そんだら、六日目の本当の第一話。
一応、この日がジェネックス最終日の予定。
いつものことながら言っとくけど、今回も長いぞ~。
そったらことで、最初の決闘は~……
行ってらっしゃい。
視点:外
ババババババ……
太陽はとっくの昔に昇っている、既に朝と呼ぶべき時間。
だが、空を覆う厚い雲のおかげで、せっかくの太陽の光は閉ざされている。
おかげで時間は間違いなく朝っぱらだというのに、薄暗く陰鬱な雰囲気が島全体を包み込んでいる。
しかも奇妙なのが、それだけ厚い灰色の曇り空だというのに、その雲からは、一滴の雨も降ってきていないこと。
そして、それだけならまだしも、そんな雲の間のそこかしこから雷光がきらめいて、所々に落雷が落ちている、ということ。
そんな不気味でおかしな天気に包まれた決闘アカデミアへ、一機のヘリが到着していた。
乗員は三名。ヘリの運転手、アカデミア校長の鮫島、そして、エド・フェニックス。
「あそこへ向かってくれ!」
ヘリの中で、鮫島と会話していたエドが、ホワイト寮を指さしながら運転手へ指示した。
まだ距離はある。時間にして一瞬だった。それでも、はっきり姿が見えた。
部屋の奥へと消えていく、斎王の姿が。
「急げ!」
ホワイト寮へと近づくヘリ。
そして、そんなヘリを、オージーンとの決闘を制した十代と、その仲間達は見上げていた。
「なんだ?」
……
…………
………………
バッ
「うぅ……っ」
目が覚めて、体を起こすなり、左手首を押さえた。
今までにない激痛が、梓の左手を襲った。
「これは……」
「梓……それ……!」
アズサも、ほぼ同時に目を覚まし、同じように梓の左手首を見た。
突然出血することが増えて、着物や布団を汚さぬようにと、そこには包帯を厚く巻いてあった。
そして、そんな包帯を越えた出血が、包帯の上ににじみ出ていた。
「この痛み……今までの比ではない」
「残った二人が、それだけ強力ってこと?」
「おそらくはそうでしょう……ですが、それだけではない気がする」
「どういうこと?」
「……」
その質問には、答えない。だが、梓の中で一つ、嫌な想像が芽生えた。
(まさか……お前か?)
「……いずれにせよ、相手は近くまで来ております」
「行くの? 梓?」
「ええ。着替えますので、今日の所は作り置きをチンして食べて下さい」
「……うん」
痛みに耐えて、体を起こして、立ち上がって、顔を洗いに行く。
そんな梓の背中を目で追いつつ、アズサの心配は尽きない。
だが、これが避けようのない、乗り越えなければならない決闘であることも、アズサはよく知っているから。
(僕は……僕が絶対、梓を守る。僕が、守らなきゃ)
梓の着替え、アズサの朝食が済んで、ホワイト寮を出て歩いていく。
二人とも、この日の不思議な天気にはとうに気付いている。だが、そんなものを気にする余裕もなく、目的地へと歩き続けた。
『梓、手は大丈夫なの?』
「ええ……疼いてはおりますが、おかげで相手の居場所は分かります」
だが、そんなセンサー代わりの傷の痛みに対して、疑問に感じることもある。
(それにしても、今まで以上の痛み……亮さんの時と言い、一人倒すごとに、痛みが増していく、そういうことなのか……?)
疑問は尽きないが、それを考える時でもない。
歩いていくと、通り道には既に、何人もの決闘者達が倒れていた。
アカデミア、プロを問わず、これから戦う相手が倒していったことは容易に想像がつく。
その相手が端から倒していったのか。それとも、彼らの方が挑み、順に倒されたのか……
「……この辺りのはずですが」
死屍累々の道を越え、開けた場所へたどり着く。
辺りを見回したものの、それらしい姿は見当たらない。
『いないね……』
「ふむ……」
「来てくれた?」
と、
「昨日の決闘、すごかったね。見て知ってるよ」
「お褒めにいただき恐縮です……そして、次の相手は、あなたですか?」
「そう! 君が闘う最後の相手、てことでしょう?」
「すみませんが、私が闘うべき相手は、あなたと、もう一人おります」
「なーんだ。最後だったら、ラスボスっぽくて格好よかったのにな」
「ですが、残ったデッキの二つとも、ラスボス級の強さなのは間違いありません。うち一つは、ただでさえ強かったのが、別の力を得て更に強くなっている」
「えへへ……鬼に金棒?」
「弁慶に薙刀」
「……コナンにスケボー」
「竜に翼」
「金田一君に美雪ちゃん」
「獅子にヒレ」
「リンクにマスターソード!」
「SDKに焔薙」
『もうその辺にしたら? 梓のそれマニアック過ぎだし』
「そうですね……おふざけはこの辺にして、始めましょう。さあ、姿をお見せ下さい」
「なに言ってんの? さっきからここにいるじゃん」
「……ここって、どこです?」
「ここだよ、ここ。ここだって」
「ここ? ……ですから、どこですか?」
「だからここだってば! ここにいるよ!」
「ここ……ここ? どこ?」
「ねえ皆既日食になってるよ!?」
「皆既日食?」
「こっちだってば! 声のする方へ、声のする方へ」
「……?」
「そして、見下~げて~ごらん」
「あああああああああああああああああ!?」
『うわあああああああああああああああ!?』
ようやく
「小っちゃくないよ!!」
後ろでまとめた、茶色の長いポニーテールを揺らす、健康的な褐色肌の、あまりに小柄なその少女は、
「えっと……あなたが?」
「そう! わたしの名前は『
『まあ、確かに大っきく育ってるね。一部は……』
「ちょ、ジロジロ見ないでよ!////」
例によって、恨めし気に凝視するアズサの視線を感じながら、ポプラは胸元を押さえつつ、二人から後ずさった。
『お久しぶり、アズサ~』
『青もおっひさ~!』
そんなアズサの姿を見てか、ポプラの左右にも、精霊……赤い鎧を着た、二人の女が現れる。
「アナさんにフランさん……つまり、あなたのデッキは……」
「そう! 『
「ふむ……」
そして、梓はまた逡巡する。
残ったラスボス級の二つのデッキ。
そのうちのかなり厄介な方が、これから闘う相手とは……
「そうですね……では、そろそろ……」
「あ、ちょっと待って」
梓が決闘ディスクを構えようとしたのを、ポプラが静止する。
と、ポケットから携帯電話を取り出した。
「決闘の前に、一枚だけ写真撮らせて」
「写真?」
梓の返答も聞かず、パシャリ、と撮影をしてしまう。
その後は、梓を見上げながら唐突に、二礼二拍手一礼。
「こんな女の子になりたい……」
「……私、男子です」
梓の苦笑交じりの告白を聞いて、島の外まで聞こえてしまいそうなほどの絶叫をした後で……
「では、改めて……」
「うん。始めよっか! 水瀬梓、くん……」
力を使って、出血を止める。痛みは疼くが、我慢する。
そうしてたった今、始まった。梓にとっての宿命の決闘。その、九人目の相手との……
『決闘!!』
ポプラ
LP:4000
手札:5枚
場 :無し
梓
LP:4000
手札:5枚
場 :無し
「わたしの先行だね。ドロー!」
ポプラ
手札:5→6
「行っちゃうよー! わたしは『
冷たい金属の輝きが光る。金と銀の鎧装と、白く煌めく剣の光。
それらを纏い、携え現れる。
紅色のマントを纏い、冷たくも逞しく、そして凶悪ながらも美しい、獣人の戦士。
『
レベル4
攻撃力1900
「ボガーナイトの召喚に成功した時、手札からレベル4以下の『
ボガーナイトに比べれば、遥かに小さな戦士だった。
レイピアを構え、鱗の鎧に覆われた緑色の爬虫類の戦士がフィールドに立った。
『
レベル1
攻撃力200
「さー、行っちゃうよー! レベル4のボガーナイトに、レベル1のパロムロをチューニング!」
そして、今日まで何度となく繰り返された動作を、ポプラもまた執り行った。
「シンクロ召喚! 蒼き銃剣の五等星『X-セイバー ウェイン』!」
蒼の煌めきが走った直後、天に銃声が鳴り響く。
銃剣を構え、頭には帽子を被る、蒼く輝く西部からの戦士。それが、梓に銃口を向けた。
『X-セイバー ウェイン』シンクロ
レベル5
攻撃力2100
『ウェインか。地属性がそろってたから、てっきり『ナチュル』で来るかと思ってたけど』
「本気で言っています?」
『ほぇ?』
間抜けな声を上げるアズサに対して、梓はポプラを見据えたまま語りかけた。
「ボガーナイトはシンクロ素材とする場合、X-セイバー以外のシンクロ素材には使用できませんよ?」
『あれー? そうだっけー?』
「じゃあ、ウェインの効果! ウェインがシンクロ召喚に成功した時、手札からレベル4以下の戦士族一体を特殊召喚できる。出ておいで『ヒーロー・キッズ』!」
『ヒーロー・キッズ』
レベル2
守備力600
「ほぉ……」
梓も使ったことがある、しかし予想外な、小さな戦士の登場に、吐息が漏れた。そして、この後どうなるかも、知っていた。
「『ヒーロー・キッズ』の効果! この子が特殊召喚に成功した時、デッキから『ヒーロー・キッズ』を任意の枚数、特殊召喚できる。おいで、二体の『ヒーロー・キッズ』!」
『ヒーロー・キッズ』
レベル2
守備力600
『ヒーロー・キッズ』
レベル2
守備力600
「更に更に、魔法カード発動『トランスターン』! 『ヒーロー・キッズ』一体を墓地へ送って、『ヒーロー・キッズ』と同じ属性、種族の、レベルが一つ高いモンスター一体をデッキから特殊召喚するよ」
「地属性、戦士族、そしてレベル3……」
「さあ出ておいで『XX-セイバー フラムナイト』!」
『やっほー! お待たせ青ー!』
高らかな声と共に閃く、紅きマントと赤の鎧。
それを纏った金髪の少女が、手に持つ鎖状の剣を振い、高らかな笑いと共にフィールドに降り立った。
『XX-セイバー フラムナイト』チューナー
レベル3
攻撃力1300
「お久しぶりです。フランさん」
『うん。久しぶり、青。アズサも』
『うん……久しぶり』
梓もアズサも、ありすぎるだけの負い目から声色が暗くなり、気分が沈む。
そんな様子の二人に対して、フラムナイトは……
『二人はさ、もうヤったの?』
『ぶぅー!』
「ぶぅー!」
「……ヤるわけがないでしょう。まだ学生なのですから」
吹き出すアズサとポプラを無視しながら、梓は平然と言葉を返した。
『なーんだ、ヤってないのー? てっきりどっちかがとっくに襲い掛かってると思ってたのにさー』
「期待を外して申し訳ありませんが、私もアズサも、そこまで性欲過多な方ではありませんので」
『そんなもんなの? 近頃の若いもんは、精力有り余ってるって聞くよー?』
「どこで聞いたのかは知りませんが、精力があるのと実際にヤるのとでは、大きな違いがあるでしょうよ。相手がいるかいないか、相手の同意があるかないかにもよります」
『青はアズサに同意もらえないわけ? アズサとヤりたくないの?』
「そりゃあ、私自身、相手がアズサであれば、むしろ喜んでお相手願いたいですが……」
『え……////』
「もちろん、そう言ったことが許される、来るべき時が来た時、ですが……」
『そーんなこと言っちゃって。早いとこ襲って既成事実作っとかないと、知らない誰かに寝取られちゃっても知らないよー。時期とかタイミングとか見計らってるうちに、でもそんなの関係ねーって顔した奴にドシドシ攻められて持ってかれちゃうんだから。もしそいつが超絶テクのヤリチンだったら、青のために取っといたはずの処女を盗られた挙句、抜群のテクで虜にされちゃって、青に隠れてそいつとヤりまくって、最後にはそいつの子供を青が育てることになる屈辱寝取られ夫婦に……』
「レベル2の地属性『ヒーロー・キッズ』に//// レベル3の地属性フラムナイトをチューニング////」
『え? ちょ、まだ話してる途中だけど? ちょっとー……!!』
フランがこれ以上何か喋らないうちに、顔を真っ赤にしながらポプラは宣言した。
「神聖なる大自然より//// 慈愛を抱きてここに来たれ//// 相対す呪詛の全てを祓いし、清廉なる護りの母君////」
「シンクロ召喚//// おいで『ナチュル・ビースト』////」
バカも使った、大樹から成る優しげな獣がフィールドに立つ。
その優しい瞳は、相対す敵の全てを見据えるようだった。
何より、あの時とは全く違う、不満も怒りも、その振る舞いには見られない。
嫌々ではない、自らの意思で、ここに降り立ち戦いを挑む、勇ましい顔を浮かべていた。
『ナチュル・ビースト』シンクロ
レベル5
攻撃力2200
「フラン……寝取り物のエロ本読みすぎ////」
「そのエロ本は誰が与えたものですか?」
「え……//// か、カードを二枚伏せて、ターンエンド!」
ポプラ
LP:4000
手札:0枚
場 :モンスター
『X-セイバー ウェイン』攻撃力2100
『ナチュル・ビースト』攻撃力2200
『ヒーロー・キッズ』守備力600
魔法・罠
セット
セット
『梓……その、僕、その……////』
「時が来ればと言ったでしょう? 今は決闘に集中なさい」
『は、はい!////』
「私のターン!」
梓
手札:5→6
「知ってると思うけど、一応説明しとくね。『ナチュル・ビースト』が場に存在する限り、わたしのデッキの上からカードを二枚墓地に送ることで、魔法カードの発動を無効にして破壊しちゃうからね」
「ふむ……厄介ですが、方法はあります。相手フィールドのカードが、自分フィールドのカードより四枚以上多い場合、このカードは手札から特殊召喚できます。あなたの場のカードは五枚、私はゼロ。『氷結界の交霊師』を、手札より特殊召喚!」
『氷結界の交霊師』
レベル7
攻撃力2200
「……」
「……交霊師が存在する限り、あなたは一ターンに一度しか魔法・罠カードを発動できなくなります。続けて、スピリットモンスター『氷結界の神精霊』を召喚」
『氷結界の神精霊』スピリット
レベル4
攻撃力1600
「幻のスピリットシリーズ! 氷結界にはそんなカードもあったの……?」
「カードの発動が何もないようなら、バトルです。『氷結界の交霊師』で、『X-セイバー ウェイン』を攻撃!」
交霊師が両手を掲げ、祈りを捧げる。その瞬間、蒼き銃剣士の足元が、胴体が、やがて全身が凍り付き、最後は砕け散った。
ポプラ
LP:4000→3900
「続けて、神精霊で『ヒーロー・キッズ』を攻撃します」
半透明の霊体が走り、小さな英雄を通り抜けた。直後、構えていた英雄の全身から力が抜けて、そのまま旅立っていった。
「カードを三枚伏せます。エンドフェイズ、スピリットモンスターである神精霊の、自身を手札に戻す効果が発動。この時、このカード以外の氷結界が存在する時、その効果は相手モンスター一体を手札に戻す効果に変わる」
「と、いうことは……」
「私の場には、神精霊と交霊師の二体の氷結界。神精霊ではなく、あなたの場の『ナチュル・ビースト』を、手札でなくエクストラデッキに戻していただく」
その言葉の通り、半透明だった神精霊の身が実体を伴っていくが、逆に『ナチュル・ビースト』の肉体は色を失っていき、そして、消えた。
「これで魔法カードが使えます」
「やるね……なら、わたしもエンドフェイズに罠発動『第六感』!」
「『第六感』……?」
「わたしは1から6の数字のうち二つ、5と6を宣言。君はサイコロを一回振って、わたしが宣言した数字が出たら、その枚数だけカードをドローする。違ったら、出た目の枚数デッキの上からカードを墓地へ送る」
「どちらに転んでも、X-セイバーには良いことづくめだ」
梓の前に、仮想立体映像の巨大なサイコロが現れる。それを梓がはたいた瞬間、サイコロは回転を始めた。
その回転が、徐々に静止していく。やがてピタリと止まり、出た目の値は……
「出た目は5! カードを五枚ドロー!」
「ゼロであった手札を、即座に回復させましたか」
梓
LP:4000
手札:2枚
場 :モンスター
『氷結界の交霊師』攻撃力2200
『氷結界の神精霊』攻撃力1600
魔法・罠
セット
セット
ポプラ
LP:3900
手札:5枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
セット
「それにしても、シンクロ召喚はしてこないんだね」
「まだ序盤ですから。それがなにか?」
「確かに序盤だけど……ちょっと、わたしのこと嘗めてるのかなってさ?」
「……」
「自分で言っていたでしょう? X-セイバーの強さはラスボス級だって。まさか、それを使う決闘者の方は、違うとでも思ってた?」
「そんなわけがないでしょう。ラスボス級のデッキも、ラスボスがそれを使いこなすことで真なるラスボスたりえるのですから」
「そう……分かってるのなら構わない。見せてあげる」
その瞬間、梓は感じ取った。
直前まで、どちらかと言えばのんびりとした、緩い雰囲気だったのが、一瞬で張り詰め、鋭く研ぎ澄まされていく感覚を……
「わたしのターン!」
ポプラ
手札:5→6
「自分フィールドにモンスターが無い状態で、自分の墓地にX-セイバーが二体以上存在する時、このカードは手札から特殊召喚できる。『XX-セイバー ガルドストライク』!」
獣の咆哮がこだました。一陣の風と、紅きマントの揺らめきと共に、その獣は走り抜けた。
右手に巨大な半月刀。緑の体毛を逆立てながら、対する敵を威嚇した。
『XX-セイバー ガルドストライク』
レベル5
攻撃力2100
「続けて、チューナーモンスター『Xセイバー エアベルン』召喚!」
一つ、二つ、三つの閃きが二度、計六つの刃の閃き。直後、闇の中から浮かび上がるように、それは姿を現した。
黒と、金の鬣を逆立てる、獰猛なる攻撃性を全身から、特に、両腕の巨大な爪から滾らせる獣人が、参上と共に咆哮を上げた。
『Xセイバー エアベルン』チューナー
レベル3
攻撃力1600
「モンスターが二体……」
「これで終わるわけないじゃん。魔法カード『セイバー・スラッシュ』! 自分フィールドに攻撃表示で存在するX-セイバーの数だけ、フィールドの表側表示のカードを選んで破壊する。わたしの場には、ガルドストライク、エアベルンの二体。君の場の二体のモンスターを破壊!」
二体の獣が刃を掲げる。その瞬間、そこから発生した斬撃が、指定された二体のモンスター達を切り裂いた。
「これで魔法・罠の発動に制限は無くなった。罠発動『ガトムズの緊急指令』! フィールドにX-セイバーが存在する時、墓地のX-セイバー二体を自分フィールドに特殊召喚する!」
その宣言と、表になった罠から指令を報せる光が溢れる。
それらに従い、墓地から二体の戦士がフィールドへ舞い戻った。
『X-セイバー ウェイン』シンクロ
レベル5
攻撃力2100
『X-セイバー パロムロ』チューナー
レベル1
攻撃力200
「ちなみに、緊急指令は相手の墓地からもX-セイバーを呼び出せるけど、今はどうでも良いね」
「これで四体……」
「さあ、またまたシンクロ召喚よ! レベル5の『X-セイバー ウェイン』に、レベル1のパロムロをチューニング!」
二体の剣士が宙へ飛び、パロムロが一つの星に変わり、蒼き銃剣士の周囲を回る……
「シンクロ召喚! 剣舞閃く六つ星の戦姫『XX-セイバー ヒュンレイ』!」
蒼き銃剣士の立っていた場所に、新たな藍が降り立った。
黄金の鎧、紅きマント、そして、藍を纏い華麗に舞う、美しき戦場の姫君が。
『XX-セイバー ヒュンレイ』シンクロ
レベル6
攻撃力2300
「ヒュンレイの効果! この子のシンクロ召喚に成功した時、フィールド上の魔法・罠カードを三枚まで選んで破壊できる。そっちの三枚の伏せカード、全部破壊!」
ヒュンレイが舞ったその瞬間、剣から二つの斬撃が飛んだ。
「では、破壊される前のこの瞬間、罠カード『和睦の使者』! 更に速攻魔法『速攻召喚』! 手札のモンスター一体を通常召喚します。私が召喚するのは、『氷結界の舞姫』!」
美しい粉雪が吹きすさぶ。その粉雪と共に舞い、彼女はフィールドに降り立った。
『氷結界の舞姫』
レベル4
攻撃力1700
「最後の一枚、『禁じられた聖杯』はこのまま破壊されます」
ヒュンレイに対して発動することもできたが、この状況ではあまり意味がない。そう判断し、黙って破壊させた。
「『和睦の使者』の効果で、ダメージも戦闘破壊も狙えない……けど、その娘一人じゃ、わたしのX-セイバーたちを止めるのは無理ね」
『う~……悔しいけど、彼女の言う通りだよ、梓』
「大丈夫。以前にも言ったでしょう? 戦闘での期待など
『ひど……!』
爽やかで美しい笑顔を浮かべる梓と、泣き顔のアズサに苦笑しながら、ポプラも次の手を考える。
「先にこの子を呼ぶべきだったか……自分フィールドにX-セイバーが二体以上存在する時のみ、この子は手札から特殊召喚できる。『XX-セイバー フォルトロール』を特殊召喚!」
ひときわ巨大な剣の一閃が空を咲く。それと同時に翻る紅きマント。そして、赤き鎧をまとった、バイザーに顔を隠す褐色の戦士は、フィールドに降り立った。
『XX-セイバー フォルトロール』
レベル6
攻撃力2400
「フォルトロールの効果! 一ターンに一度、自分の墓地からレベル4以下のX-セイバーを特殊召喚できる。『X-セイバー パロムロ』を蘇生!」
『X-セイバー パロムロ』チューナー
レベル1
攻撃力200
「レベル5の地属性『XX-セイバー ガルドストライク』に、レベル1の地属性パロムロをチューニング!」
「神聖なる大自然より、守神となりて天空を舞え。立ちはだかる卑劣を打ちし、霊験あらたかなる大地の剣……」
「シンクロ召喚! おいで『ナチュル・パルキオン』!」
地面から巨大な土塊がいくつも飛び出し、宙へと浮かぶ。
それが一つの、長く、大きな塊と化し、形を成したそれが梓を見下ろす。
『ナチュル・パルキオン』シンクロ
レベル6
攻撃力2500
「ふむ……どちら先か、一概にこっちが正しいとは言えない二択ですね」
「分かってるだろうけど、一応説明。この子が場にある限り、わたしの墓地から二枚のカードを除外することで、フィールド上での罠カードの発動を無効にして破壊できる」
「ええ。分かっております」
「なら続ける。レベル6の地属性『XX-セイバー ヒュンレイ』に、レベル3のエアベルンをチューニング!」
「とうとう来ますか……」
「シンクロ召喚! 全ての剣を統べる九揮星『XX-セイバー ガトムズ』!」
紅きマント、そして、黄金の輝きが閃いた。
巨大な二枚刃の大剣と、鋭利で堅牢な鎧を纏う巨人。
全てのX-セイバーの頂点が、大地を踏みしめ敵を狙う。
『XX-セイバー ガトムズ』シンクロ
レベル9
攻撃力3100
『ガトムズ……いたねー、X-セイバーの二代目司令官』
「ふむ……」
「カードを一枚伏せる。ターンエンド」
ポプラ
LP:3900
手札:1枚
場 :モンスター
『XX-セイバー ガトムズ』攻撃力3100
『ナチュル・パルキオン』攻撃力2500
『XX-セイバー フォルトロール』攻撃力2400
魔法・罠
セット
梓
LP:4000
手札:0枚
場 :モンスター
『氷結界の舞姫』攻撃力1700
魔法・罠
無し
(さすがの展開力と制圧力だ。それにしても、あのモンスター達……)
「一つ、お尋ねしたい?」
「なに?」
「チーズは、お好きですか?」
「へ? チーズ? うん。大好物だよ」
「そうですか……」
その瞬間、ポプラを見る梓の目が、鋭いものに変化した。
「改めて、あなたは倒さねばならない敵のようだ」
「チーズで!?」
「私のターン!」
梓
手札:0→1
「魔法カード『命削りの宝札』! 手札が五枚になるよう、カードをドローし、五ターン後、全ての手札を墓地へ捨てる」
梓
手札:0→5
「おおぅ! ゼロだった手札が一気に……」
「人のこと言えますか? カードを一枚伏せます。魔法カード『手札抹殺』! 互いに全ての手札を捨て、捨てた枚数カードをドローします。私は三枚」
「わたしは一枚……」
「伏せておいた永続魔法『生還の宝札』を発動。墓地に眠る『フィッシュボーグ-ランチャー』の効果。墓地に眠るモンスターが水属性のみの場合、墓地のこのカードは特殊召喚できる。『フィッシュボーグ-ランチャー』を特殊召喚!」
『フィッシュボーグ-ランチャー』チューナー
レベル1
守備力100
「宝札の効果により、一枚ドロー」
梓
手札:3→4
「自分フィールドにレベル3以下の水属性モンスターが存在する場合、手札一枚をコストに、墓地の『フィッシュボーグ-ガンナー』を特殊召喚。宝札の効果で一枚ドロー」
『フィッシュボーグ-ガンナー』チューナー
レベル1
守備力200
梓
手札:4→3→4
「『フィッシュボーグ-プランター』が墓地に存在する時、一度だけデッキの一番上のカードを墓地へ送る。それが水属性モンスターだった場合、このカードは特殊召喚できる」
『氷結界の虎将 グルナード』水属性モンスター
「効果は成功。特殊召喚します」
『フィッシュボーグ-プランター』
レベル2
守備力200
梓
手札:4→5
「『強欲な壺』発動! カードを二枚ドロー」
梓
手札:4→6
『氷結界の舞姫』
攻撃力1700
『フィッシュボーグ-ランチャー』
守備力100
『フィッシュボーグ-ガンナー』
守備力200
『フィッシュボーグ-プランター』
守備力200
「手札を増やしながら、モンスターを三体も……けど、その子たちじゃ、わたしのモンスター達は倒せない。狙いはシンクロ召喚かな?」
「別に倒す必要などない」
「へ?」
「ライフを800ポイント支払い、魔法カード『洗脳-ブレインコントロール』!」
梓
LP:4000→3200
「洗脳!?」
「このターン、相手フィールドの表側表示のモンスター一体のコントロールを得る。『XX-セイバー ガトムズ』を渡していただく」
「うそー!?」
慌てるポプラを無視して、ガトムズは梓の場へ移動してしまった。
「続けて、速攻魔法『エネミーコントローラー』! 第二の効果でガトムズを生贄に捧げ、このターン、『ナチュル・パルキオン』のコントロールを得る」
「ガトムズを排除しながら、パルキオンまで……!」
ガトムズが光と消えると同時に、ポプラの場に浮いていたパルキオンもまた、梓の場へと移っていった。
「そんな旧式のカードで、わたしのシンクロモンスター達を……」
「旧いからと甘く見ていては、痛い目を見るのはいつの時代も同じです。特に、この決闘モンスターズにおいては」
「……っ」
「『フィッシュボーグ-ランチャー』はシンクロ素材とする際、水属性モンスターしかシンクロ召喚できない……レベル6の『ナチュル・パルキオン』と、レベル2の『フィッシュボーグ-プランター』に、レベル1の『フィッシュボーグ-ランチャー』をチューニング!」
梓の場に並ぶ三体のモンスターが飛び上がった。
小さな機械の魚が一つの星に代わり、土の竜と、もう一体の機械の周りを回った。
「
「シンクロ召喚! 刻め、『氷結界の龍 トリシューラ』!」
フィールドを冷たい霧が包み込む。
その霧の中から少しずつ、現世へと実体を現していき、フィールドに出現した。
『氷結界の龍 トリシューラ』シンクロ
レベル9
攻撃力2700
「最強の龍……それだけはさせない! カウンター罠『セイバー・ホール』!」
トリシューラが出現した瞬間、その足元に、暗く、巨大な穴が開いた。
トリシューラの巨体はその中へ吸い込まれていき、消滅した。
「わたしの場にX-セイバーが存在する時、モンスターの召喚、反転召喚、特殊召喚を無効にして破壊する」
「自身の効果で特殊召喚された『フィッシュボーグ-ランチャー』は、フィールドを離れた時除外される……ですがこれで、あなたを守るものは何も無い」
「……っ」
「魔法カード『
梓
LP:3200→2200
『深海に潜むサメ』融合
レベル5
攻撃力1900
「『フィッシュボーグ-ガンナー』をシンクロ素材とする際、素材となるモンスターは水属性に統一する必要がある……レベル5の『深海に潜むサメ』に、レベル1の『フィッシュボーグ-ガンナー』をチューニング!」
「凍てつく
「シンクロ召喚! 舞え、『氷結界の龍 ブリューナク』!」
二人の立つ遥か上空、厚い雲の切れ間から、体をくねらせうねりながら、青き龍はフィールドに舞い降りた。
『氷結界の龍 ブリューナク』シンクロ
レベル6
攻撃力2300
「そして、このカードは、フィールドの魔法使い族一体をリリースすることでアドバンス召喚を可能とします。今度はアテにさせていただく。魔法使い族『氷結界の舞姫』をリリース……吹雪と共に、ここに降臨『ブリザード・プリンセス』!」
強烈な吹雪がフィールドに吹き荒れた。
そして、その吹雪を意に介さず、巨大な鉄球……否、氷球を握った爛漫な姫君がフィールドを駆け抜けた。
『ブリザード・プリンセス』
レベル8
攻撃力2800
『イエーイ!』
「『ブリザード・プリンセス』が召喚に成功したターン、相手は魔法・罠カードを発動することはできなくなります。召喚自体を無効にしてしまう『セイバー・ホール』が発動された後で助かりました」
「くぅ……!」
「バトルです! 『ブリザード・プリンセス』で、『XX-セイバー フォルトロール』を攻撃! 雪丸舞荒衝!」
巨大な氷塊を振り回し、褐色の剣士に向かって飛ばす。
剣士は防ぐことが叶わず、破壊された。
ポプラ
LP:3900→3500
「……『セイバー』が戦闘破壊された時、ライフを500支払うことで、墓地のパロムロは特殊召喚できる」
ポプラ
LP:3500→3000
『X-セイバー パロムロ』チューナー
レベル1
守備力300
「ふむ……ブリューナクで、パロムロを攻撃、静寂のブリザード・ストーム!」
「くううぅぅ……!!」
「カードを二枚伏せます。ターンエンド」
梓
LP:2200
手札:0枚
場 :モンスター
『ブリザード・プリンセス』攻撃力2800
『氷結界の龍 ブリューナク』攻撃力2300
魔法・罠
永続魔法『生還の宝札』
セット
セット
ポプラ
LP:3000
手札:1枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
無し
モンスターを全滅させられ、怯んでしまうポプラに向かって、梓は、宣言した。
「チーズなどに、私の魂は折られはしない!」
「チーズになにか恨みでもあるの……? わたしのターン」
ポプラ
手札:1→2
「けど、わたしもまだまだやれる。魔法カード『壺の中の魔術書』! 互いにカードを三枚ドロー!」
カードを発動し、互いのデッキに指を置く……
「チーズ……」
「納豆……」
「万歳!!」
「命!!」
ポプラ
手札:1→4
梓
手札:0→3
「……もう少し早く来てほしかったな。わたしも永続魔法『生還の宝札』発動!」
「おぉ……!」
「続けて、魔法カード『死者蘇生』! 甦れ、『XX-セイバー ガトムズ』!」
ポプラのフィールドに、再び黄金の鎧と、巨大な剣が立ち上がった。
『XX-セイバー ガトムズ』シンクロ
レベル9
攻撃力3100
「宝札の効果で、一枚ドロー!」
ポプラ
手札:2→3
「続けて、『X-セイバー アナペレラ』召喚!」
剣の鞭がフィールドに舞う。その中に、剣よりも美しく輝く金髪と、剣より硬い赤色が舞い、ポプラの前に立った。
『X-セイバー アナペレラ』
レベル4
攻撃力1700
『ハァーイ! 青、アズサー』
「……お久しぶりです。アナさん」
『二人はもうヤったの?』
『お前もか!? てかさっきの聞いてなかったわけ!?』
『ジョーダン、ジョーダン。んじゃあ、やっちゃって下さいませ、ご主人様!』
「その呼び方恥ずかしいからやめて! 魔法カード『セイバー・スラッシュ』!」
「二枚目……!」
カードの発動と同時に、ガトムズとアナペレラ、二人の剣士が剣を合わせる。再びその二本の剣から発生した無数の刃が、梓の場へと降り注いだ。
「自分の場の、攻撃表示で存在するX-セイバーの数だけ、フィールド上の表側表示のカードを選んで破壊する! ブリューナク、『ブリザード・プリンセス』を破壊!」
その宣言に従い、龍と白き姫君は斬撃に切り裂かれ、破壊された。
「アズサ……!」
『どーよ、うちのご主人様は。伊達にエロい性格とおっぱいしてないんだから』
「おっぱい関係ないでしょう! てゆーかわたしエロくないよ!!」
『なに言ってんの? 三日前、この島に向かう船に乗る前の日、夜中に起きて熱心に何を読んでんのかと思ってたら、エロ同人だったじゃない』
「んな////」
『その時読んでたのは兄妹近親もので、その前の日はおねショタもの、その前がハーレムものでその前がNTRもの。毎晩アタシらが寝静まってる間に、こっそりそういう本、チーズ片手に読みふけってるのは知ってるんだから。今だって、その懐に、定期船で読んでたスワッピング物のエロ同人忍ばせてるのは分かって……』
「バトル!!//// ガトムズでダイレクトアタック!!////」
これ以上アナが何か言う前に、顔を真っ赤にしながら宣言した。
「この攻撃が通れば////」
「通しません。カウンター罠『攻撃の無力化』! その攻撃を無効とし、バトルを終了します」
向かっていったガトムズだったが、その足を止め、引き返した。
「凌がれた……けど、次のターンの対策はさせてもらう。装備魔法『早すぎた埋葬』! ライフを800ポイント払って、自分の墓地のモンスター一体を特殊召喚、このカードを装備する。『XX-セイバー レイジグラ』を蘇生!」
ポプラ
LP:3000→2200
今まででひと際小さなマントが翻った。
それを纏う鎧と、振われる剣も、同じように小さな物。
だが、それでもその緑色の肉体からは、小さくも確かな逞しさ、そして強さを溢れさせている。
『XX-セイバー レイジグラ』
レベル1
攻撃力200
「『手札抹殺』で捨てていたカードか……」
「宝札の効果で一枚ドロー」
ポプラ
手札:0→1
「レイジグラの効果! このカードの召喚、特殊召喚に成功した時、自分の墓地のX-セイバー一体を手札に加える。わたしが選ぶのは、『XX-セイバー フォルトロール』! フィールドに二体以上のX-セイバーが存在することで、この子達を特殊召喚する!」
『XX-セイバー フォルトロール』
レベル6
攻撃力2400
『XX-セイバー フォルトロール』
レベル6
攻撃力2400
「二体!? もう一体引いていたか……」
「ここで、ガトムズの効果! 自分フィールドのX-セイバー一体をリリースすることで、相手の手札一枚をランダムに捨てることができる。レイジグラをリリースして、手札一枚を捨てる!」
「……」
梓
手札:3→2
「続けて、一体目のフォルトロールの効果で、墓地の『X-セイバー エアベルン』を蘇生!」
『X-セイバー エアベルン』チューナー
レベル3
攻撃力1600
ポプラ
手札:0→1
『なんでフランを呼ばないのよー!?』
「決闘中に二人も相手してらんないよ! この状況ならどっち呼んだって一緒だし!」
『ぶー……』
「もう一度、ガトムズの効果! 今度は効果を使ったフォルトロールをリリース、手札一枚を捨てる」
梓
手札:2→1
「そして、残ったフォルトロールの効果! レイジグラを蘇生!」
『XX-セイバー レイジグラ』
レベル1
攻撃力200
ポプラ
手札:1→2
「レイジグラの効果で、墓地のフォルトロールを手札に加える」
ポプラ
手札:2→3
「フォルトロール二体の効果でレイジグラを蘇生、ガトムズの効果でレイジグラをリリースし手札を破壊、効果を使用したフォルトロールもまたリリースすることで手札を破壊、残ったフォルトロールでレイジグラを蘇生し、墓地へ送られたフォルトロールを手札に。再びフォルトロールを特殊召喚し、それを繰り返す……手札破壊の無限ループ」
「そういうこと! けど、もちろん知ってたんでしょう? 展開力と制圧力、そして、こんな禁じ手があるから、未来じゃ最強のターミナルシリーズって呼ばれてたんだよね?」
「その通りです」
「そして、それにプラスして、このデッキとの相性抜群な『ナチュル』シンクロモンスター達のロックが加わったデッキが、『完成形』と呼ばれた。そうよね?」
「ええ」
「だから言ったでしょう? 嘗めないでって。エロとかおっぱい関係なく、これだけ強いデッキを使わなきゃいけないわたしだって、強くなくちゃいけないってことなんだから」
「……後悔しているのですか? X-セイバーに選ばれたこと」
「そんなこと言ってない。むしろ誇らしいわ。これほどの力を持ったデッキが選んでくれたのが、私だったこと。元の持ち主の代わりだとしても、私なんかを頼ってきてくれたことにも。そうやって彼らが、私と一緒に戦ってくれていること、全てを誇らしく思ってる」
「……」
「だから私は、全力で彼女達に答える! デッキの力がラスボス級なら、そのデッキに選ばれた私も、ラスボスになるために! そして、そのラスボスの力で、わたしはあなたを倒す!」
「その言葉が聞けて、実に嬉しく思います……そして、ますます勝利したくなった」
「ガトムズの効果! レイジグラをリリース、残った最後の手札を捨てて!」
梓
手札:1→0
「わざわざドローさせて、それを全て捨てさせるとは。性格の悪い」
「まだ動くわ! レベル4の地属性『X-セイバー アナペレラ』に、レベル3の地属性『X-セイバー エアベルン』をチューニング!」
「神聖なる大自然より、神木を抱きて目覚め給え。降りかかりし災い清めし、あまねく大地の父にして守護神……」
「シンクロ召喚! おいで『ナチュル・ランドオルス』!」
フィールドから、威厳溢れし神木が天へと伸びる。その神木を、更に押し上げるものが地面の下から立ち上がった。
眠たそうな目を向けながら、その瞳の奥には、地上の全てに向けられた、優しくも熱い愛情が輝いていた。
『ナチュル・ランドオルス』シンクロ
レベル7
攻撃力2350
「バカが使っていた時よりも大きい……!」
その亀もまた、梓との再戦に、純粋な喜びを浮かべているのが見て取れた。
「カードを一枚伏せる。これでターンエンド」
ポプラ
LP:2200
手札:2枚
場 :モンスター
『XX-セイバー ガトムズ』攻撃力3100
『ナチュル・ランドオルス』攻撃力2350
『XX-セイバー フォルトロール』攻撃力2400
魔法・罠
永続魔法『生還の宝札』
セット
梓
LP:2200
手札:0枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
永続魔法『生還の宝札』
セット
「君の手札はゼロ。モンスターも無し。このターンでどうする?」
「……私のターン」
お疲れ~。
少年心をくすぐるデザインの多い『X-セイバー』。
大海はエアベルンが一番好きだ。
皆さんはどの子がお好きかしら?
んじゃあ、決着は次話。
それまで待ってて。