遊戯王GX ~氷結の花~   作:大海

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さ~て、言ってあった通り、梓と亮の決闘。
長くなっちまったから、疲れたらごめんね。
そんじゃ、行ってらっしゃい。


    闘うべき人

視点:十代

「うあぁ~~~~~~……」

 レッド寮の玄関を出て、まずは背伸び。

「ふあぁ~~~~~~……」

 隣で、明日香もそうしてる。

「もう昼過ぎか……夜更かしし過ぎたな……」

「ごめんなさい……私ったら、夢中になっちゃって……」

「アハハ。気にすんなよ。なんだかんだ、俺も楽しかったしさ」

「本当?」

「おう! だからまたやろうぜ!」

「え、ええ////」

 明日香に返事したら、また顔を赤くした。

 

 そんな反応が可愛いって思ってた時、

「あれ?」

 こっちに向かって、決闘者が二人、歩いてくるのが見えた。

 あれは……

 

 

 

視点:外

 

「まずはお礼を言いたい……翔さんに勝利して下さったこと。おかげで、翔さんも彼女らのもとへ帰ることができた」

「感謝の必要などない。俺はただ、俺の決闘の邪魔になると判断した相手を下したにすぎん」

「……」

「それでも感謝の感情があるというのなら、俺との決闘の相手をすればそれでいい。このデッキの望みと、俺の勝利のためにな」

「……もちろん」

 

 亮と、梓。会話しながら、あの場から移動し辿り着いた先。

 そこで向かい合い、決闘ディスクを取り出した。

「ここなら邪魔は入らない。観戦者はそのうち通りがかるかもしれませんが、今更人目を気にすることも無いでしょう」

「うむ……」

「それと、一つだけ」

「……?」

 

「……あなたの勝利ではない。勝利するのは、私だ」

 

「そうでなくては面白くない」

 

 亮が、決闘ディスクを展開する。

 梓も、左手の刀を上へ放り投げた。それが落下してきた時には、決闘ディスクに形を変えていた。それを、左手に装着した。

 

「おーい! 梓ー!」

 そんな梓の耳に、聞き慣れた声が聞こえてくる。十代は、レッド寮から明日香と共に走ってきた。

「あら? 十代さん……もしかして、今起きたのですか?」

「まあな。寝坊しちまってさぁ」

「……」

 相変わらず笑っている十代と、その隣で、顔を赤くする明日香……

 

「ゆうべはおたのしみでしたね?」

 

「ぶぅー!!」

「おう! 明日香のおかげでめちゃめちゃ楽しかったぜ!」

 明日香はこのセリフと意味を知っているようで、分かりやすく噴き出していた。

 だが十代は、平然と語り出した。

「最初は俺も驚いたけど、あんまり積極的だったからさぁ。決闘と一緒でぐいぐい攻めてくるし、俺もつい熱が入っちまったよ」

「ちょ、十代……?」

「まあ、驚いたし、少し気持ち悪いって思っちまったけど、やっぱ、ちょっとずつ慣れてくるっていうのか? 段々癖になったっていうか、後は夢中になっちまってさあ。多分、相手が明日香だったのもあるだろうけどな」

「十代ってば……////」

「やっぱ、好きなこと共感しあうことが気持ちの良いことってのは、いつでも一緒だな。明日香の熱は中々激しかったし、おかげで中々寝かしてくれなかったけど、それだけの価値はあったぜ!」

 

「十代!!////」

 

 十代の発言に、明日香がついに大声を上げた。

 

梓(ニヤニヤァ……)

 

亮(温かい笑み……)

 

「違うから! 言っとくけど、全然そういうのじゃないから!! まだそこまでいってないから!!」

「まだそこまでって?」

「まだそこまでって……いや、その、だから! とにかく! はっきり昨夜なにしてたか言って! 十代の口から!!」

「俺? だから、昨夜は明日香を俺の部屋に泊めて、そのまま朝まで一緒だったってことだろう?」

「だ! か! ら!!」

 

梓(ニマニマァ……)

 

亮(中々やるな……)

 

「泊まって何をしたのか言えっつってんのよ!!」

「明日香がハマってる漫画の読書会だけど?」

「聞いた? 分かった!? 二人とも!!」

 

「まあ、そんなことだろうとは思っておりましたが……」

「十代に、そんな甲斐性があるとも思えんしな……」

 

「んなぁ……!!」

「かいしょーって、なんだ?」

 

 

「あ! 兄貴ー!!」

 

 

 明日香が白目を剥き、十代が疑問を感じているところへ、そんな声が聞こえた。

「おー剣山!」

「兄貴、明日香先輩も、ひょっとして今起きたザウルス?」

「あはは。まあな。それよりちょうどよかった。剣山も一緒に観ようぜ。あの二人の決闘」

「ドン……て、ヘルカイザー亮に、梓先輩!?」

 前に立っている二人の決闘者の姿に、剣山も、そのビッグカードから目を見開いた。

「これは見ものザウルス! ヘルカイザー亮は、今は新しいデッキになってるし……」

「ああ。梓も、カイザーの卒業前に決闘した時より、格段に強くなってるからな。どうなるか全然予想つかないぜ」

「……////」

「どうした? 明日香?」

「……////」

「ほら、一緒に見ようぜ」

「あ……////」

 

 

「では、改めまして……」

「ああ……いくぞ!」

 

『決闘!!』

 

 

LP:4000

手札:5枚

場 :無し

 

LP:4000

手札:5枚

場 :無し

 

 

「先行は私です。私のターン、ドロー」

 

手札:5→6

 

「手札の水属性モンスター一体を捨てることで、手札の『()ガエル』を特殊召喚」

 

手札:6→5

 

()ガエル』

 レベル2

 守備力500

 

「『鬼ガエル』の召喚、反転召喚、特殊召喚のいずれかに成功したことで、デッキから、レベル2の水属性・水族のモンスター一体を墓地へ送ります。私はこの効果で、レベル2の『氷結界の伝道師』を墓地へ送ります」

「更に、永続魔法『生還の宝札』発動。自分フィールドにレベル3以下の水属性モンスターが存在する時、手札を一枚捨てることで、このカードは墓地より特殊召喚できます。チューナーモンスター『フィッシュボーグ-ガンナー』を特殊召喚」

 

手札:3→2

 

『フィッシュボーグ-ガンナー』チューナー

 レベル1

 守備力200

 

「おお! チューナー!」

 

「亮さんに対して、出し惜しみは無しです。まずは宝札の効果で、一枚ドロー」

 

手札:2→3

 

「更に魔法カード『簡易融合(インスタントフュージョン)』! ライフ1000ポイントを糧として、エクストラデッキよりレベル5以下の融合モンスター一体の融合召喚を行う。私が呼ぶのは、レベル5の『深海に潜むサメ』」

 

LP:4000→3000

 

『深海に潜むサメ』融合

 レベル5

 攻撃力1900

 

「『フィッシュボーグ-ガンナー』をシンクロ素材とする際、全ての素材モンスターは水属性に統一する必要がある……レベル5の水属性『深海に潜むサメ』に、レベル1の『フィッシュボーグ-ガンナー』をチューニング!」

 

「聖なる結界と共に有りて、守護を司りし獣の王よ。大いなる猛りと共に、其の霊験を万物に示さん」

「シンクロ召喚! 穿て『氷結界の虎王ドゥローレン』!」

 

 空中で輝く六つの星。そこから生まれる電子の光。

 その光から生まれ出でるように、巨大な脚が地面を叩き、青い体毛は空間にたゆたい、震える(あぎと)からは牙を光らせ、鋭いまなざしで全てを見据える。

 氷の一族の守護神にして、獣の王の一角が、フィールドに降り立った。

 

『氷結界の虎王ドゥローレン』シンクロ

 レベル6

 攻撃力2000

 

「出た! ドゥローレン!」

「やっぱり、龍には劣るけど、こちらもすごい迫力ね……」

「ドン……」

 

「ドゥローレン……! ほぅ……」

「……『フィッシュボーグ-ガンナー』の効果で墓地へ捨てた『レベル・スティーラー』の効果! 自分フィールドのレベル5以上のモンスター一体のレベルを一つ下げ、墓地に眠るこのカードを特殊召喚します。ドゥローレンの効果を一つ下げ、特殊召喚、『レベル・スティーラー』! 宝札の効果で一枚ドロー!」

 

『氷結界の虎王ドゥローレン』

 レベル6→5

 

『レベル・スティーラー』

 レベル1

 攻撃力600

 

手札:2→3

 

「ここでドゥローレンの効果……咆羅奏燥(ほうらそうそう)!」

 

『グオオオオオオオオオオオオオ!!』

 

 冷たく、青く光る獣の王が、咆哮を上げ空間を震わせる。

 その咆哮に、決闘を見ている三人ともが怯む中、そんな咆哮に惹かれるように、フィールドの小さな昆虫は消えていった。

「これは……」

「一ターンに一度、自分フィールドの表側表示のカードを任意の枚数選択して手札に戻すことで、このカードの攻撃力は、エンドフェイズまで戻した枚数一枚につき500ポイントアップします」

 

手札:3→4

 

『氷結界の虎王ドゥローレン』

 攻撃力2000+500

 

「だがこのターンの終わりにはその攻撃力も元に戻る。狙いは他にあるということか……」

「そう……私の場にレベル2の『鬼ガエル』が存在することで、手札を一枚捨て、墓地の『フィッシュボーグ-ガンナー』を再び特殊召喚! 宝札の効果で一枚ドロー」

 

『フィッシュボーグ-ガンナー』チューナー

 レベル1

 守備力200

 

手札:4→3→4

 

「今捨てたのは、また『レベル・スティーラー』か……」

 

「来るぜ! 梓の連続シンクロ召喚!」

 

「レベル5となった水属性『氷結界の虎王ドゥローレン』に、レベル1の『フィッシュボーグ-ガンナー』をチューニング!」

「シンクロ召喚! 新たに現れよ『氷結界の虎王ドゥローレン』!」

 

『氷結界の虎王ドゥローレン』シンクロ

 レベル6

 攻撃力2000

 

「二体目……!」

「そしてもう一度、ドゥローレンのレベルを一つ下げ、『レベル・スティーラー』を蘇生!」

 

『氷結界の虎王ドゥローレン』

 レベル6→5

 

『レベル・スティーラー』

 レベル1

 攻撃力600

 

手札:4→5

 

「ドゥローレンの効果で『レベル・スティーラー』を手札に……咆羅奏燥!」

 

手札:5→6

 

「そして、手札一枚を墓地へ捨て、『フィッシュボーグ・ガンナー』特殊召喚!」

 

『フィッシュボーグ-ガンナー』チューナー

 レベル1

 守備力200

 

手札:6→5→6

 

「レベル5の水属性『氷結界の虎王ドゥローレン』に、レベル1の『フィッシュボーグ-ガンナー』をチューニング!」

「シンクロ召喚! 幾度でもその爪と牙で世界を穿て『氷結界の虎王ドゥローレン』!!」

 

『氷結界の虎王ドゥローレン』シンクロ

 レベル6

 攻撃力2000

 

「三体目……」

 

「三連続シンクロ召喚……なのに、手札がちっとも減ってないドン」

「減るどころか、うまい具合に増やしてるわね……」

「これがドゥローレンの連続シンクロコンボ……」

 

「これで全てのドゥローレンが出そろいました……ドゥローレンのレベルを一つ下げ、『レベル・スティーラー』蘇生!」

 

『氷結界の虎王ドゥローレン』

 レベル6→5

 

『レベル・スティーラー』

 レベル1

 攻撃力600

 

手札:6→7

 

「咆羅奏燥! 『レベル・スティーラー』を手札に戻します!」

 

手札:7→8

 

「そして手札一枚を墓地へ捨て、『フィッシュボーグ-ガンナー』!」

 

『フィッシュボーグ-ガンナー』チューナー

 レベル1

 守備力200

 

手札:8→7→8

 

「……『鬼ガエル』と『フィッシュボーグ-ガンナー』を生贄に、『氷結界の虎将 ガンターラ』を召喚!」

 

『氷結界の虎将 ガンターラ』

 レベル7

 攻撃力2700

 

「カードを四枚伏せ、ターンエンド。そしてこのエンドフェイズ、ガンターラの効果で、墓地に眠る氷結界『氷結界の虎将 ライホウ』を蘇生。宝札の効果で一枚ドロー」

 

 

LP:3000

手札:4枚

場 :モンスター

   『氷結界の虎王ドゥローレン』攻撃力2000

   『氷結界の虎将 ガンターラ』攻撃力2700

   『氷結界の虎将 ライホウ』攻撃力2100

   魔法・罠

    永続魔法『生還の宝札』

    セット

    セット

    セット

    セット

 

 

「ライホウ……たった今、『フィッシュボーグ・ガンナー』の効果で捨てていたか」

 

「相変わらず、えげつない回転率だな……」

「シンクロモンスターに加えて、上級以上のモンスターが二体……」

「おまけにそのうちの一体……ライホウは確か、手札一枚をコストにしないと、モンスターの効果の発動を無効にされる。戦闘で倒すことは難しくないけど、加えて四枚のリバースカード。相当な守りの布陣ができあがっているわ……」

 三人の観戦者の全員が、梓のフィールドを見て絶望を感じている。

 変わらぬ梓の勝利が確定されている。そんな空気の流れる空間にあって、たった一人、そんな考えとは違う者……

 

「……面白い」

「む?」

「お前に敗北し、デッキを受け取った日から今日まで、デッキを、カードを知り、新たなカードを手に入れ、強化してきた。それだけ積み上げてきたものをぶつけるのだ。そのくらいやってもらわなければつまらん!」

「つまるつまらないは、私の知るところではない。私はあなたと、あなたのデッキに勝利する。それが私の、果たすべき役目です」

「それでいい。存分に俺を追い詰め、俺を倒しに来い。だが勝つのは俺だ!」

 

「俺のターン!」

 

手札:5→6

 

「カードを一枚伏せる。魔法カード発動『大嵐』!」

「……!」

 クロノスが愛用していることでも知られる、単純かつ強力な魔法・罠除去カード。

 フィールドの中心に発生した巨大な突風が、フィールドに立つモンスター以外のカード全てを飲み込んだ。

「更にこの瞬間、破壊された俺の伏せカード『荒野の大竜巻』の効果発動! セットされたこのカードが破壊された時、フィールド上に表側表示で存在するカード一枚を破壊する」

「く……!」

 目に前に表示された『荒野の大竜巻』のカードから、砂の混じった茶色のつむじ風が発生。風は曲がりくねりながらも梓のフィールドへ向かい、身構えていたライホウの身を飲み込んだ。

 

「すげぇ! 梓が大量のカードで作り上げた防御の布陣を、二枚のカードだけでアッサリ崩した!」

「さすがヘルカイザーだドン……!」

 

「……」

「こんなものはそよ風にすぎん。地獄の風はここから吹き荒れる! フィールド魔法『竜の渓谷』発動!」

 続けて亮がカードを発動させた時、昼日中なはずのその空間が、オレンジ色の夕焼けに変化した。

 と同時に、レッド寮は、海は消え、フィールドに巨大な岩肌がいくつも飛び出し、上へ上へと伸びていく。

 辺りには淡い霞が浮かび、見上げて遠くを見渡せば、夕陽を背に、黒く変化した竜達の羽ばたきがチラついた。

「『竜の渓谷』……竜、そして、鳥人達が集う深き谷……」

「そうだ……俺はこのフィールド魔法の効果により、手札を一枚捨てることで、二つある効果の内の一つを使うことができる」

 

手札:3→2

 

「俺は、第一の効果を選択。デッキから、レベル4以下の『ドラグニティ』一体を手札に加える。『ドラグニティ-ドゥクス』を手札に」

 

手札:2→3

 

「来た! ドラグニティ!」

「エドとの決闘でも使っていた、亮の新しいデッキ……!」

 

「召喚『ドラグニティ-ドゥクス』」

 

『ドラグニティ-ドゥクス』

 レベル4

 攻撃力1500

 

「ドゥクスのモンスター効果。こいつの召喚に成功した時、墓地に眠るレベル3以下のドラゴン族である『ドラグニティ』一体を装備できる。俺は墓地から、たった今墓地へ捨てた『ドラグニティ-ファランクス』を装備。ドゥクスの攻撃力は、自分フィールドのドラグニティ一体につき、200アップする」

 

『ドラグニティ-ドゥクス』

 攻撃力1500+200×2

 

「しかし、それがそのカード効果の本質ではない……」

「そうだ……装備されたファランクスの効果! こいつの装備を解除し、フィールドに特殊召喚する。来い! チューナーモンスター『ドラグニティ-ファランクス』!」

 

『ドラグニティ-ファランクス』チューナー

 レベル2

 攻撃力500

 

「チューナーモンスター!」

「てことは、亮のあのデッキも……」

 

「レベル4の鳥獣族『ドラグニティ-ドゥクス』に、レベル2のドラゴン族『ドラグニティ-ファランクス』をチューニング!」

 三人分の驚愕の中、執り行われる召喚は、直前の見知った友人ではなく、相対する、見知ってはいるが今までしたことの無かったはずの男が執り行う……

 

「風に舞いし竜鳥よ。魂の刃を一つに重ね、豪雨となりて世界へ降り注げ……」

「シンクロ召喚! 『ドラグニティナイト-ゲイボルグ』!!」

 

 夕焼けに染まる天空に、一筋の白銀色が走る。

 高く遠くにあったその光は、輝きよりも早く近づいてきた。

 全身を覆う白銀。鎧に包まれた巨大な竜と、それを駆る鳥人。

 白銀色の竜騎士が、亮のフィールドから槍を構えた。

 

『ドラグニティナイト-ゲイボルグ』シンクロ

 レベル6

 攻撃力2000

 

「亮が、シンクロ召喚を……!」

「ドラグニティって、シンクロ召喚のためのデッキだったのかドン!」

「すっげー!!」

 

「バトルだ! ゲイボルグで、『氷結界の虎将 ガンターラ』を攻撃!」

 

「え……攻撃力は、ガンターラの方が上ザウルス!」

 

 剣山の声の中、ゲイボルグは上へと舞い上がる。

 騎乗の鳥人は手の槍を、騎竜は頭の刃を向けて、ガンターラへと向かっていく……

「この瞬間、ゲイボルグのモンスター効果! このカードが戦闘を行うダメージステップ時に一度だけ、墓地に眠る鳥獣族モンスター『ドラグニティ-ドゥクス』を除外、その攻撃力分、こいつの攻撃力をアップする!」

 墓地からドゥクスのカードが飛び出す。それが巨大な風に変化し、ゲイボルグへと届いた。

 強烈な風による突進力を得た白銀は、その力に更なる威力を伴った。

 

『ドラグニティナイト-ゲイボルグ』

 攻撃力2000+1500

 

漸季粒降(せんきりゅうおう)-ゲイボルグ!!」

 風に押され、前進しながら、ゲイボルグの身が輝いた。

 かと思った次の瞬間、一人だったはずのゲイボルグが、一瞬で何人もの竜騎士に分裂した。

 分身し、数を増やしたゲイボルグが一斉にガンターラへ降り注ぎ、褐色の巨体はアッサリ倒された。

 

LP:3000→2200

 

「カードを一枚伏せる。これでターンエンド」

 

 

LP:4000

手札:1枚

場 :モンスター

   『ドラグニティナイト-ゲイボルグ』攻撃力2000

   魔法・罠

    セット

    フィールド魔法『竜の渓谷』

 

LP:2200

手札:4枚

場 :モンスター

   『氷結界の虎王ドゥローレン』攻撃力2000

   魔法・罠

    無し

 

 

「残ったのはモンスター一体ですか……まあいい。私のターン」

 

手札:4→5

 

「チューナーモンスター『フィッシュボーグ-ランチャー』を召喚」

 

『フィッシュボーグ-ランチャー』チューナー

 レベル1

 守備力100

 

「『フィッシュボーグ-ランチャー』はシンクロ素材とする際、水属性モンスターのシンクロ召喚にしか使用できない……」

 

「レベル5となった『氷結界の虎王ドゥローレン』に、レベル1の『フィッシュボーグ-ランチャー』をチューニング……」

 

「凍てつく結界(ろうごく)より昇天せし翼の汝。全ての時を零へと帰せし、凍結回帰(とうけつかいき)の螺旋龍」

「シンクロ召喚! 舞え、『氷結界の龍 ブリューナク』!」

 

 真っ赤な夕陽の空間に、彼らとはまた別の、雪を伴う一陣の冷たい風が荒ぶ。

 その風と共に、青色の龍は翼を広げ、フィールドに舞い降りた。

 

『氷結界の龍 ブリューナク』シンクロ

 レベル6

 攻撃力2300

 

「出た! ブリューナク!」

「梓先輩のエースモンスターだドン!」

 

「ブリューナクのモンスター効果! 手札を一枚墓地へ捨てるごとに、フィールド上のカード一枚を手札に戻す。私は手札二枚を捨て、あなたの場のゲイボルグと伏せカードをエクストラデッキに戻します」

 

手札:4→2

 

「凍結回帰!」

 ブリューナクの身から霧があふれ出した。それが梓の、亮のフィールドを包み込み、そこに光っていた白銀の竜騎士と、伏せカードをを飲み込む。

「ちっ……! なら、手札に戻る前に使う。罠発動『威嚇する咆哮』! このターン、お前は攻撃宣言ができなくなる」

 伏せカードが発動され、霧の中から咆哮が轟く。直後、竜騎士は霧の中へ姿を消した。

「仕方がない……装備魔法『継承の印』! 私の墓地に同名モンスターが三枚存在する時、うち一体を特殊召喚しこのカードを装備する。私は墓地から、『氷結界の虎王ドゥローレン』を蘇生」

 

『氷結界の虎王ドゥローレン』シンクロ

 レベル6

 攻撃力2000

 

「あのコンボか!」

「ええ……」

 

「『継承の印』が破壊された時、装備モンスターも共に破壊される。なので、ドゥローレンの効果で、『継承の印』を手札に戻します。咆羅奏燥!」

 虎王が上げる咆哮。それに誘われるように、消えてなくなる装備魔法。

 

手札:1→2

 

『氷結界の虎王ドゥローレン』

 攻撃力2000+500

 

「これでターンエンドです。ドゥローレンの攻撃力は元に戻る」

 

 

LP:2200

手札:2枚

場 :モンスター

   『氷結界の龍 ブリューナク』攻撃力2300

   『氷結界の虎王ドゥローレン』攻撃力2000

   魔法・罠

    無し

 

LP:4000

手札:1枚

場 :モンスター

    無し

   魔法・罠

    フィールド魔法『竜の渓谷』

 

 

「俺のターン!」

 

手札:1→2

 

「『強欲な壺』発動! カードを二枚ドローする」

 

手札:1→3

 

「『竜の渓谷』の効果! 手札一枚を墓地へ捨て、デッキからレベル4以下のドラグニティモンスター『ドラグニティ-ブランディストック』を手札に加え、召喚する!」

 

『ドラグニティ-ブランディストック』チューナー

 レベル1

 攻撃力600

 

「更に、装備魔法『早すぎた埋葬』! ライフを800払い、墓地の『ストーム・シューター』を特殊召喚!」

 

LP:4000→3200

 

『ストーム・シューター』

 レベル7

 攻撃力2300

 

「レベル7の鳥獣族『ストーム・シューター』に、レベル1のドラゴン族、ブランディストックをチューニング!」

 黄色に輝く鳥人と、青色の双刃の仔竜。

 同時に空中へ飛び、やがて仔竜は先程と同じ、一つの星へ……

 

「風に舞いし竜鳥よ。魂の刃を一つに重ね、軍勢を率いて世界へ降り立て……」

「シンクロ召喚! 『ドラグニティナイト-バルーチャ』!!」

 

 前のターンと同じく、フィールドに強い風が吹く。

 そんな風から生まれたのは、先ほどよりも遥かに巨大な深緑の輝き。

 鎌首を上げた胴体はその大翼を広げ、巨大なその身をより一層巨体に見せた。

 

『ドラグニティナイト-バルーチャ』シンクロ

 レベル8

 攻撃力2000

 

「レベル8のシンクロモンスター……!」

「けど、攻撃力はたったの2000……」

「何かあるってことか……?」

 

「バルーチャのモンスター効果! こいつのシンクロ召喚に成功した時、墓地に眠るドラゴン族のドラグニティ達を任意の枚数、こいつに装備できる。俺は墓地から、『ドラグニティ-ファランクス』、『ドラグニティ-ブランディストック』、『ドラグニティ-コルセスカ』をバルーチャに装備!」

「コルセスカ……! 『ストーム・シューター』と同じ、渓谷の効果で手札から捨てていたカードか……」

 梓が理解するその前で、墓地から三体の仔竜が飛び出した。

「この効果で装備したドラグニティ一体につき、バルーチャの攻撃力は300アップする!」

 青色の双刃、水色の小太刀、橙色のレイピア。

 三種の刃光らせる仔竜が、深緑の周囲を飛び回り、力を与えた。

 

『ドラグニティナイト-バルーチャ』

 攻撃力2000+300×3

 

「バトル! 『氷結界の龍 ブリューナク』に攻撃! 氣永流勢(きえいりゅうせい)-バルーチャ!!」

 深緑の突撃に、三体の仔竜が続く。

 一つになった四つの力が、流星となりブリューナクを貫いた。

 

LP:2200→1600

 

「この瞬間、装備されたコルセスカの効果! 装備モンスターが相手モンスターを戦闘破壊したことで、デッキからバルーチャと同じ、風属性・ドラゴン族のレベル4以下のモンスターを手札に加える。『グランド・ドラゴン』を手札に加える」

 

手札:1→2

 

「更に、ブランディストックを装備したモンスターは、二度の攻撃が行える。ドゥローレンに攻撃! 氣永流勢-バルーチャ!!」

 直前と同じ突撃。地に伏していた獣の王も、空を舞っていた氷の龍と同じ末路を辿った。

 

LP:1600→700

 

「梓のライフが、一気に700に!」

 

「デッキから、『ドラグニティ-クーゼ』を手札に加える」

 

手札:2→3

 

「どうした? 俺を倒した凶王の力はその程度か?」

「……」

「カードを伏せる。装備された『ドラグニティ-ファランクス』の効果で、こいつを特殊召喚し、ターンエンド」

 

『ドラグニティ-ファランクス』チューナー

 レベル2

 守備力1100

 

 

LP:3200

手札:2枚

場 :モンスター

   『ドラグニティナイト-バルーチャ』攻撃力2000+300×2

   『ドラグニティ-ファランクス』守備力1100

   魔法・罠

    効果モンスター『ドラグニティ-ブランディストック』

    効果モンスター『ドラグニティ-コルセスカ』

    セット

    フィールド魔法『竜の渓谷』

 

LP:700

手札:2枚

場 :モンスター

    無し

   魔法・罠

    無し

 

 

「見事なカードさばき……翔さんとの決闘もそうでしたが、私と闘った、ブタペスト決闘を行っていた時以上に、各段に強くなっている……」

 

「ブタペスト?」

「確か、どっかの国の首都だドン……スイス、だっけ?」

「スイスの首都はボルンよ。えーっと……ニューギニア、じゃないの?」

「パプアニューギニアの首都はポートモレスビーって街だぞ」

『え……?』

「……なんだよ? 俺が知ってるの、そんなに意外か?」

 

「ハンガリーの首都だ」

 亮の声を聞いて、三人ともそうだっけ? と顔を見合わせた。

「リスペクト、だ……」

「これが、カイザーを超える者……ヘルカイザーの決闘というわけだ」

 かつて闘い、激闘の果てに勝利した。ギリギリの攻防を繰り返し、一つ判断を間違えれば敗けていた、そんな闘いだった。

 そして、今回も同じ。あの時とは違うカードを使いながら、あの時以上のカード捌きと戦略で攻めてくる。結果、ライフの差は歴然となった。

 今回、敗けてしまうのは私かもしれない……

「しかし、私もこのままでは終わりはしない……私のターン」

 

手札:2→3

 

「魔法カード『壺の中の魔術書』! 互いのプレイヤーは、カードを三枚ドローします」

 

手札:2→5

 

手札:2→5

 

「魔法カード『魔法石の採掘』! 手札二枚を墓地へ送り、墓地の魔法カード一枚を手札に戻す」

 

「え……せっかくドローしたカード、捨てちゃうのかドン?」

 

手札:4→2

 

「永続魔法『生還の宝札』を手札に加え、発動! 続けて装備魔法『継承の印』。これにより、墓地のドゥローレンを特殊召喚! 宝札の効果で、一枚ドローします」

 

『氷結界の虎王ドゥローレン』シンクロ

 レベル6

 攻撃力2000

 

手札:1→2

 

「続けて、ドゥローレンのレベルを一つ下げることで、墓地の『レベル・スティーラー』を特殊召喚! 宝札の効果で一枚ドロー」

 

『レベル・スティーラー』

 レベル1

 守備力0

 

手札:2→3

 

「チューナーモンスター『深海のディーヴァ』召喚!」

 

『深海のディーヴァ』チューナー

 レベル2

 守備力400

 

「ディーヴァの召喚に成功したことで、レベル3以下の海竜族モンスター『シー・アーチャー』をデッキより特殊召喚」

 

『シー・アーチャー』

 レベル3

 攻撃力1200

 

「『シー・アーチャー』のモンスター効果! 自分フィールドのレベル3以下のモンスター一体をこのカードに装備することで、攻撃力を800ポイントアップさせる」

「装備だと?」

「そう。モンスターを装備できるのは、あなただけではない。『シー・アーチャー』に、レベル1の『レベル・スティーラー』を装備!」

 巨大なボーガンをもつ青髪の人魚に向かって、ジッとしていた巨大なテントウムシが飛んでいく。人魚は空中へ跳んだかと思うと、上手いことそんなテントウムシの上に着地した。

 

『シー・アーチャー』

 攻撃力1200+800

 

「そして、ドゥローレンの効果で、装備魔法『継承の印』を手札に戻します。咆羅奏燥!」

 

手札:2→3

 

「レベル5となったドゥローレンに、レベル2の『深海のディーヴァ』をチューニング!」

 

「冷たき結界(ろうごく)にて研磨されし剣の汝。仇なす形の全てを砕く、冷刃災禍(れいじんさいか)の刃文龍」

「シンクロ召喚! 狩れ、『氷結界の龍 グングニール』!

 

 夕焼けの谷の大地が割れる。

 そこから巨大な爪、巨大な脚が現れ、そこからゾロリと這い出る巨体。

 四本の肢で大地を踏みしめ、目の前を飛ぶ深緑を睨む。

 

『氷結界の龍 グングニール』シンクロ

 レベル7

 攻撃力2500

 

「来た! グングニール!」

 

「装備魔法『継承の印』を再び発動! 墓地のドゥローレンを蘇生、宝札の効果で一枚ドロー」

 

『氷結界の虎王ドゥローレン』シンクロ

 レベル6

 攻撃力2000

 

手札:2→3

 

「ドゥローレンの効果、『継承の印』、『生還の宝札』の二枚を手札に戻す。咆羅奏燥!」

 

手札:3→5

 

『氷結界の虎王ドゥローレン』

 攻撃力2000+500×2

 

「攻撃力3000ザウルス……!」

 

『氷結界の虎王ドゥローレン』

 攻撃力2000+500×2

『氷結界の龍 グングニール』

 攻撃力2500

『シー・アーチャー』

 攻撃力1200+800

 

「なあ……」

「え?」

「俺達、つい『氷結界の龍』ばっか見てきたけど、本当に一番厄介な氷結界モンスターって、あのドゥローレンなんじゃねぇか?」

「……確かに、自分フィールド限定とは言え、表側表示のどんなカードでも手札に戻すことができて、その効果を使うことができる。墓地に三体揃っていれば、『継承の印』と合わせてフィールドの立て直しが効く。カードの組み合わせによっては、様々なコンボに繋げることができる……」

「カードがすごいのももちろんだけど、それだけのことができる梓先輩も、改めて凄すぎザウルス……」

 

「まずは魔法カード『サルベージ』! 墓地に眠る攻撃力1500以下の水属性モンスター二体を手札に加える。私は墓地から、攻撃力100の『フィッシュボーグ-ガンナー』と、攻撃力200『フィッシュボーグ-ランチャー』を手札に加えます」

 

手札:4→6

 

「グングニールの効果! 一ターンに一度、手札を二枚まで捨てることで、相手フィールドのカードを捨てた枚数と同じ数だけ破壊できる。私は今手札に加えた二体の『フィッシュボーグ』を捨て、その伏せカードと『ドラグニティナイト-バルーチャ』の二枚を破壊!」

 

手札:6→4

 

 宣言した二枚を墓地へ捨て、グングニールの二枚の翼が輝きだした。

 第二の龍はその巨体を目一杯後ろへ逸らし、両翼も同じように下げる。

「冷刃災禍!!」

 両翼が振るわれ、そこから目に見える弧形の曲線が二本飛ぶ。

 斬撃は地面を抉りながら、標的とされた二枚のカードを切り裂かんと飛んでいく。

 

「罠発動『和睦の使者』! このターン、モンスターは戦闘では破壊されず、俺が受ける戦闘ダメージは0となる。効果破壊までは防げんがな……」

 深緑の竜騎士は、巨大な斬撃に真っ二つとなり、伴っていた仔竜三体も同時に破壊される。だが、伏せカードだけは破壊される前に表と変わり、青色の衣を纏う聖女たちを呼び出した。

「……」

 

「これで梓が攻撃をしても、戦闘ダメージは与えられない」

「ヘルカイザーの防御も、かなり硬いザウルス……」

 

「……私は二枚のカードを伏せ、ターンエンド」

 

 

LP:700

手札:2枚

場 :モンスター

   『氷結界の虎王ドゥローレン』攻撃力2000

   『氷結界の龍 グングニール』攻撃力2500

   『シー・アーチャー』攻撃力1200+800

   魔法・罠

    セット

    セット

 

LP:3200

手札:5枚

場 :モンスター

   『ドラグニティ-ファランクス』守備力1100

   魔法・罠

    フィールド魔法『竜の渓谷』

 

 

「その程度の吹雪で、地獄の暴風に付いてこられると思うな! 俺のターン!」

 

手札:5→6

 

「『竜の渓谷』の効果! 手札の『ドラグニティ-クーゼ』を捨て、デッキから『ドラグニティ-レギオン』を手札に加え、召喚!」

 

『ドラグニティ-レギオン』

 レベル3

 攻撃力1800

 

「レギオンの召喚に成功したことで、墓地に眠るレベル2の『ドラグニティ-クーゼ』を装備。更にクーゼもまた、装備された自身をフィールドに特殊召喚できる。来い『ドラグニティ-クーゼ』!」

 

『ドラグニティ-クーゼ』チューナー

 レベル2

 攻撃力1000

 

「更に、墓地に眠る風属性モンスター『ドラグニティ-コルセスカ』を除外することで、『風の精霊 ガルーダ』を特殊召喚!」

 

『風の精霊 ガルーダ』

 レベル4

 攻撃力1600

 

『風の精霊 ガルーダ』

 レベル4

 攻撃力1600

『ドラグニティ-レギオン』

 レベル3

 攻撃力1200

『ドラグニティ-クーゼ』チューナー

 レベル2

 攻撃力1000

『ドラグニティ-ファランクス』チューナー

 レベル2

 守備力1100

 

「いくぞ! レベル4の『風の精霊 ガルーダ』に、レベル2の『ドラグニティ-ファランクス』をチューニング!」

 

「風に舞いし竜鳥よ。魂の刃を一つに重ね、世界を染める紅となれ……」

「シンクロ召喚! 『ドラグニティナイト-ガジャルグ』!!」

 

 夕焼けのオレンジ色の中から、それよりも赤い紅が輝いた。

 世界の全てを染めてしまいそうな、濃く、確かな紅の鎧がフィールドに降り立った。

 

『ドラグニティナイト-ガジャルグ』シンクロ

 レベル6

 攻撃力2400

 

「続けて、『ドラグニティ-クーゼ』はシンクロ素材とする時、自身のレベルを4として扱うことができる。クーゼのレベルを2から4に!」

 

『ドラグニティ-クーゼ』

 レベル2→4

 

「レベル3の鳥獣族『ドラグニティ-レギオン』に、レベル4となったドラゴン族『ドラグニティ-クーゼ』をチューニング!」

 

「風に舞いし竜鳥よ。魂の刃を一つに重ね、三つの世界全てを切り裂け……」

「シンクロ召喚! 『ドラグニティナイト-トライデント』!!」

 

 夕焼けの中に、今度は蒼色の輝きが光る。

 夕焼けではなく、青空を連想させる、透き通るほどの美しき蒼蒼。

 

『ドラグニティナイト-トライデント』シンクロ

 レベル7

 攻撃力2400

 

「すげぇ……カイザーも連続シンクロ召喚を……」

「亮、本当に進化している……!」

「すごいドン……」

 

「まずはガジャルグの効果! 一ターンに一度、デッキからレベル4以下の鳥獣族またはドラゴン族一体を手札に加え、その後、手札から鳥獣族またはドラゴン族一体を選んで捨てる。俺はこの効果で、デッキからレベル4の『ドラグニティ-セナート』を手札に加え、『グランド・ドラゴン』を墓地へ捨てる」

 ガジャルグの紅の騎竜が翼をはためかせ、突風を巻き起こす。

 それに舞い上がるように一枚のカードがディスクから飛び出し、それが亮の手札に加わる。亮はその後に手札のカードを捨てた。

「続けてトライデントの効果! 一ターンに一度、自分フィールドのカードを三枚まで墓地へ送ることで、墓地へ送った枚数、相手のエクストラデッキを確認して墓地へ送ることができる」

 

「エクストラデッキのカードを墓地へ!?」

「相手のメインデッキではなく、融合デッキ破壊」

「そんな効果、聞いたことないドン!」

 

「俺はこの効果で、『竜の渓谷』を墓地へ送る」

 蒼き竜が翼を振るい、再び巻き起こる突風。

 それに煽られ、亮のディスクから飛び出すカード。同時に、夕焼けの渓谷は姿を消し、トライデントと同じ青い空の下、元のレッド寮へと戻った。

 

「え? せっかくのフィールド魔法なのに?」

 

「『竜の渓谷』も役目を終えた……さあ、見せてもらおう。お前のエクストラデッキを」

「……」

 梓が懐からデッキケースを取り出す。

 と同時に、亮の目の前に、梓のエクストラデッキのカード全てが表示された。

「ふむ……あまり良いカードは残っていないようだな」

「……」

「だがやはり、最後の龍の効果は厄介だ……『氷結界の龍 トリシューラ』。これを墓地へ送ってもらう」

 

「やっぱそれだよな……」

「当然よ……」

「大本命ザウルス……」

 

 言われた通り、梓はエクストラデッキに眠っていた、最後の龍を墓地へ捨てた。

「そして俺は、新たなフィールド魔法を発動する。フィールド魔法『デザートストーム』発動!」

 フィールドの見た目に変化は無い。ただ、二人の間に、強烈な風が吹き荒れた。

「全ての風属性モンスターは攻撃力が500アップし、守備力を400ダウンする!」

 

「梓の使ってた『ウォーターワールド』の風属性版か!」

 

『ドラグニティナイト-ガジャルグ』

 攻撃力2400+500

『ドラグニティナイト-トライデント』

 攻撃力2400+500

 

「これで準備は整った……バトルだ!」

「ではこの瞬間、罠発動『ナイトメア・デーモンズ』! 私の場の『氷結界の龍 グングニール』をリリースし、亮さんの場に三体の『ナイトメア・デーモン・トークン』を特殊召喚します」

「なに……!」

 今にも突撃しようとしている竜騎士達。それに水を差すようなタイミングで、グングニールが光と変わる。その光は亮の場に届き、三体の悪魔へ姿を変えた。

 

『ナイトメア・デーモン・トークン』トークン

 レベル6

 攻撃力2000

『ナイトメア・デーモン・トークン』トークン

 レベル6

 攻撃力2000

『ナイトメア・デーモン・トークン』トークン

 レベル6

 攻撃力2000

 

「このトークンは……まさか!」

「そのまさかです……『ナイトメア・デーモン・トークン』の召喚時、罠発動『激流葬』! フィールド上のモンスター全てを破壊する!」

 悪魔達の登場を合図に、どこからともなく発生した巨大な海流。

 それが、梓の場のモンスター、そして、亮の場の竜騎士達、その全てを呑み込んだ。

「ぐぅ……っ!」

「そして、『ナイトメア・デーモン・トークン』が破壊された時、そのコントローラーは一体につき800ポイントのダメージを受ける」

「なっ……ぐおおおおぉぉぉぉ……!!」

 

LP:3200→800

 

「あなたの暴風に、追いつく必要などない。吹雪は全てを、風をも凍らせ、砕く……あなたこそ、その程度の風速で、私の冷気から逃げられるなどと思わないことだ」

「く……カードを二枚伏せ、ターンエンド」

 

 

LP:800

手札:1枚

場 :モンスター

    無し

   魔法・罠

    セット

    セット

    フィールド魔法『デザートストーム』

 

LP:700

手札:2枚

場 :モンスター

    無し

   魔法・罠

    無し

 

 

「私のターン!」

 

手札:2→3

 

「永続魔法『生還の宝札』! そして装備魔法『継承の印』、墓地のドゥローレンを蘇生。宝札の効果で一枚ドロー」

 

『氷結界の虎王ドゥローレン』シンクロ

 レベル6

 攻撃力2000

 

手札:1→2

 

「ドゥローレンの効果で、『生還の宝札』、『継承の印』を手札に。咆羅奏燥!」

 

手札:2→4

 

『氷結界の虎王ドゥローレン』

 攻撃力2000+500×2

 

「バトルです! ドゥローレンで、亮さんにダイレクトアタック! 地裂牙!」

 駆り出す青き獣の王。その巨大な顎を開き、一人残った亮に喰らいつく……

「罠発動『カウンター・ゲート』! 相手モンスターのダイレクトアタックを無効にし、カードを一枚ドローする!」

 

手札:0→1

 

「そのドローしたカードがモンスターだった時、攻撃表示で通常召喚できる! 俺がドローしたのは、『サイバー・ダーク・ホーン』!」

 獣の王の目の前に、それよりも小さい、だが今までの風の者達とは違うものが現れる。

 灰色の鋭利ないくつもの牙を向け、その牙の奥に光る二つの眼。

 闇の奥から光る眼は、闇よりも深い悪意の輝き……

 

『サイバー・ダーク・ホーン』

 レベル3

 攻撃力800

 

「『サイバー・ダーク』! そのカードは……」

「そう。これが俺の新たに手に入れた力の一つ……『サイバー・ダーク・ホーン』のモンスター効果! こいつが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、互いの墓地に眠るレベル4以下のドラゴン族モンスターをこいつに装備する。俺は墓地から、レベル4の『グランド・ドラゴン』を装備する。『サイバー・ダーク・ホーン』の攻撃力は、この効果で装備したモンスターの攻撃力分アップ!」

 牙の下に生えた小さな胴体から、機械のワイヤーが伸びる。

 それが墓地に眠っていたドラゴンの巨体を捕らえ、固定した。

 

『サイバー・ダーク・ホーン』

 攻撃力800+2000

 

「……カードを二枚伏せる。ターンエンド」

「ならばこの瞬間、永続罠『ドラグニティ・ドライブ』発動!」

 

 

LP:700

手札:2枚

場 :モンスター

   『氷結界の虎王ドゥローレン』攻撃力2000

   魔法・罠

    セット

    セット

 

LP:800

手札:1枚

場 :モンスター

   『サイバー・ダーク・ホーン』攻撃力800+2000

   魔法・罠

    永続罠『ドラグニティ・ドライブ』

    効果モンスター『グランド・ドラゴン』

    フィールド魔法『デザートストーム』

 

 

「俺のターン!」

 

手札:1→2

 

「『貪欲な壺』を発動。墓地のモンスター五体をデッキに戻し、カードを二枚ドローする」

 

『ドラグニティナイト-バルーチャ』

『ドラグニティナイト-トライデント』

『ドラグニティ-レギオン』

『ドラグニティ-クーゼ』

『風の精霊 ガルーダ』

 

手札:1→3

 

「『ドラグニティ-セナート』を召喚!」

 

『ドラグニティ-セナート』

 レベル4

 攻撃力1800+500

 

「セナートの召喚に成功したことで、手札のドラグニティ、『ドラグニティ-ミリトゥム』を捨て、デッキのドラグニティチューナーをこいつに装備する。この効果の発動後、ターン終了時までドラゴン族以外をエクストラデッキから特殊召喚できなくなる。デッキから『ドラグニティ-クーゼ』を装備。装備されたクーゼの効果! こいつをフィールドに特殊召喚する!」

 

『ドラグニティ-クーゼ』チューナー

 レベル2

 攻撃力1000+500

 

「なるほど。『貪欲な壺』を使ったのは、手札を増やすだけでなく、クーゼをデッキに戻すことが真の狙いだったわけだ……」

「そういうことだ……レベル4の『ドラグニティ-セナート』に、レベル2の『ドラグニティ-クーゼ』をチューニング!」

 

「風に舞いし竜鳥よ。魂の刃を一つに重ね、千夜を超えし一夜の世界を創り出せ……」

「シンクロ召喚! シンクロチューナー『ドラグニティナイト-ハールーン』!」

 

 一陣の風から生まれる新たな刃。

 今までにない特殊な輝きと共に、紫色の鎧は姿を現す。

 

『ドラグニティナイト-ハールーン』シンクロチューナー

 レベル6

 攻撃力1200+500

 

「シンクロチューナー……!」

 

「シンクロチューナーって……」

「シンクロモンスターの、チューナー……?」

「そんなのがいたのかドン?」

 

「そんなカードが、ドラグニティに……?」

「貴様は知らんだろうな。だが、デッキと共に進化しているのは貴様だけではないということだ」

「では、そのモンスターは……!」

「そうだ。俺の進化と共に生まれた、新たなカード。そして、これから呼び出すモンスターもな! ハールーンの効果! こいつの特殊召喚に成功した時、墓地に眠るドラグニティ一体をこいつに装備できる。墓地の『ドラグニティ-ミリトゥム』を装備!」

 墓地から新たにモンスターが飛び出す。

 だが、今まで色違いの仔竜だったのが、今回フィールドに飛び出したのは、緑色の鳥人女戦士。

「それは、ドラゴン族でないドラグニティまで装備できるのですか?」

「そうだ。ここで『ドラグニティ・ドライブ』の効果! 一ターンに一度、二つある効果から一つを選択し発動できる。俺は第一の効果により、自分の魔法・罠ゾーンに存在するドラグニティ一体を選択、フィールドに特殊召喚する。来い! 『ドラグニティ-ミリトゥム』!」

 ハールーンと共に舞っていた鳥人が、ハールーンの下の地面に降り立ち、両手に持つ武器を構えた。

 

『ドラグニティ-ミリトゥム』

 レベル4

 攻撃力1700+500

 

「レベル4の『ドラグニティ-ミリトゥム』に、レベル6のシンクロチューナー『ドラグニティナイト-ハールーン』をチューニング!」

 緑の鳥人、紫色の竜騎士、二体が風の中へ飛ぶ。

 風を超え、天を裂き、ひたすら上へ上へと目指す戦士と騎士は、その魂を、刃を重ね、呼び出すのは最強の竜騎士……

 

「風に生きる者達の魂よ。全ての刃を一つに重ね、世界を超えて神をも征せ!」

「シンクロ召喚! 『ドラグニティナイト-アスカロン』!!」

 

 『竜の渓谷』は既にない。なのに、まるで夕焼けのような、淡く優しい光がフィールドを包んだ。

 その光は太陽ではなく、一頭の巨大な竜のものだと全員がすぐに気が付いた。

 温かく世界を包む黄金の輝きを発しながら、吹き荒れる風の世界にその竜騎士は君臨した。

 

『ドラグニティナイト-アスカロン』シンクロ

 レベル10

 攻撃力3300+500

 

「攻撃力3800……! それに、あの姿は、『ドラグニティの神槍』か!」

「更に、墓地へ送られたハールーンの効果! 自分フィールドのドラグニティ一体にこいつ自身を装備できる。装備モンスターの攻撃力と守備力は1000ポイントアップ!」

 アスカロンの隣に、それよりも小さな竜騎士が並んだ。

 二組の竜鳥は互いに舞い、互いに力を高め合い、互いに同じ敵に狙いを定めた。

 

『ドラグニティナイト-アスカロン』

 攻撃力3300+500+1000

 守備力3200-400+1000

 

「これが亮さんと、ドラグニティの進化……」

「『ドラグニティ・ドライブ』の効果は一ターンに一度しか使えない。これ以上モンスターは並べられんが、これで十分だ」

 

『ドラグニティナイト-アスカロン』

 攻撃力3300+500+1000

『サイバー・ダーク・ホーン』

 攻撃力800+2000

 

「やべぇぞこれ、梓……」

「ええ。ドゥローレン一体だけじゃ耐えられない……」

 

「ドゥローレン一体さえ残さん……アスカロンのモンスター効果! 墓地に眠るドラグニティ一体を除外し、相手フィールドのモンスター一体を除外する」

「除外!?」

「俺は墓地のコルセスカを除外し、ドゥローレンを除外だ!」

 墓地のコルセスカが天へと上り、アスカロンの周囲を周る。

 その後、ドゥローレンへと向かい、仔竜と獣は共に輝きの中へと消えていった。

「ドゥローレン……!」

 

「バトルだ! 『ドラグニティナイト-アスカロン』で、梓にダイレクトアタック!」

 黄金の竜騎士が天を舞い、一層強い輝きを発する。

 眩いほどの光の中で、冷たく巨大なる刃を向けて、梓へと降り注ぐ……

 

閃貴琉霊(せんきりゅうれい)-アスカロン!!」

 

「罠発動『ガード・ブロック』! 相手ターンの戦闘ダメージを無効にし、カードを一枚ドローする!」

 頭の槍を向け、向かってきた竜騎士に向け、梓はドローしたカードを投げた。そのカードと、黄金の槍がぶつかり、竜騎士はその場に静止した。

 

手札:2→3

 

「だがまだ『サイバー・ダーク・ホーン』の攻撃が残っている! 『サイバー・ダーク・ホーン』の攻撃、ダーク・スピア!!」

「手札の『バトルフェーダー』の効果! 相手モンスターの直接攻撃時、手札のこのカードを特殊召喚、バトルを終了させます!」

 灰色の機械の爪が伸びたと同時に、小さな黒い悪魔がフィールドに飛び出す。それがその身を叩き、休戦を知らせる鐘を鳴らした。

「しぶとい奴だ……俺は更にカードを伏せ、ターンエンド」

 

 

LP:800

手札:0枚

場 :モンスター

   『ドラグニティナイト-アスカロン』攻撃力3300+500+1000

   『サイバー・ダーク・ホーン』攻撃力800+2000

   魔法・罠

    永続罠『ドラグニティ・ドライブ』

    効果モンスター『ドラグニティナイト-ハールーン』

    効果モンスター『グランド・ドラゴン』

    セット

    フィールド魔法『デザートストーム』

 

LP:700

手札:2枚

場 :モンスター

   『バトルフェーダー』守備力0

   魔法・罠

    セット

 

 

「……」

 梓にターンが回るも、動く気配はない。

 

「梓……」

「シンクロモンスターはほとんどが倒されて墓地。フィールドはモンスターが一体だけ。さすがの梓でも、手詰まりかもね……」

「これ本当に、ひょっとしたら、ひょっとするザウルス……?」

 

「……」

 ギャラリーはそんなことを言っているが、亮は、油断なく梓を見ている。

 相対する者だけに分かった。

 目の前の相手の闘志は、全く消えていないことを……

 

 

 

 




お疲れ~。
かなり半端な部分で切ってしまったけれど、ここがちょうどよかったんだ……

そんじゃとりあえず、原作効果だ~。



『サイバー・ダーク・ホーン』
 このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合、自分か相手の墓地のレベル4以下のドラゴン族モンスター1体を対象として発動する。
 そのドラゴン族モンスターを装備カード扱いとしてこのカードに装備する。

ご存知、装備するタイミングは通常召喚に限定されず、レベルは4以下、自分と相手の墓地のどっちかを選べます。
OCG化でだいぶ弱体化された効果ですわな。



以上。
つ~わけで、後半へ続きますでや~。
それまで待ってて。

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