第五話行くよ~。
他には言う事無いよ~。
なわけで~、行ってらっしゃい。
視点:梓
『決闘!!』
アズサ
LP:4000
手札:5枚
場 :無し
梓
LP:4000
手札:5枚
場 :無し
「今度は僕からの先行でいくよー!!」
「ええ、構いませんよ。私はあなたの本気が見たい」
「僕のターン!」
アズサ
手札:5→6
「よし、最初から全力でいくよ。魔法カード『融合』! 手札の光属性『E・HERO フラッシュ』と、闇属性『E・HERO シャドーミスト』を融合! 来い! 『E・HERO エスクリダオ』!!」
『E・HERO エスクリダオ』
レベル8
攻撃力2500
闇の融合『E・HERO』……
「エスクリダオの効果! このカードは墓地のE・HERO一体につき、攻撃力を100ポイントアップさせる!」
『E・HERO エスクリダオ』
攻撃力2500+200
攻撃力2700……
「そしてもう一回! 魔法カード『ミラクル・フュージョン』! 墓地のモンスターを除外して、E・HEROを融合召喚! 闇属性のシャドーミストと、光属性のフラッシュで、来い! 『E・HERO The シャイニング』!!」
『E・HERO The シャイニング』
レベル8
攻撃力2600
いきなり二体ですか。しかも、シャイニングの効果は……
「シャイニングの効果! ゲームから除外されたE・HERO一体につき、攻撃力を300アップ!」
『E・HERO The シャイニング』
攻撃力2600+600
「すげー!!」
「一気に二体!!」
「……しかし、墓地のカードが除外されたことで、エスクリダオの攻撃力は戻りますよね?」
「あぁ~、まあね」
苦笑しながら、梓さんの言葉に応えています。
『E・HERO エスクリダオ』
攻撃力2500
まあ分かった上でアズサもしたことなのでしょうが……
「さて、まだ一ターン目だし、この辺にしとこうかな。カードを伏せて、ターンエンド」
アズサ
LP:4000
手札:1
場 :モンスター
『E・HERO エスクリダオ』攻撃力2500
『E・HERO The シャイニング』攻撃力2600+600
魔法・罠
セット
一ターン目なら、むしろもっと守りを固めるべきかと思うのは私だけでしょうか……
「さあ、どっからでも掛かってきなさい!!」
「では、私のターン」
梓
手札:5→6
うむ……まあ、この手札なら……
「速攻魔法『サイクロン』。その伏せカードを破壊」
「またか……」
破壊されたのは……本当にまたですか。ミラーフォースです。
「三枚の永続魔法を発動。『六武の門』、『六武衆の結束』、『紫炎の道場』」
……
…………
………………
視点:外
暗い場所だった。
空間が暗いというわけではない。環境が暗いというわけでもない。空には日が昇り、視界を遮るものも少なく、目の前が十分に見える場所。
だというのに、そこは暗かった。なぜならそれは、空間の暗さでも、環境の暗さでもない。そこにたたずむ者達の醸し出す、得体の知れない空気と、良い知れぬ雰囲気、そして狂気。それらが入り混じり、掛け合わさり、それによって空間は淀み、廃れ、結果空間は暗くなる。
そんな、暗い場所にたたずむ者達は三人。その三人ともが、異形な姿形をしていた。
三人のうち二人が、一人の前に立ち、その一人に注目している。二人とも、その一人よりも大きな体をしており、体は全体を鎧で覆い、仮面を着けている。右に立つ、三人の中で二番目に大きな男は、体型はスラリとしており、黒と金の鎧を着け、鎧と同じ色の仮面を着けている。左に立つ、体が最も大きな筋骨隆々と言った男は、黒と赤の鎧に、目と口元だけが見える黒の仮面を着けている。
「それでのこのこと帰ってきたってわけか」
背の高い男が、威圧するように声を出した。
「ああ。あの二人は強い。正直、今の私では手に余る。そう判断し、尻尾を巻いて逃げてきた、そういうわけだ」
だが、その威圧感にも決して余裕を崩さず、口元には笑みさえ浮かべている。
「まあ、お前らしいと言えばらしいが」
次に口を開いたのが、左に立つ一番大きな男。
「だがなレイブン、お陰で戦力は大きく削れた」
「別に問題は無いだろう。どうせすぐ生き返るんだ」
「簡単に言うな。お前が生き返らせるわけではない」
「それも分かっている。悪かった」
『レイヴン』と呼ばれた男が笑いながら謝罪したところで、また会話の空気が変わった。
「まあ、それはもう良いだろう。それで、本当なのか? 舞姫を守った二人の少年が、人間であるというのは?」
その質問に、レイヴンは直前以上に不気味な笑みを浮かべた。
「ああ。間違いない。しかも、何やら特殊な力を有しているわけでもない、生身の人間だ」
「だが、もしそれが本当ならなお更納得できない。たかが人間が、魔轟神や魔轟神獣、ましてお前に敵うはずがない」
「……正に私があの場で思ったことだ。最初に殴り飛ばされた時は、不意打ちと、二人掛かりが重なった賜物だと思った。だから数に物を言わせればすぐに始末できると踏んだ。その結果が今回の失態だ。二人掛かりでも強いが、個々の力も相当なものだ」
「分からない。たかが人間が、なぜそれほどの力を?」
「どんな種族でも、鍛練に鍛練を積めば強くなれることはお前達も分かっているだろう。あの二人の場合、おそらく長年の鍛練の賜物だろう」
『……』
レイヴンの言葉に、沈黙が流れたが、一人がレイヴンの前に立った。
「俺が行こう」
「レイジオン?」
「どちらにせよ、舞姫だけは何としても手に入れなければならない。あの三匹の龍を止めるには、舞姫を利用する以外にない」
「それはそうだが、勝算はあるのか?」
仮面に隠れて分かり辛いが、『レイジオン』と呼ばれた男は、間違いなく笑った。
「私はお前よりも強い。それ以上の勝算が必要か?」
「……ふん。だが、奴らは間違いなく氷結界の里へ向かったはずだ。あそこは今も結界によって守られ、我々には視界にすら捉えられない。奴らが現れるまで待つ気か?」
「仕方が無いな。だが、聞けばその二人は迷い人だろう。遅かれ早かれ、里を出る日は来るだろう。私なら、その気配を感じ取ることができる」
「……」
「ヴァルキュルス、お前はレヴュアタンにこのことを」
「やれやれ。面倒なことは全て俺だ」
「そう言うな。死者を生き返らせられるのはあいつだけだ」
「はいはい」
苦笑しながら、『ヴァルキュルス』はどこかへ消えていった。
「レイヴン、お前は大人しくしていろ」
「ふん……」
そしてレイジオンは、今まで隠れていた翼を広げ……
……
…………
………………
視点:梓
「あ……あ……あ……あぁ……」
目の前に広がる光景を、アズサは顔を引きつらせ、青くなりながら見ています。
『E・HERO エスクリダオ』
攻撃力2500
『E・HERO The シャイニング』
攻撃力2600+600
『真六武衆-キザン』
攻撃力1800+300+1000+1000
『真六武衆-エニシ』
攻撃力1700+500+1000
『真六武衆-カゲキ』
攻撃力200+1500+1000
『真六武衆-ミズホ』
攻撃力1600+1000
『真六武衆-シナイ』
攻撃力1500+1000
『六武の門』
武士道カウンター:0
『連合軍』
攻撃力:200×5
長くなるので途中経過は省きますが、これで終わりです。
「バトル! キザンでThe シャイニングを、エニシでエスクリダオを、カゲキ、ミズホ、シナイでアズサを攻撃!」
「
向かっていく真六武衆。そして、その直後、
「うわぁあぁあぁあぁあぁ~~~~~~~!!」
アズサ
LP:4000→0
「私の罪を憎む……」
「二人とも強過ぎ……」
その場に仰向けに倒れ、空を仰ぎながら、呆れたように言いました。
「青すげー!!」
「格好良い!!」
と、急に子供達が私の周りに。
「あ、ありがとうございます///」
……まずい。ただでさえ子供というものには不慣れであるのに、これは……
「梓さん」
と、子供達を見ていると、梓さんが話し掛けてきました。
「ありがとうございます。デッキを貸して下さって」
「いえ」
デッキを渡すと、梓さんは受け取り、左の袖へ。その後、改めて私の顔を見ました。
「私のデッキと同じものを使ったことがあるのですか?」
その質問に、私は初めて疑問を覚えました。
「……どうでしょう。よく分かりません」
「ですが、あれは初めてのデッキを手にした人間の決闘とは思えない」
……ええ。私も同じ気持ちです。
初めて使ったデッキなら、事前にどのような動きをするのかを分かっていても、どうしても手順に狂いが生じるはず。これは技術や経験でどうこう言える問題では無く、誰もがそうなのです。なのに、今回はそれが無かった。よほどそのデッキの動きを理解することができているか、何度も使っていなければできないプレイング。
何より、私にとっても、あのデッキを動かすことで全く違和感は無かった。むしろ、このデッキを使うことが当たり前であると言うように、私の思う通りの動きを実現した。
これは、間違いなく……
「……確かに、私にもなぜか、あのデッキを使った覚えがあります。しかし、それはなぜか、それが、思い出せない」
「では、あなたも……」
「まさか、あなたもですか……」
何と言うことだ。顔も名前も同じなら、そんなことまで同じとは……
「あーちくしょう!!」
話していた時、急に起こったアズサの絶叫に、私達はハッとしてしまいました。
「青紫!」
「はい!?」
「はい!!」
……いや意味は分かりますが、呼び名を合わせないで下さい!
「もう一回やろう!!」
『もう一回!?』
「もう一回!! このまま負けたままじゃ終われないよ!!」
『……』
「舞姫かっこわるい……」
「こういうの、御嬢
「それを言うなら
『わあー!! 舞姫が怒ったー!!』
アズサが大声で話し掛け、子供達は笑いながら逃げていってしまいました。
「さあ! 早く!!」
ディスクを構え、大声で言ってきています。
『……』
「分かりました」
「こうなった以上、お気の済むまで」
「そう来なくっちゃ!!」
決闘を愛する気持ち、負けたくないと思う気持ち、よく分かります。
梓さんもそれは同じようで、笑顔で彼女と向かい合いました。
「では順番と言うことで、次は私です」
そして、梓さんが立ちました。
「いくよ!!」
「ええ」
『決闘!!』
……
…………
………………
「『神海竜 ギシルノドン』で攻撃!」
「うぉあぁあああああああ!!」
「『真六武衆-キザン』、直接攻撃!」
「わぁあああああああああ!!」
「なぜ勝てない!!」
地面を叩きながら、アズサは叫びました。
これで、私達にそれぞれ五連敗ずつ、計十連敗。
いつも良い所まではいくのですが、なぜかその後で逆転されてしまいます。
「くぅー……もう一回!!」
それは構いませんが、さすがに疲れました。知らぬ間に日も沈みかけていますし……
「アズサ!」
「はい!?」
「はい!!」
急に大きな声で、色ではなく名前を呼ばれ、私も梓さんも返事をしました。
「こんな所にいたのか!」
『いや、こんな所と言われても……』
ここがどんな場所なのかも分かっていない状態なのですが……
「あ、ハジメ……」
はじめ?
アズサが声を出したので見ると、そちらから、長いマフラーをなびかせ、腰に刀を二本構えた短髪の少年が走ってきました。
そしてその少年はアズサの前に立ち、苦言を言い始めました。
「また外に出ただろう!?」
「いや、まあね……」
「あれだけ里の外には出るなと言っただろう! 里の外からでかい音が聞こえたから行ってみれば、何かが暴れた跡のように地面は荒れていたし、木には凹み跡や鋭利な刃物での斬られ跡までできていた! 何があったかまでは知らないが、そんな危険な目に遭ってからでは遅いといつも言ってるだろう!!」
『……』
……それは、私達の暴れた跡ですね……
「そう怒らないでよ、血圧上がるよ」
「誰のせいで上がった血圧だ?」
「怖いって……その怖い顔を近づけないでって……まずは二人にお礼しないと」
「二人?」
「うん。そこにいる、青と紫」
アズサに指差され、ハジメさんは初めて私達に気付いたようでした。
「……?」
私達を見ながら、目を擦っている。
「血圧が上がったうえに目もおかしくなったか? 物が二重に見える……」
「いえ、あの……」
「あなたの目は正常ですよ」
二人でそう話し掛けて、ハジメさんはようやく正気になったようでした。
「こいつはハジメ。僕の弟」
アズサがハジメさんの肩に手を置きながら、紹介して下さいました。
「ご兄弟ですか?」
ハジメさんが、アズサと同じ質問をしてきます。
『初めまして。水瀬梓と申します』
隣に立つ梓さんと、声が重なりました。
「名前も同じですか?」
「ええ。なので、アズサからは色で呼び分けられていますが」
「アズサ……?」
「えっと、そちらのアズサさんから……」
後ろに笑って立つアズサを差しながら、梓さんが言いました。
まったく、名前が同じと言うだけで、いちいち混乱されてしまう。
「長くなるから説明は省くけど、森でちょっとお世話になってさ。お礼に晩御飯食べて貰おうと思って」
「そういうことか。なら、もう帰るぞ。カナエも心配してる」
かなえ?
と、疑問に感じたところで、二人は私達を導きました。
……
…………
………………
まあそんなやり取りの後で、私達はアズサとハジメさんに連れられ、里を歩きました。
「よお舞姫」
「どーもーおじさん!」
「あら舞姫、今帰り?」
「そ!」
先程から大勢の人に話し掛けられ、その度に、笑顔で返事をしているアズサ。多くの人に愛されているのですね。
「あら、その二人はお友達?」
「そ。今日出会ってね」
と、急に私達の話題に。
「こんにちは」
「初めまして」
挨拶をすると、話し掛けてきた女性は笑顔を見せました。
「まあ、可愛い子達。双子?」
『……』
『はい』
説明が面倒なので、双子と言うことで良いです。
「氷結界の里は初めて?」
「ええ」
「つい先程到着しまして……」
その後も、すれ違う人達は必ずアズサに話し掛け、時々私達も話し掛けられるので、その対応をしました。里の外から来た人間がよほど珍しいようで、皆さんが私達を興味津々に見ております。
しかし、それは良いのですが、もう一つ気になることが。
「そう言えば、舞姫とはどういう意味ですか?」
気になったので、ハジメさんに尋ねました。
「アズサのあだ名だ。アズサの髪、他の人達とは違って青いだろう」
「ええ……」
先程の子供達にハジメさん、そして、先程からすれ違う里の人のほとんどが白髪です。中には赤色や、私達のような黒色も見掛けますが、少なくとも青い髪をしているのはアズサ一人しかいない。
「氷結界の里では、基本的に白髪の子供が生まれるんだが、まれにああやって青い髪を持った女の子が生まれる。そういう女の子は、里では昔から舞姫って呼ばれるんだ。もっとも、今はアズサ一人だけなんだけどな」
「ほう」
変わった風習ですね。
「ちなみにそれ以外の色の髪の連中は基本的に余所の人間だと思っていい」
そうして歩いていくと、
「さあ着いた」
里を離れ、少し昇った小高い場所に辿り着きました。
ですが……これは想像以上に、
「大きいですねぇ……」
「敷地面積、どのくらいですか……」
梓さんも呆れている。一応、里からも見えていたのでまさかとは思いましたが、大き過ぎるでしょう……
そんなことを考えているうちに、ハジメさんが門を開きました。
「たっだいまー!」
その中に、アズサと共に入っていきます。
「お帰りなさい、アズサ」
「ただいまー、カナエ」
アズサを呼びながらこちらへ歩いてきたのは、桃色の服装にミニスカート、そして当然白い、長髪の女性。彼女が先程言っていた、カナエさんですか。
「この子はカナエ。この家の、まあ家政婦的な」
家政婦さん……随分若いですね。
「アズサ、この二人は?」
「はい、挨拶」
何ですかその振りは?
『初めまして、水瀬梓と申します』
そう挨拶をすると、彼女もハジメさんと同じように、目を見開きました。二人からも、ここに来るまですれ違った人達からも同じ反応だったので、さすがに慣れてしまいました。
「見ての通り、着物の色以外は全部同じなんだよ。だから青と紫って呼んであげて」
「青と紫……」
それはアズサの決めることなのでしょうか。まあ、構いませんが……
「それよりさ、カナエ、お風呂沸いてる?」
「え? ええ。夕食もすぐにできますよ」
「二人とも、お風呂入っちゃいなよ」
「お風呂……」
「よろしいのですか?」
「よろしいから!」
そして、私達の手を引き、お風呂場まで引っ張っていきました。
「あの二人は?」
「ああ。話しは聞けなかったがアズサが世話になったらしい」
「随分仲が良いですね」
「ああ。初対面らしいが、俺が来た時には、もう友達と言える仲にはなっていたように思える」
「へえ、綺麗な女性ですね」
「ああ。あんな美女二人が、どこから来たのやら……」
「ハジメ?」
……
…………
………………
ザパァ~
結局アズサに勧められるまま、私は梓さんと共にお風呂へ入りました。
かなり広いお風呂です。ほとんど温泉と言っても良いでしょう。温かいお湯に浸かったお陰で、冷え切っていた体が一気に温まります。
「良いお湯ですね」
「そうですね」
……
「さすがに浴槽も広いですね」
「ええ」
……
会話が続きません。
ですが、会話をする気分になれないのも事実です。
突然妙な場所へ来たかと思えば、同じ顔の人物と出会い、共に異形の者達から女性を一人守り、今度はその女性に促されるまま『氷結界の里』とやらを訪れ、決闘をし、こうしてお風呂まで頂いている。
時間にして、せいぜい三、四時間。その間に、目の前の光景が目まぐるしく変わっていく。生きていく中ではよくあることです。ですが、今までとは違う場所であるというだけで、今までとは全く違う感情に呑まれそうになる。
そんな状況だというのに、梓さんは顔色一つ変えず、ずっと落ち着いている。
羨ましい。
私も、落ち着いてはいるつもりですが……
「混乱していますか?」
と、急に梓さんが私に話し掛けてきました。
「……ええ」
そう正直に返すと、梓さんは、笑顔を浮かべました。
「良かった。私もです」
……え?
「良かった……? いえ、梓さんが、混乱しているのですか?」
先程から見ていて、私よりも遥かに冷静でいるように見えていたのですが。
「私はただ、普段通りにしているだけです。今後どうなっていくのか、どのような日々が待っているのか、それを考えると、不安ばかりが湧いてきます」
不安……
「あなたは感じませんか?」
私は……
「……私も同じです。突然知らない場所へ来たかと思えば、目の前の光景が目まぐるしく変わって、あれよあれよと言う間もなく現在のような状況になって。いつも通り落ち着いてはいますが、実際は……不安です」
「……安心しました」
「安心?」
「はい。私だけでなく、冷静な姿を見せているあなたもまた、実際は不安を感じている。今の状況に苦しんでいるのは、私一人ではない。それが分かり、少しだけ、ホッとしました」
「梓さん……」
不安だという梓さんですが、その顔には、笑顔を浮かべている。
「いつか、きっと帰りましょう。私達がそれぞれいた、それぞれの元の場所へ」
……
「はい」
返事をしながら、彼と見つめ合いました。そして、彼の気持ちを、初めて感じました。
ずっと、冷静でいると思っていた。こんな、訳の分からない、混乱すべき状況にあるにも関わらず、それでも笑顔を浮かべ、平然としている。そんな姿に、同じ顔と名前だというのに、ある意味での憧れさえ抱いてしまっていた。
しかし、その思いもまた、私と同じだったのですね。
私も、普段通りの態度を作っていた。普段通りに静かに、優雅に、そう、毎日教えられた通り。
けど実際は、目の前にある、見慣れないもの全てに、知らない物全てに、不安ばかりを感じてしまう。こんな場所で、どうなるのか分からない。帰ることができるのかも分からない。そしてどれだけそんな不安を感じても、時間は過ぎていくばかり。
そんな不安を感じながらも、決して表に出さないよう、必死で隠していた。
そして、それはお互い、同じだった。
それが分かり、そして、彼の笑顔を見て、私もまた、安心できました。
「そろそろ体を洗いましょう」
「そうですね」
そう会話し、お互いに立ち上がりました。
その時……
「おっじゃまー!!」
ドアが開き、同時にそんな言葉が響きました。
「おや、アズサ」
「どうかしましたか?」
そう、二人で尋ねながら振り返ると、アズサは全裸で立っていました。
「せっかくだし、僕も一緒に入ろう、か……」
「アズサ?」
「どうかしましたか?」
なぜか視線を下に向け、硬直しています。
「い……い……」
『い?』
「いぇあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあ……」
バタ
「アズサ!?」
「一体……」
大声を上げると同時に、その場に倒れてしまいました。
するとその直後、外から二人分の足音が。
「何だ!! 今の悲鳴……」
「アズサ!! 何ご、と……」
ハジメさんとカナエさんもまた、私達を見て、硬直しました。
「きゃあ!! あ、梓さん達、そ、それは……」
「それ? 何のことですか?」
「きゃあ!!」
「待て! 二人とも、まさか男だったのか!?」
「え? ええ。よく女性と間違われますが、生物学上は」
「ひい!!」
「ちょ、カナエさん、どうしたのです? 何をそんなに恐れているのですか?」
「……」
バタッ
「カナエさん!?」
「きゅ~……////」
「白……ではなく顔が赤い。湯気まで出している! アズサも! 二人して風邪ですか!?」
「違う! カナエもアズサも俺以外の男子の裸を見たこと無いんだよ!」
「え? それはつまり……?」
「お前達を見て気絶したってことだ!!」
『はぁ!?』
「それはいけない! まずは運びましょう。このままでは二人とも本当に風邪を引いてしまう」
「そ、そうですね。アズサに服を着せなければ」
「いや、お前らもだろう! 運ぶ前に服を、こら! 全裸のまま運ぶな……消えた? どこに消えた!? ちょ、青と紫はどこだ!!」
「すみません! アズサの服を忘れていました!」
「いやだから前らも服を……だから全裸のまま消えるな! どこだー!!」
お疲れ~。
それじゃあ、あまり書くこともないので。
とにかくオリカ行ってみよう。
『E・HERO シャドー・ミスト』
通常モンスター
レベル4
攻撃力1000 守備力1500
何の変哲もない闇属性E・HERO。
このままいけば、アニメ出身の四枚に加えて五枚目の通常『E・HERO』になる。まあ仮にOCG化するならそれで終わるとも思えんが。
効果が付くとしたらやっぱ墓地関連かな? 個人的には、デザインは好きだから何かの劣化版て形にはなって欲しくはないかな。
てなわけで、とりあえず次話まで待ってて。