遊戯王GX ~氷結の花~   作:大海

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つ~わけで、特別編の続きだよ~。
やっぱ、二月の次も書くっきゃねーよな。
ということで、楽しんでいただければ幸いです。
んじゃ、行ってらっしゃい。



特別編 吠沸威斗泥

視点:梓

「吠沸威斗泥……」

 いつものように数人の男子に囲まれ、話題に上ったのはそんな言葉でした。

「何ですか? その聞くからに恐ろしげな催しは……」

 そんなものが明日行われると言われると、不安になってきます。明日は寮の自室で大人しくしておくべきでしょうか。

「『でい』じゃないですよ梓さん。『デー』、『ホワイトデー』です」

「ほわいとでえ……」

 何やら心配そうに言い直した言葉を、私も再び復唱します。

「梓さんは知らないんですか?」

「ええ……そう言えば、中学時代は三月のこのくらいの時期になると、周囲の生徒達はそわそわしていた気がします」

 話し相手が皆無であったので、なぜかは聞いても教えて頂けませんでしたが。

 実際、現在も周囲の、少数の男子生徒達は似たような行動を取っていますね。

「その『ほわいとでえ』とやらは、どのような催しなのですか?」

「えっと、『バレンタインデー』は知ってますよね?」

「ええ」

 ほんの一ヶ月前にあれだけのことがあったのです。一生忘れはしませんよ。

「簡単に説明すると、バレンタインデーに貰ったチョコのお返しを渡す日です」

 

 ガタッ

 

「なん……だと……」

 あまりの衝撃に、思わず立ち上がってしまった……

 好意を寄せる異性への贈り物。そして、そのお返し。それを公認されている日というのが、存在していたのですか……

「梓さん……?」

「詳しく教えて下さい!!」

 最も近くにいた男性の両肩を取り、顔を近づけました。

「お、お教えますから、少し距離を……//////」

 なぜか顔が赤くなっていますが、それはともかく言われた通り顔を下げました。

 

 

 

視点:外

 放課後になり、梓は寮の自室へと戻り、聞いた話しをまとめていた。

「要するに『ほわいとでえ』とは、バレンタインデーに贈り物をされた男子が女子に対して、そのお返しとなる贈り物を贈る。そしてその贈り物で最も一般的な物が、クッキーや飴である、ということで、よろしいのでしょうか?」

 ……うんまあ、そういうこった。

「ふむ。以前はチョコレートはダメだったので和菓子にしましたが、さすがにそれも二度目となると飽きられてしまいますね。ここは本来のものを贈りたいところですが……」

 まあそれは殊勝な心掛けで良いんでないの?

「問題は、私がチョコレートに限らず、そもそも洋菓子全般に手を出したことが無いということですね」

 あややい。

 ていうか君、あずさからバレンタインデーでチョコもらって和菓子贈ったじゃん。

「あれはバレンタインデーの贈り物ですよ。ホワイトデーの贈り物は別です」

 まあ言わんとすることは分かるけれども……

「ということで、早速ですがクッキーの作り方をお教え願えますか?」

 ……あん? 俺?

「他に誰がいますか?」

 嫌だよ俺は。作ったことはあるけど一回だけだし、かんなりうろ覚えだし。

「何も一から手取り足取り教えろとは言いません。材料と手順だけ教えていただければ後は自分でどうにかします」

 そう? そういうことならまあ可能っちゃ可能だけれど。

「よろしくお願いします」

 はいはい。んじゃそんなあなたのために、超簡単レシピを教えよう

「超簡単……」

 自分の力量を過信して下手に凝ったもの作ろうとしても無様なことになるだけだよ。言っとくが体験談や。

「……分かりました」

 それで良い。

 

 んじゃあまず材料が、小麦粉、ちなみに薄力粉ね。んで砂糖とマーガリン。他にも色々あるけど簡単レシピだからこの三つで良いわ。いちいち覚えて無いから細かい分量は言わんよ。

 まず厚手のビニール袋用意して、薄力粉と砂糖入れたら思っきし振ったりパフパフしたりするでしょう。これでわざわざふるいに掛ける必要無くなるわけよ。

 そしたらマーガリンを入れて、粉っぽさが無くなるまで揉みしだいて、無くなったら麺棒で薄く伸ばすわけ。厚さは五ミリくらいかな。

 その後はハサミで袋を開いて、型取りしてクッキングシートを敷いた鉄板の上に乗っけて、最後にあらかじめ百七十度に熱したオーブンで二十分くらい焼いたら完成。

 アレンジしたけりゃマーガリン入れる前にココアパウダー混ぜるだか抹茶の粉末混ぜるだか、他にも焼いた後で溶かした飴乗っけるなり溶かしたチョコレート掛けるなり、ゴマ混ぜて焼くって場合もあるわな。

 

 こんな感じ。分かった?

「ふむ、分かりました。いくつか質問してもよろしいでしょうか?」

 良いよ。なに?

「マーガリンとは何のことでしょう?」

 ……

「どうかしました?」

 ……

 

 そ~こ~か~ら~~~~??

 

「?」

 いや、良いんだ。質問には答えるよ。

 マーガリンていうのは……

 その前にCM入れとこう。

 

遊戯王GX ~氷結の花~

 

 

 KONAMI

 

「おぉ!! 梓くん、これ見て!!」

「あずささん、どうかなさいましたか?」

「ほらこれ! 梓くんの作ったお菓子、商品化するって!!」

「はあ……え!?」

 

 練り切り製オリジナルプレイマット風上生菓子。

 

 全十種類。

『E・HERO』

『ビークロイド』

『コアラ』

『サイバー・ガール』

『ハーピィ・レディ』

『キューティー・ビースト』

『アームド・ドラゴン』

『ウォーター・ドラゴン』

『サイバー・ドラゴン』

『古代の機械』

 

 先着六百名。

 メーカー希望小売価格 1980円(税込)。

 

「まさかこんなことが……」

「欲しい~(キラキラ)」

 

『遊戯王決闘モンスターズ、和菓子キャンペーン!』

「丸月跋日、開催だよ!」

「え、買う気ですか?」

 

 ※この製品はお菓子であり、プレイマットとして決闘に使用することはできません。

 ※このお菓子の上にカードを置かないで下さい。カードが汚れます。

 ※間違えてプレイマットとして保管しないようにして下さい。

 ※その場合に発生する衛生上のトラブルに関して、当方では一切の苦情も応じかねます。

 ※このお菓子と間違えて本物のプレイマットを食べないようご注意下さい。

 ※本物のプレイマットを食べる行為は体に悪く非常に危険です。

 

 

 KONAMI

 

遊戯王GX ~氷結の花~

 

 

 ぜぇ……ぜぇ……他に聞きたいことは?

「よく分かりました。ありがとうございます」

 なら良かった……ふぅ。

「随分疲れていますね。どうかなさいましたか?」

 別に。歳だよ歳。

「ああ、歳なら仕方がありませんね」

 そうなんだよ。歳取ると色々ガタが来てねぇ。

「気持ちはよく分かります」

 んじゃまあ、俺は邪魔になるだろうし、ここらでおいとまするでよ。

「分かりました。お大事に」

 あいよ。君も妄想は控え目にね。

「妄想?」

 あ……

 

(ららんら~ ら~んら~んら~……////)

 

 いけね、やっちまったか。

 まあいいや。好きにしておくれ。

 

 梓の部屋を出て、現在途方に暮れている状態。

 ……と言いつつドアに耳を当ててみたり……

 

(……だんでぃずむ~……きゃー!!//// あずささ~ん!!//// 私のい……!!)

 

 さ~てと……おっと?

 何やら面白そうな予感がする。

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

 

視点:あずさ

「みんな、準備は良い?」

 私達は今、レッド寮の台所に集まってる。メンバーは、

「おう!」

「いつでもオッケーっス」

「用意はできたんだな」

「いつでも良いわよ」

「私も」

「右に同じです」

「面倒だが、仕方があるまい」

「あまり経験は無いが、ワクワクするな」

「俺もやるのか……まあ構わないが」

「私は教師なのでスーガ……この際我慢するノーネ」

 そう。ここにいるのはバレンタインデーに梓くんからお菓子を貰ったメンバーです。

 あれだけのお菓子を作ってくれた梓くんへのお返しは、せっかくだからみんなで作って贈ろうってことになりました。

「それで、何作るんだよ」

「当然、クッキーよ」

「普通のクッキーを作るのか? それではバレンタインデーの時の贈り物とはとても等価とは思えんが」

「そんなことを言い出したらキリがありませんわ」

「そうだよ。いくら僕達が集まってもあれを超えられるだけのお菓子を作れるわけ無いんだから」

「確かに。このアカデミアに梓を超える料理の腕を持つ人間は一人もいないだろうからな」

「しかし、それなら元より高級なクッキーを買って贈った方が早いのデーハ……」

「手作りのお菓子を贈ってもらっておいて、そんなことできませんよ」

「うむ。確かに手作りのお菓子を贈られたんだ。同じ価値の物は作れなくとも、せめてこちらも手作りのものを贈りたいところではあるな。単に高級だと言う理由で買った物を贈るのは気が引ける」

「第一、本当なら俺達一人ずつそれぞれ用意するべきだろうけど、それができないからこうして集まってるんだな」

「そういうわけだから、まずはどんなクッキーにするか決めよう」

 そんなわけで、わたし達はお菓子の料理本を持って、早速どんなクッキーにしようか話しあいました。

 あまり難しいものは作れないし、だからって簡単過ぎてもダメ。何だかんだでどのクッキーにするかは正念場です。

 

「お! これ美味そう!」

「私達には無理よ」

「じゃあこれは?」

「良いと思うが、あの和菓子のお返しとして考えたら弱い気が」

「だが、そんなことを言い出せばそれこそキリが無いぞ」

「どの道材料だって限られてるんだから、その範囲で話し合わないとダメだよね」

「しかしセニョール梓のこと、どんな物であれきっと喜んでくれるノーネ」

「だからこそ、最高のものを贈らなければならん。過程を無視して喜びという結果にばかり甘んじていては真の贈り物などできん」

 

 そんなこんなで三十分くらい話し合って、ようやく作るクッキーが決まった。

「これで良いわね。じゃあ、早速始めましょう」

『おぉー!!』

 

 

 

視点:外

 

「十代くん! 小麦粉はふるいに掛けなきゃダメだよ!!」

「ふるいって何だよ?」

「三沢! 無塩バターを直接湯に放りこむバカがあるか!!」

「え? だがバターを溶かせって今……」

「お兄さん! 卵は丸ごとじゃなくて卵黄だけ!! ちゃんと卵白と分けて!!」

「す、すまん、やったことがないものでな……」

 

 思いやりの形は人それぞれである。

 贈り物を贈るのも思いやりなら、そのお返しをすることもまた、思いやりの形であり、思いやりがあってこその行動。

 そして、その思いやりを、白く透き通った心で届ける日。

 ゆえにホワイトデー。

 それがホワイトデー。

 

 

 ……まあ嘘なんだが。

 

『できたー!!』

 

 ……梓の様子でも見にいくか。

 

 ……

 …………

 ………………

 

 えっと……

「……」

 その、何だ……

「……」

 

 ……

 

 

 梓ぁああああああああああああああああああああ!!

 

 

「……!」

「どうしたあずさ?」

「今、誰か呼んだ?」

「いや、別に呼んでないと思うけど」

「気のせいかな」

 

 

 

 




お疲れ~。
梓に一体何が起きたのか、ホワイトデーの行方は、全ての答えは、明日のホワイトデーにて、ちょっと待ってて。

あと本編で言えなかったのでここで言っておきたい。

後半へぇ~続く。

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