遊戯王GX ~氷結の花~   作:大海

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しゃ~~~~……

今回の話、ほとんど説明ばっかだから、読んでて退屈かも分からんわ。
途中で眠くなったら、構わんからそのまま寝ちまっとくれ。

てなことで、行ってらっしゃい。



    最後の光

視点:外

 

「どうあっても、貴様と戦う運命は避けられんようだな……」

 

 醜く顔を歪めた斎王が、決闘ディスクを展開させた。

 目的である鍵の一つを、エドを倒して奪い取り、そのエドを人質とすることで、十代の持つ鍵も労せずして手に入れることができて。後は何の気兼ねもなく、レーザー衛星『ソーラ』を起動させれば、この世界を光で包み込むという目的を果たすことができるはずだった。

 十代は、それを止めるために決闘を挑もうとしたものの、斎王にしてみれば、もはや鍵が二つとも手に入った時点で十代に用は無い。故に、そんな決闘を受ける理由もない。

 そのため十代を無視してソーラの機動を強行しようとしたが、それを、十代の持つ精霊たちが阻止したことで、二人の決闘は避けられないものとなった。

「止めるぜ、お前のバカげた野望を!!」

 十代も、斎王に向かってディスクを展開させる。

 

 敗北したエドと、それを介抱する剣山と明日香の二人を背にした十代と。

 己が内に眠る、自身が化け物と呼び、見なした本来の人格をひた隠す斎王と。

 二人の最後の闘いが、始まった。

 

『決闘!!』

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

「……」

「……」

「……」

 

 星華、あずさ、そしてマッケンジー。

 三人の決闘の終了と同時に、発動されていたフィールド魔法がその効力を失い、景色は元の、薄暗い倉庫へと戻っていた。

 そんな倉庫の中で、立っているのは、短い黒髪と長身、そして、アカデミア随一の美貌を誇る、アカデミアの女帝。

 

 彼女の名は、小日向星華。

 

「やった……星華先輩が、勝ったー!」

 先に敗北し、倒れていたあずさが、叫びながら星華の身に抱き着いた。

「うおお! あずさ……嬉しいのは分かるが、離れろ」

 あずさの怪力を恐れつつ、普通の力加減で抱きしめられていることに安堵して、その身を離してやる。

「……決闘中も感じていたが、やはり、今さら先輩呼びはむず痒く感じるな。今まで通りの呼び方でいい」

「そうですか? ……分かりました、星華さん」

「ああ。やはりそっちの方がしっくりくる」

「じゃあ、わたしの呼び方も、今まで通りでいいですよ。名前だけじゃ、どうしても梓くんと紛らわしいですから」

「そうか……それは助かる。どの道、まだ終わっていないことだしな」

 お互いの呼び名を、今まで通りにすることを約束した後、その視線を、抱きしめ合ったお互いから、倉庫の隅に座っている、最後の一人へ向けた。

「これで、残るは貴様一人だ……受けてもらうぞ、私との決闘を」

 

「嫌」

 座っている少女、レジー・マッケンジーは、微笑みながら冷たく返事を返した。

「悪いけど、もうあなた達に用は無いわ。時間も十分稼げたし、その間に向こうから来てくれたから」

 星華が反論する前に、そんなことを言って、倉庫の出入り口の方を見る。

 星華もあずさも、反射的にそっちを見た時……

 

「……ないでね……カッ……でね……カットし……ね……」

 

 その声は、二人ともよく知っている声だった。その声が、どこかで聞いたことがある呪文を繰り返し発しているのが聞こえてくる。

 

「……ットしないでね……カットしないでね……カットしないでね……」

 

 やがて、その呪文がハッキリと聞き取れるようになり、声が目の前まで迫ってきたことを感じた瞬間……

 

「やぁああーー!!」

『やぁああーー!!』

 

 青い着物を着た絶世の美少年と、彼の精霊は、倉庫に入るなり開いた両手を前に出す、あのポーズを作りながら叫んだ。

 

『……』

 

『……どうすんのさ、梓? この空気?』

「くぅっ、やはり一人足りないせいで……!」

『いや、絶対人数関係ないから』

「では、着物が緑でなく青だったから?」

『着物も色も関係ないっての。バカな殿様じゃないんだからさぁ』

 シーンと静まり返った倉庫の中、左手を押さえながら本気で落ち込む梓に、アズサは至極真っ当な言葉を送っていた。

「梓?」

「梓くん?」

「……あら、星華さんにあずささん? どうしたのですか、こんなところに?」

 星華とあずさの二人はもちろん、梓にとっても、この二人がいることは意外で疑問だった。

 だが、そんな視線もすぐ、座っている少女へと向けた。

「まあ、それは後で良いです。私の相手は、彼女だ」

 梓がそう言うと、レジーは座っていた荷物からピョンと飛び上がり、梓と向かい合った。

「待て、梓!」

「梓くんはこんな奴と決闘しちゃダメ!」

 だが、そうして決闘しようとする梓を、左右から星華とあずさが捕まえた。

 

「なによ? せっかくやる気を出してくれてるのに、邪魔をする気?」

 

「貴様は黙っていろ!」

「えぇ……何ですか?」

「なんですかじゃなくて、とにかくダメ!」

「ダメと言われても……彼女は私の相手です」

 お互いに、お互いの事情を知らない以上、こうなってしまっても無理はない。

 二人からすれば、得体の知れないカードを使って梓を付け狙う集団。そんな奴らから、梓だけは守ろうと必死に戦ってきたのに、その梓本人が来てしまったことでこの有様。

 梓からすれば、過去(未来)から続く因縁と宿命、その最後の相手。それは、力でかろうじて出血だけは抑えている、左手の傷と痛みが証明してくれている。

 三人が三人とも、どうしてもレジーと闘うだけの理由があり、そして、自分以外に決闘させたくない事情があった。

「とにかくお前は引っ込んでいろ! お前は決闘をすることなど無いんだ!」

 

「『そう……もはや、決闘など必要ない』」

 

「そうだよ! 決闘の必要、は……あれ?」

 決闘をしようとする梓を、二人掛かりで押さえている、そんな三人、アズサとレジーを含めた五人の耳に、その声は聞こえてきた。

「今、誰が声出したの?」

「男の声……まさか!」

 この場にいる、梓以外の男は、ただ一人。

 

「……パパ?」

 声を上げた男に対して、娘がそう、声を掛けた瞬間……

 

 カァアアアアアアアアア――

 

「な、なに……!?」

 レジーが左手に装着している決闘ディスク、そのデッキから、強烈な光が輝いた。

 その光に反応するかのように、倒れていたマッケンジーは、その長身をゆらりと立ち上がらせた。

「パパ……?」

 

「ククク……」

 

 実の娘の呼びかけには答えず、不敵な笑い声を上げた時……

 立ち上がったマッケンジーの身から、何かが姿を現した。

 真っ白の不気味な肌、真っ赤な目、太く異様に長い腕、赤と黒の入り混じった、鋭利な印象の翼。

 そして、それが現れたと同時に、マッケンジーの肉体は、糸が切れたように再び倒れた。

「やはり、お前か……」

 

「レイヴン! なんのつもり!?」

 レジーが、現れたソレに向かって叫んだ瞬間……

 レジーの身が急激に引っ張られ、ソレは、レジーの首を巨大な手に掴んだ。

「かっ、あ……!」

「お前はもう、用済みということだ……デッキを置いて、消えろ!」

 レイヴンと呼ばれたソレが、叫びながらレジーの身を振り回す。

 決闘ディスクからデッキのみ取り上げられ、金髪の美少女は倉庫の入り口に向かって吹っ飛んだ。

「ああ……!」

 (あずさ)が走ろうとしたその瞬間、入り口の影から、一人の少年が飛び出した。

 少年は、飛んできたレジーに向かって飛び込んで、共に吹っ飛びながらも確かに受け止めた。

「佐倉くん!」

「……大丈夫だ!」

 叫ぶあずさに向かって、佐倉は片手を上げながら同じように叫ぶ。

 佐倉も、レジーもひとまずは無事なことを確認して、残った四人は、ソレと向き合う。

 

「私が用があるのは……お前だ、水瀬梓!」

 

 あずさが声を上げるより前に、梓の身が、レジーと同じように急激に吸い寄せられた。

「梓! レイヴン、一体何のマネだよ!?」

「くくく……言ったろう? もはやこれ以上、決闘の必要は無くなった。最後に必要なのは、この男だけだ」

 梓の首を掴むと同時に、得体の知れない力を梓に流し込む。その結果……

「ぐあああああああ!!」

「くくく……痛むか?」

 梓の左手首から、抑えていた出血が一気に溢れ、噴き出した。

 それと同時に、梓の身が、黒いエネルギーに包まれていく。それは、アズサも知らないエネルギー。だが、あずさと星華の二人は、知っていた。

「貴様!!」

「梓くんになにするのさ!!」

 

「うるさい……」

 

 星華の銃が、あずさの炎が……

 噴き出すよりも早く、レイヴンが腕を振るう。結果、それに煽られるように噴き出した、巨大なエネルギーによって、星華も、あずさも、アズサさえ、レジーと同じように倉庫の出口まで吹き飛ばされた。

 

「邪魔をしないでくれたまえ……時間と労力をかけて貯めた決闘エナジー、貴様ら人間ごときに無駄使いをする余裕など無いのだよ」

 

 聞き分けのない子供に対して、優しく語り諭している。

 そんな、言動とはまるで真逆な行動が、三人の神経を逆なでした。

「ふざけたことを……!」

「今日まで散々、たくさんの人を決闘で振り回しておいて、なにを勝手な……!」

 

「そうだな……本当に、決闘者というのは愚かな存在だよ。たかがカードゲームごときに命さえ懸けて、結果、カード一枚で簡単に利用できる。どこまでも愚かでみっともない、救いようのない存在よ」

 

 カードの精霊とは思えない、決闘者を見下し、見下げ果て、バカにし侮辱し……

 それにまた、二人が怒りを上げる、そうする前に、

 

「もっとも、おかげで私は、私の目的を果たすことができる。そこだけは、決闘者という愚者どもの存在に感謝せねばなるまいな」

 

「……! 梓!?」

 そう語っている、レイヴンに掴まれた、梓の身……

 その全身は既に、真っ黒なエネルギーに包みこまれて、もはや逃げられそうにないことが、見ているだけで伝わった。

 三人ともが、すぐに駆けだしたいのに、得体の知れない巨大なエネルギーに押され、近づくことができない。

 そんな三人をよそに、捕らわれた梓を見ながら、レイヴンは、足もとに倒れているミスター・マッケンジー……彼のデッキに手を伸ばす。

 そこから飛び出した、一枚のカード。それを掴み、そして、掲げた。

 

「さあ……決闘エナジーの量は十分。魂の器も用意した。全ての準備は整った!」

 

 絶叫と同時に、梓の身を包んでいるのと同じ、黒いエネルギーがカードから噴き出す。

 それが一つに集まり、巨大な球体を形作る。

「『邪神アバター』……!」

「なに? 本当に、梓くんに何する気……!?」

 二人の声など、もはやレイヴンの耳に届かない。興奮し、歓喜し、狂喜しながら……

 叫んだ。

 

「今こそ、私のもとに甦れ!! 我が愛しき娘……『魔轟神グリムロ』よ!!」

 

 叫んだ瞬間、身動きの取れない梓の身から、白い光のエネルギーが沸きあがり、それが、頭上の『邪神アバター』へと流れ込んでいく。

 同時に、更に頭上、工場の遥か上、その空間に、巨大な穴が開いた。

「魔轟神、グリムロ……?」

「レイヴン……それが、お前の目的?」

 だが、そんな現象よりも、アズサ(あずさ)が気にしたのは、たった今、レイヴンが叫んだ名前。

 星華や佐倉には初耳な、その名前だった。

 

「くくく……せっかくだ。まだ少し時間もかかる。最期に教えてやってもいいだろう」

 目的は達した。それに満足したことで、張り詰めていた何かから解放された。そんな達成感に満ちている様子のレイヴンが、彼女らに振り返った。

「そう。これが私の目的……この男のために命を落とした、我ら魔轟神の巫女にして、我が最愛の娘、『魔轟神グリムロ』を蘇らせることだ」

 レジーから取り上げたデッキから抜き出した、一枚のカード。

 そこに描かれた、真っ白な肌と黒い羽根、赤い目という異形を備え、なのに美しい。

 そんな少女の描かれたカードを掲げて、続きを語る。

「かつて、私もグリムロも、そこにいる『氷結界の舞姫』と同じ世界に生きていた。そして、命を落としたことで、一つの存在となっていた舞姫とグリムロ、更には、私さえもが、この世界に生まれ変わった。我々の世界にも存在した決闘モンスターズ、その、カードの精霊という新たな存在に生まれ変わることでな」

 ここまでは、あずさはもちろん、星華も梓から聞いて知っていたことだ。

「しかし……私はそんなものはゴメンだった。ただでさえ、人間どもには言い尽くせぬ恨みつらみがある。それを何が哀しくて、命を落とし、生まれ変わった先で、あろうことか人間などに使われる、カードという存在でいなければならない? これほどバカバカしく、屈辱的な話は無い。逆に、人間の方こそ私に使われるべきだ。そう思い、この私が使うにふさわしい、人間としての有力者をデッキの使い手として選んだ。それが、このマッケンジーだ……もっとも、どういうわけか、娘が使い出したのだがな。用があるのは父親だけで、その娘になど何の価値も無いと言うのに」

 最初こそ、望まぬ生まれ変わりとその役割を嘆いてのことに、多少の同情は感じられた。

 だがその後の、人間を見下しくさった物言いと言動に対しては、また全員が表情を歪ませる。

「だが、そんな娘にも使い道はあった。まず、(レジー)の前に姿を現し、精霊としての信頼を得た。そのすぐ後で、その娘の命を人質に、父親を脅迫した。そうすれば、後は簡単に私に操られてくれた。強い決闘者を集め、強大な力を秘めたカードを作らせる。更に幸運なことに、ジェネックスという、決闘を行うための恰好の狩場まで用意された。偶然とは言え、つくづく、人間とは私に使われるために存在するのだと実感したよ」

 そんな話を聞いて、仮にもレイヴンのマスターであった、レジーは、愕然とさせられた。

 思えば、父の様子は突然おかしくなった。

 突然、勤めていた( 2)社へ行かなくなり、憑りつかれたようにカードを作り出した。

 それらが完成したかと思えば、レジーも知り合いである月行・夜行を伴って、家から遠く離れたビルの中に引きこもって、そこに、レジーが決闘アカデミア・アメリカ校で誘ったデイビット・ラブを含む、強い決闘者を集結させた。

 と、冷静に考えれば不審な出来事だらけだったのに、なぜか何の疑問も感じずに、流されるままでいた。

 それは、レイヴンが自分に話しかけて、励ましてくれたから。それを聞いていると、何の心配も無いことだと感じて、安心できたから。

 何の心配もないと。レイヴンの言うことは、全てが正しいのだと……

 

「まさか……私のことまで、ずっと操って……?」

 

「ようやく気付いたかね? 父親に似ず、実に鈍感で愚かな娘だ。もっとも、そのおかげで、父親や駒どもとは違って、無駄に強い力を使わず済んだのだがね」

 そんな言葉と事実に、今まで信じてきたもの全てを打ち砕かれた娘は、言葉も出ないまま、ひざを着いた。

「道具が揃い、駒が揃い、舞台が整った。後は、それらを効果的に、最大限に利用するだけだった。そのために、当初は『ラーの翼神龍』を盗ませた、フランツとかいうこの男の部下を使う予定だった。ラーの使い手に駒どもをぶつけ、それを打ち倒させる。そうすれば、プラネットシリーズと、まがい物とは言え神のカードがぶつかり合い、強大な決闘エナジーが得られると踏んだ。だが、ここからは、思わぬ誤算が重なっていった」

 突然、ずっと愉快そうにしていた顔を醜く歪め、後ろで縛り付けられている少年を睨みつける。

「第一の誤算は、水瀬梓……私から娘を奪い去ったこの男までもが、この時代の、この世界に生まれ変わっていた。そして、シンクロモンスターを使い、ラーの使い手を破った」

 だが、その醜い顔をすぐにまた、愉快そうに破顔させる。

「だが、それもまた利用できると踏んだ。まがい物とは言え、神のカードさえ凌ぐ力を備えし、『氷結界の龍』。その力もまた、強大な決闘エナジーを発することは間違いない。だから、ラーの使い手の代わりに、この男に駒どもをぶつけることにした。ラーの使い手には、決闘の実力的に不安があったが、この男なら、駒どもを一人残らず片づけてくれる。そう確信したからな」

 獲物は『ラーの翼神龍』の使い手ではなく、水瀬梓という決闘者。

 マッケンジーを通して、駒どもにはそう指示していた。だが、真の獲物は、集めた強大な駒ども、彼ら自身だった。駒どもを水瀬梓の餌にして、倒させて、そこから発したエネルギーを、レイヴンが吸いつくすために……

「方針が決まり、駒どもを島に送りだしたのだが、そこで第二の誤算……お前たち二人が現れた」

 ここでようやく、話の中に、星華とあずさの二人が登場する。

「いくら敗北させるための駒とは言え、強大なカードを使いこなすために集めた手練れたちだ。適当な決闘者なら、簡単に倒せるだけの力は持っている。そうして貰わなければ困るからな。それに、雑魚相手にも、プラネットや邪神を使えば、一応の決闘エナジーは発生する。だから、お前たち二人のことも、すぐに葬り去る予定だったが……それがまさか、伝説の赤き竜の力を備えし、シンクロモンスターの使い手どもに当たるとはな」

 

「だから、何の話をしている?」

 

「知る必要は無い。ここでは意味の無い話だ」

 

「……じゃあ、さっきから普通に話してるけど、決闘エナジーって、なにさ?」

「仮想立体映像による決闘を行うことで発生する、エネルギーのことだ」

 あずさの疑問に答えたのは、後ろでレジーのそばにいた、佐倉である。

「その決闘で使われたカードが、強力であればあるほど、そのエネルギーは大きくなる。もっとも、ただ決闘をしたところで、特に影響が出ることはない。その決闘エナジーを増大させる装置でも作るか、決闘エナジーの発生に特化させた、特殊なカードでも使わない限り……」

「てことは、その特殊なカードが?」

 

「そう。決闘エナジーを増大させ、私のもとへ集約させる装置を備え付けた決闘ディスク。それに加えて、九枚のプラネットシリーズと三邪神。後は、私の力を貸し与えてこの男に作らせた、『星態龍』……お前たちが操ったドラゴン達もそうだ」

 その言葉に、反射的に二人ともが、自らのドラゴンを手に取った。

「私が洗脳を施し、その遠隔装置でもある、人間には外せないイヤリングを破壊するほどの力を持ったカード。おかげで、役立たずの双子が全く集められなかったエネルギーを、十二分に補填することができた」

 突然現れ、力になってくれた、このドラゴン達に、そんな力があったなんて。

 そしてそれが、よりにもよって、彼を、あんな姿に変えてしまうなんて……

 

「そんなエネルギーばっかり貯めて、一体、なにに使う気?」

「……異世界への扉」

 あずさの問いかけに、また、佐倉が声を出す。

 

「ほう? 人間にしては賢いようだな……その通り。この世界と異世界とを繋ぎ、その扉を開く。私にグリムロ、舞姫が元居た世界のな」

 

「僕らのいた世界? そんなの繋げてなんになるのさ?」

 

「最初、この世界に生まれ変わった時、私は当然、娘のグリムロを探し求めた。私と同じく、カードの精霊として生まれ変わっている。その確信があった。だがどれだけ探しても、カードは手元にあるのに、グリムロの魂を見つけ出すことは叶わなかった。当然だ。確かにグリムロの魂は、カードの精霊として生まれ変わっている。だが、それは別の魂と混ざり合い、別の存在となっていた。そうだな? 氷結界の舞姫よ」

 言葉を受けて、アズサは顔をしかめる。あずさも、渋い表情を浮かべた。

「そして、それがようやく姿を現したのを感じた後で、それが消滅することも感じ取った。その理由までは分からなかったが、この男の存在に気付いた時、確信したよ。この男はまたしても、グリムロを死に追いやった。またしても、私から娘を奪い取ったのだとな!」

 

「何が奪い取っただよ!? 一番最初にグリムロを見捨てて、梓と一緒に殺そうとしたのはお前じゃないか! それを、梓に奪われたとか、自業自得のくせに八つ当たりするな!」

 

「うむ……それに関しては、否定はしない」

 直前まで、怒りを込めて叫んでいた。だが、そんな態度がしおらしくなり……

「だが、よくある話だ……裏切られ、切り捨てられたと分かったから、私も娘を切り捨てた。そうして、失った後になって、思い知った。グリムロという娘が、私にとってどれほど大きな存在であったか……間の抜けた話だ。我ながら」

 

「今更後悔したって遅いよ……グリムロは、梓のことを愛した。梓も、本当に愛してたのは、僕じゃなくてグリムロだった。だから、梓が消えた時、自分の身を捧げて梓の命を救ったんだ。グリムロはもう、どこにもいない!」

 

「そう……確かに、どこにもいない。この世界にはな。だから――」

 梓の頭上、空間の穴を見つめ、そして言う。

「我々のいた世界、そこにいる。そうは思わないか?」

 

「どういうこと?」

 

「我々は元居た世界で命を落とし、この世界でカードの精霊へと生まれ変わった。ならば、その命を終えた時、帰る場所はどこか……」

 

「それが……僕らが元居た世界?」

 

「その通りだ……だからこそ、強大な決闘エナジーを集め、この世界と我々の世界を繋ぐ必要があった。我々の元居た世界を彷徨っているであろう、グリムロの魂を見つけ出し、アバターを器にそれを回収する。そして、その魂の器こそが、この男、水瀬梓だ!」

 エネルギーに縛り付けられ、未だ身動きが取れない梓を指しながら、言い放った。

「当初の予定では、この器は、そこにいるレジーを使うつもりだったのだがな」

 レイヴンの発言に、項垂れていたレジーが顔を上げる。

「レイヴンの魂を宿らせた時点で、元の魂と肉体は消滅するが……それ以外で、その娘に有効な使い道などないからな」

 面白半分といった軽いノリで言われた、そんな言葉に、一気にレジーの顔が青ざめる。

「だが、それもより相応しい肉体が自分からやって来たことで、必要なくなった。これもまた、嬉しい誤算だよ!」

 

「より相応しい肉体? 嬉しい誤算とはどういう意味だ?」

 

「初めて見た時から予感はしていた。人間としては異常な肉体の強さ、私が与えた光の力、それを刀や決闘ディスクに変え、自在に操るほどの力、何より……こうして直に触れたことで、確信できた。舞姫よ、お前は気付いていたか?」

 

「……」

 アズサは、なんとも言えない表情を浮かばせる。

「え? なに?」

「なんだ? 梓が、なんだというのだ?」

 

「くくく……教えてあげよう」

 レイヴンは、大仰に両手をかざしながら……高らかに、声を上げた。

 

「かの世界で絶滅したはずの、我ら魔轟神。その子孫こそがこの男――水瀬梓だ!!」

 

「……」

「え……!」

「なん……だと……?」

 アズサは、相変わらず無言でいた。だが、あずさと星華は、目を見開いた。

「梓くんが、魔轟神?」

「梓は、人間ではないと?」

 

「どういった経緯で、この世界に人間として生まれ出でたのかは知れない。だが間違いない。この男は、私と同じ、魔轟神だ。本来ならば、生き残っていた最後の同族として歓迎したいところなのだが……私の邪魔をし、娘までも奪った。そんな男にはもはや、生きる価値などない。せめて最後は、愛する娘のためにその身を捧げられるのだ。この男も本望だろう」

 そして再び、一枚のカードを手に取る……

「話は終わりだ。話している間に、この世界と我々の世界が今、完全に繋がった!!」

 それに歓喜しながら、選んだカードを掲げた。

 

「『魔轟神グリムロ』を召喚!!」

 

 その声と共に、空間の割れ目で静止していたアバターが、徐々に姿を変えていく。

 羽毛を散らすドレスと飾り、しなやかな女性の手、綺麗な顔立ちを生まれ持った、禍々しくも美しき少女へ……

 

「まずいぞ! あいつの言ったことが事実なら、あのアバターって黒いモンスターが完全に姿を変えた時、水瀬梓の命と魂は……!!」

 佐倉の声を聞き、話に聞き入っていた星華とあずさも慌てふためく。

「貴様……!」

「やめて!!」

 星華が、二丁拳銃を取り出してレイヴンへ、あずさが、炎を噴き出しアバターへ放つ。

 だが、銃弾も、炎も、飛んではいくが、見えない何かに守られて、それらに届くことはない。

 その間にも、アバターは姿を変えていき……

 

「グリムロ……我が愛しき娘よ……」

 レイヴンは、そんな二人など目もくれず、歓喜と恍惚の入り混じった声を上げた……

 

 

「残念だけど、グリムロは復活しないよ」

 

 ぞんなレイヴンの耳に、アズサの声が、ハッキリと聞こえた。

 その、直後だった。

「な……なに!?」

 アバターは確かに、グリムロの姿を形作っていた。それは、アバターを器として、グリムロの魂を捕らえることに成功した、その証左のはずだった。

 それが、もう少しで完成するという段階で……

「なぜだ……アバターの、グリムロの姿が、崩れていく……! なぜだ!?」

 あり得ない、想定していない、そんな事態に声を上げ、怒りをあらわにしている。

 そして、そんな怒りと視線を、声を上げた者へと向ける。

「貴様か……貴様が細工をしたのか? 一体なにをした!?」

 

「僕はなにもしてない」

 アズサは冷め切った声で、平然と応えた。

「ただ、知ってただけ。グリムロの魂は、死んで彷徨ってなんかない」

 

「どういうことだ?」

 

 レイヴンも、星華とあずさも、疑問の顔を浮かべる。

 アズサもまた、話して聞かせた。

「確かに……僕がカードの精霊として生まれ変わった時には、舞姫と、グリムロ、二つの記憶と心があった。元々、元の世界で僕はグリムロに殺されて、僕の記憶と姿を奪ったグリムロが、舞姫、アズサとして生き続けてたからね。だから、最後に命を落とした時、先に死んでた本物の僕の魂と繋がって、逆にグリムロの記憶と心が、僕の中に入り込んだ。そうして生まれたのが、僕っていう存在だよ」

 そこまで話して息を吐き、そして、言う。

「そう……記憶と心。僕に宿ってたのはそれだけ。グリムロ本人の魂は、とっくに生まれ変わってたんだ。カードの精霊じゃない。梓と同じ……人間としてさ」

 

「生まれ変わった? ……人間にだと! バカな!?」

 

 狼狽するばかりのレイヴンに対して、話を続ける。

「そして、梓が消えちゃった時、グリムロはその能力で、僕の中に残ってた記憶と心、それを糧にすることで、梓の命を救ったんだ。そういう意味じゃ確かに、僕の中にいたグリムロは死んだって言えるけど……それでも、肝心のグリムロの魂は死んでない。今でも、生まれ変わった人間として生きてる。梓と同じ、すごく強い人間として」

 

「ならば……ならば、その人間を見つけ出し、魂を取り出す。その人間はどこだ? 貴様はそれを知っているのか、舞姫!?」

 

「……父親のくせに、まだ気付かないの?」

 見下げ果て、呆れ果て。そんな感情を声に、顔に出しながら……

「梓を助ける時さ、使ったのは僕のカード、『氷結界の舞姫』だった。僕の中にある、グリムロの心と記憶を使うためにね。けど、それだけじゃ力を使うことなんて、できやしない。グリムロ本人か、その魂を持った人間が『氷結界の舞姫』を召喚して、心と記憶と魂、全部が一つになって、初めて『魔轟神グリムロ』としてその能力を発揮できる」

「……え?」

「もう分かるよね? 誰がグリムロの生まれ変わりか……」

 アズサが、レイヴンから視線を外し、振り返りながら、問いかける……

 

 あの場にいなかった、レイヴンはもちろん、星華にも、それは分かるはずもない。

 だが、あの場にいた人間なら、その答えは明白だった。

 あの時、梓が消えた直後、万丈目が持っていた梓のカード、『氷結界の舞姫』。それを、舞姫(・・)本人に促されながら、万丈目は誰に渡したか。

 そして、万丈目から受け取ったカードを使い、『魔轟神グリムロ』を見事召喚させたのは誰だったか……

 

「……わたし?」

 あずさが、声を出した。

「わたしが、『魔轟神グリムロ』の、生まれ変わり?」

 

「……ハハハ」

 レイヴンの狼狽。アズサの説明。あずさの発言。それらを黙って聞いていた星華は突然、乾いた笑い声を上げた。

「ハハハ……ハハハハ……なるほど、そうか。そういうことか」

「星華さん?」

「私や、舞姫がどれだけアプローチをしたところで、梓は愛してくれこそすれ、振り向いてくれることはなかった。梓の視線の先にはいつも、平家あずさ、お前一人しかいなかった……その真の理由が、ようやく分かった」

 そして、自嘲と哀しみの入り混じった目を、あずさに向けた。

「人間は猿に恋をしない……魔轟神である梓にとっての性の対象、それが他でもない、梓自身を除く、たった一人の同族……お前だったんだ、平家あずさ。それも、生まれ変わるより前から愛していた、唯一の女の生まれ変わりときた」

 そこで、乾いた目を見張った顔に、手を触れた。

「出会った瞬間、運命を感じて一目惚れしたとは聞いたが、まさしく運命の出会いだ……最初から、勝てるわけがなかったんだ……魔轟神ではない、人間でしかない私が、梓と同じ、魔轟神である、平家あずさに、勝てるわけが……」

「……」

 美貌だとか、一緒にいた時間だとか、関係ない。愛する気持ちの大きさだとか、そんなものさえ話にならない。

 それ以上に、それ以前に絶対的で決定的な、種族という垣根。

 そんな、埋めようのないあずさとの差を突き付けられた……

 それをされた星華の、そして、それをずっと分かっていた、アズサの気持ち。

 それを、自覚がなく、気付かなかったとは言え、当人であるあずさは、推し量ることなどできるはずもなく……

 

 

「貴様が、我が娘の生まれ変わり……」

 そんな三人の耳にまた、歪んだ声が響く。

「それが事実だというのなら……貴様を殺し、その魂を返してもらう!!」

 絶叫しながら、レジーにしたのと同じように、あずさへ手を伸ばす。

 それであずさを引き寄せようとしたのだろうが……

「……くぅっ!」

 

「無駄だよ。大事な決闘で消耗してた上に、ケガのせいで弱ってた梓ならともかく、健康体な上に警戒しきってるあずさちゃんや僕らのこと、お前なんかのチンケな力で捕まえられるわけないじゃん。しかも今は、異世界同士をつなげるために使ってる、決闘エナジーで強化することもできないしさ」

 

「おのれぇ……!!」

 

「それでもあずさちゃんを捕まえたいってのならさ……その方法は、分かってるよね? 仮にもカードの精霊ならさ?」

 

「くぅ……行きつく先は、たかがカードゲームというわけか……!」

 

「うん……わたしが相手だね」

 そんなレイヴンに向かって、あずさが前に出る。

「あんたとグリムロがどんな関係だったか。わたしは、全然思い出せないけど……それでも、わたしがわたしに生まれる、ずっと前からの敵だったのなら、わたしが戦わなきゃダメだよね」

「待て」

 そんなあずさのお肩に手を置きながら、星華が前に出た。

「貴様はたった今、タッグ決闘で脱落しただろう。ならば、ここは勝者である私の出る幕だ」

「星華さん……これは、わたしの存在が賭かった決闘なんです。だったら、わたしが戦わなきゃ……」

「そんなもの知るか。こっちは、どう足掻いても貴様に勝てんと分かってムカついている。その怒りを、あいつで発散させろ」

「な……そんな理由で決闘しようとしてるんですか? ダメです! むしろそんな精神状態で、決闘なんか任せられません!」

「やかましい! 前世から梓と結ばれていた貴様に、私の気持ちが分かるか!?」

「分かりませんし、ていうか、前世のことなんか覚えてません! 好きで生まれ変わったわけでもないし!」

「好き嫌いだとか覚えていないとか関係あるか! 貴様は種族的にも梓と結ばれることが決まっていた! ならば、決闘の権利くらい私に譲れ!」

「それこそ関係ないでしょう! 大体それを言うなら、わたしだって種族関係なく梓くんのこと大好きです! 梓くんを助けるためでもあるこの決闘、余計に今の星華さんには譲れません!」

「黙れ! 奴を倒し、梓を助け出すのは私だ! 奴と同じ怪物は引っ込んでいろ!!」

「誰が怪物ですか! そりゃ小学生の時から自覚ありますけど、それ言っちゃったら梓くんだって怪物でしょう! 同じ怪物のわたしが助け出しますから人間は引っ込んでて!!」

「誰が引くか怪物!! 闘うのは私だ!!」

「いいえ! わたしです!!」

「私だ!!」

「わたしです!!」

 

「私だ!!」

()です!!」

 

「私だ!!」

「わた――!!」

 

 CHU♡……

 

「……」

「……」

 

「……////」

「……////」

 

「いきなり何をする!? 舞姫!?」

 言い合っていた二人の後頭部を後ろから押し出し、唇同士を重ねた。

 そんなアズサに向かって、星華が声を上げた。

「この決闘、僕がやるよ」

 

「どうぞどうぞ……」

「どうぞどうぞ……」

 

「いやいやいやいや!!」

「いやいやいやいや!!」

 

 今度は二人ともが、反射的になぜか行った発言に、声を上げた。

「精霊である舞姫は引っ込んでいろ! ここは大会にも生き残っている私の出番だ!」

「いいえ! あいつと前世から因縁がある、わたしが闘うべきです!」

 

「私がやる!」

「わたしがやります!」

 

「じゃあ僕がやるよ」

 

「どうぞどうぞ……」

「どうぞどうぞ……」

 

「いやいやいやいや!!」

「いやいやいやいや!!」

 

 再び同じことを繰り返している二人を無視して、アズサは既に、レイヴンの前まで歩いていた。

「お前と、グリムロの因縁……あずさちゃんは覚えてないだろうけど、僕はハッキリ覚えてる。グリムロの代わりに言わせてもらうけど、お前のこと、とっくに父親だなんて思ってないよ」

「そうだろうな」

 レイヴンも、あっさりと認めた。

「だが、そんな心や記憶も、既に無いのだろう? ならば、蘇った時、それらが無い、純真無垢なグリムロとなるわけだ。そんなグリムロを、また一から育て上げるとしよう。父を敬い、愛する、私の理想とする愛しき娘にな」

「本当、救いようのないクソ親父……」

 レイヴンに対して、嫌悪も憎悪も隠すことなく、決闘ディスクを左手に装着する。

「レジーだっけ? 君の決闘ディスク借りるよ?」

 デッキが抜き取られた、空っぽの決闘ディスク。

 左手に着けていたそれを、いつの間にやら握られていたレジーだったが……

 

「……」

 

 すでに、何も聞いていない様子でいた。

 そして、返事を待つことなく、アズサはデッキを取り出し、決闘ディスクにセットする。

「宿命の決闘……本当は、梓自身がしなきゃいけないはずだったんだけどね。代わりに僕がやらなきゃね」

「フンッ……では、ぜひとも本人にしてもらうとしよう」

 アズサの発言に対して、レイヴンはそう返す。

 最初、その意味が理解できなかった、アズサの前で……

「え……ちょ……!?」

 拘束を解かれた梓が、ふら付きつつもレイヴンの前に立つ。そして、レイヴンからデッキを受け取り、自身の決闘ディスクにセットした。

「お前……まさか、梓を……!」

「生まれ変わったとは言え、カードの精霊であるこの身は、肉体など無いも同じだ。魂と同じ……ならば、憑りつくこともまた、容易」

 説明しながら、今なお倒れているマッケンジーとは逆に、梓の中へと消え……

 

 梓が、顔を上げた。

「『これで思う存分、宿命の決闘とやらが行えるな』」

 

 ついさっきまで聞いていた、レイヴンの紳士的な喋り口調。

 それを、梓の顔で、梓の声で、梓の体で、行っている……

「『ふむ……魔轟神だけに、マッケンジーなどより実に馴染みやすい。生きていたころの肉体に戻ったようだ』」

「お前ぇ……!!」

「心配するな。精霊である私が憑りついても、この男の魂が消えることはない。私を倒し、消滅させることができたなら、私の魂を引きはがし、この男を取り戻すことができるだろう……邪魔だ」

 ずっと、足元で転がっているミスター・マッケンジー。それを、梓の体、その腕力で持ち上げて、入り口に向かって放り投げる。あずさがそれを受け止めた。

「だったら……」

 憎悪と嫌悪。ただでさえ感じていたそれらを、余計に滾らせながら……

 

「跡形もなくぶっ潰す!! お前だけは許さない!! 魔轟神レイヴン!!」

「奇遇だな!! 私も貴様を許しはしない!! 散ってもらうぞ、氷結界の舞姫!!」

 

「舞姫!」

 

 二人が叫んだ直後、アズサの後ろから声が聞こえた。

 振り返った時、一枚のカードが投げ渡され、それをしっかと受け止める。

「これ……」

 

「今回は貴様に譲ってやる……だが、敗けた時は承知せんぞ!」

「わたしの命……梓くんの命も、君に預ける。君のこと、信じる!」

 

「……」

 その声を聞いて、受け取ったカードをデッキへ……

 

 共に、同じ世界からやってきて、カードの精霊として生まれ変わった者同士。

 一方は、決闘に、そして人間に向けて、確かな愛情と信頼を寄せ。

 一方は、決闘に、そして人間に対して、明確な敵意と憎悪を懐き。

 同じ存在なはずなのに、どこまでも対照的であり、何より、生まれ変わる以前からの因縁の相手でもある。

 そんな、二人の精霊の、最後の決闘が、今ここに……

 

『決闘!!』

 

 

 

 




お疲れ~。

レイヴンの目的。理屈とかちゃんと説明できてたか、ぶっちゃけ自信ねぇ。
どこかおかしな所とか矛盾ないかな? 伏線は極力回収したつもりだけどや……

まあいいや。そんなこんなで、次話からラスボス戦。

アズサはともかく、ラスボスが二年連続で主人公てどうよ……


そんな感じで、次話で会いまひょ~。

それまで待ってて。

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