ごめんなさいだけど、今回、色々とセコイことしますわ。
だって、そうしなきゃ纏まらないんだもの……この対戦カード組んだ時点でするって決めてたしや。
謝ったことだし、早速いこー！
行ってらっしゃい。
視点：外
「さあ……いくぞ！」
星華
ＬＰ：2999
手札：5枚
場 ：モンスター
無し
魔法・罠
永続魔法『機甲部隊の最前線』
永続罠『洗脳解除』
セット
セット
マッケンジー
ＬＰ：5100
手札：0枚
場 ：モンスター
『THE DEVILS AVATAR』攻撃力3000+1
『The supremacy SUN』攻撃力3000
『マスター・ヒュペリオン』攻撃力2700
魔法・罠
永続魔法『漆黒の太陽』
永続魔法『神の居城－ヴァルハラ』
永続魔法『冥界の宝札』
フィールド魔法『天空の聖域』
あずさ
ＬＰ：2200
手札：1枚
場 ：モンスター
『閃珖龍 スターダスト』攻撃力2500
『魔界闘士 バルムンク』攻撃力2100
『六武衆の師範』攻撃力2100
魔法・罠
永続魔法『六武の門』武士道カウンター：0
「手札からレベル7の『マシンナーズ・フォートレス』と、レベル1の『リサイクル・ジェネクス』を墓地へ送る。レベルの合計が8以上になるよう、機械族を手札から捨てたことで、墓地に送った『マシンナーズ・フォートレス』を特殊召喚！」
星華
手札：5→3
『マシンナーズ・フォートレス』
レベル7
攻撃力2500
「永続罠『リビングデッドの呼び声』！ 墓地に眠るモンスター一体を攻撃表示で特殊召喚する。私は墓地のチューナーモンスター『リサイクル・ジェネクス』を特殊召喚！」
『リサイクル・ジェネクス』チューナー
レベル1
攻撃力200
「レベル7の『マシンナーズ・フォートレス』に、レベル1の『リサイクル・ジェネクス』をチューニング！」
「王者の鼓動、今ここに列を成す。天地鳴動の力を見るがいい」
「シンクロ召喚！ 我が魂『琰魔竜 レッド・デーモン』！」
『琰魔竜 レッド・デーモン』シンクロ
レベル8
攻撃力3000
「……あれ？ このドラゴン……」
「お前も感じるか？ 平家あずさ」
「はい……何だろう？ この二体は全然違うのに……」
スターダスト、そしてレッド・デーモン。光と闇。白と赤黒。
二体とも、ドラゴン族、レベル8のシンクロモンスターと、カードとしての共通点は多々ある。だがそれ以外の、効果も、ステータスも、外見デザインすらまるで違うというのに、なぜか二人は直感した。
この二体は、なんだか似てる……
「いずれにせよ、今はこの決闘に集中するぞ……平家あずさ」
「はい？」
「スターダストを守れ」
「……はい？」
「『琰魔竜 レッド・デーモン』の効果！ 一ターンに一度、このカード以外のフィールド上の攻撃表示モンスター全てを破壊する！」
「うぇええ！？」
「
あずさに有無を言わせることなく、琰魔竜が咆哮を上げる。
それと同時に、琰魔竜を中心に地面が割れ、そこから灼熱が噴き出しフィールドを飲み込んでいく。
「わわわわ！！ スターダストの効果！ スターダスト自身を破壊から守る、波動音壁！！」
閃珖竜の身を、見えない音の波が包み込む。
それが壁となり、スターダストは無傷でいられた。
だが、二体の戦士族、そして、マッケンジーの太陽二体は飲み込まれた。
「ちっ……やはり、邪神には通じないか」
「当然だ……」
SUNとヒュペリオン、二体の太陽は炎に飲み込まれながら、残った漆黒の太陽だけは、何事もなかったかのように、淡々とその形を変えていく。
『THE DEVILS AVATAR』（『琰魔竜 レッド・デーモン』）
攻撃力3000+1
「そして、永続魔法『漆黒の太陽』の更なる効果。自分フィールドのモンスターが破壊される度、私はそのモンスター達の元々の攻撃力分のライフを回復する」
「なに！？ ということは……！」
マッケンジー
ＬＰ：5100→10800
「ライフポイント、10800」
「ライフが大幅に回復した上に、肝心の邪神は無傷……これどうするんですか？ 星華さん……」
「うろたえるな。お前もさっさとモンスター効果を発動しろ」
「え、モンスター効果って……あ！」
と、ここであずさも、自身のモンスター達の力を思い出した。
「『六武衆の師範』が相手の効果で破壊された時、墓地の六武衆一体を手札に加える。わたしはこの効果で、師範自身を手札に加える」
あずさ
手札：0→1
「更にバルムンクの効果！ このカードが効果で破壊されて墓地へ送られた時、墓地からこのカード以外のレベル4以下の戦士族一体を特殊召喚できる。『真六武衆－エニシ』を特殊召喚！」
『真六武衆－エニシ』
レベル4
守備力700
『六武の門』
武士道カウンター：0→2
こちらのモンスターの数は減り、相手のライフは大幅に回復させた。
だが、こちらもモンスター効果を駆使して、マイナス分の補填はできた。
たった一度のモンスター効果、それをトリガーとしたことで……
（星華さん、そこまで考えて……）
「魔法カード『マジック・プランター』！ 私のフィールドに表側表示で残った永続罠『リビングデッドの呼び声』を墓地へ送り、カードを二枚ドロー」
星華
手札：2→4
「……手札からレベル8の『マシンナーズ・カノン』を捨てることで、墓地の『マシンナーズ・フォートレス』を再び特殊召喚！」
星華
手札：4→3
『マシンナーズ・フォートレス』
レベル7
攻撃力2500
「そして通常召喚、『レアル・ジェネクス・ターボ』！」
『レアル・ジェネクス・ターボ』
レベル4
攻撃力1500
「こいつの召喚に成功したことで、デッキからレベル1の『ジェネクス』を手札に加える。私はデッキから、レベル1の『レアル・ジェネクス・オラクル』を手札に加える。オラクルの効果！ こいつがジェネクスの効果で手札に加わった時、特殊召喚できる。チューナーモンスター『レアル・ジェネクス・オラクル』特殊召喚！」
『レアル・ジェネクス・オラクル』チューナー
レベル1
守備力300
「レベル7の『マシンナーズ・フォートレス』に、レベル1の『レアル・ジェネクス・オラクル』をチューニング！」
「正義と絆、二つの闇が一つとなりて、誕生せしは鋼機の黄金……」
「シンクロ召喚！ 起動せよ、『A・ジェネクス・アクセル』！」
鉄の灰色と、それ以上に輝く黄金がフィールドを駆ける。
足の車輪で地面を蹴り、自由自在に駆け抜ける者。
自由を愛するその機械人は、回転と共に星華の前に静止した。
『A・ジェネクス・アクセル』シンクロ
レベル8
攻撃力2600
「新たなシンクロモンスターか……」
「レベル8のモンスター！ どんな効果が……」
「いくぞ……魔法カード『アドバンスドロー』！ 自分フィールドのレベル8以上のモンスター、『A・ジェネクス・アクセル』を生贄に、カードを二枚ドロー！」
そのカードの発動に、あずさは思わずこけてしまう。
その間に、同じように分かりやすくショックを受けている黄金の機械人は、光となって消えていった。
「現状、こいつはこの場では役に立たん。コストとしてしか使い道はない」
「うぅ……正しいんだろうけど、すごい決断力」
その決断力の元、星華は新たに二枚、ドローする。
星華
手札：1→3
「来た！ こいつを待っていたぞ！」
新たにドローしたカードを見て、星華は歓喜の声を上げる。
「まがい物とは言え、神は神。魔法も罠も、並みのモンスター効果も効かない。だが……」
言った直後、決闘の最初にやったのと同じ動作……ドローしたカードを、男に投げ渡した。
「カードは所詮、決闘モンスターズの一部……貴様の『邪神アバター』を生贄に捧げ、『サタンクロース』を守備表示で特殊召喚してもらう」
「ほほう……？」
男が一層、笑みを強めると同時に、漆黒のレッド・デーモンは姿を消した。
代わりに、それより遥かに小さく弱そうな、赤色の悪魔が胡坐をかいた。
『サタンクロース』
レベル6
守備力2500
「そっか！ 生贄のコストは召喚ルール効果。いくら無敵の神のカードでも、決闘のルールには逆らえないんだ！」
「そういうことだ……『洗脳解除』の効果により、『サタンクロース』は返してもらう」
偉そうに踏ん反り返っていた『サタンクロース』だったが、いかにも億劫そうにその腰を上げ、立ち上がる。
そのままやる気なく星華のフィールドに歩いていき、再びドカリと座り込んだ。
「バトルだ！ レッド・デーモンの効果を使用したターン、私はレッド・デーモン以外のモンスターで攻撃できなくなる。レッド・デーモンでダイレクトアタック！
「ぐぅ……！」
琰魔竜の燃える拳が、マッケンジーの身を叩く。
終始余裕を崩さなかったマッケンジーも、攻撃力3000の直接攻撃にはさすがに苦悶の声を上げた。
マッケンジー
ＬＰ：10800→7800
「くぅ……くくく……」
「メインフェイズに入る！ 魔法カード『壺の中の魔術書』！ 全てのプレイヤーは、カードを三枚ドローできる」
星華
手札：1→4
あずさ
手札：1→4
マッケンジー
手札：0→3
「よし……魔法カード『融合』発動！」
「『融合』！？ 星華さん、融合も使うんですか？」
「ああ……場の機械族『レアル・ジェネクス・ターボ』と、手札の炎族『ジェネクス・ヒート』を融合……」
「融合召喚！ 『重爆撃禽 ボム・フェネクス』！」
『重爆撃禽 ボム・フェネクス』融合
レベル8
攻撃力2800
「ボム・フェネクスの効果！ 一ターンに一度、こいつの攻撃を放棄する代わりに、自分のメインフェイズにフィールド上のカード一枚につき、300ポイントのダメージを相手に与える」
「フィールドのカードの枚数って……」
『重爆撃禽 ボム・フェネクス』
『琰魔竜 レッド・デーモン』
『サタンクロース』
『機甲部隊の最前線』
『洗脳解除』
セット
『閃珖竜 スターダスト』
『真六武衆－エニシ』
『六武の門』
『漆黒の太陽』
『神の居城－ヴァルハラ』
『冥界の宝札』
『天空の聖域』
「十三枚。3900ポイントのダメージだ！
不死鳥の身から発射された、いくつもの爆撃がマッケンジーの場に降り注いだ。
マッケンジー
ＬＰ：7800→3900
「さすがに削り切るのは無理だな。私にできるのはここまでだ……カードをセット。ターンエンドと同時に、『サタンクロース』の効果！ このカードが自身の効果で特殊召喚されたターンのエンドフェイズ、こいつのプレイヤーはカードを一枚ドローできる」
星華
手札：1→2
星華
ＬＰ：2999
手札：2枚
場 ：モンスター
『重爆撃禽 ボム・フェネクス』攻撃力2800
『琰魔竜 レッド・デーモン』攻撃力3000
『サタンクロース』守備力2500
魔法・罠
永続魔法『機甲部隊の最前線』
永続罠『洗脳解除』
セット
セット
あずさ
ＬＰ：2200
手札：4枚
場 ：モンスター
『閃珖龍 スターダスト』攻撃力2500
『真六武衆－エニシ』守備力700
魔法・罠
永続魔法『六武の門』武士道カウンター：2
マッケンジー
ＬＰ：3900
手札：3枚
場 ：モンスター
無し
魔法・罠
永続魔法『漆黒の太陽』
永続魔法『神の居城－ヴァルハラ』
永続魔法『冥界の宝札』
フィールド魔法『天空の聖域』
「本当にすごい……」
最初に味方も巻き込んでモンスターを破壊したせいで、ライフを回復させたことはともかく……こちらのカード効果を把握した上でマイナスを補填し、適格なカードプレイと決断力によって生き残った無敵とも思える神のカードをあっさり処理して、かと思えば、回復させてしまった分も、戦闘と効果ダメージで帳消し。
しかも、相手もではあるが、パートナーの手札まで回復させてくれるおまけつき。
「星華さん、すごく強くなったんですね……」
そして星華も、あずさの方を見た。
「お前は逆に、あの頃よりも弱くなったように感じるぞ」
「う……っ」
思わず感嘆の声を上げたあずさに向かって、星華はそう返した。
「最初のターンは、さすがのカードの回転とキレを見せていたが、二度目のターンでは明らかに息切れを起こしていた。それでも出すべきカードの選択や使い方はさすがだが……他の決闘でも、似たような理由でピンチになっていたのではないか？」
「そ、そんなことまで分かるんですか……」
「何となくな。しかも、私や梓と同じ、シンクロを自由に使えなかった分、ピンチになれば逆転も難しかったろう？ シンクロ以外に、切り札らしい切り札も少ないようだしな」
「うぅ……」
「威力は二の次にした圧倒的な物量に物を言わせて、それで強引に押し切ることができれば勝利することはできる。実際、並大抵の決闘者ならそれで楽勝だろう。だが、いざその物量を交わされ弾切れを起こせば、そこを狙われてお終いだ。弾丸の残りは常に把握し、その時々に必要なだけ使用する。ゲリラ戦においての常識だぞ？」
「例えが……でも、そうですね」
ジェネックスが始まってから今日までの決闘を振り返って、自分なりにも、このデッキや戦い方の弱点を考えていたはずだった。だがいざ気が付いてみたら、一番肝心な決闘でようやく気付いた上、それを星華さんにサポートされる始末。
（もっとも、それでも今の私より、圧倒的に強いのは事実だがな……）
そんな、自分の現状を情けなく感じる、あずさだが……
今は、反省する時間も惜しい。自分よりずっと弱いと思っていたのが、ずっとずっと強くなっていた偉大な先輩が助けてくれたんだ。それを、無駄にしちゃいけない。
「星華
あずさ
手札：4→5
「この瞬間、『The SUN』が復活する。さらに『漆黒の太陽』の効果で、攻撃力を1000上げる」
『The supremacy SUN』
レベル10
攻撃力3000+1000
「関係ない……三枚目の『六武衆の結束』発動！ 場にエニシがいることで、手札の『六武衆の師範』を特殊召喚！」
『六武衆の師範』
レベル6
攻撃力2100
『六武の門』
武士道カウンター：2→4
『六武衆の結束』
武士道カウンター：0→1
「『六部の門』の効果！ 武士道カウンターを四つ取り除いて、デッキから二枚目の『真六武衆－キザン』を手札に。そのまま特殊召喚！」
『真六武衆－キザン』
レベル4
攻撃力1800+300
『六武の門』
武士道カウンター：4→0→2
『六武衆の結束』
武士道カウンター：1→2（MAX）
「結束を墓地へ送って、カードを二枚ドローする」
あずさ
手札：3→5
「エニシの効果！ 一ターンに一度、墓地の六武衆二体を除外することで、相手フィールドのモンスター一体を手札に戻す。墓地の『六武衆－ヤイチ』と『真六武衆－キザン』を除外して、『The SUN』を手札に戻す！」
エニシの刃の閃光が、男の場の黒い太陽を照らし出す。
それを受けた黒い太陽は姿を消した。
マッケンジー
手札：3→4
「これでもう、復活はできない……エニシを攻撃表示に変更」
『真六武衆－エニシ』
レベル4
攻撃力1700+500
「バトル！」
「では、君のバトルフェイズ中、墓地の『超電磁タートル』をゲームから除外し、バトルフェイズを終了させる」
「うそ……！」
男の墓地から、電磁に光る亀が消えた。そして、そこから発生した磁力が、あずさのモンスター全てを封じた。
「『天使の施し』の時に……カードを二枚セット。ターンエンド」
あずさ
ＬＰ：2200
手札：3枚
場 ：モンスター
『閃珖龍 スターダスト』攻撃力2500
『六武衆の師範』攻撃力2100
『真六武衆－キザン』攻撃力1800+300
『真六武衆－エニシ』攻撃力1700+500
魔法・罠
永続魔法『六武の門』武士道カウンター：2
セット
セット
星華
ＬＰ：2999
手札：2枚
場 ：モンスター
『重爆撃禽 ボム・フェネクス』攻撃力2800
『琰魔竜 レッド・デーモン』攻撃力3000
『サタンクロース』守備力2500
魔法・罠
永続魔法『機甲部隊の最前線』
永続罠『洗脳解除』
セット
セット
マッケンジー
ＬＰ：3900
手札：4枚
場 ：モンスター
無し
魔法・罠
永続魔法『漆黒の太陽』
永続魔法『神の居城－ヴァルハラ』
永続魔法『冥界の宝札』
フィールド魔法『天空の聖域』
「中々楽しませてくれるな。次はどうする……私のターン！」
マッケンジー
手札：4→5
「魔法カード『貪欲な壺』！ 墓地のモンスター五体をデッキに戻し、その後カードを二枚ドローする。私はこの五体をデッキに戻す」
『神聖なる球体』
『神聖なる球体』
『朱光の宣告者』
『マスター・ヒュペリオン』
『THE DEVILS AVATAR』
マッケンジー
手札：4→6
「まずは、その厄介なエニシに消えてもらおう。魔法カード『ブラック・コア』！ 手札一枚……『The SUN』を捨てることで、フィールド上の表側表示のモンスター『真六武衆－エニシ』をゲームから除外する」
マッケンジー
手札：5→4
黒い太陽が再び墓地に眠る。直後に発生した、無機質な暗い球体に、光の武士は飲み込まれた。
『真六武衆－キザン』
攻撃力1800
「くくく……『神の居城－ヴァルハラ』の効果。私の場にモンスターが存在しないことで、手札の天使族『イーバ』を特殊召喚」
『イーバ』
レベル1
守備力200
「レベル1、守備力200……」
「せっかくヴァルハラがあったというのに、その程度のモンスターしか呼び出せんとはな」
宇宙服を着た、エイリアンを思わせる小さなモンスターの登場に、二人とも思わず力が抜けてしまう。だが、マッケンジーは笑みを絶やさない
「では、私も見せるとしよう。チューナーモンスター『神秘の代行者 アース』を召喚！」
青と、緑と、正しく地球の色に相応しい二色の翼が広がった。
その翼を背に広げるのは、正に神秘の名が相応しい、純白の身を持つ美しい天使。
水晶の輝く杖を握った、地球の名を持つ天使がフィールドを舞う。
『神秘の代行者 アース』チューナー
レベル2
攻撃力1000
「え……チューナー？」
「チューナーだと！？」
その言葉には、さすがの二人も、直前の脱力も忘れて声を上げた。
「アースの効果。こいつの召喚に成功した時、デッキから代行者一枚を手札に加えることができる。『天空の聖域』が場にある時、代わりに『マスター・ヒュペリオン』を手札に加えられる」
マッケンジー
手札：2→3
「墓地から『奇跡の代行者 ジュピター』を除外、『マスター・ヒュペリオン』を特殊召喚！」
再びフィールドに、炎の翼が広がった。その炎の中心には、冷たい漆黒の鎧の輝きが立っていた。
『マスター・ヒュペリオン』
レベル8
攻撃力2700
「『マスター・ヒュペリオン』の効果！ 墓地の光属性、天使族の『神聖なる球体』を除外する。破壊するのは『琰魔竜 レッド・デーモン』」
「くそ……！」
ヒュペリオンの前に浮かび上がる白い球体。それが悪魔の竜へと飛んでいき、その身を消滅させてしまった。
「もう一度だ。『裁きの代行者 サターン』を除外し、そうだな……小日向星華、君が前のターンに伏せたそのカードを破壊しよう」
同じように、紫色の天使が飛んでいき、星華の伏せカード『ドレインシールド』を破壊した。
「ふむ、それほど重大なカードでもなかったか……まあいい」
「では……行こうか！」
『……！！』
「教えてやろう！ 太陽など、私にとっては餌の一つに過ぎん！ レベル8の『マスター・ヒュペリオン』と、レベル1の『イーバ』に、レベル2の『神秘の代行者 アース』をチューニング！」
二人が散々行ってきた動作を、無いと思っていた目の前の男が執り行った……
「星をも喰らう宇宙の使者よ。矮小なる大地に降り立ち、歯向かう愚行の全てを呑み込め」
「シンクロ召喚！ 『星態龍』！！」
「……あれ？」
薄暗くなったフィールドで、確かに三体のモンスターは墓地へ送られた。
なのに、男が召喚したはずのモンスターは、その姿を現さない。
「おい、貴様の召喚したモンスターはどこだ？」
男は不気味にほくそ笑みながら、両手を広げた。
「『星態龍』が見えないか？ ではヒントをあげよう。今、私の場には、『The SUN』も邪神もいない。なのに、『天空の聖域』は、ここまで暗いフィールドだったか？」
それを聞いて、二人とも疑問に感じた。
今までも、明るくなったり暗くなったり、このフィールドの光度は変化していた。だがそれは、『The SUN』や、アバターと言った、闇を司るカードがフィールドに召喚されたから。それ以外のモンスターが召喚されたとしても、フィールドの明るさが変化することはなかった。
それが今は、それらのモンスターはいないのに、薄暗く変わってしまっている。
まるで、何かが光源の前にいて、光を遮断しているように……
「……まさか！？」
星華が声を上げて、上を見上げる。あずさも釣られて上を見上げた。
「あれは……っ」
「ウソでしょう……！」
フィールド魔法『天空の聖域』。雲の上にあるフィールドから見れば、太陽の位置は普段よりも近い場所にある。たとえ仮想立体映像でも、その大きさは、現実の太陽と何ら変わりない。
そして、そんなフィールドを照らす太陽に、そのモンスターは、いた。
太陽まで遠くとも、そこにいるモンスターが、浮かぶ太陽に巻き付いて、その光のほとんどを邪魔していることが分かる。普段直視できないほどの太陽を、直視してしまえるまでに覆い隠せる巨大なもの。
ただ太陽の前にいるとか、太陽を背にしているだけだとか、そんな生ぬるい次元じゃない。
地球よりも遥かに巨大な太陽に、巻き付いている、巨大をも超えた、極大のなにか……
「そう。あれが『星態龍』だ」
『星態龍』シンクロ
レベル11
攻撃力3200
「『星態龍』はその巨体ゆえに、シンクロ召喚を封じられることはなく、また太陽の高さに現れたことで、シンクロ召喚時にあらゆるカード効果は発動できない」
元より二人の場に、それらのタイミングで発動できるカードは無いが、それどころではないほどに圧倒されてしまっていた。
「驚いてくれたようで嬉しいよ……シンクロ素材として墓地へ送られた『イーバ』の効果。このカード以外の、フィールドまたは墓地の光属性、天使族のモンスターを二体まで除外する。除外した数だけデッキから、『イーバ』を除くレベル2以下の光属性、天使族のモンスターを手札に加える。私は墓地の『神秘の代行者 アース』、『創造の代行者 ヴィーナス』の二体を除外し、デッキから、レベル2の『朱光の宣告者』、レベル1の『クリアクリボー』を手札に加える」
マッケンジー
手札：2→4
「このモンスターは、場に『天空の聖域』がある時、特殊召喚できる。チューナーモンスター『死の代行者 ウラヌス』を特殊召喚！」
黒い翼と黒い衣、黒い皮膚に、禍々しい鎌。
これまでの代行者達とは明らかに違う、死神を思わせる闇の天使がフィールドに現れた。
『死の代行者 ウラヌス』チューナー
レベル5
攻撃力2200
「バトルだ。『星態龍』で、『重爆撃禽 ボム・フェネクス』を攻撃！」
太陽に巻き付く極大の龍。その姿は、地上からは捉えきれない。
だがそれでも、龍がその巨大な口に、巨大な熱をため込んでいるのは分かる……
「フィード・ザ・ゴッド・オブ・サン！！」
そして、それを地上に向けて、一気に吐き出した。
「く……罠発動『魔法の筒』！ 相手モンスターの攻撃を無効とし、その攻撃力分のダメージを相手に返す！」
ここまで発動できなかった罠カードが表になり、星華の前に、二本の筒が現れる。
その筒の一つに、飛んできた熱が吸い込まれていき……
それに耐えかねたかのように、筒はひび割れ、砕け散った。
「なに！？」
「残念だが、『星態龍』が攻撃する場合、ダメージステップ終了時まで他のカードの効果を受けない」
そんな説明を受けながら、発射された巨大なエネルギーは、星華の前の不死鳥を、そして、フィールドを呑み込んだ。
「ぐおおおおおおおおおおおお！！」
「きゃあああああああああああ！！」
その巨大すぎる攻撃に、二人ともが後ろへと吹き飛んだ。
星華
ＬＰ：2999→2599
「続けて、『死の代行者 ウラヌス』で、『六武衆の師範』を攻撃！」
闇の天使が飛び立ち、あずさの場の師範を切り裂いた。
あずさ
ＬＰ：2200→2100
「くくく……カードを伏せる。ターンエンド」
マッケンジー
ＬＰ：3900
手札：2枚
場 ：モンスター
『星態龍』攻撃力3200
『死の代行者 ウラヌス』攻撃力2200
魔法・罠
永続魔法『漆黒の太陽』
永続魔法『神の居城－ヴァルハラ』
永続魔法『冥界の宝札』
セット
フィールド魔法『天空の聖域』
星華
ＬＰ：2599
手札：2枚
場 ：モンスター
『サタンクロース』守備力2500
魔法・罠
永続魔法『機甲部隊の最前線』
永続罠『洗脳解除』
あずさ
ＬＰ：2100
手札：3枚
場 ：モンスター
『閃珖龍 スターダスト』攻撃力2500
『真六武衆－キザン』攻撃力1800
魔法・罠
永続魔法『六武の門』武士道カウンター：2
セット
セット
「……平家あずさ、生きているか？」
「なん……とか……」
派手に吹っ飛んだ二人とも、どうにかその体を起こす。
相変わらず、見上げても『星態龍』の姿は輪郭しかとらえられない。
圧倒的な大きさ。圧倒的な強さ。
それを目の前にしながら……
「まだ、やれるな？」
「もちろん。まだまだやれます！」
「あれだけのモンスターを前にして、まだ、諦めていないの？」
「くくく……いいぞ、それでこそ、ここまで来た甲斐があるというものだ！」
「ふんっ……最初に言われた通り、十分に楽しませてもらった。その礼をさせてもらおう。私のターン！」
星華
手札：2→3
「この瞬間、墓地に送られた『The SUN』を特殊召喚！ 『漆黒の太陽』の効果で、攻撃力を1000アップさせる！」
もはや、何度目となる光景だろう。
極大の龍の影響で、暗くなったその空間に、太陽の名を冠した、傲慢の光は再び甦った。
『The supremacy SUN』
レベル10
攻撃力3000+1000
「そんなものを何度呼び出したところで、もはや哀れみしか感じん……魔法カード『終わりの始まり』！ 墓地に闇属性モンスターが七体以上存在する時、うち五体をゲームから除外し、カードを三枚ドローする」
『リサイクル・ジェネクス』
『A・ジェネクス・アクセル』
『A・O・J リーサル・ウェポン』
『A・O・J コズミック・クローザー』
『A・O・J ライト・ゲイザー』
星華
手札：2→5
「よし……速攻魔法『サイクロン』！ この効果で、貴様の場の『漆黒の太陽』を破壊！」
「ほぅ……」
星華の発動したカードから、巨大なつむじ風が吹き荒れる。それが、マッケンジーの場の永続魔法を吹き飛ばした。
「魔法カード『死者蘇生』！ 甦れ、『琰魔竜 レッド・デーモン』！」
足元の地面を突き破り、巨大な拳が獄炎と共に現れる。
全てを燃やし尽くさんとする、悪魔の竜は雄たけびを上げた。
『琰魔竜 レッド・デーモン』シンクロ
レベル8
攻撃力3000
「またそのドラゴンの効果を使うか？ それしか知らないところを見るに、君こそ哀れみしか感じられんがね……」
「なんとでも言うがいいさ。私は決めたのだ。心に決めた男のためなら、みっともなくもなろうと。全てを破壊する魔王にもなろうと……平家あずさ、準備はいいな？」
「はい！」
「『琰魔竜 レッド・デーモン』の効果！」
星華が叫び、悪魔竜の全身が炎に包まれる……
「このカード以外の攻撃を放棄することで、このカードを除く全ての攻撃表示モンスターを破壊する。
「では、罠発動『ブレイクスルー・スキル』！」
琰魔竜が翼を広げようとした直後……
何事も無かったかのように、翼を閉じ、燃え上がる炎を鎮火させた。
「効果モンスター一体を対象とし、そのモンスター効果をターン終了時まで無効にする」
「そんなことだろうとは思っていたさ……私はレッド・デーモンと、『サタンクロース』を生贄に捧げる！」
「レッド・デーモンを生贄！？」
「現れよ！ 火星より来たりし炎獄の焔、『
星華のフィールドに、一瞬の宇宙が広がる。その下の地面から炎が吹きあがり、灼熱を振いし惑星のカードはフィールドに君臨した。
『
レベル8
攻撃力2600
「ほぉ？ プラネットか……」
「まだ終わらんぞ……ライフを2000支払い、魔法カード『次元融合』発動！」
星華
ＬＰ：2599→599
「互いにゲームから除外されたモンスターを、可能な限り特殊召喚する」
「切り札を引き当てていたか……」
『リサイクル・ジェネクス』チューナー
レベル1
守備力400
『A・ジェネクス・アクセル』シンクロ
レベル8
攻撃力2600
『A・O・J ライト・ゲイザー』シンクロ
レベル8
攻撃力2400+200
『A・O・J リーサル・ウェポン』
レベル5
攻撃力2200
『真六武衆－エニシ』
レベル4
攻撃力1700+500
『真六武衆－カゲキ』
レベル3
守備力2000
『六武衆の影武者』チューナー
レベル2
守備力1800
『六部の門』
武士道カウンター：2→4
『裁きの代行者 サターン』
レベル6
攻撃力2400
『英知の代行者 マーキュリー』
レベル4
守備力1700
「ライト・ゲイザーの力で『星態龍』を破壊するつもりだったのだろうが……あいにく今、私の墓地の光属性モンスターは『イーバ』の一枚だけだ」
「それがどうした……レベル8の闇属性『A・ジェネクス・アクセル』に、レベル1の『リサイクル・ジェネクス』をチューニング！」
「奔れ！ 漆黒の機体！ 同調の名のもとに、無垢なる大地を黒煙で包み込め！」
「シンクロ召喚！ 発進せよ、『レアル・ジェネクス・クロキシアン』！」
星華らの頭上を、鉄道が走った。
その鉄道の上を、白い蒸気を上げながら、漆黒の列車が奔り抜ける。
列車は後ろの荷台を切り離し、単体となった機関車は、その身を機関車から人型に変形させた。
『レアル・ジェネクス・クロキシアン』シンクロ
レベル9
攻撃力2500
「クロキシアンの効果！ こいつのシンクロ召喚に成功した時、相手の場の、レベルが最も高いモンスター一体のコントロールを得る。インヴァイト・スモーク！」
天高く昇る太陽に向かって、黒汽車の身から黒煙が発射された。
それがフィールドを包み込み、頭上の太陽へ向かっていく……
「忘れたか？ 手札の『朱光の宣告者』の効果！ 手札の天使族『クリアクリボー』と共に墓地へ送ることで、そのモンスター効果を無効にし、破壊する」
マッケンジー
手札：2→0
黒い毛玉の小さなモンスターの頭上に、朱色の光が強く輝く。
その光に照らされた黒汽車は、そのまま光の中へ溶けていった。
「まあ、そうだろう……だが、これで貴様の防御札は全て奪った」
『The blazing MARS』
攻撃力2600
『A・O・J ライト・ゲイザー』
攻撃力2400+200×3
『A・O・J リーサル・ウェポン』
攻撃力2200
「バトルだ！ リーサル・ウェポンで、『英知の代行者 マーキュリー』を攻撃！」
リーサル・ウェポンの赤い目から、青い天使目掛けてレーザーが発射される。それが、青い天使の眉間を貫いた。
「リーサル・ウェポンが光属性モンスターを破壊したことで、カードを一枚ドロー」
星華
手札：1→2
「そして、それがレベル4以下の闇属性モンスターだった場合、特殊召喚できる……こいつは違うが、まあいい。更に、貴様の墓地に光属性モンスターが増えたことで、ライト・ゲイザーの攻撃力はアップする！」
『A・O・J ライト・ゲイザー』
攻撃力2400+200×4
「攻撃力が、『星態龍』と並んだ！」
「まだまだいくぞ。『The blazing MARS』で、『裁きの代行者 サターン』を攻撃！ Syrtis Major！！」
火星の巨大な口から、巨大な火炎弾が放たれ、それが土星の天使を飲み込んだ。
「……『天空の聖域』の効果により、天使族モンスターの戦闘によるダメージは無い」
「だがこれで……」
『A・O・J ライト・ゲイザー』
攻撃力2400+200×5
「ライト・ゲイザーで、『星態龍』を攻撃！ イルミネイト・イレイズ！！」
ライト・ゲイザーの全身に備えられたスポットライトの、全てが太陽に向けられた。
全ての光が一点に集約し……
そこに巻き付いていたはずの、星を喰らいし極大の龍を蒸発させた。
マッケンジー
ＬＰ：3900→3700
「カードを伏せる。これでターンエンド」
星華
ＬＰ：599
手札：1枚
場 ：モンスター
『The blazing MARS』攻撃力2600
『A・O・J ライト・ゲイザー』攻撃力2400+200×6
『A・O・J リーサル・ウェポン』攻撃力2200
魔法・罠
永続魔法『機甲部隊の最前線』
永続罠『洗脳解除』
セット
マッケンジー
ＬＰ：3700
手札：0枚
場 ：モンスター
『The Supremacy SUN』攻撃力3000
『死の代行者 ウラヌス』攻撃力2200
魔法・罠
永続魔法『神の居城－ヴァルハラ』
永続魔法『冥界の宝札』
フィールド魔法『天空の聖域』
あずさ
ＬＰ：2100
手札：3枚
場 ：モンスター
『閃珖龍 スターダスト』攻撃力2500
『真六武衆－キザン』攻撃力1800+300
『真六武衆－エニシ』攻撃力1700+500
『真六武衆－カゲキ』守備力2000
『六武衆の影武者』守備力1800
魔法・罠
永続魔法『六武の門』武士道カウンター：4
セット
セット
「お前が決めろ！ 平家あずさ！」
「……はい！ わたしのターン！」
あずさ
手札：3→4
「魔法カード『戦士の生還』！ 墓地の戦士族モンスター一体を手札に戻す。わたしは『真六武衆－シエン』をエクストラデッキに戻す。レベル3の『真六武衆－カゲキ』に、レベル2の『六武衆の影武者』をチューニング！」
「シンクロ召喚！ 誇り高き炎刃『真六武衆－シエン』！！」
『真六武衆－シエン』シンクロ
レベル5
攻撃力2500
『六武の門』
武士道カウンター：4→6
「『六部の門』の効果！ 武士道カウンターを四つ取り除いて、デッキから『真六武衆－キザン』を手札に、そのまま特殊召喚！」
『真六武衆－キザン』
レベル4
攻撃力1800+300
『六武の門』
武士道カウンター：6→2→4
「ここで、エニシの効果を使えば『The SUN』を手札に戻せるけど……どうせ意味ないよね」
「意味がないなら、どうするね？」
「こうする。『真六武衆－キザン』二体を生贄に捧げて……召喚！ 偉大なる木星の化身、『
男の太陽、星華の火星と同じく、あずさの頭上にも一瞬の宇宙が広がる。
そこに、白と茶色の球体が浮かび上がった。太陽系最大の惑星、木星の色だ。
そこを中心に、緑の鎧と、白の爪が、人の形に伸びていく。
名前が示す通りの、偉大なる戦士がフィールドに現れた。
『
レベル8
攻撃力2500
『真六武衆－エニシ』
攻撃力1700
「ほぅ……君もデッキに入れていたか」
「……」
マッケンジーの反応に、微笑と苦笑が入り混じった、複雑な表情を浮かべてしまう。
最初に星華に渡された時は、いくら戦士族だから無理なく投入できると言われても、梓くんを狙う奴が使っていた不吉なカードなんか……そう思っていた。
けど、彼を守るために、なりふり構ってる場合じゃないことも事実だ。
だから、星華さんがそうしたように、どれだけ嫌悪すべきカードだとしても、彼のためならと割り切って、プライドなんか捨てて使うことにした。
―「木星並みのバストサイズを誇るお前には、ピッタリなカードだ」
そんなジョークにはちょっぴり頭に来たものの……
どうやら、それが最高のタイミングで来てくれたと感じた。
「『六部の門』の効果！ 武士道カウンターを四つ取り除いて、墓地の『真六武衆－キザン』を手札に戻す」
『六部の門』
武士道カウンター：4→0
あずさ
手札：2→3
「『The grand JUPITER』の効果！ 一ターンに一度、手札二枚を捨てることで、相手フィールドのモンスター一体を、このカードに装備できる」
あずさ
手札：3→1
「
あずさの手札二枚を吸い、中心の木星から引力が発生。
そこへ飛び込んでいくように、マッケンジーの黒い太陽は消えていった。
直後、木星の鎧の戦士の身から、黒い太陽の傲慢な熱が噴きだす。
「木星が太陽を飲み込むとはな……」
「『The grand JUPITER』の攻撃力は、この効果で装備したモンスターの元々の攻撃力分、アップする」
『The grand JUPITER』
攻撃力2500+3000
「更に装備魔法『漆黒の名馬』をシエンに装備！」
『真六武衆－シエン』
攻撃力2500+200
「お前のエースモンスターを吸い込んだ、お前がバラまいたカードで決めてやる」
「……」
「バトル！ 『真六武衆－シエン』で、『死の代行者 ウラヌス』を攻撃！ 紫流獄炎斬！」
名馬にまたがり、速度を得たことで威力を増したシエンの刃が、死神の天使の抵抗も許さずその身を切り裂いてしまう。
「『天空の聖域』の効果で、私にダメージは無い……」
「『The grand JUPITER』で直接攻撃！
戦士が胸に抱く木星から、巨大なつむじ風が発生する。
木星の表面に、何百年と変わらず浮かび上がる美しいまだら模様。
その模様を作り出す、何百年も止むことのない巨大嵐を、目の前に立つ、たった一人の敵のために、放たれた。
「これで本当に終わり！！」
「ここまでよくやったと褒めておこう……墓地の『クリアクリボー』の効果！」
木星の嵐が目の前まで来た時……
男の決闘ディスク、その墓地から、黒い毛玉が飛び出した。
その毛玉は、突然二つに割れたかと思えば、その中から新たに小さな毛玉が飛び出す。
昔からある異国の人形を思わせるその生き物は、次々とその身を二つに割っていく。
「相手の直接攻撃時に、墓地のこのカードを除外し、私はカードを一枚ドローする。それがモンスターだった場合、そのモンスターを特殊召喚し、攻撃対象をそのモンスターに移し替える」
「それは、『イーバ』の効果で手札に加えていたカードか……！」
「そう。『朱光の宣告者』の効果で、バーミリオンと共に捨てたカードだ」
得意になりながら、男はデッキに手を添える。
「でも、今更カードを一枚引いたって、都合よくモンスターを引けるわけない。まして、ジュピターの攻撃力は5500もある。そんなモンスター……」
「くくく……感じるぞ」
あずさの声を無視して、男はカードをドローした。
マッケンジー
手札：0→1
そして、その邪悪な笑みを、より強く、より醜悪に染めた。
「引いたよ……特殊召喚、『邪神アバター』！！」
再び、『天空の聖域』が闇に包まれる。
その闇は一ヵ所に集まると、すぐさま形を人型に変えた。
それは、あずさが操る、偉大なる木星と同じ形となった。
『THE DEVILS AVATER』（『The grand JUPITER』）
レベル10
攻撃力5500+1
「うそ、アバター？ こんなタイミングで……？」
「バトルはまだ続いているぞ」
男の発言で、あずさは我に返り、フィールドを見る。
木星は既に、黒い木星に向かっていた。
「まずい……スターダストの効果で、ジュピターを戦闘破壊から守る！ 波動音壁！」
木星の目の前に、見えない音の壁が広がった。
それが、突き出した木星の拳を弾き、下がらせた。
「破壊はされない。だが、ダメージは受けてもらう」
「分かってるよ。うぅ……！」
あずさ
ＬＰ：2100→2099
「……エニシの効果！ 墓地のキザン二体を除外して、『邪神アバター』を手札に戻す！」
あずさの墓地から、二人の漆黒の鎧武者が取り除かれる。
それを受けたエニシの、光の刃が邪神を照らすが……
邪神はまるで意に介さず、ただその場に佇むだけ。
「そりゃそうだよね……ターンエンド。エンドフェイズにジュピターの効果！ 自分か相手のターンのエンドフェイズ、このカードに装備されたモンスター一体を、自分フィールドに特殊召喚できる。『The SUN』を守備表示で特殊召喚！ ジュピターの攻撃力も元に戻る」
『The supremacy SUN』
守備力3000
『THE DEVILS AVATAR』（『A・O・J ライト・ゲイザー』）
攻撃力3600+1
あずさ
ＬＰ：2099
手札：0枚
場 ：モンスター
『閃珖龍 スターダスト』攻撃力2500
『真六武衆－シエン』攻撃力2500+200
『真六武衆－エニシ』攻撃力1700
『The grand JUPITER』攻撃力2500
『The supremacy SUN』守備力3000
魔法・罠
永続魔法『六武の門』武士道カウンター：0
装備魔法『漆黒の名馬』
セット
セット
星華
ＬＰ：599
手札：1枚
場 ：モンスター
『The blazing MARS』攻撃力2600
『A・O・J ライト・ゲイザー』攻撃力2400+200×5
『A・O・J リーサル・ウェポン』攻撃力2200
魔法・罠
永続魔法『機甲部隊の最前線』
永続罠『洗脳解除』
セット
マッケンジー
ＬＰ：3700
手札：0枚
場 ：モンスター
『THE DEVILS AVATER』攻撃力3400+1
魔法・罠
永続魔法『神の居城－ヴァルハラ』
永続魔法『冥界の宝札』
フィールド魔法『天空の聖域』
（手札を使い切っても決められなかった……けど、まだ、大丈夫。相手の手札はゼロ。こっちにはスターダストに、シエンだっているし、エニシの効果だってまだ使える。いざって時の伏せカードもある。星華さんのフィールドだって盤石だし、いくら邪神がいたって、これだけの布陣を簡単に突破することなんて……）
「私のターンだ。ドロー」
マッケンジー
手札：0→1
あずさは自分自身に対して、何度も大丈夫だと問いかけていた。
そして、それを感じているように、マッケンジーの微笑みは邪悪なものだった。
「まずは、墓地に眠る罠カード『ブレイクスルー・スキル』の効果」
「前の私のターンに発動した罠……！」
「そう。こいつは、自分のターンに墓地から除外することで、相手フィールドの効果モンスター一体の効果を、このターンの間無効にできる」
「えぇ……！？」
「この効果は、このカードが墓地へ送られたターンは発動できないが、そのターンも既に終えているからな。問題なく発動できる。対象は、『真六武衆－シエン』だ」
「うぅ……無効にしても意味がない……っ」
シエンの身が、怪しい光に包まれた。すると、シエンから立ち上っていた力は消失してしまった。
「これで魔法・罠が問題なく使えるな。『命削りの宝札』！ 手札が五枚になるよう、カードをドローし、五ターン後、全ての手札を墓地に捨てる」
「くそ……引き当てたのか！」
マッケンジー
手札：0→5
「もっとも、もはや五ターンも必要無いがな……手札を一枚捨てることで、魔法カード『ライトニング・ボルテックス』発動！ 相手フィールドの表側表示のモンスター、全てを破壊する！」
『……っ！！』
マッケンジー
手札：4→3
二人が驚愕した瞬間には、二人の頭上に黒雲が発生、そこから眩い光が漏れた。
「……そ、装備魔法『漆黒の名馬』を破壊して、シエンを破壊から守る！ 更に、スターダストの効果！ スターダスト自身を破壊から護る！ 波動音壁！！」
その宣言の直後、シエンのまたがっていた名馬が、主人の身代わりに落雷を受けた。スターダストは、目の前に見えない壁を作る。直後、その二体を除く、二人が並べたモンスター全て、雷に飲まれ消し炭と化していた。そして、アバターもまた、残った者へと姿を変える。
『真六武衆－シエン』
攻撃力2500
『THE DEVILS AVATER』（『閃珖竜 スターダスト』）
攻撃力2500+1
「悪あがきだな……墓地の『裁きの代行者 サターン』を除外し、手札の『マスター・ヒュペリオン』を特殊召喚！」
『マスター・ヒュペリオン』
レベル8
攻撃力2700
『THE DEVILS AVATER』（『マスター・ヒュペリオン』）
攻撃力2700+1
「なっ……二枚目が入っていたのか！？」
「『マスター・ヒュペリオン』の効果！ 墓地の『英知の代行者 マーキュリー』を除外、シエンを破壊させてもらおう」
みたび現れ、浮かび上がる、青色の天使。その天使が炎の武将へと飛んでいき、消滅させる。
「更に、『天空の聖域』が場にあることで、もう一度効果を使う。『イーバ』を除外することで、スターダストを破壊だ」
同じように、宇宙服姿の天使が浮かび上がり、星屑の白竜を消滅させた。
「そして、この太陽もまた、餌となる……チューナーモンスター『メンタル・カウンセラー リリー』を召喚」
ナース姿で眼鏡を掛けた、正しく白衣の天使が男の前に現れる。
もっとも、現れた天使は、カードにデザインされたものとは程遠い、冷たく、殺意のこもった鋭利な視線を二人の少女へ向けていた。
『メンタル・カウンセラー リリー』チューナー
レベル3
攻撃力400
「レベル8と、レベル3のチューナー、てことは……」
「あのカードも、二枚入っていると……っ」
「レベル8の『マスター・ヒュペリオン』に、レベル3の『メンタル・カウンセラー リリー』をチューニング！」
「シンクロ召喚！ 星を、太陽を、この宇宙をも喰らいつくせ！ 『星態龍』！！」
『星態龍』シンクロ
レベル11
攻撃力3200
再び、天空の全てを闇が包み込む。だがそれは、極大の龍が、太陽に巻き付いたからじゃない。
その遥か下、少女らの目の前。そこに浮かぶ、黒い球体が、大きくなっていくから。
巨大から、広大へ。広大から、甚大へ。甚大から、絶大へ。絶大から、極大へ……
やがて、フィールドを飲み込み、新たなフィールドと、新たな世界と呼べるほどとなったソレに向かって、太陽を隠していた龍は、待ちかねたとばかりに急降下した。
極大すぎるソレの落下は、ただ降ってくるそれだけで、世界をも破壊しかねないほどの威力を有して……
世界をも飲み込み、宇宙と化した、闇の太陽に巻き付いた。
極大の龍は、闇の太陽と一つとなり、闇の太陽もまた、極大の龍の形を模していく。
やがて、極大の龍の頭の隣に、それと全く同じ形、同じ大きさの、闇の極大の頭が浮かび上がった。
「更に、魔法カード『神の進化』を『星態龍』に対して発動。『星態龍』の攻撃力を1000ポイントアップさせる。この発動と効果は、いかなる場合であろうと無効化されない」
『星態龍』
攻撃力3200+1000
『THE DEVILS AVATAR』
攻撃力3200+1000+1
圧倒的な……
絶望的な……
究極的な……
破滅的な……
目の前の光景に、二人の少女が思い浮かべる言葉は、そんなものばかり。
圧倒的な布陣を敷いたフィールドも、一瞬で無に帰した。
かと思えば、同じように何もなかったはずの男の場には、フィールドを、世界の姿をすっかり変えてしまえるほどの、極大のモンスターが二体。
星を喰らう極大の龍と……
極大を模した禍つ神と……
星を喰らい、世界を変え、宇宙となった、そんな龍と神を前にして、星華はどうにか、思考する……
（私の場も、平家あずさの場も、モンスターは無し……二体のモンスターの、それぞれの攻撃で終わる……私のこの伏せカードを使えば、一ターンは生き延びるが……ダメだ、そんなことをしても、ライフが減るだけで、本当にただの時間稼ぎにしかならん。あの二体のモンスターを……この世界を、どうにかできるカードなど、私のデッキには……）
星さえ見えない闇の宇宙で、必死に思考を巡らせて、それでも辿り着く答えは一つ。
私達は……ここで終わる……
「バトルだ！」
男の声が、黒い二対の龍の宇宙に響き渡った。
（終わる……ここで、私は、終わる……）
目の前に、自分の終わる瞬間が、星華には見え……
「罠発動！ 『
その時、別の声が聞こえた。前からではなく、隣から……
「平家……あずさ……？」
「攻撃前のこの瞬間なら、『星態龍』の効果に関係なく発動できる。『逢魔ノ刻』は、自分または相手の墓地に眠る、通常召喚できないモンスター一体を選んで、自分の場に特殊召喚できるカード。わたしはこの効果で、星華先輩の墓地から、『琰魔 竜 レッド・デーモン』を特殊召喚！」
星華の決闘ディスク、その墓地から、赤々と熱い炎が燃え上がった。
闇に包まれたこの世界を、確かに照らす光だった。
その光を散らしながら、星華の墓地に眠る悪魔の竜が、あずさのフィールドへ君臨する。
『琰魔竜 レッド・デーモン』シンクロ
レベル8
守備力2500
「更に速攻魔法『ハーフ・シャット』！ フィールド上のモンスター一体……レッド・デーモンはこのターン、攻撃力が半分になって、戦闘では破壊されなくなる。そして……」
そこまでで一度、言葉を切り、呼吸を整えて……
そして、最後の宣言を行った。
「星華先輩の永続罠『洗脳解除』の効果で、レッド・デーモンのコントロールは、星華先輩に戻る！」
「バカなっ！」
「ほほぅ……！」
あずさの叫び、星華の驚愕、そして男の破顔。
それらが行われた一連の、最後に現れたもの。
それは、巨大な悪魔竜の身から、一時的に力の半分を奪い取る、優しい輝き。
その輝きを受け、弱りながらも確かな守護の光を得た悪魔竜は、優しき守護者から、本来の主の元へと戻った。
『琰魔竜 レッド・デーモン』
攻撃力3000/2
「なぜだ……そんなカードを伏せていたなら、お前自身の墓地のモンスターを呼び出して、自分を守ることもできたのに……」
「……すみません。本当にもう、正真正銘の弾切れです」
戸惑うばかりの星華の問いかけに、あずさは優しく微笑みながら、答えていった。
「武士道カウンターも使い切って、手札もゼロ。こんな状態でこれ以上生き残って、ターンが回ってきても、何もできないこと、目に見えてます。わたしにはもう、梓くんのこと、守れそうにないから……だから、ちょっとでも可能性がある、星華先輩に、後を託します」
「平家あずさ、お前……」
「ごめんなさい、星華先輩……」
これ以上、星華が何かを言う前に、あずさは星華へ、最後の言葉を贈った。
「わたしにできるの、ここまでです……けど、希望は残せたから、悔いは無い、です。どうか、梓くんのこと、お願いします」
「平家あずさ……！」
「梓くんのこと……守ってあげて下さい」
「良かろう。では望み通り、君から葬ってあげよう」
男の声が聞こえ、あずさは隣から、正面へと向き直る。
恐怖に震えていただけの、星華とは全く違う顔。
覚悟を決め、だが希望を託し、自分の後の未来を信じる。
そう。星華のことを……
（大バカ者が……私より、遥かに強い決闘者のくせに……！）
これで何度目だろう……
平家あずさに、敵わないと感じたのは……
（私は、ただ、自分が消える恐怖を感じることしかできなかったのに……平家あずさ、お前はこんな世界にいて、自分が消える瞬間になってもなお、梓のために……）
ここまで追い詰められながら、最後の最後まで、梓のことを考えて。
その戦いの果て、二者択一を迫られて、自分はここまでだと悟ったことで、迷うことなく自分自身を切り捨てて、私に託して。
お前より遥かに弱いのに……
恋敵なのに……
ただ、他の誰でもない、梓のために……
（狂っている……だが、それほどの愛情があるからこそ、梓は、お前のことを……）
「『邪神アバター』、平家あずさを攻撃！」
攻撃を宣言したのは、龍を模した邪神。
黒い龍の口の中に、真っ黒な、漆黒の巨大なエネルギーがたまっていき……
「フィード・ザ・ゴッド・オブ・スペース！！」
放出されたそれが、あずさの姿を呑み込んだ……
「あずさ――っ！！」
星華が最後に見えたのは……
あずさが星華に向けた、優しい微笑み……
あずさ
ＬＰ：2099→0
後ろへ吹っ飛ぶ、あずさの身。
それを見て、ひざを着く、星華。
「プレイヤーは倒したが、『ハーフ・シャット』の効果はこのターンの間続く。守備モンスターを攻撃してもダメージは与えられない。バトルは終了しよう」
なんの変わりもなく、ターンを進めるマッケンジー。
「ターンエンドだ」
マッケンジー
ＬＰ：3700
手札：0枚
場 ：モンスター
『THE DEVILS AVATER』攻撃力4200+1
『星態龍』攻撃力3200+1000
魔法・罠
永続魔法『神の居城－ヴァルハラ』
永続魔法『冥界の宝札』
フィールド魔法『天空の聖域』
星華
ＬＰ：599
手札：1枚
場 ：モンスター
『琰魔竜 レッド・デーモン』守備力2500
魔法・罠
永続魔法『機甲部隊の最前線』
永続罠『洗脳解除』
セット
「……」
視点：星華
私は……無力だ……
あの時も、梓に守られてばかりいた……
そして今も、あずさに守られ生き延びて……
何が、アカデミアの女帝だ……
何が、梓を守るだ……
守られてばかりいるのは、私の方なのに……
それでも……
ここまで共に歩み、そして、共に戦ってくれた、最愛の
ここまで助けてくれた、
――無駄にはしない……決して！
視点：外
二対の極大に飲み込まれ……
闇に包まれた漆黒の宇宙……
そんな空間にあり、闇の中へ体が沈んでいく感覚に包まれ、意識がもうろうとする中で、平家あずさは、横たわりながら確かに見えた。
男にたった一人対面する少女、小日向星華。その背中に光る、赤色の輝き。
そんな光を発している、赤く刻まれたソレは……
（あれは……竜？）
「なんだ？ その背中の、赤い光は……！」
マッケンジーも、星華の背中から、赤い光が発していることに気付いた。
だが、あずさとは違って、正面からその光の形までは見えない。
そして、そんな光を発している、張本人は……
「私のターン！」
背中の光など見えるわけもなく、男の言葉も無視して、デッキに手を添え、カードを引く。
今まで無かったはずの、光を発する、デッキトップのカードを……
星華
手札：1→2
「この瞬間、墓地に送られた『The SUN』が復活する。こいつは守備表示にしておこう」
『The supremacy SUN』
レベル10
守備力3000
何かを感じ取り、安全策として守備を固める。
そんな、邪神の太陽よりも遥かに小さな、傲慢の太陽が顔を出すも、星華はもはや、意に介さない。
「……『ADチェンジャー』を召喚！」
『ADチェンジャー』
レベル1
攻撃力0
「永続罠『血の代償』！ ライフを500支払い、モンスター一体を通常召喚する」
星華
ＬＰ：599→99
「来い！ 『救世竜 セイヴァー・ドラゴン』！」
『救世竜 セイヴァー・ドラゴン』チューナー
レベル1
攻撃力0
現れた小さなドラゴンは、救世を名乗るにはあまりに矮小な姿をしていた。
隣に立つ悪魔竜や、目の前の宇宙と化した龍たちに比べれば、遥かに弱々しい姿。
「それは……その竜は、まさか……！！」
だがそれも当然だ。この竜の役目は救世ではなく、救世する力を与えることなのだから……
「レベル8の『琰魔竜 レッド・デーモン』と、レベル1の『ADチェンジャー』に、レベル1の『救世竜 セイヴァー・ドラゴン』をチューニング！」
二枚の旗を持つ小さな戦士と、悪魔の竜、二体が闇の空へ飛びあがる。
そんな二体を、巨大な何かが包み込んだ。
星に変わったのではなく、悪魔の竜より大きくなった、大きく優しい竜の身へ……
「研磨されし孤高の光、真の覇者となりて大地を照らす。光輝け……」
「シンクロ召喚！ 大いなる魂、『セイヴァー・デモン・ドラゴン』！！」
「……」
闇の中へ沈んでいく感覚……
既に意識を手放して、それしか感じられなかった平家あずさの身を、温かいものが包み込む。
目の前が、白くなる。その身を沈めていた闇は、既に無くなっていた。
力の入らなかった体に力が入り、重たい瞼も、今なら開けることができる。
体を起こして、上を見上げた時……
闇の太陽に飲み込まれ、宇宙と化したこの世界を、優しく温かな光で照らす
赤く、黒く、長い身と、二対、四枚の天使の翼。
天使と悪魔。光と闇。それらを同時に併せ持つ、禍々しくも美しく、神々しさに溢れし者。
救うために、世界を壊す。
それを使命に地上へ舞い降りた、救世の竜の背が、あずさの目の前に浮かんでいた。
『セイヴァー・デモン・ドラゴン』シンクロ
レベル10
攻撃力4000
「これは……まさか、伝説の、『赤き竜』の力か……！？」
現れた巨大なドラゴンを見上げながら、マッケンジーは興奮した様子で、ブツブツと呟き始めた。
「そうか、それで、次々にドラゴン達が目覚めて……だが、それがなぜ今になって……いや、そうか、そうだったのか……！」
やがて、一人何かを納得して、再び星華に向き直る。
「まさかこんな所で、『伝説のシグナー』の血を引く者に出会えるとはな……！！」
「何の話だ？」
「くくく……君が知る必要はない。その力もまた、私のものとなるからだ！」
男が叫びながら、決闘ディスクを『セイヴァー・デモン・ドラゴン』に向けた時……
決闘ディスクの墓地から、例のおぞましい羽音と共に、黒光りする害虫が無数に飛び出す。
その全てが悪魔竜の身に纏わりつき、その身を覆い隠した。
「『ライトニング・ボルテックス』の効果で捨てた、『黒光りするG』の効果だ。相手がシンクロモンスター一体のみ特殊召喚した時、墓地のこいつをゲームから除外することで、そのシンクロモンスターを破壊する！」
その宣言に従い、無数の害虫たちは、救世の竜を喰らいつくそうと蠢き続けた……
「……なに？」
だが、そんな害虫たちの一匹一匹、やがて、要所要所の害虫たちは、蒸発し、煙となって消えていき……
「残念だが、セイヴァー・デモンはカード効果では破壊されない」
やがて、眩い光と共に、救世の悪魔竜は、その健在を宇宙に示した。
「くぅ……だが、そのモンスターの攻撃力では、『神の進化』で強化された『星態龍』も、その姿をコピーしたアバターも破壊できないぞ。それとも『The SUN』を狙うかね？ 守備表示で私にダメージは無いがな」
「そんなケチな考えは無い。私が狙うのは『邪神アバター』だ……」
「ほぅ……」
「無論、アバターだけではすまさん。私は、貴様の全てを破壊し尽くす！！」
叫んだ星華は、墓地に手を伸ばす。
「墓地に送られた『ADチェンジャー』をゲームから除外し、貴様の場の『星態龍』を守備表示に変更する」
墓地から小さな戦士が取り除かれると、星華を見下ろし威嚇していた星喰らう龍が、わずかに、だが確かに、脱力したように頭を下げた。
『星態龍』
守備力2800
「ちっ、『神の進化』の効果で強化されるのは攻撃力のみ。守備力は元のまま変わらない……だが、『星態龍』を破壊したところで、残ったアバターが貴様のセイヴァー・デモンの姿をコピーするだけだ」
「言ったはずだ。狙うのはあくまで『邪神アバター』だと」
「なんだと……？」
「『セイヴァー・デモン・ドラゴン』の効果！」
叫ぶと共に、『セイヴァー・デモン・ドラゴン』を見上げ、それを宣言した。
「相手フィールドのモンスター一体を選択し、その効果を無効にし、攻撃力を0にする。対象は、『邪神アバター』だ。パワー・ゲイン！」
四枚の天使の翼から、暖かな光が溢れ出る。それが、極大の黒を照らし出した時……
星喰らう龍の巻き付いた球体から、同じ形の龍の頭が引っ込んでしまった。
と同時に、極大だったはずの球体は、徐々に、徐々に、そのサイズを縮めていく。
極大から、絶大へ。絶大から、甚大へ。甚大から、広大へ。広大から、巨大へ。巨大から……
やがて、フィールドが元の姿を取り戻すと共に、黒い球体は元のサイズへと戻ってしまった。
『THE DEVILS AVATAR』
攻撃力0
「バカな……伝説の赤き龍の力は、神の耐性をも超えるというのか！？」
「この効果を発動した後、セイヴァー・デモンは対象となったモンスターの攻撃力分、攻撃力をアップさせる。もっとも、アバターの攻撃力は決まっていない以上、攻撃力は0。変動は無いがな」
それでも、救世の悪魔竜の持つ素の力は、男に、そして、力を奪われた邪神を倒すには、十分すぎるだけの威力を有していて……
「バトルだ！ 『セイヴァー・デモン・ドラゴン』で、『邪神アバター』を攻撃！」
その力を振うため、悪魔竜は飛び上がり、その身に光をため込んでいく……
「『セイヴァー・デモン・ドラゴン』が攻撃した時、フィールド上に存在する全ての守備表示モンスターは破壊される」
マッケンジーのフィールド。力を奪われた邪神の他に、極大の龍と、傲慢の太陽。その二体ともが今、守備表示……
「言ったろう。全てを破壊し尽くすと。梓を守るためならば、全てを破壊する魔王にでもなると……」
天空に向かって、右腕を突き上げる。
突き立てた人差し指の先にあるのは、仮想立体映像による偽りの空。
だが、そこを指さす彼女の気高さには、一切の偽りも陰りもない。
「私の名は、小日向星華！」
世界が、光が、少女を照らす。
何物も恐れず星に押し立つ、光を従えし美しき華。
「刮目しろ……これが私の生き様だ！！」
傍からは小さく見えようとも、彼女にとって代えがたい、ただ一人の日向を守るため。
その気高さそのままに、愛と誇りを胸に秘め……
「アルティメット・パワーフォース！！」
アカデミアの女帝……
小さな日向を守ると決めた、気高き星の華が、救世の名のもと叫んだ時……
天使の翼持つ悪魔竜の身が、眩いばかりに光り輝く。
まるで流星のごときその突撃は、傲慢の太陽を、極大の龍を、黒き邪神を、男を飲み込み、フィールドさえも飲み込んで……
この世界、この宇宙、全てを、光で包み込んだ……
マッケンジー
ＬＰ：3700→0
お疲れ～。
『クリアクリボー』ごときに邪神が呼べるのか疑問だし……
呼べたとしてそのまま維持できるもんなんか知らんし……
何より……
・
レッド・デーモンはレッド・デーモンズじゃねーし……
まあ、こういうのも今に始まったことじゃあないんだがよぉ。
そったらことで、オリカ～。
『漆黒の太陽』
永続魔法
自分フィールド上に存在するモンスターが破壊された時、そのモンスターの元々の攻撃力分だけ自分のライフポイントを回復する。
また、フィールド上に存在する自分の墓地から特殊召喚されたモンスターの攻撃力は1000ポイントアップする。
漫画版GXにて、マッケンジーが使用。
上手いこと守備を固めまくったら回復し放題にもできうるし、状況によってはミラフォや『激流葬』を躊躇させられる。
蘇生カードも最近はやたら多いから、攻撃力1000アップは単純に強力。
総じて、かなり強いカードと言えるんではなかろうか……
『神の進化』
速攻魔法
フィールド上のモンスター1体の攻撃力を1000ポイントアップする。
このカードの発動と効果は無効化されない。
遊戯王Rにて、月光と遊戯が使用。
前にも書いた通り、神以外にも使える。で、この小説では速攻魔法にしとります。
これをアバターに使っときゃあ、敗けなかったんじゃないかな……
でもこれ、無効にならないって言ってるけど、実際に効果受けた『星態龍』が攻撃したらどうなるのかしら？
攻撃力アップしたまま？ それかやっぱ、効果を受けないっていうからには、リセットされるんかいね？
まあ、攻撃させんと終わっちゃったし、ちゃんと調べてないから結局どうなるか分からんのだがよぉ……
これも二度目だから、次回以降は紹介無しね。
以上。
にしても、あっちとこっちの三部書いてた時から思ってたけど……
『真六武衆－エニシ』の絶妙な「最後の砦」感が素晴らしい、素晴らしくない？
つ～ことで、残りの敵はあと一人。
どんなことになるかな～？
また書くから、それまで待ってて。