遊戯王GX ~氷結の花~   作:大海

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梓はですね、
きほん的には、日本の、どみのちょーといわれるちほーに、すごしてまして、
若干ゃゴミが、すてられたところなので、
そういったところで生きのびるように梓、あの、ほそながいからだで。
であと目も大きいので、とおくのエサを見つけるように。

ブリューナクぅ、ですかねぇ……
手札に、スッと、もどせるモンスターでして。
けっこう、たかいところが好きなので、
かるがると、100メートル200メートルは、よゆーで飛翔してくれますね。
いってらっしゃい。

○≪ おおみじゃねえ おうみだ



    その血の記憶

視点:外

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 

「きゃあ!?」

 

「なんだぁ!?」

 

「ぅおおおおいい!? 何事だぁあ!?」

 

「いやあああああああああ!!」

 

 

「おいおいおいおいおい!?」

 

「えぇええ!?」

 

「ちょっ!? おま!? はああぁああ!?」

 

「ウホッ! 良い身体……」

 

 

「み、三沢君!?」

 

「三沢! 何があった!?」

 

「うわぁあ! 三沢くんのことすっかり忘れてたけど、なにしてんのぉ!?」

 

「大地さん!? 漢だなぁ……」

 

「おまえ何やってるんだ三沢大地―――――ッ! スピードはともかく理由(わけ)を言え―――――ッ!!」

 

 ……

 …………

 ………………

 

 それぞれの、様々な終わりと始まりの出来事に加え、ちょっとしたちんち……もとい、珍事も起きて、多くの声の中で日が暮れた大会四日目。

 決闘を終えた生徒の多くは、各寮の自室に戻り、自分だけの時間に没頭していた。

 体を休める者もいれば、明日以降に向けてデッキの調整に励む者もいる。

 親しい友人らと時間を過ごす者もいるし、大会中に見つけた新たな目標を見つめる者も一部いる。

 することや考えることは違えど、彼らにとって、大会中でも決闘から離れているこの時間は、彼らにとって自由に過ごせる大切な時間であって……

 

 

 そして、この部屋にいる者達も、彼らにとっては、いつも通りの、大切な時間をすごしているようで……

 

「……はっ……あぁっ、んんぁぁ……////」

「ほらほら、そんなに震えていては、上手くできません……」

「だ、だって……ひゃあ!////」

「あぁ……ここですか?」

「あんっ……! そ、そこはぁ……ああん!////」

 

 星華の、口を開いた穴の中。そこへ梓が差し入れて、先端をグリグリとこねくり回し、奥の部分、奥の奥を突いていく。梓がソレを動かす度に……

「ひいぃぃん……そこ、ダメぇ……////」

「ほら、ここですよね? ここが感じるのでしょう?」

「んあああ!!//// そこ、感じるっ、感じるうぅぅ~~おぉぉ~~////」

 星華の口からは、終始甘い吐息が、甘い声が漏れ出ている。

 自然と星華の身にも力が籠もり、両手は必死に空を掴み、よがり狂う身体は梓が押さえてあげて。

 

「我慢して下さい。もう少しですから……えい、えい……」

「ひゃっ! ダメっ! 声が出ちゃう……声が出ちゃうっ、感じるぅ~~~////」

「我慢して。もうすぐですから……あ、来ます、出ます……!」

「出して! そのまま、そのまま出して! 私の、私の中、梓ので綺麗にぃいい~~~////」

「ええ、今出しますから、がんばって、がんばって……」

 今にも果てそうな星華を、必死に声で慰める。

 儚い全力のこもった星華の手を、梓は空いた手で優しく握ってあげながら、星華に精一杯の愛情を注いで、その愛情を、奥をまさぐる先端に込めて。

 

 徐々に昇ってくるそれに、全神経を傾けながら、すぐそこまで来ている、解放の瞬間を目指して……

「出る、大きいの……星華さん、出る!」

「来て! 来て! そのまま、そのまま私の中……んんああはああああ!////」

 

「出る! 出ます! 大きいの、出ちゃううううううう!!」

「んほおおおおおおお!! おおほおおおおおおおおお!!」

 

 グリン……

 

「出ましたー! デッかい耳クソ!」

 

 たっぷり時間を掛けて、耳の奥を耳かきでこねくり回し、奥の奥まで詰まっていた大きな耳垢を取り出した梓は、耳垢を掲げながら思わず歓喜の声を上げた。

「はっ……//// はひ……//// は、ああぁぁ……////」

 梓の丁寧で絶妙な耳掃除に、終始身体を震わせていた星華は、顔を首まで真っ赤にしつつ、終わった後になっても梓のひざ枕の上でヒクついていた。

 

「……////」

 そんな二人を、アズサは無言で眺めていた。

 梓がプレゼントした白のワンピース姿で、珍しく女の子らしい姿勢で座りながら、顔を真っ赤にしつつ、床に着けた手やら足やらを、切なそうにモジモジと動かしている。

 

「星華さん、大丈夫ですか?」

 寝ころんだまま動かない星華の身を起こしながら、梓が声を掛けると、星華は、未だ夢心地という顔を浮かべていた。

「らいじょ~ぶらぁ~//// わらひは、らいじょ~ぶ~////」

「……あまり大丈夫に見えないのですが……」

 話し掛ける梓と向かい合っていながら、目は焦点が定まっていない。

 酒にでも酔ったような呂律の回らない口で、やたらとハイな声を出し続けている。

「わらひは、らいじょ~ぶ~//// あじゅさの耳そーじのおかげで、しゅこぶる耳がよくきこえるじょ~//// しょーこにだれか今、水たみゃりに金をおとした~////」

「水溜まりにお金って……どこですか、それは……」

 星華の様子と話しに、梓は苦笑するしかなかった。

 

(今日、星華さんが欲しがったご褒美が、耳掃除……それは構いませんが、耳掃除って、された人はこんなふうになるものでしたか……?)

 目の前で一人、こことは別の場所の音を聞いている星華を見ながら、梓は疑問を浮かべるばかり。

 

「梓……////」

 そんな梓に、アズサが顔を真っ赤にしたまま、声を掛けた。

 切なそうに、物欲しそうな顔で、梓をジッと見つめて……

「どうしました?」

「その……僕にも、耳掃除、して欲しいな~って……////」

 別に恥ずかしがることじゃない。それが分かっているのに、なぜか恥が湧き上がる。

 それでも勇気を振り絞ってお願いした。それを聞いた梓は……

「構いませんが……精霊にも耳クソは溜まるのですか?」

「溜まるもん! 今でも耳の中の異物感、ハンパ無いもん!」

「はぁ……分かりました」

 妙に必死に迫ってくるアズサに了承しつつ、すぐに準備に掛かった。

 

 耳かきを手に、正座したひざ枕にアズサを寝かせて、上を向いた耳の穴を覗く……

「……やはり、どこにも耳クソはありません」

「えぇ!? 無い? 全然?」

「ありませんね。耳クソの欠片すら見えません……」

「もっとよく見て! 奥の方まで見てよ!」

「奥の奥まで見ております……もう片方も。実に綺麗な耳ですよ」

「そんなぁ~……」

「そんなぁ~って、良いことでしょうに」

 心底悔しげな声を上げながら、体を持ち上げたアズサは再び星華を見る。

 

「へへ//// ふへへへ~//// あじゅさ~////」

 

 未だ、どこへ耳を傾けているのやら。

 あれだけ気持ちよさそうによがり狂って。

 自分にはそれがないと分かったアズサは、

『……てか、話しは変わるけどさ……』

 せめて、星華の知らない、自分だけが知る梓との秘密をおしゃべりしてやろうと、精霊化し、呟き声で、梓に声を掛けた。

『例のこと、星華姉さんには黙ってるつもり? 姉さんだって、全くの無関係ってわけじゃ、無いのにさぁ……』

 そんなアズサの言葉を聞いた梓は、出血こそ止まっているが、未だ醜い傷の残る、左手首を強く押さえる。

(……ええ。これは、私の……私とアズサ、『氷結界』の問題です。その宿命が断ち切られた彼女のデッキや、そのデッキを持つ彼女を、巻き込むことはしたくありません)

『そう……』

 

 こことは別の声が聞こえていても、二人の小さな声での会話は聞こえていない。

 そんなヘブンな状態ながら、星華もまた、二人の知らないことを思った。

(こんな幸せをいつも与えてくれる……梓は、私が絶対に守ってみせる。その相手が、得体の知れん存在だろうが、たとえ『神』だろうがな……)

 

「……あ、また金をおとした//// しかも、水たまりの中にガラスまで……////」

 

 ……

 …………

 ………………

 

 ――レッド寮にて。

 

「十代……入れて……」

「はぁ……はぁ……」

 

「早く……早く入れて……」

「はぁ……はぁ……」

 

「Go AHEAD! Mr.Judai! 早くしたまえッ! 酒が蒸発してしまうまで待つ気かね?」

「酒じゃなくて、ウーロン茶だろう……」

 

 無駄に発音の良い明日香に答えながら、十代は、テーブルに散らばった十円玉の一枚を手に取った。

 目の前のグラスは、酒ではなく、ウーロン茶で満たされていて、しかも、ウーロン茶の底には複数枚の十円玉が沈んでいる。

 そんなグラスの表面は、満たされたウーロン茶が表面張力で膨れ上がっていて、素人目に見ても、十円玉どころか、液面に触れただけで溢れることは必定。

 そんなグラスの上に、指に摘まんだ十円玉を持っていって、どうやって入れようか、十代は必死に考えているのだが……

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 考えても、打開策はなにもない。意を決して、十円玉から指を離す。その結果……

 

 コトリ

 ユラァ

 ツー……

 

「うあああああああああああ!!」

 当然のこと、グラスの中身はテーブルにこぼれてしまうのだった。

「くっそおおお!! これで五回やって五回敗けかよおおお!!」

「ふふ……」

 大げさなアクションで悔しがる。そんな十代を、向かい合う明日香は、左手に持った板チョコをかじりつつ、右手に仕込んだ脱脂綿をいじりながら眺めていた。

 

「だああああああ!! もう一回だ! 今度こそ勝つぜ!」

「グッド! 楽しくなってきた。ただ、その前に……」

 立ち上がりながら、テーブルに着いた十代の手を、明日香は、両手にガッと掴んだ。

 

「十代……」

「へ?」

「あなたの『手』……とてもなめらかな関節と皮膚をしていますね……白くってかわいい指だ……」

「そうか? 人並みにゴツイし、むしろ黄色い方だと思うぞ……」

「ほおずり……してもいいですか? ……『ほおずり』……すると、とても落ちつくんです……」

 

「アフウウウ~~~~~~~~~~」

 

『……』

 

 十代の返事を待たず、持ち上げたその手の甲に自身の頬を押し当てる。

 普通なら、たとえ相手が明日香のような美人でもドン引きするところだろう。

 実際、食堂に集まっている生徒達は、そんな明日香の奇行に顔を引きつらせている。

 だが、とうの十代は、

「頬擦りしたら落ち着くのか? だったら、これからは明日香の好きな時に頬擦りしても良いぜ」

 ドン引きなど、する素振りすら見せず、明日香の奇行を快く受け入れていた。

 

 そんな二人に、生徒の一人が近づいた。

「天上院君、頬擦りがしたいのなら、ぜひ俺の手を使って……」

 

「オレのそばに近寄るなああ――――ッ」

 

 笑顔で近寄った万丈目に向かって、明日香は十代に抱き着きながら絶叫した。

「……」

「……えっと……ごめん、万丈目……」

「気にするな……」

 十代に寄り添う明日香の姿に目を閉じつつ、万丈目は、元いた席に戻っていった。

「そんなに大騒ぎすることねーだろう。万丈目だって、明日香のこと思って言ってくれたんだからさぁ」

「それは、分かってるけど……お願い。気を付けるから、嫌いにならないで……」

「こんなことでいちいち嫌いにならねーって。よしよし……」

 自身の胸倉をつかみつつ、上目遣いで寄り添っている明日香の頭を撫でてやる。

「……////」

 すると、明日香は気持ちよさそうに、泣きそうにしていた表情からは力が消え、ネコナデ声を出しながら目を細めていた。

(なんつーか、いつもの明日香と全然違うけど……今の明日香も、すっげー可愛い////)

 

「十代」

 

 今まで意識したことも無かった、明日香の可愛さを見てワクワクを思い出している十代に、万丈目が声を掛けた。

「せっかくだ。今日は天上院君を、お前の部屋に泊めてやったらどうだ?」

「え? でも……」

「俺様も、久々に自分の部屋のベッドで眠りたいと思っていたところだ。おい剣山、お前も付き合え」

 いつも見せるムスリとした表情ながら、悲しげな、それでも彼女を思いやって……

 

 そんな万丈目の両肩に、手が置かれた。

「万丈目先輩……今夜は、とことん付き合うザウルス」

「君に教えることは、もう何も無い……今夜は男三人で、パーッといこうじゃないか」

「剣山……吹雪さん……」

 同じく失恋の痛みを知る後輩と、今日まで恋の手ほどきをしてくれた先輩に挟まれながら、万丈目は、今日めでたく結ばれた二人を見つめるのだった。

 

 ……

 …………

 ………………

 

「Zzz……」

 

 彼らが過ごしていた時間も過ぎ、夜もすっかり更けたころ。

 自室に一人戻り、夕飯を食べ終えたあずさは、既にベッドで眠りについていた。

 

 そんなあずさを見ているのは、そんなあずさと一緒にいることが許されている六人組。

『シエン……大丈夫か?』

『大丈夫だが……どうかしたか? キザン?』

『……私達が気付いていないとでも?』

 相変わらずニヤついているシエンの前に、彼の同士であり、臣下でもある五人全員、姿を現した

『……そうだな。今更、お前らに隠し事も無ぇか……』

『……あまり時間は、残されていないのだろう?』

 核心を突き、確信が込められた、キザンの一言。

『まあな……ただでさえ時代が違うんだ。マナみたいな現代のカードでもねぇ。舞姫の嬢ちゃんみたいな、生まれつき梓と一つだった存在でもねぇ。過去に存在するだけで結構なエネルギーを食う上に、梓を止めるために、あずさに力を渡しちまったからな。今はまだ精霊として存在できてるが、少なくとも、あずさ達が三年に上がったくらいまでには、時間切れが来てた』

『……それを、あの紅葉という決闘者……奴の闇を滅したことで、一気に力を使い果たした……』

 シエンの告白。キザンの説明。

 黙って聞いていた、残り四人の真六武衆達の表情にも、暗い影が差す。

『……あとどのくらいもつ?』

『そうだな。普通に決闘で呼ばれるだけなら、あと数ヶ月。だが、また今日みたいな、おかしな力を相手することになるなら……多く見積もって、せいぜい決闘三、四回ってとこか……』

『その時がお前の……ひいては、お前という強い存在があったことで、この時代に存在できた、私達、真六武衆の……』

『この世界との、別れの時……』

 

『……』

 

 部屋の空気が、いちだんと重くなる。

 キザンの雰囲気はいつも通りだが、いつも陽気で楽しい顔だったシエンの表情まで、真剣なもの。

 ついさっきの決闘と同じ。そんな主君の表情と空気だけで、それがどれだけ信憑性に満ちたことか。彼らにとっては一目瞭然の事実だった。

『……おかしいとは思っていた』

 再びキザンが、静かに言葉を発した。

『童実野町へ行った時……誰よりあずさと話していたお前が、実体化どころか、姿も一切見せなかった。まだ梓が幼かったころ、お前のことを忘れていた梓に、決して姿を見せなかった時と同じように……この島とは違い、精霊の力がまるでない。そんな場所で、余計な力を使わないためだろう……』

『……そこまで分かってるなら、私の選択も分かってるよな?』

 真剣ながら、屈託ない笑顔を作って、キザンと話す。

『お前のことだ。あずさに正直に話して、私を呼び出すのは控えるように……とか、考えてんじゃねえのか?』

『……』

 答えないが、どうやら図星らしい。

『確かに、あずさに正直に話せば、あの性格だし、私を出すことは、今まで通り控えるだろう。それで私の寿命も、少しは伸びるかもな。だがな、そんなもん、精霊にとって最も仕様の無い最期だって、思わねえか?』

『それは……』

 キザンも、あとの四人も、その言葉に目を閉じる。

『私達は、決闘モンスターズなんだぜ。フィールドに出て、雑魚だろうが強敵だろうが、敵のモンスターを倒す瞬間こそが華だ。それをさせてもらえねえで、だらだら限度いっぱいまで寿命伸ばして、その瞬間に、はいさよなら……私はそんな終わりは嫌だぜ。モンスターなら、死ぬのはフィールドの上って決まってんだろう』

『……』

『それにだ。あずさがずっと隠してきた、私を呼んでまであいつを倒したのは、自分のためじゃねえ。まして、あの紅葉とかいう決闘者でもねえ……梓のためだ』

 その名前に、キザンも、全員が反応する。

『理由は知らねぇ。だがあいつらが探してたのは、間違いなく梓の方だった。邪悪で厄介な力を持った連中が、雁首揃えて梓を狙ってくるっていうなら、私が戦わねぇ理由は無ぇだろう』

『……』

『あずさは、間違いなく梓のことを守ろうとする。そして、私も同じ気持ちだ。私は梓に対して、どれだけ償っても贖えねぇだけの贖罪がある。だったら最後は、梓のために戦って散る方が良い』

 

『……』

 

『お前らは違うのか?』

 最後の一言はキザンだけでなく、五人の臣下、全員に向けての言葉だった。

 五人が五人とも、それぞれの表情を浮かばせていた。

 だが最後には、揃ってシエンに向かって顔を上げた。

『まあ……決着としては、ちょうど良いかもな』

『梓を守る……俺達の最後には相応しい』

『最後の瞬間までミズホと一緒にいられるなら、僕が言うことは何も無い』

『わ……私も、シナイと一緒なら、どこまでも……////』

『……』

 五人とも、気持ちはシエンと同じだった。

 残された時間が少ないのなら、その残された時間の全てを、(あずさ)と、()のために。

 それが、精霊として、そして、選ばれし六人の武士としての、何よりの矜持であると確信しているから……

 

『そういうキザンはどうなんだよ?』

『……?』

『別れはもしかしたら、次の決闘がそうかもしれねぇ』

『……それが?』

『あずさに気持ち、伝えとかなくていいのか?』

『……』

『マナとか、舞姫の嬢ちゃんだっているんだ。精霊が人間に恋することは恥じゃねえぞ』

『……黙れ』

 

 一言を残し、消えるキザン。

 そんな真六武衆達のやり取りを、一人、何も知らないあずさは、明日に向けて、穏やかに寝息を立てていた。

 

「Zzz……梓く~ん……////」

 

 ……

 …………

 ………………

 

「主だった決闘者達の、ほとんどは私の元を離れた……」

 アカデミアホワイト寮の自室。

 そこで、目の前の水晶玉を覗きつつ、言葉を紡いでいく男が一人……

「いよいよという時は……オージーン王子。君の力を、頼らせてくれ……」

 

「は。斎王様。我が力は斎王様の御為……」

 

 部屋を訪れていた一国の王子は頭を下げて、部屋を出ていく。

 それには興味も無さそうに、斎王は、別のものに目を向けていた。

「さて……こちらの準備も整った」

 嬉しそうに微笑みながら、テーブルに置いてあるデッキを手に取る。

 それを、彼の前まで歩いてきた者に手渡した。

「君の力を見せてくれ」

 デッキを受け取った者に対して、斎王は微笑み、オージーンには向けなかった、期待を込めながら言う。

 

「……はい。斎王様。僕の決闘で、全ての人を幸せに……」

「期待しているぞ……丸藤翔。純白なる愛の戦士よ」

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

 暗い場所だった。

 とても暗い場所にある、とても暗い部屋だった。

 そんな部屋のテーブルの上に、カードを広げて、デッキを調整している一人。

「……これで完成。あとはアカデミアに行くだけね」

 

「アカデミアから連絡だ……」

 

 彼女が嬉しそうに声を上げたところへ、彼女とは真逆な、暗い、かすれたハスキーボイスが聞こえた。

 そちらへ彼女が振り返った時、彼は、その連絡の内容を話して聞かせた。

「キース……そして、響紅葉が敗れた」

「うっそ……うちでも手練れの二人が、梓って子、一人に?」

「いや、それとは別の生徒らしい……」

「……アカデミアの生徒も、タダの学生連中じゃないってわけか……」

「そのようだ……小日向星華と、ターゲットと同じ名前でややこしいが、平家あずさ、この二人の少女にやられたようだ」

「女の子? 情けないわねぇ。大の男二人が揃って。ターゲットの方の梓も、女の子なんでしょう?」

「……見くびらない方がいい。その二人とも、特殊なカードを使っていた、ということだ……」

「ふーん……」

 彼の話した内容に、彼女はしばし考える。考えて、すぐに元の笑顔になった。

「まあ良いわ。ちょうどデッキもできあがったところだし。私も行こうっと」

「せいぜい返り討ちにされんようにな……」

「なに言ってるの。あなたも行くのよ」

「な……私も?」

 澄ましていた彼の手を引いて、彼女は座っていたテーブルから立ち上がった。

「今から行けば、明日の朝にはアカデミアに到着するだろうし」

「なぜ私も……?」

「ターゲット以外に、その二人とも闘う必要があるっていうなら、こっちも二人いた方が確実でしょう。せっかくだから、競争しましょ」

「競争……勝てば褒美でももらえるのか?」

「そうね……じゃあ、君が私より先に、ターゲットの梓を倒したら、デートしてあげる」

「……」

「ほーら! いつまでも気取ってないで、急いだ急いだ」

「おい……分かったから、手を引っ張るな……」

 

 

 そんな二人の様子を、別室から様子を見ていた者達がいた。

 

「おーおー、気合入っちゃってまぁ……」

「そんなに、可愛い自慢の弟とやらに良い所を見せたいのかなぁ……」

 反応は違えど、同じように二人の姿を面白がっている。

 そんな二人に対して、

 

「君達も行け」

 

 奥にいる一人が、そう声を上げた。

「Me達も?」

「そうだ。ターゲットは、フランツを倒した決闘者一人だけのはずだった。そこに、新たに二人、強敵が現れた。なら、こちらも手勢は多いに越したことはない」

「……まあ、そうかもな」

「良いでしょう」

 二人とも、了承を返事した。だがその後で、二人の内、若い少年が、奥にいる一人に近づいた。

「デハ、Meにも渡してもらおうか? キースと同じ、邪神のカードを……」

 自身満々な態度で迫り、そう要求した。

「プラネットだけでは不満かね?」

「ああ。不満だネ……とうに過去の人間であるキースが扱えたんだ。なら、Meに使いこなせないわけがない。何より、今出ていった二人……どっちかは知らないが、渡してあるんだろう? なら、Meには渡さないなんてズルいじゃないか」

「……」

 子供染みていながらも、不敵な笑みを見せる少年に、男もまた、微笑んでいた。

 そんな自信満々な少年の態度に、後ろで暇そうに見ているもう一人が呆れていると。

「……良かろう。それだけのセリフを吐いたのだ。使いこなして見せろ」

 男は了承しながら、懐から取り出したカードを差し出した。

「期待しているぞ。『デイビット・ラブ』」

 そのカードを受け取った少年……白の制服に軍帽を被った、デイビット・ラブは、妖しい笑みを浮かべながら、受け取ったカードを眺めていた。

「『リッチー・マーセッド』。君も受け取れ」

「ああ? 俺は別に邪神になんざ興味は無ぇぞ」

 白髪を派手に逆立てた、リッチーはそう言ったものの、男はカードを差し出しながら、ジッと見ているだけ。

 ジッと見られ続け、最後には根負けする形で。

「……分かったよ。使えばいいんだろう、まったく……神様、邪神様、マッケンジー様ってか……」

 仕方なくカードを受け取りながら、男の……自分達のボスの名前を呼んだ。

 

 邪神のカードをデッキに刺している、目の前の若者二人を前に、マッケンジーは、変わらぬ邪悪な笑みを浮かべていた。

 

(いよいよ……私の動く時が来たようだな)

 

 

 

 




お疲れ~。

わーい吉影かーわいー(棒)

つ~ことで、次回からは新シリーズ、

『吉良吉影が遊戯王GXの明日香さんをアフレコしたようです』

を……


外「ウソだろ大海!?」


……ああ。ウソやで。
ただでさえ本編が滞ってんのに、今さら新シリーズとかやってられるかいや……

にしても、決闘が無ぇと書くのも楽だわ。
問題があるとすりゃ、元の明日香がどんなだったか思い出せねぇってことくらいかなぁ……

次回は決闘の予定だから、長くなりそうだけどや。
それでも待っとってほしいんだ。
んじゃ、ちょっと待ってて。

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