遊戯王GX ~氷結の花~   作:大海

153 / 175
はぁ……
そろそろ、真面目に続き書いてかないとねぇ……
そう思いつつ、真面目に書いたから、今回あんま面白くないかも。
それでもいいかな?
いいならば、行ってらっしゃい。



    すげぇ戦う者達

視点:外

 

 辺りは闇に包まれている……

 空気は重く淀んでいる……

 景色が、雰囲気が、聞こえてくる無音さえ、どこまでも暗く陰鬱で……

 

 周囲に、辺りに、足もとに広がるもの。

 赤く、どす黒い生き物の血と。赤く、くすんだ金属の錆と。

 そんなものと、硬く厚い金網に囲まれて、それ以外には見えないその場所。

 

 地獄……

 呼ぶとしたら、これほど明確な言葉もあるまい。

 生きている人間が、正気でいる人間が、好き好んで来たいと思うはずがない、美しい世界の裏側に広がっているような、さしずめ、裏世界……

 生きて、正気なまま行こうと思うには、この場所は、あまりに暗く陰鬱で、吐き気がするほど鉄臭くて、血なま臭くて……

 

 

 そして、そんな場所へ、生きたまま、正気でいるまま、連れてこられた哀れな子……

「……ぐぅ……」

 青い着物はボロボロに汚れ、美しかった黒髪はぼさぼさに跳ね、雪のような肌は、泥と、血と、錆にまみれ……

 そんな状態でひざまずく梓の左右には、巨体が二人立っている。

 筋骨隆々の巨人。

 一人は、白色の、だがボロボロに汚れた、ローブにも見えるノースリーブの奇妙な服を着ていた。なのに、そんな服の上からでも分かるほどの、強靭な肉体を備えていた。

 一人は、腰に布だけ巻いている。上半身は、肉の鎧に包まれて、下半身を隠すボロ布は、彼らと同じく血と泥にまみれ、裏世界の住民である証を示す。

 そして、そんな二人に共通しているのが……

 二人とも、その頭と素顔を、巨大で、硬く冷たい、三角形を被り、隠している、ということ。

 

 そんな二人の間に、捕らえられ、ひざまずく、決闘アカデミアの凶王。

 美しい顔は歯を食いしばり、縛られた両手に全力を込めるが、それでも、逃げることは適わず……

 悔し気に、痛々し気に、屈辱に、痛みに耐えている……

 

 そんな梓に……

 二人は両側から、両手に持ったそれを、梓の頭へ近づけて……

 

「ほーら……チーズ、チーズ」

「さっさとチーズしちまいな……」

 

 三角形に切り取られた、巨大なチーズを頭に被った二人は、繰り返し、梓に語りかけていた。

 『納豆命』。

 そんなタスキを肩にかける、若き少年の意識を変えるため、両手に持った、巨大なチーズを、その顔に近づけて……

 

「お前の仲間の、クサヤとニラは観念したぜ」

「さっさとお前も、チーズしちまえよ……」

 

 二人が示す、梓の視線の先。

 歳若い一組の男女。

 『クサヤ魂』と書かれたタスキをかけた少年、風馬楓。

 『ニラ主義』と書かれたタスキをかけた少女、炎城椛。

 そんな二人とも、そのタスキの文字に巨大な×印を刻まれ、代わりにその額には、『チーズ万歳』と書かれたハチマキを巻かれている。

「……すみません、梓さん……」

「ごめん……オレたちを許して、くれ……」

 互いに寄り添いながら、受け入れてしまった悪意に悔み、それでもどうしようもない現実に、諦めるしかない……

 

 そんな二人の姿。漂うチーズの臭い。襲い来る激痛……

 仮に今、屈したところで誰も恥と思うまい。誰もが、諦めることを良しと言ってくれる。

「チーズチーズ……」

 梓自身、そのことは分かっている。

「さっさとチーズしちまいな……」

 分かっていても、それでも……

 

「屈するものか!! チーズにだけは決して!! たった一人になろうとも!! 死にゆくその寸前まで!! 私はチーズを赦さない!!」

 

「なんだと!?」

 それを聞いた巨体の一人が、両手に持っていた、チーズを、梓のひざの上に置く。

「ぐおおおおああああああああああ!!」

 その結果、梓の脚は、その下にある、石に食い込んだ。

 江戸時代。拷問に使用されていた、波状に加工された石。

 それの上に囚人をひざまずかせ、ひざの上に重石を乗せることで、脚には石が食い込み、苦痛を与える。

 囚人が吐かぬなら、重石の数を増やしていく……『石抱』と呼ばれる拷問。

 梓のひざの上には既に、三つの巨大なチーズの塊が積まれていた。

 例え、並大抵の痛みは効かない梓でも、少しずつ、確実に肉へ食い込んでいく……そんな痛みへの耐性はない。

 そして、どれだけ優れた治癒能力を持っていようと、重石がある限り永遠に傷つけられる以上、治癒をしたところで傷はつき続け、それを治すことを繰り返す。

 痛みも、傷も永遠に続くこれはまさに、梓に対して最も有効的な拷問であり、そして、攻撃と言っていい。

 

「……」

 脚への激痛。懐柔された仲間。漂うチーズの臭い。

 左右の黄色い三角頭の中身は、さぞ醜い笑みを浮かべているだろう。

「チーズ……」

 そんな、チーズに向かって、それでも折れることができない、梓は……

「チーズ……」

 自分が感じる、ただ一つの感情を、言葉に、そして、絶叫へと変えて……

 

「貴様を赦さない……」

 

 ――えええええええええええええええええええええええええええええええあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ……

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

「チーズ……チーズ……チーズ……」

 

「ふぁっ……」

 目を覚ますと、そこにはよく知る、美しい顔がのぞき込んでいるのが見えた。

「……おはようございます。アズサ……」

「おはよう……て言っても、もうすぐお昼だよ」

「お昼……?」

 言われて梓は、枕元にある時計を手に取り、確認した。

「やだ……もうこんな時間!」

「珍しいね。梓が朝起きられないなんてさ……やっぱ、昨夜の決闘が響いた?」

「起きないなら、なぜ起こして下さらなかった!?」

「ごめん……あんまり気持ちよさそうに寝てたからさ。星華姉さんと一緒に寝顔眺めちゃってたよ」

「眺めてたって……」

「まあ、たった今までは随分うなされてたけど……悪い夢でも見てた?」

「……」

 言われてみて、考えてみる。

 うなされていたと言うくらいなのだから、あの梓をも恐怖と苦悩に陥らせる、よほどの悪夢だったのだろう。

 それだけ強烈な夢を見たのだろうが……どうしても、肝心の内容は思い出せない。

「……そういえば、星華さんは?」

 思い出せないから、別の話題に逃げることにした。

 二人で寝顔を眺めていた。それはいい。だが、そのうちの片割れが、今この部屋には見当たらない。

「星華姉さんなら、とっくに朝ごはん食べて、行っちゃったよ」

「朝ごはん?」

「うん。まあ、梓の作り置きをチンしただけだけどね。ほら」

 言われて、指さされたテーブルの方を見てみる。

 そこには確かに、一人分の食事が置いてある。

「梓も、たまにはちゃんと朝ごはん食べろってさ」

 

「星華さんが……朝食の準備、ですと……!?」

 

 思わず口に手を当てて、驚愕してしまっていた。

 そんな梓の反応に、アズサも苦笑した。

「ははは……分かる分かる」

「……て、そうだお布団。干さなければ……」

「それももう干していったよ」

 言われて、ガラス戸の方を指さした。

 ベランダには確かに、物干し竿の上に敷布団が掛けられている。

「シーツとか、薄手の掛布団も、洗濯していったしね」

 

「星華さんが……布団を干して、洗濯までした、だと……!?」

 

「……分かる。すっごい分かる……」

 いつもぐうたらで物ぐさで、家事全般から自身の世話に至るまで、日常生活の全部が全部を梓に頼り切りだった。

 そんな少女の、世話役が眠っていた間とは言え実行した行動に、梓は思わず口元に手を当て、白目をむくほどの驚愕を浮かべた。

「……近々、雪が降るのでは……」

「血の雨が降ったりしてね……」

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

「……」

 

「梓の寝顔……ドゥフ……梓の寝顔……ドュゥフフフ……」

 静かな森の中。そこの適当な木にもたれかかりながら、星華は思い出す。

 梓と部屋を共にして以来、なんだかんだ、見る機会がなかった。

 星華とアズサが眠るまで待ってくれていたし、朝起きるのは当然、梓の方が遥かに早い。星華が起きるだいぶ以前に目を覚まして、早朝のトレーニングへ行ってきて、その足で朝食を準備しつつ、星華を起こして、星華を迎える。それが日常だった。

 それが今日は、いつもの時間に星華が目を覚ました時は、まだぐっすり眠っていた。

 一度起きたとか、そんな様子でもない。普通に布団を掛けて、寝息を立てていた。

 

 綺麗な寝顔……

 上品な寝息……

 大人しい寝相……

 閉じられた目……

 小さく動く唇……

 

 今まで見たことのなかった、梓の寝顔。ずっと一緒にいて、久しぶりに見て、知ることになった、梓の『初めて』を目の当たりにしたことで……

 

「梓ゃぁ~////」

 

「……」

 赤くなった顔とエロい目付き、唇からはよだれを垂らしている。そんな様を見ていた男は、こう思った。

(放っておいた方がよさそうだ……)

 踵を返し、別の相手の決闘者を探そうと、歩こうとした……

 

 ダン……ッ

 

 一発の銃声と、すぐそばの木に開いた穴。そこから上る煙を見るまでは……

 

「久しぶりの再会に、無視することはあるまい……(じゅるり)」

 よだれを拭いつつ、拳銃を構えた星華は、直前の緩み切った顔を、一瞬で引き締め男を睨みつけている。

 本当なら、精霊と一緒に、梓が目を覚ますまで寝顔を眺めていたかった。

 そんな誘惑をどうにか振り払い、朝食を準備して、濡らした布団を干してここへ来たのは、ひとえに、やるべきことがあったからだ。

 他の誰でもない、愛しい梓のために……

 

「随分と物騒な物を……ここはアメリカではないぞ?」

 問い掛けられた、上下黒で統一した服装の若い男は、そう振り返りながら答える。撃たれたことの恐怖は、特に感じていない。彼にとっても、星華と同じくらいには、銃火器を見ることは日常なのだろう。

 

「だが……確かに、久しぶりだな。小日向星華」

「元気そうで何よりだ……『デプレ・スコット』」

 

 会話だけ聞けば、普通に再会を喜び合う旧友同士に違いない。

 その実、二人の声色にも表情にも、感動や、歓迎といった感情は見られない。

「随分と強気になったものだな……あの、いつも父親にくっついて、決闘に敗けてはベソを掻いていたチビとは思えん」

「貴様のその人を見下しきった態度も相変わらずだな。ついでに、ヘソ出しも目付きの悪さも昔のままだ……リッチーは元気か?」

「ああ……」

 簡単に会話しつつ、星華は決闘ディスクを装着した。

 

「同じ決闘者養成塾……もっとも、実際には、非合法のカードプロフェッサー育成施設で訓練したもの同士、再会の記念だ。久しぶりの決闘と行こうではないか」

「フン……私やリッチーはおろか、誰と決闘をしても勝つことなど滅多になかった。そんな施設一の落ちこぼれが、決闘アカデミアで何を身に着けたか、見せてもらおう」

 

 デプレもまた、決闘ディスクを装着した。

 互いに構えて、互いに睨み据える。

 

『決闘!!』

 

 

デプレ・スコット

LP:4000

手札:5枚

場 :無し

 

星華

LP:4000

手札:5枚

場 :無し

 

 

「私の先行、ドロー」

 

デプレ・スコット

手札:5→6

 

「……」

 デプレの一挙手一投足を、星華は鋭い目で見据えていた。

 特に、デプレが左耳に下げている、ただの石ころがくっついただけのイヤリングに対して……

「物騒な目だ。そんな目で見たところでプレイは変わらんぞ……」

 

「モンスターを伏せる。更に二枚のカードをセット。これでターンエンド」

 

 

デプレ・スコット

LP:4000

手札:3枚

場 :モンスター

    セット

   魔法・罠

    セット

    セット

 

 

「私のターン、ドロー」

 

星華

手札:5→6

 

「魔法カード『二重召喚(デュアルサモン)』。これで私はこのターン、二回の通常召喚の権利を得る。『レアル・ジェネクス・クラッシャー』を通常召喚」

 

『レアル・ジェネクス・クラッシャー』

 レベル2

 攻撃力800

 

「こいつが召喚に成功した時、デッキから、レベル4の『レアル・ジェネクス』を手札に加えられる。デッキからレベル4の『レアル・ジェネクス・ターボ』を手札に加え、そのまま通常召喚」

 

『レアル・ジェネクス・ターボ』

 レベル4

 攻撃力1500

 

「こいつの召喚に成功した時、デッキからレベル1の『ジェネクス』一体を手札に加えられる。レベル1の『ジェネクス・パワー・プランナー』を手札に加える」

 

星華

手札:4→5

 

「ほう……一ターン目から、実質手札消費一枚で、モンスター二体を展開か」

「……カードを二枚伏せておく。バトル! 『レアル・ジェネクス・ターボ』で、セットモンスターを攻撃!」

 緑の機械人が、肩の噴気口から蒸気を上げながら走り出す。

 その拳が、デプレの場のセットモンスターにぶつかり、その姿を露わにさせた。

「……セットモンスターは『エーリアン・グレイ』。こいつがリバースした時、相手フィールドのモンスター一体にAカウンターを一つ乗せる」

 白色に光る、いかにも宇宙人という見た目をしたモンスターが、墓地へ送られる寸前、その身から何かを飛ばした。

 その、紫色の不気味な物体が、『レアル・ジェネクス・ターボ』の身にくっついた。

 

『レアル・ジェネクス・ターボ』

 Aカウンター:0→1

 

「Aカウンター……?」

「更に、リバース効果を発動させたグレイが戦闘破壊によって墓地へ送られた時、カードを一枚、ドローできる」

 

デプレ・スコット

手札:3→4

 

「手札を増やしたか……だが、まあいい。続けて、『レアル・ジェネクス・クラッシャー』で、ダイレクトアタックを行う!」

 円筒状の機械がデプレに体当たりを仕掛ける。特に何かをするでもなく、デプレはその攻撃を受けた。

 

デプレ・スコット

LP:4000→3200

 

「……更にカードを一枚伏せて、ターンエンドだ」

 

 

星華

LP:4000

手札:2枚

場 :モンスター

   『レアル・ジェネクス・ターボ』攻撃力1500

   『レアル・ジェネクス・クラッシャー』攻撃力800

   魔法・罠

    セット

    セット

    セット

 

デプレ・スコット

LP:4000

手札:4枚

場 :モンスター

    無し

   魔法・罠

    セット

    セット

 

 

「攻撃的に見えて堅実な決闘……伊達に決闘アカデミアに通ってはいないようだな」

「才能が無いなりに、日々努力はしているつもりだ」

「……私のターン」

 

デプレ・スコット

手札:4→5

 

「……その努力がどこまで通用するか……私は『エーリアン・ウォリアー』を召喚する」

 

『エーリアン・ウォリアー』

 レベル4

 攻撃力1800

 

「こいつは、自分が『エーリアン』の召喚に成功した時、手札から特殊召喚ができる。『エーリアン・ドッグ』を特殊召喚」

 

『エーリアン・ドッグ』

 レベル3

 攻撃力1500

 

 前のターンに破壊された物に比べて、逞しい見た目をした生物、そして、その生物に雰囲気がよく似た、正しく犬と呼ぶべき四足歩行の生物がフィールドに並んだ。

「『エーリアン・ドッグ』が自身の効果で特殊召喚に成功した時、相手フィールドのモンスターにAカウンターを二つ置く。私は、キサマの場のモンスター二体に一つずつAカウンターを乗せる」

 『エーリアン・ドッグ』の身から、さっきと同じ物体が二つ飛び出す。

 その二つが、星華の場に並ぶ二体の機械に一つずつくっついた。

 

『レアル・ジェネクス・ターボ』

 Aカウンター:1→2

『レアル・ジェネクス・クラッシャー』

 Aカウンター:0→1

 

「ここで永続罠発動『洗脳光線』」

「洗脳だと?」

 星華が反応したと同時に、デプレの場のモンスターが輝きを発する。

 それに充てられた、『レアル・ジェネクス・ターボ』が動き出した。

「相手フィールド上のAカウンターが乗ったモンスター一体のコントロールを得る。私のターンのエンドフェイズごとにAカウンターを取り除いていき、全てのAカウンターがゼロとなった時にこのカードは破壊される」

「そのためのAカウンターか……悪いが断る。カウンター罠『ギャクタン』!」

 星華が新たにカードを発動する。その瞬間、表になったデプレの永続罠は、ゆっくりと消えていった。

「これは……」

「罠カードが発動した時、その発動を無効にし、そのカードをデッキに戻すカウンター罠だ」

「ちっ……」

 舌打ちしつつ、言われた通りカードをデッキに加えた。

「……予定は少々狂ったが、まあいい。永続魔法『古代遺跡コードA』を発動する」

 新たな魔法カードが発動される。その瞬間、デプレの後ろに、人工的な怪しい輝きを放つ、石造りの神秘的な遺跡が建立された。

「バトルだ。『エーリアン・ウォリアー』で、『レアル・ジェネクス・ターボ』を攻撃する」

 巨体を誇るエーリアンが、両手の爪を掲げて走り出した……その瞬間だった。

「『エーリアン・ウォリアー』の効果!」

 突然、狙われ、身構えていた緑色の機械人の身にくっついた紫色の物体、『Aカウンター』が巨大化した。それが、機械の身体にまとわりつき、その力を奪っていく。

「これは……?」

「『エーリアン・ウォリアー』がフィールドに存在するかぎり、Aカウンターが乗ったモンスターがエーリアンと戦闘を行う際のダメージ計算時、攻撃力と守備力はAカウンター一つにつき300ポイントダウンする」

「なに……! 『レアル・ジェネクス・ターボ』のAカウンターは、二つ……」

 

『レアル・ジェネクス・ターボ』

 攻撃力1500-300×2

 

 弱体化した機械は、異星人の爪によってあっさり切り裂かれた。

 

星華

LP:4000→3100

 

「続けて『エーリアン・ドッグ』の攻撃」

 同じように、円筒状の機械にも、Aカウンターが大きくなり、その力を奪った。

 

『レアル・ジェネクス・ターボ』

 攻撃力800-300

 

 そして同じように、異星人の犬の牙によって、小さな機械は噛み砕かれた。

「ちぃ……!」

 

星華

LP:3100→2100

 

「……攻撃を終えたこの瞬間、永続罠『血の代償』を発動!」

「このタイミングで……?」

「この効果は、自分ターンのメインフェイズか、相手ターンのバトルフェイズでしか使えんからな。私はライフを500支払い、手札の『A・ジェネクス・ソリッド』を通常召喚する」

 

星華

LP:2100→1600

 

『A・ジェネクス・ソリッド』

 レベル2

 攻撃力500

 

「攻撃を終えたこのタイミングで? ……私はこれでターンを終了する」

 

 

デプレ・スコット

LP:4000

手札:2枚

場 :モンスター

   『エーリアン・ウォリアー』攻撃力1800

   『エーリアン・ドッグ』攻撃力1500

   魔法・罠

    永続魔法『古代遺跡コードA』

    セット

 

星華

LP:1600

手札:2枚

場 :モンスター

   『A・ジェネクス・ソリッド』攻撃力500

   魔法・罠

    永続罠『血の代償』

    セット

 

 

「私のターン、ドロー!」

 

星華

手札:2→3

 

「……よし。まずは魔法カード『機械複製術』! 自分フィールドの攻撃力500以下のモンスター一体を選択。デッキから、同名モンスターを二体まで特殊召喚する。来い『A・ジェネクス・ソリッド』!」

 

『A・ジェネクス・ソリッド』

 レベル2

 攻撃力500

『A・ジェネクス・ソリッド』

 レベル2

 攻撃力500

 

「更に魔法カード『エレメント・チェンジ』! この効果により、このターンのエンドフェイズまで、フィールド上のモンスター全ての属性を水属性として扱う」

 星華の宣言した通り、フィールドの表側表示のモンスター全て、水属性に変化した。

「属性を変更してどうする気だ?」

「『A・ジェネクス・ソリッド』は、自分フィールドの水属性のジェネクス一体を墓地へ送ることで、カードを二枚ドローする効果がある。そして、ソリッドの本来の属性は闇属性。だが……」

「……! 『エレメント・チェンジ』の効果で、全てのソリッドの属性は水属性に変化している。まさか……」

「そうだ……私は、『A・ジェネクス・ソリッド』三体の効果を発動する。ソリッド自身を墓地へ送り、カードを二枚ドローする。それが三体分。六枚のカードをドローだ」

 三体の青い機械人が、恵みの水へと姿を変える。それが、星華のデッキへ流れ込み、それぞれ二枚、計六枚のカードに変わった。

 

星華

手札:1→7

 

「一気に手札補充……!」

「……『ジェネクス・パワー・プランナー』を通常召喚」

 

『ジェネクス・パワー・プランナー』

 レベル1

 守備力200

 

「前のターンに手札に加えたカードか……」

「そうだ。こいつの召喚に成功した時、デッキからレベル3の『ジェネクス』を手札に加えられる。私はデッキから、レベル3の『レアル・ジェネクス・マグナ』を手札に加える」

 

星華

手札:6→7

 

「『血の代償』の効果発動! ライフを500支払い、『レアル・ジェネクス・マグナ』を召喚する」

 

星華

LP:1600→1100

 

『レアル・ジェネクス・マグナ』

 レベル3

 攻撃力1000

 

「こいつが召喚に成功した時、デッキからレベル2のレアル・ジェネクスを手札に加える。『レアル・ジェネクス・コーディネイター』を手札に」

 

星華

手札:6→7

 

「……そんなにライフポイントを削って大丈夫か?」

「心配はいらん。貴様もすぐ同じだけのライフになる」

「なんだと……?」

「こいつは、レベルの合計が8以上になるよう、手札から機械族モンスターを捨てることで、手札から特殊召喚できる。レベル8の『マシンナーズ・メガフォーム』を捨て、『マシンナーズ・フォートレス』を特殊召喚!」

 星華のエースモンスターである、青色の要塞が星華のフィールドに君臨した。

 

『マシンナーズ・フォートレス』

 レベル7

 攻撃力2500

 

「最上級モンスターが来たか……」

「更に、伏せカードオープン。魔法カード『融合』!」

「なに? 融合召喚か……!」

「手札の機械族『A・ジェネクス・ドゥルダーク』と、フィールドの炎族『レアル・ジェネクス・マグナ』を融合……」

 二体の機械が空中で交わる。と同時に、そこから巨大な悪魔の顔が浮かび上がり、それを中心に、燃え盛る炎の翼と顔が伸びる……

「融合召喚! 『重爆撃禽 ボム・フェネクス』!」

 

『重爆撃禽 ボム・フェネクス』融合

 レベル8

 攻撃力2800

 

「一気に最上級モンスターが二体……」

「ボム・フェネクスの効果! 一ターンに一度、攻撃を放棄する代わりに、フィールド上のカード一枚に付き、相手ライフに300ポイントのダメージを与える」

「なに……!」

「今、私と貴様の場のカードは……」

 

『重爆撃禽 ボム・フェネクス』

『マシンナーズ・フォートレス』

『ジェネクス・パワー・プランナー』

『血の代償』

 

『エーリアン・ウォリアー』

『エーリアン・ドッグ』

『古代遺跡コードA』

 セット

 

「八枚。よって、2400ポイントのダメージだ」

 宣言したと同時に、八枚のカードが存在するフィールドが焼け野原と化す。そこにある八枚のカードからエネルギーが発生し、ボム・フェネクスの身に吸収されていく……

不死魔鳥大空襲(フェネクス・ビッグ・エアレイド)!」

 そのエネルギーによって巨大化した炎の翼をはためかせ、発射された八つの火炎弾。それが、デプレの身に降り注いだ。

「ぐううぅぅぅ……!!」

 

デプレ・スコット

LP:4000→1600

 

「続けてバトルだ。『マシンナーズ・フォートレス』で、『エーリアン・ウォリアー』に攻撃する! マシン・フルシュート!」

 青い要塞の全身から、機銃が掃射された。それが『エーリアン・ウォリアー』を蜂の巣にし、破壊した。

「くぅ……!」

 

デプレ・スコット

LP:1600→900

 

「……この瞬間、『エーリアン・ウォリアー』、そして永続魔法『古代遺跡コードA』、それぞれの効果が発動する!」

「戦闘破壊による効果か……」

「『エーリアン・ウォリアー』が戦闘破壊された時、このカードを破壊したモンスターにAカウンターを二つ置く。更に、フィールドに存在するエーリアンが破壊される度、『古代遺跡コードA』にAカウンターを一つ置く」

 

『マシンナーズ・フォートレス』

 Aカウンター:0→2

 

『古代遺跡コードA』

 Aカウンター:0→1

 

「更に罠カード発動『エーリアン・ブレイン』!」

「『エーリアン・ブレイン』……?」

「私の場の爬虫類族モンスターが相手モンスターによって破壊され、墓地へ送られた時に発動。攻撃を行ったモンスターのコントロールを得て、そのモンスターを爬虫類族として扱う」

「なっ! 『マシンナーズ・フォートレス』のコントロールを……!」

 デプレの場に、円筒状の機械のカプセルが現れた。そのカプセルには、白い肌に赤い目をした、不気味なモンスターが入っていた。

 そのモンスターが、目の前のガラスを突き破り、星華の場の『マシンナーズ・フォートレス』に飛びつき、寄生する。すると、青色の要塞はデプレの場へ移動した。

「『マシンナーズ・フォートレス』! く……」

 自身の最も信頼するエースモンスターが奪われ、それでも、決闘に目を戻す。

「……永続魔法『機甲部隊の最前線(マシンナーズ・フロントライン)』を発動。カードを一枚伏せ、ターンエンドだ」

 

 

星華

LP:1100

手札:2枚

場 :モンスター

   『重爆撃禽 ボム・フェネクス』攻撃力2800

   『ジェネクス・パワー・プランナー』守備力200

   魔法・罠

    永続魔法『機甲部隊の最前線』

    永続罠『血の代償』

    セット

 

デプレ・スコット

LP:900

手札:2枚

場 :モンスター

   『マシンナーズ・フォートレス』攻撃力2500

   『エーリアン・ドッグ』攻撃力1500

   魔法・罠

    永続魔法『古代遺跡コードA』Aカウンター:1

 

 

「……」

 ターンが回るも、何のアクションも行わない。デプレは感慨深げに、星華を見つめた。

「わずか二ターンで、この私のライフをここまで追い詰めるとは……本当に腕を上げた。あの泣き虫なボスの娘が、大したものだ」

「何年前の話をしている……だが……」

 星華もまた、フィールドを見ながら、感慨深げに声を上げた。

「確かに、私は弱かった。才能の無さを悲観し、強くなることを早々に諦めて、別の取り柄に逃げていた。それが評価されたことで、価値のない称賛と快感に酔い、それで良いのだと自分自身を騙していた。だがな……」

 過去を振り返り、過去の自らを否定しながらも、今だから得た、今の自分を見つめて……

「そんな私にも、変わりたいと思える切っ掛けに出会えた。そのために、本気で強くなりたいと思えるほどのな。そのために決闘と向き合い、研鑽したことで、認められ、カードにも選ばれた」

 その切っ掛けとなってくれた、世界の誰よりも大切な人を思いながら、アカデミアの女帝は、ここに宣言する。

 

「今の私は、父親の陰に隠れて泣くだけのチビ助でも、容姿だけを称えられ、与えられた一時の照合に縋るだけの愚か者でもない……正真正銘、アカデミアの女帝、小日向星華だ! 女帝に勝とうと言うならば、貴様も覚悟を持って掛かってくるがいい!」

 

「……良かろう」

 無言で聞いていたデプレも、今の(・・)星華を見つめながら、宣言した。

「私も、カードプロフェッサー・ギルドランキング第二位……デプレ・スコットとして、相手をさせてもらおう。アカデミアの女帝、小日向星華にな……」

 

「私のターン」

 

デプレ・スコット

手札:2→3

 

「魔法カード『強欲な壺』。カードを二枚ドローする」

 

デプレ・スコット

手札:2→4

 

「……まず、『古代遺跡コードA』の効果。一ターンに一度、フィールド上のAカウンターを二つ取り除くことで、自分の墓地に眠るエーリアン一体を特殊召喚する。私は『マシンナーズ・フォートレス』に乗ったAカウンター二つを取り除き、墓地に眠る『エーリアン・ウォリアー』を特殊召喚する」

 

『マシンナーズ・フォートレス』

 Aカウンター:2→0

 

『エーリアン・ウォリアー』

 レベル4

 攻撃力1800

 

「手札のこのカードは召喚する時、自分フィールドに存在する、元々の持ち主が相手のモンスター一体を生け贄に捧げることで通常召喚を行える……キサマから奪った『マシンナーズ・フォートレス』を生け贄に捧げ、『宇宙獣(そらけもの)ガンギル』を召喚する」

 地面を押し上げ、白の巨体が現れた。

 今までのエーリアンと同じ、冷たく艶めく白い肌。

 無数に伸びる爪が足の役割を持ち、上半身には、太い触手が不気味に蠢く。

 妖しい光を放つ二つの目。むき出しの白い歯。異星人というより、確かに宇宙の獣だった。

 

宇宙獣(そらけもの)ガンギル』

 レベル7

 攻撃力2600

 

「それが貴様のデッキの切り札か……」

「ガンギルの効果。一ターンに一度、相手フィールドのモンスター一体にAカウンターを一つ乗せる。貴様の場の『重爆撃禽 ボム・フェネクス』にAカウンターを一つ乗せる」

 

『重爆撃禽 ボム・フェネクス』

 Aカウンター:0→1

 

「手札のこのカードは、フィールド上のAカウンターを二つ取り除くことで特殊召喚ができる。ボム・フェネクス、『古代遺跡コードA』に乗るAカウンターを取り除き、『エーリアン・リベンジャー』を特殊召喚!」

 

『重爆撃禽 ボム・フェネクス』

 Aカウンター:1→0

 

『古代遺跡コードA』

 Aカウンター:1→0

 

 飛び出した紫色の物体を喰らい、フィールドに現れた。

 今までのエーリアンとは対照的な漆黒の肌。

 か細くも力強い赤色の腕を六本備え、極太い二本の脚で大地に立つ。

 復讐者の名を持つ、エーリアンの孤高の強者の名は……

 

『エーリアン・リベンジャー』

 レベル6

 攻撃力2200

 

「『エーリアン・リベンジャー』は、フィールド上に一体しか存在できない……『エーリアン・リベンジャー』の効果。一ターンに一度、相手フィールドに表側表示で存在する全てのモンスターにAカウンターを一つ乗せる」

 リベンジャーが咆哮を上げた時、その身から、今までと同じ紫色の物体が飛び出す。

 それが一つずつ、星華の場のモンスターにまとわりついた。

 

『重爆撃禽 ボム・フェネクス』

 Aカウンター:0→1

『ジェネクス・パワー・プランナー』

 Aカウンター:0→1

 

「ちぃ……」

「バトルだ……『エーリアン・リベンジャー』で、『重爆撃禽 ボム・フェネクス』を攻撃!」

 漆黒の復讐者が、燃え盛る不死鳥へ迫っていく。その瞬間、不死鳥にくっついた紫の物体が大きくなった。

「『エーリアン・リベンジャー』には、『エーリアン・ウォリアー』と同じく、エーリアンがAカウンターの乗ったモンスターと戦闘を行う際、ダメージ計算時のみ攻撃力・守備力を300ポイントダウンさせる効果を持つ。『宇宙獣ガンギル』にもな……そして、この効果は累積する」

「なに!? ということは……」

 デプレの場の、三体のモンスターが輝きを放つ。

 その輝きに答えるように、不死鳥を貪るAカウンターは巨大化した。

 

『重爆撃禽 ボム・フェネクス』

 攻撃力2800-300×3

 

「攻撃力1900……ならば、攻撃が届く前に速攻魔法『融合解除』を発動する!」

 リベンジャーの突進が届く以前に、ボム・フェネクスが二つの光に変わった。

 そこに、不死鳥の素材となった、二体の機械が降り立った。

 

『A・ジェネクス・ドゥルダーク』

 レベル4

 守備力200

『レアル・ジェネクス・マグナ』

 レベル4

 守備力200

 

「ほう……ならば、『エーリアン・リベンジャー』で、『レアル・ジェネクス・マグナ』を攻撃する!」

 直前に不発となった、復讐者の突進が、溶岩を操る機械にぶつかり、砕いた。

「続けて、『エーリアン・ドッグ』で『ジェネクス・パワー・プランナー』を、『エーリアン・ウォリアー』で『A・ジェネクス・ドゥルダーク』を攻撃!」

 同じように、犬の牙が小さな機械の魔法使いを噛み砕き、ウォリアーの爪が黒い機械人を切り裂いた。

「……『機甲部隊の最前線』の効果! 機械族モンスターが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、そいつよりも攻撃力の低い、同じ属性の機械族一体をデッキから特殊召喚する。私はデッキから、闇属性の『A・O・J コアデストロイ』を特殊召喚する」

 

『A・O・J コアデストロイ』

 レベル3

 守備力200

 

「最後に呼び出したのが、そんな小さな機械か……」

 それを見たデプレは、一度顔を伏せた。そして……

「くく……ギ……ギャ……」

 

「ギャギャハハハ!!」

 

 顔を上げたかと思えば、目元を醜く歪めつつ、そんな笑い声を上げた。

「無様だなぁ! しぶとさまで女王級のようだな! ならキサマのその意志を、このターンでへし折ってやる! 『宇宙獣ガンギル』、攻撃だ!!」

 その命に従った宇宙の巨大な獣は、その巨体をゆっくりと、星華のフィールドへ進めていく。

 やがて、星華の場の、最後の機械の前へと立った。

「やれガンギル!! そのちっぽけな機械を踏み潰してしまえ!!」

 ガンギルが、その巨体と持ち上げて、小さな機械に向かって、のしかかった。

「ギャギャギャハハハハハ!!」

 

「……無様は貴様だ」

 

「ぬぅ……!」

 星華の声に、高らかに笑っていたデプレが、視線をフィールドに戻す。

 そこには……

「な……なぜその機械は生きている……!」

 本来なら、宇宙獣の巨体によって、小さな機械は押し潰されているはずだった。

 それが、機械は潰れていない。どころか、宇宙獣が持ち上げた巨体の、機械に触れた部分が、グズグズに溶解していた。

「コアデストロイの効果だ……こいつが光属性モンスターと戦闘を行う場合、ダメージ計算を行わずそのモンスターは破壊される。『宇宙獣ガンギル』は光属性だ」

「バカな……!?」

 その宣言を受け、宇宙獣の巨体が跳ね返される。と同時に、コアデストロイの顔から発射されたレーザーが、宇宙獣の身を貫いた。

「そんな……バカな……」

「モンスター効果を注視しておくべきだったな」

「くぅ……カードを二枚伏せる。ターンエンド」

 

 

デプレ・スコット

LP:900

手札:0枚

場 :モンスター

   『エーリアン・リベンジャー』攻撃力2200

   『エーリアン・ウォリアー』攻撃力1800

   『エーリアン・ドッグ』攻撃力1500

   魔法・罠

    永続魔法『古代遺跡コードA』Aカウンター:0

    セット

    セット

 

星華

LP:1100

手札:2枚

場 :モンスター

   『A・O・J コアデストロイ』守備力200

   魔法・罠

    永続魔法『機甲部隊の最前線』

    永続罠『血の代償』

 

 

「私のターン!」

 

星華

手札:2→3

 

 フッ……

 

「む……!」

 カードをドローした瞬間、一枚のカードをデプレ目掛けて投げ渡す。

 デプレがそれをキャッチしたのを見て、言葉を放った。

「貴様の場の『エーリアン・リベンジャー』と『エーリアン・ウォリアー』を生け贄に、『溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム』を貴様の場に特殊召喚する!」

「なにぃ……!?」

 デプレの場に並んだ、白と黒、二体のエーリアンが巨大なマグマの拳に掴まった。

 直後、デプレの身が、鉄の檻に囚われた。

 巨大な拳と鉄の檻、それらを持ち上げながら、巨大なマグマの巨神は立ち上がった。

 

『溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム』

 レベル8

 攻撃力3000

 

「有名なカードだ。効果は知っているだろう。次の貴様のスタンバイフェイズ、貴様自身は1000ポイントのダメージを受ける。貴様のライフは残り900。次のターンが来れば終わりだな」

「バカな……」

「ラヴァ・ゴーレムを特殊召喚したターン、私は通常召喚を行えない……コアデストロイを攻撃表示に変更」

 

『A・O・J コアデストロイ』

 攻撃力1200

 

「バトルだ。『エーリアン・ドッグ』は光属性。『A・O・J コアデストロイ』で、『エーリアン・ドッグ』を攻撃!」

 先ほどと同じく、コアデストロイがレーザーを発射し、それが、攻撃力では勝っているはずの『エーリアン・ドッグ』を貫いた。

「カードを一枚伏せる。これでターンを終了する」

 

 

星華

LP:1100

手札:1枚

場 :モンスター

   『A・O・J コアデストロイ』攻撃力1200

   魔法・罠

    永続魔法『機甲部隊の最前線』

    永続罠『血の代償』

    セット

 

デプレ・スコット

LP:900

手札:0枚

場 :モンスター

   『溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム』攻撃力3000

   魔法・罠

    永続魔法『古代遺跡コードA』Aカウンター:0

    セット

    セット

 

 

「くぅ……!」

 互いの場にモンスターが一体。こちらのモンスターは攻撃力3000の大型モンスター。

 だが引き換えに、ターンを迎えると同時に致命的なダメージを受けてしまう。

(ここまで……ここまで強くなるものか……これが、あの星華だと……?)

 自分の知る少女でなくなっていることは分かった。決して、侮っていた気も無かった。

 なのに気が付けば、あと一ターンのところまで追い込まれて。

(こいつの力……もはや、カードプロフェッサーが敵う相手ではない……)

 勝てない……

 成長し、力を付けた少女を前に、そんな言葉がよぎった……

 

(……な、なんだ?)

 そんな時、デッキから、力を感じた。

(これは……)

 毒々しい空気。どす黒い闇。暗黒の、絶望……

 

「……私のターン」

 

デプレ・スコット

手札:0→1

 

「……伏せカード発動。速攻魔法『月の書』」

「『月の書』?」

 星華もよく知るカードが発動された時、デプレの場にいた溶岩魔神は姿を消した。

「モンスター一体を裏守備表示に速攻魔法……ダメージを受けるスタンバイフェイズより以前、ドローフェイズに発動してダメージを免れたか」

「……更に、魔法カード『悪夢の鉄檻』」

 続けてカードが発動され、デプレの身が、ドーム状の黒い鉄檻に隠された。

「これで二ターンの間、全てのモンスターは攻撃できなくなる」

「ダメージと攻撃を同時に防ぐとは……貴様のしぶとさも中々のものだな」

「……ターンエンド」

 

 

デプレ・スコット

LP:900

手札:0枚

場 :モンスター

    セット(守備力2500)

   魔法・罠

    通常魔法『悪夢の鉄檻』ターン:0

    永続魔法『古代遺跡コードA』Aカウンター:0

    セット

 

星華

LP:1100

手札:1枚

場 :モンスター

   『A・O・J コアデストロイ』攻撃力1200

   魔法・罠

    永続魔法『機甲部隊の最前線』

    永続罠『血の代償』

    セット

 

 

「私のターン」

 

星華

手札:1→2

 

(『悪夢の鉄檻』の効果で攻撃はできない……どの道、ラヴァ・ゴーレムの守備力は2500。戦闘で破壊することは難しい。裏守備である以上、『所有者の刻印』でも取り戻すことは叶わん。取り戻すだけのライフは残っていないが……いずれにせよ、この二ターンで態勢を立て直すつもりだろうが、ならばこちらも利用させてもらうまで)

 

「『A・O・J コアデストロイ』を守備表示に変更」

 

『A・O・J コアデストロイ』

 守備力200

 

「続けて、『ジェネクス・ウンディーネ』を守備表示で召喚」

 

『ジェネクス・ウンディーネ』

 レベル3

 守備力600

 

「こいつの召喚に成功した時、デッキから水属性モンスター『サブマリンロイド』を墓地へ送ることで、デッキから『ジェネクス・コントローラー』を手札に加える」

 

星華

手札:1→2

 

「これでターンエンドだ」

 

 

星華

LP:1100

手札:2枚

場 :モンスター

   『ジェネクス・ウンディーネ』守備力600

   『A・O・J コアデストロイ』守備力200

   魔法・罠

    永続魔法『機甲部隊の最前線』

    永続罠『血の代償』

    セット

 

デプレ・スコット

LP:900

手札:0枚

場 :モンスター

    セット(守備力2500)

   魔法・罠

    通常魔法『悪夢の鉄檻』ターン:0→1

    永続魔法『古代遺跡コードA』Aカウンター:0

    セット

 

 

「私のターン、ドロー」

 

デプレ・スコット

手札:0→1

 

「……速攻魔法『「A」細胞組み換え装置』を、貴様の場の『A・O・J コアデストロイ』を対象に発動。デッキからエーリアンモンスター……『エーリアン・マザー』を墓地へ送り、そのモンスターのレベルと同じ数だけ、コアデストロイにAカウンターを置く」

「Aカウンターを?」

「『エーリアン・マザー』のレベルは6。六つのAカウンターを置いてもらう」

 

『A・O・J コアデストロイ』

 Aカウンター:0→6

 

「……『古代遺跡コードA』の効果。フィールド上のAカウンターを二つ取り除くことで、墓地に眠るエーリアンを特殊召喚する。コアデストロイのAカウンターを糧に、甦れ『エーリアン・リベンジャー』」

 

『A・O・J コアデストロイ』

 Aカウンター:6→4

 

『エーリアン・リベンジャー』

 レベル6

 攻撃力2200

 

「リベンジャーの効果。相手フィールドの全ての表側表示モンスターにAカウンターを一つずつ置く」

 

『A・O・J コアデストロイ』

 Aカウンター:4→5

『ジェネクス・ウンディーネ』

 Aカウンター:0→1

 

「く……上級モンスターを蘇らせたうえ、これだけのAカウンターを用意するとはな……」

「……ターンエンド」

 

 

デプレ・スコット

LP:900

手札:0枚

場 :モンスター

   『エーリアン・リベンジャー』攻撃力2200

    セット(守備力2500)

   魔法・罠

    通常魔法『悪夢の鉄檻』ターン:1

    永続魔法『古代遺跡コードA』Aカウンター:0

    セット

 

星華

LP:1100

手札:2枚

場 :モンスター

   『ジェネクス・ウンディーネ』守備力600

   『A・O・J コアデストロイ』守備力200

   魔法・罠

    永続魔法『機甲部隊の最前線』

    永続罠『血の代償』

    セット

 

 

「私のターン」

 

星華

手札:2→3

 

「……『マシンナーズ・ギアフレーム』を召喚、守備表示だ」

 

『マシンナーズ・ギアフレーム』ユニオン

 レベル4

 守備力0

 

「こいつの効果により、デッキから『マシンナーズ・カノン』を手札に加える。ターンエンド」

 星華がエンド宣言をしたと同時に、デプレを守っていた鉄檻は姿を消した。

 

 

星華

LP:1100

手札:3枚

場 :モンスター

   『マシンナーズ・ギアフレーム』守備力0

   『ジェネクス・ウンディーネ』守備力600

   『A・O・J コアデストロイ』守備力200

   魔法・罠

    永続魔法『機甲部隊の最前線』

    永続罠『血の代償』

    セット

 

デプレ・スコット

LP:900

手札:0枚

場 :モンスター

   『エーリアン・リベンジャー』攻撃力2200

    セット(守備力2500)

   魔法・罠

    永続魔法『古代遺跡コードA』Aカウンター:0

    セット

 

 

「これで貴様を守るものはない……さあ、どうする?」

「……ドロー」

 

デプレ・スコット

手札:0→1

 

「……来た」

「……なんだ? 何を引いた?」

 デプレがカードを引いた瞬間、明らかに、雰囲気が変わった。

 キースの時と同じ……デプレが左耳に下げるイヤリングから、目には見えないはずの、黒い闇が、湧いて出ているような……

「……『エーリアン・リベンジャー』の効果。貴様のモンスター全てにAカウンターを一つずつ乗せる」

 

『A・O・J コアデストロイ』

 Aカウンター:5→6

『ジェネクス・ウンディーネ』

 Aカウンター:1→2

『マシンナーズ・ギアフレーム』

 Aカウンター:0→1

 

「『古代遺跡コードA』の効果。貴様のコアデストロイから二つのAカウンターを取り除き、墓地に眠る『エーリアン・マザー』を特殊召喚……」

 二つのAカウンターを喰らい、現れた物。

 赤く染まった鋭利な爪の伸びる、六本の腕。腰には赤い翼を畳み、肩には、白い棘が髪のように生えている。

 そんな、赤色が目立つ、ひときわ巨大なエーリアンの母が現れた。

 

『A・O・J コアデストロイ』

 Aカウンター:6→4

 

『エーリアン・マザー』

 レベル6

 攻撃力2300

 

「……伏せカードオープン。速攻魔法『非常食』。『古代遺跡コードA』を墓地へ送り、ライフを1000回復する」

「ライフを回復……?」

 デプレのフィールドに広がっていた、光る石板の古代遺跡が姿を消す。

 代わりに、弱っていたデプレの身に、エネルギーが満たされていった。

 

デプレ・スコット

LP:900→1900

 

(あの永続魔法は奴のデッキのキーカードではないのか? それを、窮地にやむを得ず発動するというならともかく、こんな中途半端なタイミングで……)

 そこまで考えて、最後に目を向けたのは、デプレの手札にある最後の一枚。

(まさか、これが奴の、真の切り札を呼び込む条件なのか……?)

 

「さあ、絶望しろ……『エーリアン・リベンジャー』と、裏守備表示のラヴァ・ゴーレムを生け贄に捧げる……」

 二体のモンスターが光と変わる。その瞬間、それが一瞬、暗い宇宙に変わった。かと思えば、その宇宙から、一筋の光がフィールドに届く。

 だがその光は、決して希望の光などではない。

 鋭く、冷たく、まばゆいのに妖しく禍つ。そんな、絶望の一筋の先に現れた、巨大な『惑星』の名は……

 

「召喚……『The despair URANUS(ザ・ディスペア・ウラヌス)』!」

 

 巨大な惑星のような、丸い形が宙に浮いていた。

 だが、そんな巨大な漆黒の球には、黄金の顔が掘り出されていた。

 何物をも見通しているような、逆に何も見ぬようにとしているような……

 どちらとも取れる、感情の読み取れない、冷たい眼。冷たい表情。冷たい存在……

 

The despair URANUS(ザ・ディスペア・ウラヌス)

 レベル8

 攻撃力2900

 

「ウラヌス……天王星……やはり来たか。惑星(プラネット)の名を持つカード」

「ギ……ギギャ……ギャギャハハハハ!!」

 そしてまた、デプレが例の笑い声を上げた。だが、それは直前のデプレとは違う。

 キースの時と同じ。普通だった目は真っ黒の闇に変わり、デプレではない、何者かに支配されている。そんな状態……

「貴様ら……やはり、貴様だな。デプレだけではない。デプレ以前にも戦った、何人ものカードプロフェッサーども。そいつらを、このジェネックスに送り込んだ張本人は」

「……」

 デプレは、何も言わない。何も答えない代わりに、決闘を進めた。

「『The despair URANUS』の効果……自分フィールドに魔法・罠が存在しない状態で生け贄召喚に成功した時、キサマは永続魔法か、永続罠のどちらかを選択する……私は、キサマが選択した種類のカードを、デッキからフィールドにセットすることができる……」

「なんだと?」

 そんな説明を受け、考える……

(永続罠は……確か、奴のデッキには、Aカウンターの乗った私のモンスターを奪う『洗脳光線』のカードが『ギャクタン』の効果で戻っていたはず。他を選ぶ可能性もあるが、どの道選ばれたら厄介には違いない。ならば、すぐに発動される危険はあるが……)

「私は……永続魔法を選ぶ」

 その宣言に従い、デプレはデッキから、一枚のカードを取り出した。

「私はデッキから……『古代遺跡コードA』をセット……そして発動」

「な……そのカード、二枚入っていたのか……」

 再びフィールドが、古代遺跡に姿を変えた。

「『古代遺跡コードA』の効果……貴様のコアデストロイからAカウンターを二つ取り除き、墓地から『エーリアン・リベンジャー』を再び特殊召喚……!」

 

『A・O・J コアデストロイ』

 Aカウンター:4→2

 

『エーリアン・リベンジャー』

 レベル6

 攻撃力2200

 

「リベンジャーの効果で、キサマのモンスター全てにAカウンターを乗せる……!」

 

『A・O・J コアデストロイ』

 Aカウンター:2→3

『ジェネクス・ウンディーネ』

 Aカウンター:2→3

『マシンナーズ・ギアフレーム』

 Aカウンター:1→2

 

「くそ……!」

「URANUSの効果はこれで終わりではない……このカードの攻撃力は、私の場の表側表示の魔法・罠カード一枚につき、300ポイントアップする」

 

『The despair URANUS』

 攻撃力2900+300

 

「攻撃力3200……」

「そして、URANUSがフィールドにある限り、私の魔法・罠ゾーンの表側表示のカードは、効果では破壊されなくなる」

「く……っ」

 

『The despair URANUS』

 攻撃力2900+300

『エーリアン・マザー』

 攻撃力2300

『エーリアン・リベンジャー』

 攻撃力2200

 

「さあ……バトルだ! 『エーリアン・マザー』で、『マシンナーズ・ギアフレーム』を攻撃!」

 赤色のエーリアンが走り、四つの腕を振るった。そこから伸びる鋭利な爪が、オレンジ色の機械人を細切れにした。

「続けて、『エーリアン・リベンジャー』で、『A・O・J コアデストロイ』を攻撃!」

 リベンジャーも同じく、その六つの腕に伸びる爪で、白と金から成る機械を切り裂いた。

「ぐぅ……『機甲部隊の最前線』の効果で、闇属性の『リサイクル・ジェネクス』を特殊召喚!」

 

『リサイクル・ジェネクス』チューナー

 レベル1

 守備力400

 

「なんだ、その貧弱な機械は……『The despair URANUS』、『ジェネクス・ウンディーネ』を攻撃……!」

 その瞬間、URANUSの顔の、口の部分が、大きく開かれた。その口の中が煌々と光を放ち、それが凝縮されていき……

 

Weil(ヴェイル) of(オブ) despair(ディスペア)!!」

 

 次の瞬間には、星華の場の最後の機械は焼き尽くされた。

「ギャギャハハハハ!! これでキサマの場は全滅もだな!!」

 モンスターを並べ、相手の場を全滅させた。

「だがまだだ! これで終わりではない……『エーリアン・マザー』の効果! こいつが戦闘でAカウンターの乗ったモンスターを破壊し墓地へ送った場合、バトルフェイズ終了時にそのモンスターは私の場に特殊召喚される!」

「なに……『マシンナーズ・ギアフレーム』を!?」

 言うが早いか、オレンジ色の機械人は、デプレのフィールドに並んだ。

 

『マシンナーズ・ギアフレーム』ユニオン

 レベル4

 攻撃力1800

 

「もっとも、マザーが消えれば、この効果で奪ったモンスターは全て破壊されるがな……」

 諦めから、勝利を確信して、デプレは操られながらも、満悦の笑みを浮かべていた。

 

「ターンエンド……これが絶望だ。小日向星華……」

 

 

デプレ・スコット

LP:1900

手札:0枚

場 :モンスター

   『The despair URANUS』攻撃力2900+300

   『エーリアン・マザー』攻撃力2300

   『エーリアン・リベンジャー』攻撃力2200

   『マシンナーズ・ギアフレーム』攻撃力1800

   魔法・罠

    永続魔法『古代遺跡コードA』Aカウンター:0

 

星華

LP:1100

手札:3枚

場 :モンスター

   『リサイクル・ジェネクス』守備力400

   魔法・罠

    永続魔法『機甲部隊の最前線』

    永続罠『血の代償』

    セット

 

 

「絶望か……大層な名前を持つ割に、大したことはない」

「なに……?」

「ドロー」

 

星華

手札:3→4 

 

「この程度で絶望しろだと? 笑わせる……ならば、私が貴様に、真の絶望を与えてやろう……手札からレベル8の『マシンナーズ・カノン』を捨てることで、墓地に眠る『マシンナーズ・フォートレス』を特殊召喚する!」

 地面を突き破り、青い機体を持つキャタピラが飛び出した。

 星華のエース。機械戦士達の要塞。全てを踏みしだく青鉄の肉体。

 

『マシンナーズ・フォートレス』

 レベル7

 攻撃力2500

 

「そんなモンスターを一体呼び出したところで、私のエーリアンどもには勝てない……」

「貴様は分からんだろうな……だが、貴様を通して、私を見ている奴は、この状況は既に分かっているだろう?」

 

 

「……」

 星華の声に対して、デプレの向こう側にいる存在は、ニヤリ、とほくそ笑んだ。

 

 

「荒ぶれ! 我が魂! もっと熱く!! もっと強く!!」

 フィールドに条件は揃った。その条件のもと、燃え盛る魂をたぎらせて、呼び出す。

「レベル7の『マシンナーズ・フォートレス』に、レベル1の『リサイクル・ジェネクス』をチューニング!」

 星華のデッキに眠る、正真正銘の切り札を……

 

「王者の鼓動、今ここに列を成す。天地鳴動の力を見るがいい」

「シンクロ召喚! 我が魂『琰魔竜 レッド・デーモン』!」

 

 フィールドに燃え盛る炎。その巨大な炎の中心を突き破り、現れる、漆黒の翼と巨体。

 赤い悪魔の名を冠せし、獄炎を司る魔の巨竜……

 

『琰魔竜 レッド・デーモン』シンクロ

 レベル8

 攻撃力3000

 

「シン……クロ……?」

「こいつの効果は分かっているな……効果を使えば、この決闘の決着を簡単に付けることができる。だが、それでは足りん。これから思い知らせてやる。貴様に……貴様らに、私は倒せないと。貴様らごときでは、私の愛する梓にたどり着くことなど永遠に無いと!」

 叫び、そして、ディスクに手を伸ばした。

「墓地に眠る『マシンナーズ・メガフォーム』の効果! 『マシンナーズ・フォートレス』が墓地へ送られた場合、その『マシンナーズ・フォートレス』を除外することで、墓地より蘇る!」

 再び青色の機体が、地面を突き破った。

 だがそのすぐ後で、キャタピラの下から脚が生え、腕は伸びて、大砲が伸びる。

 青い要塞が、その真の姿で大地を踏みしだいた。

 

『マシンナーズ・メガフォーム』

 レベル8

 攻撃力2600

 

「続けて、『ジェネクス・コントローラー』召喚!」

 

『ジェネクス・コントローラー』チューナー

 レベル3

 攻撃力1400

 

「そして、魔法カード発動『所有者の刻印』! 返してもらうぞ。私の『マシンナーズ・ギアフレーム』をな」

 その言葉の通り、デプレの場にあったオレンジ色の機械人は、正気を取り戻したように星華のフィールドへと戻っていった。

「続けていく……レベル4の『マシンナーズ・ギアフレーム』に、レベル3の『ジェネクス・コントローラー』をチューニング!」

 レッド・デーモンの時と同じく。チューナーがレベルの数の星に変わり、共に飛び上がったモンスターの周囲を回った。

 

「正義と絆、二つの闇が一つとなりて、誕生せしは鋼機の白銀……」

「シンクロ召喚! 起動せよ『A・ジェネクス・トライフォース』!」

 

 新たに現れた、白銀の身体を持つ『A・ジェネクス』。

 八頭身のその身はよりマッシブな四肢を備え、顔を隠すバイザーの赤色の輝きは、フィールドの全てを見通すよう。

 右腕に備わった、三つの砲身を持つ巨大な大砲を構えて、白銀の機械戦士はフィールドに降り立った。

 

『A・ジェネクス・トライフォース』シンクロ

 レベル7

 攻撃力2500

 

「こいつはチューナー以外にシンクロ素材としたモンスターの属性によって、新たに効果を得る。『マシンナーズ・ギアフレーム』は地属性……」

 トライフォースの右腕にある、茶色の砲身が輝きを放った。

 

「そして、最後にこいつだ……墓地に眠る『マシンナーズ・カノン』、『ジェネクス・パワー・プランナー』、『A・O・J コアデストロイ』の三体を除外……」

「なに? その効果は……まさか!」

「こいつは最後に呼び出さなければ、一切の特殊召喚ができなくなるからな……現れよ! 火星より来たりし炎獄の焔……『The blazing MARS(ザ・ブレイジング・マーズ)』!」

 星華のフィールドにも、一瞬の宇宙が広がった。

 直後、大地を巨大な炎が包み込んだ。

 そんな、炎が燃え上がる大地を突き破り、巨大な炎の悪魔は、フィールドに立った。

 

The blazing MARS(ザ・ブレイジング・マーズ)

 レベル8

 攻撃力2600

 

「バカな……それは、バンデット・キースのカード……!」

「あの決闘の後、デッキから落ちていたのでな。どうせ問い詰めてもなにも覚えていないのだ。もらっておいた」

 悪びれる様子もなく、平然と言い、そして、宣言する。

「貴様のURANUSも貰おうか……?」

 

『琰魔竜 レッド・デーモン』

 攻撃力3000

『A・ジェネクス・トライフォース』

 攻撃力2500

『マシンナーズ・メガフォーム』

 攻撃力2600

『The blazing MARS』

 攻撃力2600

 

「く……だが手札はゼロ、いくら数を揃えたところで、キサマのモンスターでは、私のURANUSを倒すことは……はっ!」

 そこまで言って、再びフィールドを見て、気が付いた。

「その伏せカード……」

「気付いたところで、もはや貴様に手は残されていまい……バトル!」

 宣言し、星華の場の四体のモンスターが、身構えた。

「『マシンナーズ・メガフォーム』で、『エーリアン・マザー』を攻撃!」

 メガフォームが体勢を変え、肩の大砲を赤色のエーリアンに向ける。そこにたまったエネルギーが発射された時、エーリアンの母は一瞬で蒸発した。

「ぐぅ……!」

 

デプレ・スコット

LP:1900→1600

 

「『The blazing MARS』で、『エーリアン・リベンジャー』を攻撃! Syrtis Major(シリティス・メジャー)!」

 MARSもまた、下半身の巨大な口に、炎のエネルギーを貯めた。

 それを、黒い異星人へ発射する。元の肌以上に、復讐者は黒焦げになった。

「うぅぅぁ……!」

 

デプレ・スコット

LP:1600→1200

 

「『琰魔竜 レッド・デーモン』で、『The despair URANUS』を攻撃!」

 炎を纏う悪魔の竜が、その拳を、炎と共に握った。

極獄の絶対独断(アブソリュート・ヘル・ドグマ)!!」

 天王星に向かって飛び出し、それを振るった瞬間……

「罠発動『プライドの咆哮』! 戦闘ダメージ計算時、自分のモンスターの攻撃力が相手より低い場合、その攻撃力の差分のライフを支払い発動! 二体の攻撃力の差は200、私は200のライフを支払う……」

 

星華

LP:1100→900

 

「そして、このダメージ計算時、レッド・デーモンの攻撃力は、URANUSの攻撃力の差の数値に、300ポイントを加えた数値となる」

「ということは、レッド・デーモンの攻撃力は……」

 

『琰魔竜 レッド・デーモン』

 攻撃力3000+200+300

 

 本来なら、耐えられたはずの炎の拳。

 だが、その威力は天王星が耐えるには足りぬ威力を持ち、巨大な球の中心の、顔の部分を粉々に砕き、その身を貫き、やがて、球の全てを粉砕した。

「……っ!」

 

デプレ・スコット

LP:1200→900

 

 ライフが回復する前の数値に戻り、同時に、左耳に下げたイヤリングが粉々に砕けた……

 その直後、最後の一体は、デプレの目の前に立っていた。

「『A・ジェネクス・トライフォース』で、デプレにダイレクトアタック」

 右腕の、三つの砲身を持つ大砲を、デプレに向ける。

 その砲身の一つ、茶色の輝きが、デプレの顔を照らし出した。

「トライフォースの効果……地属性モンスターを素材としたこいつが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで、魔法も罠も発動できない。まあ、今はあまり意味が無いがな……」

 

デプレ・スコット

LP:900→0

 

 

「……」

「大丈夫か?」

「……ああ……」

「何か覚えているか?」

「……いや……」

 ライフがゼロとなり、尻餅を着いた後のデプレは、キースの時と同じく、うなだれているだけ。

 何かを聞き出すだけ無駄だろう。

 そう結論付けて、星華は背を向けた。

 

(やはり、手掛かりは、このカードだけか……)

 歩きながら、手に持つ一枚のカード、『The despair URANUS』。

 決闘の後、ディスクから落ちたのを拾ったそのカードに、既に、決闘中に感じた闇とか邪悪さは残っていない、ただのカードと化している。

 既に持っている『The blazing MARS』もそうだ。

 手元に握っていたところで、何のヒントにさえなってはくれまい。

 それでも、ほんの一パーセントでも可能性があるのなら……

 今は、奪い取った惑星のカードに、愛しい人の平穏を願っていたかった。

 

 

「……ただ……」

 地面に座り込み、なぜ自分がここにいるのか、それすら思い出せずにいる。

 そんな状況にも関わらず、デプレはなぜか、呟いていた。

 

「ただ……デートの約束が……」

 

 

 ……

 …………

 ………………

 

「私と決闘してもらうわ」

「いいよ~」

 

 ところ変わって、ここでもまた、決闘が始まろうとしていた。

「平家あずさ……あなたの実力を見せてもらう」

「はーい!」

 

『決闘!!』

 

 

 

 




お疲れ~。
夢を見る動物って、人間以外にいるのかしら……

そんな疑問を感じつつ、星華の決闘でした~。
そんでもって、次回のあずさの相手は……まあ、みんな既に分かっておろうな。
そんな感じで、次話まで待ってて。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。