう意味さ?』
「……ごめん」
『決闘!!』
梓
LP:4000
手札:5枚
場 :無し
フランツ
LP:4000
手札:5枚
場 :無し
……て、アズサと話してる間に始まっちまったよ……
仕方ない! こうなったら、勝ってくれよ、梓!
「私の先行、ドロー」
梓
手札:5→6
「……私は『氷結界の番人ブリズド』を守備表示で召喚」
『氷結界の番人ブリズド』
レベル1
守備力500
「『氷結界』……? あのカードは……?」
……て、やべっ。そう言えば、氷結界って今の時代には無いカードのはずだよ。
そんなカード使っちまったら、会長さんが怪しむ……
「カードを二枚伏せます。これでターンを終了です」
梓
LP:4000
手札:3枚
場 :モンスター
『氷結界に番人ブリズド』守備力500
魔法・罠
セット
セット
「私のターン」
フランツ
手札:5→6
「……ふふふ。お前に神を見せてやろう。私は、『ラーの使徒』を攻撃表示で召喚」
『ラーの使徒』
レベル4
攻撃力1100
あいつが新たに召喚したモンスターは、ラーに似た鎧を着た男のモンスターだ。
「『ラーの使徒』の召喚に成功した時、デッキから、『ラーの使徒』を二枚まで手札に加えることができる」
フランツ
手札:5→7
「更に魔法カード『トラップ・ブースター』発動! 手札を一枚捨てることで、手札の罠カード一枚を発動できる」
フランツ
手札:6→5
「私は手札の永続罠『血の代償』を発動し、効果発動。ライフを1000ポイント支払い、新たに『ラーの使徒』二体を召喚する」
フランツ
LP:4000→3000
『ラーの使徒』
レベル4
攻撃力1100
『ラーの使徒』
レベル4
攻撃力1100
フィールドにモンスターが三体。それに、召喚権を増やせる『血の代償』。まさか……
「これは全て、神に捧げる三体の生贄。更に、ライフを500払い……」
フランツ
LP:3000→2500
手札のカードに手を伸ばして、それを、上に掲げて……
「眠りし神の魂よ! 今その姿を甦らせよ! この者に立ち向かう愚かしさを知らしめるのだ!」
「出でよ! 『ラーの翼神竜』!!」
また、晴れてた空が一気に曇り空になった。
そして、そこから火柱があいつの後ろ目掛けて降ってきた。
その、デッかい火柱の中から現れたのは……
全体が金色に光ってて、機械みたいだけど、確かな躍動感を醸し出してる。
そんな、デカい翼を広げた、まるで鳥にも見える、巨大なモンスター。
「あれが、神……」
『こんな奴がいたんだ……』
『ラーの翼神竜』
レベル10
攻撃力?
「『ラーの翼神竜』の攻撃力は、生贄に捧げたモンスターの攻撃力の合計となる」
『ラーの翼神竜』
攻撃力1100+1100+1100
「攻撃力3300……! この威圧感、このパワー、格が違う……」
『まるでトリシューラみたいな……いや、あれとはまた全然違う怖さを感じる……』
「やめるのデース!!」
ラーが現れた瞬間、会長さんが慌てて大声を上げた。
「神のカードを操ることができるのは、神によって選ばれた決闘者だけデース。Youでは神の怒りを買ってしまいマース!」
「確かに。ですが、私は開発したのですよ。神を従えるカードを……」
そいつは余裕な顔で、ラーを見上げた。
「怒るが良い! 猛り狂うが良い! そして、この私を憎むが良い! だが見るのだ。この私がお前の主なのだ……」
そして、手札の残り一枚を取った。
「手札よりフィールド魔法『神縛りの塚』を発動!」
その瞬間、地面からデカい鎖が飛び出して、ラーの体を縛りつけた。
「まさか……神を操るカードを作ったと言うのですか!?」
「よく見ているがいい、ペガサス会長……我がしもべとなりし『ラーの翼神竜』! 『氷結界の番人ブリズド』を攻撃! ゴッドブレイズ・キャノン!」
ラーは苦しそうにもがきながら、口を開いて、そこからデッかい火球を撃った。
それが、梓の場の青い鳥を一瞬で燃やした。
「更に、『神縛りの塚』の効果発動。レベル10以上のモンスターがモンスターを破壊した時、相手に400ポイントのダメージを与える」
「……」
梓
LP:4000→3600
「……ではこちらも、『氷結界の番人ブリズド』の効果。このカードが戦闘破壊された瞬間、カードを一枚、ドローできる」
梓
手札:3→4
「フフ……ターンエンド」
フランツ
LP:2500
手札:0枚
場 :モンスター
『ラーの翼神竜』攻撃力1100+1100+1100
魔法・罠
永続罠『血の代償』
フィールド魔法『神縛りの塚』
梓
LP:4000
手札:4枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
セット
セット
「ラーが、泣いている……?」
「……あれ? なんで梓さんが決闘してるの?」
「……お前ら!?」
おっさんがターンエンドした時、どうしてか、翔に剣山、隼人の三人がいた。
「兄貴を放っておけないと思って、急いできたんだけど……」
「一体全体、どういうことザウルス……」
「それが……」
「……」
「フフフ……どうした? ラーの一撃で手も足も出ぬと悟ったか?」
「……そうか。これか……」
俺が三人に説明してた時だった。
自分のターンが終わってから、ずっと静かにしてた梓が、声を上げた。
この声は、間違いない。怒ってる……
「悲鳴を上げていたのはあなた……そして、その悲鳴の元が、この下賤な鎖か……」
「下賤? バカめ。これは神を従えることのできる神聖なフィールド。それが分からぬ貴様こそが愚か者だ……」
「神聖だの崇高だのという美名のもとに、人はいつも怖ろしいと感じるものを縛りつけ、押さえ込もうとする。そんな人間の勝手に苦しむことになるのは、他ならぬ、縛られる者自身だというのに……」
「御託は良い! お前のターンだ。早く決闘を進めろ」
「……最初から、お前なんかが理解できるだなんて思ってはいない」
梓
手札:4→5
「……今、解放してあげる。魔法カード『融合』発動! 手札の『E・HERO オーシャン』と、水属性『氷結界の守護陣』を融合……」
「現れよ! 氷結の英雄『E・HERO アブソルートZero』!!」
『E・HERO アブソルートZero』融合
レベル8
攻撃力2500
「Oh! アブソルートZero!? アンビリーバボー!」
『やば! あのカードもこの世界には無いカードだったんだ……』
会長さんが驚いて、アズサが焦ってるのも無視して、プレイを続けた。
「そして、伏せカード発動『融合解除』。アブソルートZeroの融合を解除し、素材となったモンスター二体を特殊召喚」
『E・HERO オーシャン』
レベル4
攻撃力1500
『氷結界の守護陣』チューナー
レベル3
攻撃力200
「そしてこの瞬間、アブソルートZeroの効果。このカードがフィールドを離れた時、相手フィールドのモンスター全てを破壊する。
その宣言で、ラーのフィールドに猛吹雪が起きた、けど……
「残念だな。『神縛りの塚』の効果により、レベル10以上のモンスターは効果で破壊されない」
その言葉の通り、ラーは全然平気な顔で、吹雪が止むまでジッとしていた。
「無駄だ無駄だ! どんな手を使おうとも、神を倒すことなどできはしない!」
「最初から、この程度で倒せるなどとは思っていない」
「負け惜しみか? 好きなだけ語るがいいさ。雑魚にはそれしかできないだろうからな」
「負け惜しみかどうか、今からお見せしよう。私はライフを1000ポイント支払い、魔法カード『
梓
LP:3600→2600
梓が宣言した瞬間、紫色のサメが現れた。
『深海に潜むサメ』融合
レベル5
攻撃力1900
「魔法カード『命削りの宝札』。手札が五枚になるようカードをドローし、五ターン後、全ての手札を墓地へ捨てる」
梓
手札:0→5
「そして、チューナーモンスター『フィッシュボーグ-ランチャー』を通常召喚」
『フィッシュボーグ-ランチャー』チューナー
レベル1
攻撃力200
「チューナー……?」
「チューナーモンスター?」
おい、どうしたんだよ梓? 普段は普通に決闘してても、チューナーだなんて宣言しないのに……
『……やっぱり梓、怒ってる……』
「え?」
『梓だけじゃない。梓の中の、氷結界の龍達が、あの男に対して怒ってるんだ。ラーを、自分達と同じ目に遭わせた、あの男に対して……』
「そんな雑魚モンスターを並べて何がしたい? 時間稼ぎのつもりなら無駄だ!」
「そんな物必要ない……このターンで決める」
「何だと……?」
「おい……梓! やめろ! 会長さんが見てるんだぞ!」
「What?」
「レベル5の『深海に潜むサメ』に、レベル1の『フィッシュボーグ-ランチャー』をチューニング!」
俺の制止も聞かずに、梓の場の機械に乗り込んだ虫が星に変わって、紫のサメと一緒に浮かび上がった。
「これは! そんな、まさか!?」
「凍てつく
「シンクロ召喚! 舞え、『氷結界の龍 ブリューナク』!」
それは、俺達から見れば、何度も見た光景だ。
けど、初めて見た奴は間違いなく驚く光景でもある。この場では、相手と、会長さんもそうだ。
『氷結界の龍 ブリューナク』シンクロ
レベル6
攻撃力2300
「なんだ、これは……」
「シンクロ召喚……なぜ、彼がこの召喚法を……」
「まだ終わらない。『氷結界の守護陣』もチューナーモンスターだ」
「なに? ではまさか……」
「レベル4の『E・HERO オーシャン』に、レベル3の『氷結界の守護陣』をチューニング!」
「冷たき
「シンクロ召喚! 狩れ、『氷結界の龍 グングニール』!
『氷結界の龍 グングニール』シンクロ
レベル7
攻撃力2500
「二体目……」
「この二体の龍にはそれぞれ、手札のカードを捨てることで発動できる効果がある。まずはブリューナクの効果。手札一枚を捨てるごとに、フィールド上のカード一枚を手札に戻す。私は一枚を捨てる」
梓
手札:4→3
「愚か者の血に、代償になる価値など無い。そんな汚らしいもの、貴様の手に抱いていろ! 凍結回帰!」
梓が叫んだ瞬間、ブリューナクが生み出した霧がフィールドを包んで、あいつの場の『血の代償』を消しちまった。
フランツ
手札:0→1
「そして、グングニールの効果。一ターンに一度、手札を二枚まで捨てることで、相手の場のカードを捨てた枚数だけ破壊できる。私は一枚を捨てる。冷刃災禍!」
梓
手札:3→2
梓が手札のカード一枚を掲げた時、それをグングニールの翼が吸収して、あいつの場の、フィールド魔法を真っ二つにした。
「そんな……バカな……!」
そして、ラーを縛っていた鎖も砕かれて、苦しそうにしてたラーは自由の身になった。
「まだだ。自分の墓地のモンスターが水属性モンスターのみの場合、墓地に眠る『フィッシュボーグ-ランチャー』は特殊召喚できる」
『フィッシュボーグ-ランチャー』チューナー
レベル1
攻撃力200
「このカードは墓地に眠る水属性モンスター二体をゲームから除外することで、特殊召喚できる。アブソルートZero、『氷結界の守護陣』を除外。現れよ冷狼……『フェンリル』特殊召喚!」
『フェンリル』
レベル4
攻撃力1400
「永続罠『リビングデッドの呼び声』発動! 墓地に眠る『E・HERO オーシャン』を特殊召喚!」
『E・HERO オーシャン』
レベル4
攻撃力1500
「『フィッシュボーグ-ランチャー』をシンクロ素材とする場合、水属性のシンクロモンスターでなければならない」
「シンクロ……モンスター……?」
「レベル4のフェンリル、オーシャンに、レベル1の『フィッシュボーグ-ランチャー』をチューニング!」
「
「シンクロ召喚! 刻め、『氷結界の龍 トリシューラ』!」
『氷結界の龍 トリシューラ』シンクロ
レベル9
攻撃力2700
「これは……」
「アンビリーバボー……なんと、雄々しくも美しい龍達なのでしょう……」
『うわぁ、とうとうやっちゃったよぉ……』
もう、言葉も出ない俺達とは対照的に、頭を抱えてるアズサに、驚きまくってる会長さん。
とうの本人は、そんなこと知ったことじゃないって顔で続けた。
「『氷結界の龍 トリシューラ』の効果。このカードがシンクロ召喚に成功した時、相手のフィールド、手札、墓地のカードをそれぞれ一枚ずつ、ゲームから除外できる」
「なんだと!? ではまさか……」
あいつが慌てて、ラーを見上げる。
ラーは、梓の場の三体の氷結界の龍と、見つめ合ってた。
何だか、悲しそうに。けど、嬉しそうに……
「……君の気持ちはよく分かる……君まで、私達と同じ苦しみを、味わうことはない……今、君を自由にしてあげるから……」
そう言ってる梓は、梓自身じゃないみたいだった。
まるで、梓がボクに……アズサに変わった時みたいに。
多分、梓の中の龍達が、梓の口を借りて、自分の言いたいこと言ってる、みたいな……
「滅涯輪廻!!」
そして、梓がまた叫んだ瞬間、トリシューラが吼えた。
相変わらず、世界の全部を揺らすみたいな、馬鹿でかくて怖い、不気味な声。
そして、そんな声の中、ラーはやっぱり、嬉しそうに、消えていった……
「あ……あぁ……」
神を召喚して、圧倒的に優位だったのがウソみたいに、今、あいつのフィールドはがら空きだ。
そんなおっさんに向かって、梓は、声を掛けた。
「三体の氷結界の龍で、ダイレクトアタック……」
三体が三体、それぞれの口に、冷たいエネルギーを貯める。
それを、あいつに向けて、一気に吐き出した……
「うわあああああああああああああああ!!」
フランツ
LP:2500→0
「梓ボーイ!」
決闘が終わった瞬間、会長さんは興奮しながら、おっさんじゃなくて、梓に向かって走った。
「なぜ、あなたがシンクロモンスターを持っているのですか? あれは、ほんの数ヶ月前に我が社で極秘に開発を始めたばかりの新システムデース!」
……え? シンクロモンスターって、今もう作られてるの?
「既に形にはなっている物の、量産化するには決定的なエネルギーが不足している。それを解決するために、少なくとも十年以上の研究の時間を要するはずでした。それを、あなたはなぜ今、何の問題もなく使用しているのデース!?」
「……」
ビュンッ!!
『……!!』
「ごああ!!」
会長さんの言葉を無視して、梓は消えちまった。と思ったら、ラーのカードを持ってる男のもとへ走って、地面にうつ伏せてるそいつの背中を踏みつけてた。
「このまま逃がしてしまって良いのですか?」
「Wow……今のが『シュクチ』。最近はまっているジャパニーズマンガの通りデース……」
梓はその後、背中から足を離して、頭を蹴とばして、気絶させちまった。
「では、失礼」
で、アズサと一緒に、また走って消えた……
その後は、気絶してる間にラーのカードを取り返した。
それで、目を覚ました後で、そいつに優しく説教を始めた。
なんでもそいつは、せっかく新しくカードをデザインしたのに、自分のカードじゃなくて、隼人のカードが選ばれたことが気に入らなくてこんなことをしたらしい。
選ばれなかった理由は、力に頼り過ぎてるから。
会長さんは、大きすぎる力がどんな悲劇を生むか、そいつに語り掛けた。新しいカードに期待してるからって。
そいつは涙を流しながら反省したみたいだった。
それで、そいつはヘリで会社に返して、隼人と会長さんはアカデミアに残ることになった。
「なんで、二人は残ったんスか?」
翔が質問すると、隼人は何でか照れ臭そうに顔を掻いてた。
「俺は……」
「隼人くーん!」
隼人が喋ろうとした時、後ろから隼人を呼ぶ声が聞こえた。
振り返ると、ジュンコが手を振りながら、こっちに走ってきてた。
「ジュンコさん……!」
「本当に帰ってきてた! 会いたかった、隼人くーん!////」
ジュンコは走りながら、勢いよく隼人に抱き着いた。
「ちょ……なんで俺が帰ってきてるって、知ってたんだな?」
「さっき、梓さんから連絡を貰って、大急ぎで会いにきちゃった////」
「梓さんから……?」
(あの決闘の後、そんなことしてたのか、あいつ……)
(さすがは梓さんと言うべきか……)
(気が利いてるっていうか、隅に置けないっていうか……)
(隼人ボーイに恋人がいるとは知りませんでした……)
『わ……!』
なに自然に混ざってんだよ、この人……
「えっと……ペガサス会長、俺は今日、このままお暇を頂くんだなー」
「もちろん。お二人でゆっくり過ごして下さい。恋人は大切にしなくてはいけまセーン。離ればなれになっても悔いが残らないよう、たくさんの思い出を作るのデース」
その後、簡単に会話して、隼人はジュンコと手を繋ぎながら歩いていった。
「えっと……会長さんは、やっぱ、シンクロモンスターのことで?」
「もちろんそれもありますが、実は今回は、それ以上に重要なことでこのアカデミアに残ったのデース……」
「シンクロモンスター以上に重要なことって……?」
隼人が行くまでは容器な雰囲気だったのが、かなり真剣な顔になった。
そんな表情のまま、会長さんは、懐に手を入れて、何かを掴んで……
(ゴクリ……)
俺達三人とも、自然と生唾を飲み込んだ。
そんな俺達に向けて、取り出したのは……
「この、アカデミアのアイドル『ショウ子』ガールに会いにきたのデース」
「ブウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥ……」
そんな返事に、盛大に吹き出したのは、当然翔だ。
そんなことも気にせずに、会長さんは大事そうに、『ショウ子ちゃん写真集』を抱き締めた。
「十代ボーイから送られてきたという隼人ボーイが持っていたこの写真集を見て以来、彼女の姿が私のハートを捉えて離しまセーン。一目で良いので彼女に会いたい。できれば、ぜひともお話しがしたいのデース」
(兄貴……なに隼人君に送ってくれちゃってんの……)
(だって、隼人にも翔の可愛いとこ見せてやりたいじゃん……)
(それで! 隼人ボーイはなんでそんなもの他人に見せてるのデース!)
(丸藤先輩、落ちついて、会長さんの口調が伝染ってるドン……)
(うるせー!!)
そんな感じで、俺達がこそこそ話してる間も、会長さんは、写真集を嬉しそうに眺めてた。
「ショウ子ガール……ベリーベリーキュート……」
お疲れ~。
んじゃ、オリカは無いから原作効果。
『ラーの使徒』
召喚時、特殊召喚はせずに手札に加えるのみ。ただしデメリットは無し。
展開するには次のターンに回るか何かしら補助が必要。
ただしOCGでは逆に縛りが着いちゃったから、若干使い勝手が悪くなってる。
どっち道『三幻神』デッキじゃなきゃ使い道ないカードだよなぁ。
アニメ効果なら他にも使えるカードたくさんありそうだが。
『神縛りの塚』
レベル10以上のモンスターに付く耐性は効果破壊のみ。
ダメージは400ポイント。
サーチ効果は無し。
まだ三幻神は使用不可なのしか無かった頃のオリカだから、弱いのは仕方ない。
OCGでかなり強化されてるカードです。
以上。
ラーに関しちゃ、長くなるしみんな知ってるし、書いても虚しくなるだけだから、今回は無しね。
てなことで、とうとうばれちゃいました。
これからどうなるもんかなぁ……
まあ今回はこんな感じで、次話まで待ってて。