遊戯王GX ~氷結の花~   作:大海

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決闘パ~ト~。
ちなみに、オリカが出ます。つっても原作オリカだけどね。
一応そういうのは後書きで書いておくから。気になったら見てみて。
ほんじゃ、行ってらっしゃい。



第七話 ボクと遊ぼう ~決闘~

視点:あずさ

 うそ……

 梓くんが、この決闘に負けたらいなくなっちゃう……

 

 いや……

 いやだそんなの!

 

 梓くんが来てくれたからわたしは助かったけど、それじゃ意味無いよ!

 もっと梓くんのこと知りたいよ! 話したいことだってたくさんあるんだよ! 梓くんと、ずっと一緒にいたいよ!!

 

 だから……

 

「梓くん!! 負けないでー!!」

 

 

佐倉

LP:4000

手札:5枚

 場:無し

 

LP:4000

手札:5枚

 場:無し

 

 

「俺の先行、ドロー」

 

佐倉

手札:5→6

 

「永続魔法、『凡骨の意地』発動。これで俺はドローフェイズ中に通常モンスターをドローした時、それを公開することで続けてドローできる」

 

「出た! 佐倉さんの必勝パターンだ!!」

 取巻きの一人が叫んだ。あのカードを使うってことは、彼のデッキは通常モンスター中心のデッキってことだね。

 

「『ジェネティック・ワーウルフ』を召喚」

 

『ジェネティック・ワーウルフ』

 攻撃力2000

 

「カードを伏せる。これでターンエンド」

 

 

佐倉

LP:4000

手札:3枚

場 :モンスター

   『ジェネティック・ワーウルフ』攻撃力2000

   魔法・罠

    永続魔法『凡骨の意地』

    セット

 

 

 梓くん……

 

「私のターン!」

 

手札:5→6

 

「速攻魔法『サイクロン』! 対象は『凡骨の意地』!」

 やった! 『サイクロン』が『凡骨の意地』を吹き飛ばした!

「更に、『氷結界の舞姫』を召喚!」

 

『氷結界の舞姫』

 攻撃力1700

 

 梓くんの前に、紫色の服を着た、ツインテールの女の子が踊りながら現れた。

 うわぁ、綺麗……

 

「舞姫の効果。手札の氷結界を任意の枚数見せることで、その枚数分相手の場のセットされた魔法・罠カードを手札に戻します。私は手札の『氷結界の虎将 グルナード』を公開し、そのセットカードを手札に戻して頂く」

「……戻る前に使う。罠カード『強欲な瓶』。カードを一枚ドロー」

 

佐倉

手札:3→4

 

 手札が増えた! そっか、さっきの『凡骨の意地』とのコンボを狙ってたんだ!

 けど梓くんは変わらない。いつもと同じようにカードをプレイしてる。

「フィールド魔法『ウォーター・ワールド』を発動!」

 周りが水で囲まれた。アトランティスは海底だったけど、『ウォーター・ワールド』はまるで、水の遊園地みたいに、青くて綺麗な海が広がってる。あ、イルカ。

「これで水属性モンスターの攻撃力は500ポイントアップし、守備力は400ポイント下がります」

 

『氷結界の舞姫』

 攻撃力1700+500

 

「バトル! 舞姫でワーウルフを攻撃! 雪斬舞踏宴(せつざんぶとうえん)!」

 舞姫が踊りながら、両手に持つ雪の結晶でワーウルフを斬り裂いた!

 

佐倉

LP:4000→3800

 

「カードを二枚伏せます。ターンエンド」

 

 

LP:4000

手札:1枚

場 :モンスター

   『氷結界の舞姫』攻撃力1700+500

   魔法・罠

    フィールド魔法『ウォーター・ワールド』

    セット

    セット

 

佐倉

LP:3800

手札:4枚

場 :モンスター

    無し

   魔法・罠

    無し

 

 

「やった! 相手のフィールドを空っぽにすることができた!」

 思わず叫んじゃった。だけど、明日香ちゃんに十代くんは、どうしてだか深刻な顔してる。

「ちょっと危ないかもしれないわね」

「ああ」

 え? 何で? 梓くんの方が有利じゃないの?

「佐倉の手札は次のドローで五枚。梓の伏せカードにもよるけど、最悪すぐに逆転される可能性もある」

「おまけに相手のデッキは通常モンスターが中心のデッキ。もしかしたら、梓の使った『ウォーター・ワールド』が(あだ)になるかもしれない」

 仇って……

 あ!! そうか!!

 

「俺のターン」

 

佐倉

手札:4→5

 

「何も『凡骨の意地』を使わなくても、いくらでも手はある。魔法カード発動『魔の試着部屋』」

 あれは!!

「ライフを800払い、デッキの上から四枚のカードをめくる。そしてその中の、レベル3以下の通常モンスターを全て特殊召喚できる。それ以外はデッキに戻しシャッフルする」

 

佐倉

LP:3800→3000

 

 デッキの上からカードを四枚めくって、結果は……

「俺はこの四体を特殊召喚」

 

『マッド・ロブスター』

 レベル3

 攻撃力1700+500

『ジェリー・ビーンズマン』

 レベル3

 攻撃力1750

『深海の長槍兵』

 レベル2

 攻撃力1400+500

『深海の長槍兵』

 レベル2

 攻撃力1400+500

 

「な! 四体のモンスターだと!!」

「ありえない!」

「い、イカサマしてるんじゃ……」

 

「隼人さん!!」

 隼人くんが言い切る前に、梓くんがそれを遮った。

「彼はそんなことはしない。それ以上の言葉は許しません」

「そんな……どうしてそんなこと言えるんだな?」

 本当だよ。あれだけ酷いこと言って、あれだけ酷いことされたのに、どうして?

「彼は決闘前に言いました。この決闘で不正はしないと。彼はそんな下らない嘘をつく人間ではありません」

「……」

 隼人くんは何も言わなくなった。梓くんは、あれだけ酷いことをした相手の言葉を信用してるってこと?

「続けて下さい」

「……バトル、『マッド・ロブスター』で舞姫を攻撃」

 相討ちにする気!? これで残りの攻撃を受けたら梓くんは……

「速攻魔法『月の書』! フィールド上のモンスター一体を裏守備表示に変更。対象は『マッド・ロブスター』」

 

 セット(『マッド・ロブスター』守備力1000-400)

 

 よし! 『マッド・ロブスター』が守備表示になった!

「さすがに簡単にはいかないか。速攻魔法『速攻召喚』発動。手札のモンスター一体を通常召喚する」

「まさか、既に手札に……」

 まずい!! あのカードが来ちゃう!!

「『マッド・ロブスター』と『ジェリー・ビーンズマン』を生贄に、『スパイラルドラゴン』を召喚」

 

『スパイラルドラゴン』

 攻撃力2900+500

 

「やはり、そのカードがありましたか」

「さすがに水属性使いなら知ってたか。じゃあ、バトルだ。『スパイラルドラゴン』で攻撃。スパイラルウェーブ」

 ドラゴンがヒレを大きく振って、そこから渦が巻き起こった! 危ない! 舞姫がやられる!!

「できればもっと先で使いたかったのですが……速攻魔法『エネミーコントローラー』! これであなたの『スパイラルドラゴン』を守備表示に変更!」

 

『スパイラルドラゴン』

 守備力2900-400

 

 『スパイラルドラゴン』が攻撃を止めて、守備表示になった。

「な、何とか助かった」

「でも、次のターンでどうなるか」

 翔くんとももえちゃんが呟いた。

「仕方ない。カードを二枚伏せてターンエンド」

 何か手はあるの? 梓くん!?

 

 

佐倉

LP:3000

手札:0枚

場 :モンスター

   『スパイラルドラゴン』守備力2900-400

   『深海の長槍兵』攻撃力1400+500

   『深海の長槍兵』攻撃力1400+500

   魔法・罠

    セット

    セット

 

LP:4000

手札:1枚

場 :モンスター

   『氷結界の舞姫』攻撃力1700+500

   魔法・罠

    フィールド魔法『ウォーター・ワールド』

 

 

「私のターン!」

 

手札:1→2

 

「……私は魔法カード『クロス・ソウル』を発動!」

 おお! 今までも何度か使ってきたカードだね!

「これであなたの場のモンスターを生贄に、私はモンスターを召喚します。あなたの場の『スパイラルドラゴン』、そして私の場の舞姫を生贄に、『氷結界の虎将 グルナード』を召喚!」

 

『氷結界の虎将 グルナード』

 攻撃力2800+500

 

「ちっ、『スパイラルドラゴン』が……」

「『クロス・ソウル』を発動したターン、私はバトルフェイズを行えません。これでターンエンド」

「なら、エンドフェイズに永続罠『神の恵み』を発動。これで俺がドローする度、俺はライフを500回復する」

 そんなカードまで入ってたんだ! 『凡骨の意地』と合わせたら大変なことになってた!

 

 

LP:4000

手札:0枚

場 :モンスター

   『氷結界の虎将 グルナード』攻撃力2800+500

   魔法・罠

    フィールド魔法『ウォーター・ワールド』

 

佐倉

LP:3000

手札:0枚

場 :モンスター

   『深海の長槍兵』攻撃力1400+500

   『深海の長槍兵』攻撃力1400+500

   魔法・罠

    永続罠『神の恵み』

    永続罠『スピリットバリア』

 

 

 とは言え、さすが梓くん。たった一ターンで『スパイラルドラゴン』を対処しちゃった。これなら勝てるよ!

 

「ドロー」

 

佐倉

LP:3000→3500

手札:0→1

 

(……まだ、デッキは応えてくれるか……)

「装備魔法『下克上の首飾り』。こいつを『深海の長槍兵』に装備」

「!!」

 あの装備魔法って!!

「こいつは通常モンスターにのみ装備可能。装備モンスターが自身よりレベルの高いモンスターと戦闘を行う時、そのモンスターとのレベルの差×500ポイント攻撃力がアップする。バトル、長槍兵でグルナードを攻撃」

 

『深海の長槍兵』

 攻撃力1400+500+3000

 

LP:4000→2400

 

「梓くん!!」

「……もう一体の長槍兵でダイレクトアタック」

 

LP:2400→500

 

「ターンエンド」

 

 

佐倉

LP:3500

手札:0枚

場 :モンスター

   『深海の長槍兵』攻撃力1400+500

   『深海の長槍兵』攻撃力1400+500

   魔法・罠

    装備魔法『下克上の首飾り』

    永続罠『神の恵み』

    セット

 

LP:500

手札:0枚

場 :モンスター

    無し

   魔法・罠

    フィールド魔法『ウォーター・ワールド』

 

 

「……ドロー!」

 

手札:0→1

 

(……まだ、諦めないか……)

「佐倉さん」

 ん?

「決闘をしていれば分かります。あなたはやはり、あのようなマネをする人間ではない」

「……」

「なぜ、あのようなことを?」

「……そんなこと、気にしてる場合じゃないと思うぞ」

「……そうですか」

(……そうさ。こんなこと、人に話して聞かせるようなことじゃない……)

 

 

 

視点:佐倉

 いつからだったか。

 俺が、他人のことをゴミだと思うようになったのは。

 

 大金持ちの家に生まれ、与えられたのは望みもしない人生だった。

 毎日毎日、親を継ぐための英才教育の毎日。娯楽と呼べるものなんか皆無だった。そんな環境だったから、勉強もスポーツも、人よりできるのが当たり前だった。

 だからだろうな。俺がどれだけ頑張って、努力した所で、周りは「それが当然だ」という目で見る。褒められたことも当然あるが、誰も俺自身を見ず、佐倉という名前ばかりを見ていた。どうせ本心じゃ、「できて当たり前」だと思っていたんだろう。この頃から、俺は自分以外の人間が、自分より遥かに劣る存在。そんな風に感じ始めていた。

 決定打になったのが、弟の存在。

 二つ年下の弟は、俺が小学生を終えようとした頃には、既に高校生の問題を解くようにすらなっていた。おかげで最初こそ俺を見ていた家族は全員弟を見るようになり、徐々に俺は、まるで家にはいない存在のように扱われていった。もちろん変わらず勉強はしたが、どの道誰にも見られない。仮に見られたとしても、無駄な努力、必死な抵抗、中には文具の無駄使いなんて陰口を叩かれたこともあったっけ。

 とにかく俺自身の価値を見いだそうとする人間は一人もいなかった。

 そして、それこそまるでゴミを捨てられるような感覚で、俺は決闘アカデミアの中等部に追いやられた。

 

 だが実を言えば、それが嬉しくもあった。

 アカデミアに来る以前から、決闘は好きだった。だから偶然とはいえ、初めて自分の好きなことができることに、心の中では歓喜していた。おまけにここに来たことをきっかけに、親は放任を決め込んだらしく、親にも何も言われず、好きにできる。そう思った。

 なのに、そこでも俺には佐倉の名前が付いて回った。

 いわゆる庶民の生徒ならともかく、ちょっと良い所で育った人間はすぐに佐倉の名に気付き、何を狙ってか俺を持ち上げるようになった。俺のことを知った上で俺を気にしなかった人間なんて、同じブルーの万丈目くらいだな。あいつだけは、似たような境遇もあって常に俺を対等の存在として見ていた。

 だが、それだけだ。特に仲が良かったわけでも無く、口を聞いたこともほとんど無い。お互いに顔と名前を知っているというだけの関係。

 他は全員、俺に何らかの利益を求めて関わってくるだけ。万丈目に継いで二位の成績を取っても、むしろそれが当たり前で、結局は佐倉の名前しか見ていない。

 佐倉の名前にも、あれだけ好きだった決闘にも、もううんざりしてしまっていた。俺を見ず、佐倉の名前しか見ない。そんな人間達を、俺は完全にゴミだと感じるようになった。

 

 気が付けば、俺はカードのカツアゲをしていた。どんな人間も、佐倉の名を出した途端何もしてこなくなくなる。間違っている、最低な行為だって分かってるくせに、少し脅して、佐倉の名を出しただけで、口応えさえしてこない。本当にゴミのように大人しく、腐っていくだけ。

 正直な話し、俺が親に何か言ったところで、親は相手さえしないだろうがな。

 月に明らかに必要以上の仕送りをしてくる。それはつまり、それだけあれば十分だろうから帰ってくるなという意思表示だ。

 実際、中等部に来てから今日までの四年間、必要なこと以外は電話一本、手紙さえ送ってよこさなかったしな。過去に一度だけ帰ったことはあるが、親からも使用人からも、あからさまに嫌な顔をされたのは今でも忘れられない。

 そして当然、俺だってカツアゲなんて行為が間違っていることくらい分かってる。親とか家での扱いとか、そんなことで正当化されるような行為でも無い。そして、そんな間違っていることを平気でしている俺の方こそ、人間の腐った本当のゴミだってこともな。

 分かってるのに、そうやって誰かを傷つけ、苦しめる以外、自分の存在意義を見いだせるものが無かった。そんな俺に、何とかおこぼれに預かろうと、四人の柄の悪いブルー男子は取巻きになった。別に拒絶する理由も無かった俺には、そいつらが何をしようとどうでも良かった。

 とっくに飽きて、嫌になった後も、俺はカツアゲをし続けた。

 

 だが、カツアゲを続けていたのも、もしかしたらこの水瀬梓のように、抵抗してくれるゴミ、いや、人間に出会いたかったのかもしれない。

 誰でも良い。腐りきったゴミである俺を、佐倉の名前だけが存在価値である俺を、好きなことをやっていたようで、結局はただ腐っていくだけの存在だった俺を、終わらせてくれる人間。

 

 水瀬梓。お前は俺を、終わらせることができるか?

 このまま俺は、最低なゴミとして生き続けるか、ここで終わることができるのか、その答えを、お前が教えてくれ。

 

 

「……魔法カード『強欲な壺』! カードを二枚ドロー!」

 

手札:0→2

 

「『サイクロン』を発動! 『下克上の首飾り』を破壊!」

「……」

「『氷結界の武士(もののふ)』を召喚!」

 

『氷結界の武士』

 攻撃力1800+500

 

「武士で、『深海の長槍兵』を攻撃! 絶体冷刀(ぜったいれいとう)!」

 ……おお、すごい。長槍兵が三枚下ろしに。

 だが、

「永続罠『スピリットバリア』発動。俺の場にモンスターがいる限り、俺への戦闘ダメージは0になる」

「……ターンエンド」

 

 

LP:500

手札:0枚

場 :モンスター

   『氷結界の武士』攻撃力1800+500

   魔法・罠

    フィールド魔法『ウォーター・ワールド』

 

佐倉

LP:3500

手札:0枚

場 :モンスター

   『深海の長槍兵』攻撃力1400+500

   魔法・罠

    永続罠『神の恵み』

    永続罠『スピリットバリア』

 

 

「俺のターン」

 

佐倉

LP:3500→4000

手札:0→1

 

「俺も『強欲な壺』を発動。カードを二枚ドロー」

 

佐倉

LP:4000→4500

手札:0→2

 

 ……っ! このカード……

 ……そうか。これがお前達の、俺への答えか。

 ……分かったよ。

「魔法カード『黙する死者』を発動。墓地の通常モンスター一体を、守備表示で特殊召喚する」

 

『ジェネティック・ワーウルフ』

 守備力100

 

 この効果で特殊召喚したモンスターは、フィールドに存在する限り攻撃することはできないが、目的は戦闘じゃないからな。

「『深海の長槍兵』と、『ジェネティック・ワーウルフ』を生贄に捧げ……」

 この答えが、俺にどんな未来を与えるのか。さあ、水瀬梓、これが(しるべ)だ。俺に未来を与えてくれ。

「『ホーリー・ナイト・ドラゴン』を召喚」

 

『ホーリー・ナイト・ドラゴン』

 攻撃力2500

 

「それは、俺のカード!!」

『!!』

 

 そうだ。ついさっき、レッドのゴミから取り上げたカードだ。いつの間に紛れていたのかは知らないが、それはまあいい。

「『ウォーター・ワールド』の効果は受けないが、武士を倒すには十分だ。バトル。武士に攻撃。聖なる炎」

 

LP:500→200

 

「ターンエンド」

 

 

佐倉

LP:4500

手札:0枚

場 :モンスター

   『ホーリー・ナイト・ドラゴン』攻撃力2500

   魔法・罠

    永続罠『神の恵み』

    永続罠『スピリットバリア』

 

LP:200

手札:0枚

場 :モンスター

    無し

   魔法・罠

    フィールド魔法『ウォーター・ワールド』

 

 

「……えせ……」

 

 ん?

「返せ!! それは俺の、大事なカードなんだ!!」

 ゴミが叫んできた。

 うるせえな。言われなくとも返してやるよ。こいつが勝てば、だがな。

 にしても、やけにこのカードにこだわるな。確かに希少なレアカードではあるが……

 

「それは、父さんと母さんが、アカデミアの入学祝にくれたカードなんだ!! 返せ!!」

 

 ……下らない。

 ……いや、これは利用できるか。

「……バカだな。お前も。お前の親も」

「バカ?」

 このままカツアゲを続けるにしても、ここで終わるにしても、とことん腐りきったゴミでいなければ意味が無い。だが今、水瀬梓は、俺をそういう目で見ていない。こんな俺に、どこか人間らしさを見いだしている。

 それじゃあダメだ。最低な、それこそ人間味なんて皆無な腐りきったゴミ、そんな存在だからこそ、この決闘には意味があるんだ。だから、悪いが利用されてくれ。

「お前の親は知ってるのか? レッドが最下級のクラスだってことを」

「それは……もちろん……」

「レッドの落ちこぼれの息子にこんなレアカードを買い与えるとか、バカ以外の何なんだよ」

「!!」

「おい! お前何てこと言うんだ!!」

 十代とか言ったか? 黙れゴミ。今は俺が喋ってるんだ。

「事実だろう。親からどんなことをして貰おうが、所詮それに応えることもできない、レッドの落ちこぼれだろうが」

「ぐ……」

「そんなゴミであるお前もバカだが、それを与えた親もバカだろうが。そんなゴミのために金を使ってカードを与えて、そんなゴミをアカデミアに通わせるために無駄金を投資して、お前はそれに応えもしない。ただ落ちこぼれだっていう現実に甘んじて、無駄金を使わせながら勝手に腐っていく、本当のゴミだろう」

「……」

 もう泣きそうな顔をしてる。他の連中も同じような顔だ。もう少しか。

「お前や、お前達みたいなゴミが、俺と同じアカデミアに通ってるって考えただけで怖気が走る。どうせゴミとして腐っていくしか無いのなら、さっさと働いた方がよっぽど役に立つ。それがゴミにはお似合いだ。ゴミはゴミらしく土にでも埋まって腐るか、俺達人間の肥やしになるのがお似合いなんだよ。そんなゴミを生んだ、バカな親と一緒にな」

「……ぐぅ、うぅ……」

 遂に泣きだしたか。

「さっきから好き勝手なことばかり言いやがって!! 俺達はゴミじゃねー!!」

 ゴミが叫んでる。他の連中も全員、うなだれるか怒りに身を震わせてる。

「だからゴミが話し掛けるんじゃねーよ。ただでさえお前らゴミのせいで脅されて、こんなに疲れるゴミの相手をしてるんだ。これ以上俺を疲れさせるな。今すぐその口を閉じるか、ゴミ箱にでも入れよ」

「てんめぇ……」

 怒ってる怒ってる。後は……

「お前も、もうフィールド魔法が一枚だけで逆転は無理そうだし、さっさと降参したらどうだ? もう分かっただろう。ゴミは所詮、人には勝てない。結局は負けて腐る以外に無いんだ。言われた通り仕方なく相手してやったんだから、時間の無駄にならないようさっさと終わらせて学園から消えてくれよ。人間様に懇願した身としてそのくらいの責任は果たせよな。こう見えて俺は、いつまでもゴミの相手をしてられるほど暇じゃないんだよ」

 水瀬梓にそう言うと、なお更俺への視線が鋭くなるのを感じた。

 

 そうだ。それで良い。

 

 俺を恨め。これが俺なんだ。

 

 ゴミはこの世に俺だけでいい。

 

 

 ブチッ

 

 

 

 




お疲れ様です。
次回が決闘完結ね。

んじゃオリカ。


『速攻召喚』
 手札のモンスター1体を通常召喚する。

まあ、ライフコストの無い一度限りの『血の代償』だわな。
使えるっちゃ使えるかもしれんが、まあ、俺的には微妙だ。速攻魔法ってところだけは『二重召喚』より強力ではあるが……うん。それだけだし。

このくらいでいいか。

じゃ、次まで待っててね。

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