遊戯王GX ~氷結の花~   作:大海

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八話目にして本編再開。
どんなもんかね。やっぱ伸ばしすぎたか。
まあ皆さんが楽しんで下さったことを祈る他ねーやな。
無論この話でもね。
ほな行ってらっしゃい。



第八話 五色のはね

視点:外

 

「おかえりなさい」

 

「……」

 

「どうでしたか?」

 

「……」

 

「そうですか……御苦労でしたね。ゆっくりお休みなさい」

 

「……」

 

「気にしないで下さい。むしろ、あなた方に任せるしかない私の方こそ、謝罪すべき立場にあるのですから」

 

「……」

 

「ええ。あなた方が見つけられないとなると、少なくともあちら側にはいないということですね。だとすると、やはりこちら側のどこかに……」

 

「……」

 

「ええ。しばらくは私一人で動きますが、またあなた方に頼むことがあるかもしれません。その時は……」

 

「……」

 

「そうですか。感謝に絶えません。ですが、その時が来るまではお休みなさい。もしかしたら、その時はすぐそこかもしれませんが」

 

「……」

 

「分かりませんが、少し嫌な予感がするのです。このまま何事も起きなければ良いのですが」

 

「……」

 

「ふふ、ええ。頼りにしています」

 

 ッス

 

「……」

 

「ええ。もちろん、分かっていますよ」

 

「……」

 

「あなたとの約束を、忘れた日はありません。ですが、同時に私にも、解決しなければならない問題が起きてしまっている。それが解決した時、必ず約束を果たします」

 

「……」

 

「……私も、あなたが大好きですよ」

 

「……」

 

「ええ。いらっしゃい」

 

「……」

 

「もちろん、必ず……」

 

「……」

 

 

 

視点:あずさ

 レッド寮での一件から、数日が経ちました。

 

「『氷結界の虎将 ライホウ』の攻撃!」

「ぐわぁあああああああ!!」

「良き決闘を、感謝致します」

 

『きゃあ~~~~~~~~!! 梓さ~~~~~~~~ん!!』

『うぉおおおおおおおおお!! 梓さぁぁぁぁぁぁぁぁん!!』

 

 あれから、梓くんが変わってしまうことも無く、凶王化さえ起きない、平和な毎日が続いています。梓くんは相変わらず綺麗で優しくて、実技ではすっかりブルー寮のアイドルになってる。ていうか、もうアカデミアのアイドルだよね、これ。

「あずささん」

 そんな梓くんと友達であるわたしは、何だかんだいって一番話す機会が多いわけで、それに妬む人達もいるんだよねぇ。まあ、月一テストでのこともあって、あからさまにわたしに文句を言ってくるような人はいないからまだいいんだけど。

 そして、私はと言うと……

 

「バトル! 『大将軍 紫炎』でダイレクトアタック!」

「罠発動! 『魔法の筒』!」

「え? うわぁあああ!!」

 

「……負けちゃったよ」

「そう気を落とさずに、また頑張りましょう」

 元々あまり成績が良い方でもなくて、勉強をしてると言っても、やっぱり負けることはあるわけで。

 はぁ……梓くんとは対等でいたいんだけどなぁ。まだまだ先は長いや。

 

 そんな感じで、いつも通り授業も終わって、わたし達は寮の自室に戻った。

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

 

視点:梓

 目の前にあるのは、一つしか無いだけに明るく、そして、妖しく光る炎の灯りと、そんな灯りに照らされた、恐怖を浮かべる三つの顔。

 

「彼女は今でも涙を流しながら、自分が何者かも分からず、何のために生きているのかさえ分からないまま、亡くした夫のことを思いながら、どこかにいるという兄を捜し続けていると言います。暗く不気味な唄を詠い続けながら……」

 

『開け根の(こく) 根のやしろ……尋ね訪ねて 幾千里……あなた離れて 閻魔様……明日(あす)の行方を 尋ねや来られ……恋の行方を 尋ねや来られ……彷徨い入れ 底の宿……(せな)や震わせ 胸抱き……(はら)(くら)うは ()の根っこ…………死にゆく呻き 華の()う』

 

「さ、さすがレベル7なだけのことはあるな……」

「うぅ、今夜眠れないかも……」

「ま、まだ震えが止まらないんだなぁ……」

 どうやら気にいって下さったようですね。

 私達は今、カードをめくり、そのモンスターのレベルに応じた怖い話を話して聞かせるという遊びの真っ最中です。そして私のめくったカードが、レベル7の『氷結界の交霊師』。レベル7にふさわしい話かどうか不安だったのですが、それに見合ったようで良かったです。

 

「こんな遅くまで何してるのにゃ~?」

 

 おや、この声、そして特徴的な口調は……

「大徳寺先生」

 レッド寮の担任であり、錬金術の担当教師、大徳寺先生です。

「ブルー寮の梓さんまで一緒になって、何してるのにゃ~?」

 その質問に、十代さんがこの遊びについての説明をしました。

「ふむ。どれどれ~?」

 先生の引いたカードは、おお! 『F(ファイブ)G(ゴッド)D(ドラゴン)』、レベル12ですか。

「出た! 最高のレベル12!」

「ぜひ、お聞かせ下さい」

 私と十代さんで先生に尋ねました。翔さんと隼人さんは未だ震えていますが。

「それではお話ししますにゃ」

 おっと。

「森の奥に、今では使われなくなった特待生用のブルー寮がありますのにゃ~」

 

 先生が話して下さったのは、もう使われなくなってしまった寮について。そこでは昔から、何人もの生徒が行方不明になっているとのこと。

 そして、そんな話を聞いて、いても立ってもいられなくなったのですね。十代さんが肝試しをしようと、翔さんと隼人さんを連れて飛び出してしまいました。私も後を追います。

 

 

 そして、話題のブルー寮。しかし、そこには既に先客が。

「よう、あずさ」

「あ、十代くん達」

 あずささんです。何やら寮を見ながら、じっとしていました。

「どうかしたのですか?」

「それが……」

 

 あずささんのお話によると、明日香さんが急にいなくなり、ここまで探しにきた時、この中に入っていく明日香さんの姿を見たとのことです。

 

「それで、中には入ってみたのですか?」

「いや、それが、その~……」

 私の質問に、顔を背けてしまうあずささん。なるほど。

「怖くて一人では入れない?」

 そう言うと、顔を赤らめてしまいました。可愛いですね////

「よし! じゃあ俺達と一緒に入ろうぜ!」

 あらら、十代さんに先に言われてしまいました。

「いいの?」

「ああ。俺達もこの中に入ろうと思ってたところだしな」

「……うん。じゃあ、一緒に行こう」

 あずささんは笑って私達の横に並びました。しかし、

「……」

 まだ、少し震えています。その姿が可愛いのでもっと見ていたいのですが……

「怖いのなら、歌でも歌ってみてはいかがでしょう?」

「歌?」

「はい。良ければ私が歌ってさしあげましょうか?」

「……うん! 梓くんの歌聴きたい!」

 喜んで下さって光栄です。

「な、なあ、梓……」

 急に十代さんが、震えた声で話し掛けてきました。

「その歌ってまさか……」

 随分顔が青いですが……ああ。

「ご安心を。先程とは違うものですから」

「そ、そうか……」

 本気でホッとしています。左右の二人まで。よほど怖かったのですね。

 まあ、とにかく明日香さんが中にいるのなら、急いだ方が良いでしょう。

「では、参りましょうか」

 

 

 

視点:あずさ

「じょ~お~ね~つの~ あ~かい~ば~……」

 

 わたし達は今、廃寮の中を探索中です。

 中は色んな物が散らかってて、本当にただの廃墟みたい。

 壁には何だか変な絵が描かれてる。逆三角形に丸、これは鍵で、あれは天秤かな?

 

「おーい! こっち来てくれー!」

 

 突然、十代くんが叫んだ。どうやら写真を見つけたみたい。

 何か書かれてるけど……

 Fubuki、10、Join?

 どういう意味なんだろう?

 

「きゃー!!」

 

 !! 突然の悲鳴!!

「向こうからなんだな!!」

「急ぐぞ!!」

 わたし達は声のした方向へ走った。

 

「と~き~め~きの~ し~ろい~ば~……」

 

 ……

 …………

 ………………

 

 声のした方向にあった部屋に着くと、そこには大きい体をした人がいて……

 明日香ちゃんが、棺桶に眠らされてる!?

「お前、明日香に何しやがった!?」

 十代くんが叫んだ。

「私の名はタイタン。千年アイテムを所有せし闇の決闘者」

「タイタン?」

「闇の決闘者?」

「この娘には少々、私の闇の決闘を痛感してもらった」

 闇の決闘!?

 

「……貴様が誰かなどどうでも良い」

 

 うわ! 梓くん、予想はしてたけど凶王化してる!

「貴様は我らが友を傷つけた。その事実があれば十分だ!!」

 そのまま前に出てきて、刀に手を掛けた。

「おっと、私を殺すと言うのなら、この女も道連れにするまでだ」

「貴様……!!」

「ふぅん、私を殺したければ、カードで殺せ」

 顔を歪めながら、刀から手を離す。さすがに凶王化しても、人質を取られたら何もできないよね。

「私が用がある者、それはお前だ! 遊城十代!!」

「お、俺?」

 タイタンが十代くんを指差して、叫んだ。

「私と決闘をしろ。負けた方が消える、闇の決闘をな」

 負けた方が消える!? どういうこと!?

 

「……消えるのは貴様だ」

 

 また梓くんが言った。そしてその手には、決闘ディスク!?

「貴様には何も渡さない。これ以上友を奪われてたまるか! 十代と決闘したければ、私を殺してからにしろ!!」

「梓……」

 また叫びながら構えてる。殺してから……て、えぇ!!

「ふぅん、お前が何者かは知らんが、プロのビジネスの邪魔をせんことだ」

「貴様の事情など知るか!! 口答えは許さない!!」

「……」

「……」

「……ふ、良かろう。肩慣らしにお前を倒し、改めて遊城十代の相手をしよう」

 そして構える、タイタン。

「梓くん! 気をつけて!!」

 そう叫んだけど、梓くんは、聞こえて無い?

 

「私を殺せ!! 緋水(ひすい)の渋きを浴びせてみせろー!!」

「面白い。魚の餌にしてくれるわぁ……」

 

『決闘!!』

 

 

タイタン

LP:4000

手札:5

 場:無し

 

LP:4000

手札:5

 場:無し

 

 

「……あれ?」

 突然、十代くんが声を出した。

「どうかした? 十代くん?」

「いや、梓ってさ、いつも左の袖からデッキを取り出してたよな?」

 袖?

「……うん。左手にディスクを着けるから、セットし易いよう左から取り出してた」

「だよな。あいつ、今右の袖からデッキを取り出さなかったか?」

 右?

「それに、薄暗いからよく分からなかったけど、いつも青色のデッキケースだったのが、今回は紫だったような……」

 紫のデッキケース?

 

「私のターン」

 

 !! そんな場合じゃない。先行はタイタンだ。

 

タイタン

手札:5→6

 

「フィールド魔法『万魔殿(パンディモニウム)-悪魔の巣窟-』を発動ぅ」

 周りの風景が不気味な空間に変わる。万魔殿ってことは、『デーモン』デッキ!

「更に、『シャドウナイトデーモン』を攻撃表示で召喚ん」

 

『シャドウナイトデーモン』

 攻撃力2000

 

「一枚セットし、ターンエンド」

 

 

タイタン

LP:4000

手札:3枚

場 :モンスター

   『シャドウナイトデーモン』攻撃力2000

   魔法・罠

    フィールド魔法『万魔殿-悪魔の巣窟-』

    セット

 

 

 デーモンデッキ。結構厄介なモンスターが多いんだよね。どうするんだろう、梓くん。

 

「私のターン!」

 

手札:5→6

 

 でもよく考えれば、凶王化した梓くんの決闘を見るの、これが初めてだよ。

「速攻魔法『サイクロン』! セットカードを破壊!」

 うわ、やっぱり最初はこれなんだね。何を伏せてたのか確認する前に墓地に行っちゃった。

 

「……このターンで終わらせる」

 

 え!?

「なにぃ!?」

「何だって!?」

「終わらせる!?」

「えぇ!?」

 さすがにみんな驚いてる。一体どうやって? まさか、またこの間みたいにアブソルートZeroを呼び出すの?

 

「私は三枚の永続魔法を発動する! 『六武の門』! 『六武衆の結束』! 『紫炎の道場』!」

 

『六武衆!?』

 

 わたしだけじゃなくて、みんなが驚いた! だって、梓くんが、今まで氷結界デッキを使ってた梓くんが、わたしと同じ、六武衆!?

 しかも、『紫炎の道場』なんて、わたしも知らないカードまで!?

 て、驚く間もなく、梓くんは手札に手を伸ばした。

「私は手札より、『真六武衆-カゲキ』を召喚!」

 

『真六武衆-カゲキ』

 攻撃力200

 

「真六武衆!?」

「どうした、あずさ?」

「だって、『真六武衆』なんて、わたし聞いたこと無いよ!」

「あずさも知らない六武衆だって!?」

 知らないよ! あんなカード……

 ……あれ? ちょっと待って? あの背中の腕に、あのステータスって……

 ……『六武衆の侍従』?

 

「六武衆を召喚、特殊召喚した時、それぞれ門に二つ、結束と道場に一つの武士道カウンターが置かれる」

 

『六武の門』

 武士道カウンター:0→2

『六武衆の結束』

 武士道カウンター:0→1

『紫炎の道場』

 武士道カウンター:0→1

 

「カゲキの効果! このカードの召喚に成功した時、手札のレベル4以下の六武衆一体を特殊召喚する! 『真六武衆-シナイ』を特殊召喚!」

 

『真六武衆-シナイ』

 攻撃力1500

 

『六武の門』

 武士道カウンター:2→4

『六武衆の結束』

 武士道カウンター:1→2

『紫炎の道場』

 武士道カウンター:1→2

 

 あの青い鎧、『六武衆の御霊代』!? え、でも、あれは幽霊だし、あれ?

 

「カゲキは場にカゲキ以外の六武衆がいる時、攻撃力を1500ポイントアップさせる!」

 

『真六武衆-カゲキ』

 攻撃力200+1500

 

「これで結束に乗った武士道カウンターは二つ! 結束を墓地に送り、カードを二枚ドロー!」

 

手札:1→3

 

「『六武の門』の効果発動! 武士道カウンターを四つ取り除き、六武衆を一枚手札に加える! 私は『真六武衆-ミズホ』を手札に加える!」

 

『六武の門』

 武士道カウンター:4→0

 

手札:3→4

 

「このカードは場にシナイがいる時、手札から特殊召喚できる! 『真六武衆-ミズホ』を特殊召喚!」

 

『真六武衆-ミズホ』

 攻撃力1600

 

『六武の門』

 武士道カウンター:0→2

『紫炎の道場』

 武士道カウンター:2→3

 

 あの赤い鎧! それに、あの攻撃力は!

 ……何だっけ?

「そして、このカードは場に六武衆がいる時、手札から特殊召喚できる! 『真六武衆-キザン』を特殊召喚!」

 

『真六武衆-キザン』

 攻撃力1800

 

『六武の門』

 武士道カウンター:2→4

『紫炎の道場』

 武士道カウンター:3→4

 

 あれは!

 ……分かんない。

「ミズホの効果! 一ターンに一度、フィールド上の六武衆を生贄に捧げることで、相手フィールド上のカードを一枚破壊する! 私はキザンを生贄に捧げ、貴様の場の『シャドウナイトデーモン』を破壊!」

 キザンが消えた瞬間、ミズホがあっという間にシャドウナイトデーモンに向かう!

 思い出した! 鎧で顔の半分が隠れてるけど、あれはきっと、『六武衆の露払い』だ!!

 

「待った! 『シャドウナイトデーモン』が効果の対象になった時、サイコロを振る。3が出た場合、その効果を無効にし、破壊する」

 

 そうだ! 『チェスデーモン』にはそんな共通の効果があったんだ!

「ここではサイコロの代わりに、このルーレットを……」

 タイタンの手から、六つのボールでできたルーレットが現れた……

 

 ヒュッ

 

「な、何だこれは!?」

 何だか風切音がしたと思ったら、六つのボール一つ残らず、カードが刺さってる!?

 刺さってるのは、一から順に……

 『検閲』、『押収』、『真実の眼』、『マインド・ハック』、『リバースダイス』、『正々堂々』……

 そして、梓くんは何かを投げた姿勢を作ってる。あのカード、梓くんが投げたんだ!

 にしても投げたカードと順があれってことは……あいつがイカサマするってこと!?

「……」

 梓くんは無言で懐に手を入れて、取り出したのは、二つのサイコロと、小さな籠? これって、よく時代劇なんかで見る『丁半博打』!?

 梓くんはそれを掲げて、サイコロをしばらく回して見せる。「イカサマございません」てやつだね。そして、それを籠に放り投げて、地面に。

 

「……(ギッ!)」

 

「ぬぅ……!」

 梓くんの睨みに、タイタンが怯んだ。確率は六分の一……

 て、ちょっと待って。一つでいいサイコロが二つ……?

「ハンデをくれてやる。丁か半、どちらか当てたなら効果を適用させてやる」

「なっ!」

 えぇ!? てことは確立は二分の一じゃん!!

「くぬ、舐めているのか……」

「なら普通に振るか?」

「……後悔させてやる……半だ!!」

 えっと、確か二つのサイコロの目の合計が、半は奇数で、丁は偶数だったよね。

 思い出してた直後、梓くんの手が、ゆっくり上がる。サイコロの目は……

 

「……一・一(ピンぞろ)の丁。『シャドウナイトデーモン』を破壊!」

 

 立ち止まってたミズホが、一気に『シャドウナイトデーモン』を斬り裂いちゃった!!

「こ、こんなはずでは!!」

「そして『紫炎の道場』の効果! このカードを墓地に送ることで、このカードの上に乗った武士道カウンターの数以下のレベルを持つ六武衆、または紫炎と名の付いたモンスターを特殊召喚する! 武士道カウンターは四つ! レベル4の『真六武衆-エニシ』を特殊召喚!」

 

『真六武衆-エニシ』

 攻撃力1700

 

『六武の門』

 武士道カウンター:4→6

 

 エニシ!? 間違い無い、あれは『紫炎の老中 エニシ』だ!

「エニシは場にエニシ以外の六武衆がいる時、攻撃力を500ポイントアップさせる!」

 

『真六武衆-エニシ』

 攻撃力1700+500

 

「『六武の門』の効果! 武士道カウンターを四つ取り除き、墓地の『真六武衆-キザン』を手札に加える! そして特殊召喚! キザンは場にキザン以外の六武衆がいる時、攻撃力を300ポイントアップさせる!」

 

『真六武衆-キザン』

 攻撃力1800+300

 

『六武の門』

 武士道カウンター:6→2→4

 

 ……そっか。思い出した。あの効果と攻撃力、あれは、『六武衆の師範』だ。

 あの真六武衆、みんな、今の六武衆の関連カード達の若い頃の姿だったんだ!

 

「門の効果! 残り四つの武士道カウンターを取り除き、武士道カウンター二つにつき、キザンの攻撃力を500ポイントアップさせる! 永続魔法『連合軍』を発動!」

 

 うわぁ……何なの、これ……

 

『真六武衆-キザン』

 攻撃力1800+300+1000+1000

『真六武衆-エニシ』

 攻撃力1700+500+1000

『真六武衆-カゲキ』

 攻撃力200+1500+1000

『真六武衆-ミズホ』

 攻撃力1600+1000

『真六武衆-シナイ』

 攻撃力1500+1000

 

 たった一ターンで……後攻の一番最初の一ターン目で……こんなに……

「嘘、だろ……」

「こんな、ことって……」

「あり得ない……」

 三人とも、呆然としちゃってる。プレイングだとか展開力だとか、色々あるけど、こんなことができる梓くんがただ凄過ぎて、まともに声も出ないよ。

 

「ふ、ふははははは……」

 急に、タイタンが不気味に笑い始めた。決闘開始と同時に場に出したカードがフィールド魔法以外破壊されて、こんなことされちゃったんだから、もう笑うしか無いよね。

「ふははは……是非も無し……好きにせい」

 是非も無しって、確か仕方ないって意味だっけ? 何でまたそんな古い言葉を。

 

「バトルフェイズ!!」

 

 はっ! 梓くんの言葉と同時に、真六武衆の五人が構えた!

 

五色(いいろ)(はね)よ、私を抉れ!!」

 

 叫んだ瞬間、五人がタイタンに向かっていった!

 

「ぐぅっ、ブルゥアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

タイタン

LP:4000→0

 

「私の罪を憎む……」

 

 最後にそう呟いて、梓くんは残り一枚の手札をデッキに納めた。それはまるで、刀を鞘に納めるみたいだった。

 

 

『梓(さん)くん!!』

 全員の声が唱和して、梓くんに駆け寄った。

「……」

「何ていうか、すっげえな梓。まさかお前が、六武衆も使うなんてな……」

「しかも、宣言通り一ターンで終わらせるなんて……」

「凄過ぎなんだなぁ……」

 三人ともさっきのが衝撃的過ぎたんだね。顔が引きつって、声が落ちちゃってるよ。でも、わたしは別のことが気になってた。

「梓くん、あの真六武衆って……」

 どうしても知りたかった。わたしは六武衆デッキを使って長いけど、あんなカード群見たことも聞いたこと無かったから。

 

「……」

 

「あ、梓くん!?」

 梓くんは、わたし達の方を見た時、涙を流してた。

「……すみません。後はお願いします」

 そう言って、梓くんはわたし達に背中を向けて、その場を後にした。

「梓くん……」

「あずさ」

 急に、十代くんに話し掛けられた。

「事情はよく分からないけど、お前がついててやれ」

「わたしが?」

「ああ。梓のことだから、多分何かあっても話したがらないだろうけど、せめて誰かついてた方がいい。それなら、お前が一番だろう」

 ……そう、笑って言ってくれた。

「……ううん。わたしは、あの人運ぶよ」

「え? けど……」

「あんな大きな人、十代くん達じゃ無理でしょ。わたしなら楽勝だから」

 それだけ言って、これ以上何か言われる前に、気絶してるタイタンを片手でヒョイっと持ち上げた。

 

 ……わたしだって、本当は梓くんのそばにいたかった。けど梓くん、とても悲しんでた。わたしがそばにいたって、慰めになんてきっとならない。むしろ、変な気を遣わせちゃうだけだから。

 だからせめて、今は一人にしてあげよう。正直、たくさん聞きたいことはあるんだけど、もう、梓くんのあんな姿は見たくないから。だから、今夜のことは忘れて、明日もいつもと同じように、いつもと同じ日が続くように、いつも通りでいればいいんだよ。

 ね。梓くん。

 

 

 

視点:外

「けどさ、梓の奴、何でよりによってあの歌を?」

「さあ……多分あのアニメが好きなんじゃないっスか?」

「まあ、面白いんだなぁ。あのアニメ」

「あのアニメ面白いよねぇ」

 

『……』

 

「……けど、上手かったね」

「ああ。抜群に上手かった……」

「上手いのに、曲のチョイスが……」

「んだなぁ……」

 

『……』

 

 

 

 




お疲れ~。
皆さんはあのアニメは好きですか? 大海は好きです。
……まあそれだけだ。

にしても本編の方が短いってどうなのかな?
だが後悔はせぬわ!

ほな次話まで待ってて。

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