さぁて、完結編といきましょうかい。
ほな、行ってらっしゃい。
視点:あずさ
「その、本当にわたしが代表で渡していいの?」
現在教室で、亮さんとクロノス先生を除いた昨日のメンバーで集まって話し合いをしてます。
「当たり前だろう。ていうか、お前以外に誰がいるんだよ」
「そうだな。俺が渡してやっても良いが、ここはお前に譲ってやる」
「万丈目君じゃダメだと思うけど」
「何だ翔、お前はもっとダメだろうが!」
「何を!」
「やめなさい」
「翔君、落ち着いて下さいまし」
こんな時にまで喧嘩しないでさぁ。
「まったく……あ、そうだ」
急に翔くんは何かを思い出したって声を出して、ポケットに手を入れた。
「はい、ももえさん」
「え、これは……」
取り出したのは、今わたしが持ってるものより小さな包み。
「昨日みんなが帰った後、余った材料で作ってみたんだ。お口に合うと良いんスけど」
おぉ~、翔くん優しい~。
「……////」
「え、ももえさん……?」
「ありがとうございます~翔く~ん~////」
感涙しながら抱きついてる。
「えっと、あはは……」
翔くんは苦笑するだけか。相変わらずももえちゃんに対しては淡泊なんだね。
「あ、そうだ俺も」
今度は隼人くんがジュンコちゃんに。カバンから取り出したのは、リボンで丸めた紙?
「俺は料理はできないし、これだけが取り柄だから。良かったら受け取って欲しいんだな」
「あ、ありがとう」
お礼を言いながら、紙を広げてみると、
「うわぁ……」
感嘆の声?
「どれどれ……おぉ~」
「うわ、やっぱ隼人君上手いや」
「すっげぇ綺麗だな」
「これは見事な」
わたしも含め、見てるみんなが唸ってる。
そこに描かれてるのは、『ハーピィ・レディ』を召喚しながら真剣な顔で構えるジュンコちゃんの姿。モンスターもジュンコちゃんもリアルに描かれてて、とても格好良くて、おまけに綺麗。
「ちょっと、美化しすぎじゃないの?////」
「そうか? 俺は自分の見たままに描いたつもりだけど」
おっほぉ~。
「////」
隼人くん、無自覚なだけに罪な人だよ。
「十代、私には?」
と、急に明日香ちゃんが十代くんに話し掛けた。
「え? えっと……」
あら~、十代くんは相変わらず分かり易いや。
「そうだ! 今日ドローパンおごる。な」
「あ、そう……」
明日香ちゃん、気持ちは分かるけどそう顔を引きつらせないで。
「まったく十代と言う奴は、男の風上にもおけんな」
「だがまあ、用意していたらしていたで不気味だがな」
男子二人はそんな感想だし。
まあいいけど。早く梓くん、来ないかな~。
……
…………
………………
「それデーハ、授業を始めるノーネ……あら?」
クロノス先生が教卓に立って、そんな声を漏らした。
「セニョール梓は欠席ナノーネ?」
そう。結局授業が始まるまで、梓くんは姿を見せなかった。
「誰か何か聞いていませんーノ?」
質問と同時に教室の生徒全員が顔を見合わせたけど、誰も首を縦に振る人はいない。
「仕方がありません。このまま開始するノーネ」
というわけで、結局梓くんがいないまま、授業は始まった。
……
…………
………………
「梓の奴、本当にどうしたんだ?」
結局、放課後になるまで授業に出るどころか、姿さえ見せなかった。
「もしかして何かあったのかな?」
「だが、何かあったとしても、あの梓がこんなことになるなど」
「う~~~~~~ん……」
梓くんに限って、何かあったとしても大丈夫だとは思うんだけど。
「皆さーん」
と、話している所でクロノス先生が話し掛けてきた。
「先生、どうしたんですか?」
「私はこれからセニョール梓の様子を見に行きまスーガ、あなたガターはどうしますノーネ?」
「え? これから?」
「うむ。いつも授業に出ても居眠りばかりのドロップアウトボーイとは違って、毎日真面目で成績優秀な生徒が連絡も無しに休みなのはさすがに気になルーノ」
「あははは……」
まあそれもそうか。
「じゃあ、みんなで行こう」
「そうだな」
「行こう行こう」
十代くん以外は笑いながら頷いた。何だかみんな遠足気分だね。
そう言えば、梓くんの部屋へ行くのって随分久しぶりな気がするな。
……
…………
………………
「梓くんの部屋前!」
「どうした、あずさ?」
「細かいことは気にしないで下さい」
「?」
簡単に亮さんに返事をして(ここに来る前に出会いました)、また部屋に目を戻す。
「よしあずさ、呼んでみろよ」
「え、わたしが?」
「他に誰がいるのよ?」
「あぁ……じゃあ……」
何だか梓くんのことになるといつもわたしが駆りだされる気がする。まあ嬉しいけど。
コンコン
「梓くん」
……
返事は無いや。
もう一度、
コンコン
「梓くん」
……
やっぱり返事は無い。
「もしかして留守なのかな~?」
そう言いつつ、ドアノブを捻ってみる。
ガチャリ
「え?」
「開いてるのか?」
そのまま開いてみると、
「あ、草履があるよ」
「てことは中にいるってことか」
う~~~ん、無断で入るのは気が引けるけど、
「お邪魔しま~す~……」
なぜか小声になりながら入っていきました。まあ何度も呼んだし、文句は無いよね多分。
そして中に入ってみると、
「臭い!」
「何だ、このコゲ臭い臭いは!」
翔くんと万丈目くんが叫んで、私達も全員感じた。一体何があったの?
疑問が不安に変わるのを感じながら、そのコゲ臭さを伝っていくと、そこは台所。そして、その台所で見たのが……
「梓くん!!」
『(セニョール)梓(さん)!!』
……
…………
………………
視点:十代
今俺達は保健室にいる。
梓は黒コゲになった台所で倒れてた。顔とか着物には黒いすすが着いてるけど、特にケガとかしてる様子は無い。ただ、気を失いながら、ずっと何かにうなされてるみたいだった。
「あずささん……あずささん……」
さっきからこんな感じで、ずっとあずさの名前を呼んでるんだ。
こう言う時ってあずさがそばにいるべきなんだろうけど、そのあずさは今いない。
あずさをここまで運んだ後、何でだか激怒しながら部屋を出ていっちまった。
こうなった理由に心当たりでもあったのか?
けど、それも大切かもしれないけど、
「あずささん……」
今のこいつには、やっぱあずさが必要だ。
だからさっさと戻ってこい。梓がお前を待ってるんだ、あずさ……
……
…………
………………
視点:外
ぬぅぉおおおおおおおあああああああああああああああああ!!
「逃げるなコラァアアアアアア!!」
両手にそんな物騒な物着けてる女に追い掛けられりゃ逃げるに決まってんだろう!! て言うかなんで俺が追い掛けられてんだよ!!
「梓くんをあんな目に遭わせたのはあんただろう!! 絶対に許さーん!!」
阿呆か!! 俺がそんなことするか!!
「あんた以外に誰がいるんだよ!? 昨日はどこからか声がしたと思って最初は気のせいかって思ったけど、よく考えたらあんたの声だったし!! 第一、あの梓くんをあんな目に遭わせる人間なんて、私以外にはあんたくらいしかいないだろう!!」
んなことするか面倒臭い!! あれは梓が自分でやったことだよ!!
「嘘付け!! 何があったらあんなことを自分からするんだよ!!」
それは!! ……あぁぁああ、言えねーよ!!
「言えない理由は!?」
作・者・制・限!!
「何だよそれ!! 笑わせんな!!」
笑わせたってどーせ笑ってくんねーだろ!! こっちのセリフだ!! あははのはだボケェ!!
とにかく追い掛けてくんな!! 恐ろしい!!
「あんたが逃げるから追い掛けるんだろう!!」
追い掛けられたら逃げるのは当たり前だろう!!
「うぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお……」
ぬぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお……
……
…………
………………
ぜぇ……はぁ……
何とか巻いたか?
「誰を巻いたって?」
はぅあ!!
「私から逃げられるって本気で思った?」
おのれ、先回りしとったんかい。
あずさはひたすら走り、その足は、いつの間にか火山の火口付近に地を着けていた。
「さあ、梓くんに何をしたのか吐いてもらうよ」
マジかよぉ……まあ、昨日のことなら、まだ良いか。
俺はただ、梓に教えろって言われたから教えただけだよ。
「何を?」
クッキーの超簡単レシピ。
「クッキーの?」
誰に渡すものかは分かるでしょう?
「じゃあ、梓くんもクッキーを……
そ。俺の口から言えるのはそれだけ。
「な、それだけじゃ訳分かんないじゃん!」
言ってんだろう。これも作者制限なんだよ。あんまり出しゃばると俺自身危ないの。どう危ないかまでは聞かれても困るけれども。
「……じゃあ、わたしと決闘してよ!」
えー、何その無理やり過ぎる展開。いくら面白いからってやって良いことと悪いことがあるよ……
「わたしが勝ったら全部話して貰うよ!」
聞いちゃいねぇやこの女……
「それでも言わないなら……」
ガンッ
……
「やるの? やらないの?」
やべえ、負けたらぶっ殺される……
「ほら早く構えて!」
絶対嫌だ、色々と……分かったよ!
『決闘!!』
外
LP:4000
手札:5枚
場 :無し
あずさ
LP:4000
手札:5枚
場 :無し
これで読者が離れたらお前のせいだからな。
「その時は脱がせるなりなんなりすれば」
やめれ!! 別の目的で離れる可能性出てくるからやめれ!!
「ほら、いいから早く進めなよ!」
ガンッ
外せよ!! つかその腕にどうやって決闘ディスク着けたのさ!!
「良いから進めなよ!! 先行はあんたでしょうが!!」
もういい。どうせ色んな意味で負けられんし、こうなりゃヤケだ。
俺の先行、ドローフェイズ。
外
手札:5→6
スタンバイは何も無しでメインフェイズ、『ハンマー・シャーク』を攻撃表示で召喚。
『ハンマー・シャーク』
攻撃力1700
『ハンマー・シャーク』のモンスター効果。一ターンに一度、自分のメインフェイズ時にこいつのレベルを一つ下げて、手札から水属性、レベル3以下のモンスター一体を特殊召喚できる。レベルを一つ下げて、『リチュア・アビス』を特殊召喚。
『ハンマー・シャーク』
レベル4→3
『リチュア・アビス』
守備力500
アビスのモンスター効果。こいつの召喚、反転召喚、特殊召喚に成功した時、デッキからアビス以外で守備力1000以下の『リチュア』モンスターを手札に加える。デッキから『シャドウ・リチュア』を手札に。
外
手札:4→5
そして、『シャドウ・リチュア』の効果。こいつを手札から捨てることで、デッキからリチュアと名のついた儀式魔法を手札に加えられる。『リチュアの儀水鏡』を手札に。
ここで儀式魔法『リチュアの儀水鏡』を発動! 手札の『ヴィジョン・リチュア』を生贄に、手札の『イビリチュア・ガストクラーケ』を儀式召喚。
『イビリチュア・ガストクラーケ』
レベル6
攻撃力2400
「え、ちょっと待ってよ!」
ん?
「『イビリチュア・ガストクラーケ』のレベルは6でしょう。今生贄に捧げた『ヴィジョン・リチュア』はレベル2のはずだよ。何で儀式召喚できるの?」
ああ、それはね、『ヴィジョン・リチュア』と、さっき捨てた『シャドウ・リチュア』には、水属性の儀式召喚する時、こいつ一枚の生贄で儀式召喚できる効果があるのよ。
「それ一枚で……」
そう。てことで、『イビリチュア・ガストクラーケ』のモンスター効果。こいつの儀式召喚成功時、相手の手札をランダムに二枚まで確認して、そのうちの一枚をデッキに戻す効果。
「うぅ……」
そうさな……めんどいし、両端のカードを見せて貰おうかい。
「……」
『六武の門』
『六武衆-ザンジ』
ふむふむ……『六武の門』で。
あずさ
手札:5→4
カードを二枚伏せる。これでターンエンド。
外
LP:4000
手札:0枚
場 :モンスター
『ハンマー・シャーク』攻撃力1700
『リチュア・アビス』守備力500
『イビリチュア・ガストクラーケ』攻撃力2400
魔法・罠
セット
セット
あずさ
LP:4000
手札:4
場 :無し
「うぅ、何だろうこの屈辱感……」
分かる分かる。
「……わたしのターン!」
あずさ
手札:4→5
「手札から永続魔法『六武衆の結束』を発動! そして、『六武衆-ヤイチ』を召喚!」
『六武衆-ヤイチ』
攻撃力1400
『六武衆の結束』
武士道カウンター:0→1
「更に……」
ちょい待ち。
「ん?」
召喚時にカードを発動したい。
「何を?」
罠発動『フィッシャー・チャージ』。フィールド上の魚族モンスター一体を生贄に、場のカード一枚を破壊してカードを一枚ドローする。
「な!」
『リチュア・アビス』を生贄に捧げて、『六武衆-ヤイチ』を破壊。
「うぅ!」
更に、カードを一枚ドロー。
外
手札:0→1
これでこのカードを発動できる。罠カード『マインドクラッシュ』。
「~~~~……」
カード名を一枚宣言して、それが相手の手札にあれば全部捨てさせて、無ければ俺はカードを一枚ランダムに捨てる。宣言するのは、さっき見せてもらった『六武衆-ザンジ』。
「……」
あずさ
手札:3→2
ついでに分かってると思うけれど、ザンジは制限カードでも何でもないから同名カードが無いか手札全部確認させてもらうよ。
「……」
『六武衆の師範』
『和睦の使者』
やっぱ師範を握ってたか。
「でも、まだ手はある! 『六武衆の結束』の効果発動! このカードを墓地に送って、このカードに乗った武士道カウンター一つにつきカードを一枚ドローする。武士道カウンターは一つ。カードを一枚ドロー!」
あずさ
手札:2→3
「……カードを二枚伏せる。ターンエンド!」
あずさ
LP:4000
手札:1枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
セット
セット
外
LP:4000
手札:1枚
場 :モンスター
『ハンマー・シャーク』攻撃力1700
『イビリチュア・ガストクラーケ』攻撃力2400
魔法・罠
無し
一枚は和睦か……俺のターン、ドローフェイズ。
外
手札:1→2
スタンバイフェイズ、メインフェイズ、魔法カード『サルベージ』発動。自分の墓地にある攻撃力1500以下の水属性モンスター二体を手札に戻せる。墓地の『シャドウ・リチュア』と『リチュア・アビス』を手札に戻す。
外
手札:1→3
そして、『ハンマー・シャーク』のモンスター効果。レベルを一つ下げて、手札の『リチュア・アビス』を特殊召喚。
『ハンマー・シャーク』
レベル3→2
『リチュア・アビス』
守備力500
効果でデッキから守備力1000以下のリチュア一体を手札に加える。二枚目の『ヴィジョン・リチュア』を手札に加える。
手札の『シャドウ・リチュア』と『ヴィジョン・リチュア』を墓地へ送って、デッキから『リチュアの儀水鏡』と『イビリチュア・リヴァイアニマ』を手札に加える。
外
手札:1→3
そして、儀式魔法『リチュアの儀水鏡』発動。場の『リチュア・アビス』、『イビリチュア・ガストクラーケ』を生贄に、レベル8の『イビリチュア・リヴァイアニマ』を儀式召喚!
『イビリチュア・リヴァイアニマ』
レベル8
攻撃力2700
ここでバトルフェイズ……
「罠発動『和睦の使者』!」
……
「このターン、わたしはダメージを受けない」
……『イビリチュア・リヴァイアニマ』で攻撃。
「え? ダメージは受けないよ」
でも攻撃できなくなるわけじゃないでしょう。『イビリチュア・リヴァイアニマ』のモンスター効果。こいつの攻撃宣言時、俺はカードを一枚ドローする。それがリチュアモンスターだった場合、相手の手札をランダムに一枚確認する。てなわけで、ドロー。
外
手札:1→2
ドローしたカードは二枚目の『リチュア・アビス』。よって一枚をランダムに確認……てか、元より一枚しか無いうえに知ってるんだけどね。
「~~~」
『六武衆の師範』
メインフェイズ2、『リチュア・アビス』を通常召喚。
『リチュア・アビス』
守備力500
そしてデッキから二枚目の『シャドウ・リチュア』を手札に加える。そしてこいつを捨ててデッキから最後の『リチュアの儀水鏡』を手札に加える。
更に墓地の『リチュアの儀水鏡』をデッキに戻すことで、墓地のリチュアと名のついた儀式モンスター一体を手札に戻せる。『イビリチュア・ガストクラーケ』を手札に。
外
手札:2→3
「ねえ、まだ?」
まだまだ。『貪欲な壺』発動。墓地のモンスターを五枚戻して二枚ドロー。
『リチュア・アビス』
『シャドウ・リチュア』
『シャドウ・リチュア』
『ヴィジョン・リチュア』
『ヴィジョン・リチュア』
外
手札:2→4
『ヴィジョン・リチュア』を墓地に送って効果発動。デッキから『イビリチュア・マインドオーガス』を手札に加える。『リチュアの儀水鏡』発動。手札からレベル6の『イビリチュア・マインドオーガス』を生贄に『イビリチュア・ガストクラーケ』を儀式召喚。効果発動。相手の手札を二枚まで確認して一枚デッキに戻す。手札は一枚、見せんでいいから『六武衆の師範』をそのままデッキに戻して。
「……」
あずさ
手札:1→0
墓地の『リチュアの儀水鏡』をデッキに戻して効果発動。『イビリチュア・マインドオーガス』を手札に戻す。
外
手札:1→2
カードをセット。ターンエンド。
外
LP:4000
手札:1枚
場 :モンスター
『ハンマー・シャーク』攻撃力1700
『イビリチュア・リヴァイアニマ』攻撃力2700
『リチュア・アビス』守備力500
『イビリチュア・ガストクラーケ』攻撃力2400
魔法・罠
セット
あずさ
LP:4000
手札:0枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
セット
「長いターンだった……」
俺としてはよくあることだ。
「……わたしのターン!!」
あずさ
手札:0→1
「わたしは……!!」
罠発動! 『水霊術-「葵」』!
「げ!!」
水属性モンスター一体を生贄に捧げて、相手の手札を確認して一枚墓地に送る。
「ちょっ、容赦無さ過ぎだよ!!」
じゃかあしいわい!! こちとら命とか色んなもんが掛かっとんじゃ!! 手加減などするかバーカ!! 生贄は『リチュア・アビス』だ!!
「くぅ~~~~……」
『強欲な壺』
はい捨てて!! すぐ捨てて!!
「むぅ……」
あずさ
手札:1→0
「~~~~~……ターンエンド!!」
あずさ
LP:4000
手札:0枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
セット
外
LP:4000
手札:1枚
場 :モンスター
『ハンマー・シャーク』攻撃力1700
『イビリチュア・リヴァイアニマ』攻撃力2700
『イビリチュア・ガストクラーケ』攻撃力2400
魔法・罠
無し
俺のターン、ドローフェイズ。
外
手札:1→2
バトルフェイズ、『ハンマー・シャーク』でダイレクトアタック!
「カウンター罠『攻撃の無力化』発動!」
しぶといな~。
「当たり前だよ。これでバトルフェイズは終了だよ!」
はいはい。
……可能性は全て潰しておくか。
魔法カード『死者蘇生』。墓地のモンスター一体を特殊召喚する。『リチュア・アビス』を特殊召喚。
『リチュア・アビス』
守備力500
そして、『リチュア・アビス』の効果でデッキから『シャドウ・リチュア』を手札に加える。墓地に捨てて『リチュアの儀水鏡』を手札に加えてそのまま発動。場の『イビリチュア・ガストクラーケ』を生贄に、手札の『イビリチュア・マインドオーガス』を儀式召喚。
『イビリチュア・マインドオーガス』
レベル6
攻撃力2500
こいつの儀式召喚に成功した時、お互いの墓地からカードを五枚まで選択し、互いのデッキに戻す。
選択するのはこの五枚。
『シャドウ・リチュア』
『シャドウ・リチュア』
『六武衆-ヤイチ』
『六武衆-ザンジ』
『六武衆の結束』
(この選択は……何のために……?)
最後に墓地の『リチュアの儀水鏡』をデッキに戻して、墓地の『イビリチュア・ガストクラーケ』を手札に戻す。
外
手札:0→1
これでエンド。
外
LP:4000
手札:1枚
場 :モンスター
『ハンマー・シャーク』攻撃力1700
『イビリチュア・リヴァイアニマ』攻撃力2700
『リチュア・アビス』守備力500
『イビリチュア・マインドオーガス』攻撃力2500
魔法・罠
無し
あずさ
LP:4000
手札:0枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
無し
「まだ終わってない……わたしのターン!」
あずさ
手札:0→1
(『死者蘇生』……っ!! 墓地に、モンスターが一枚も無い!!)
~♪
「このために、わざわざマインドオーガスを……」
そゆこと。言ったでしょう、可能性は全て潰すと。
「……じゃあ、何で『六武衆の結束』なんて戻したの? そっちの墓地にはもう一枚『リチュアの儀水鏡』があったし、『死者蘇生』だってあったはずだよ」
事故率を上げるために決まっておろう。『強欲な壺』は墓地だし、『貪欲な壺』を引いたとしても墓地のモンスターはお互いゼロだし、仮に『天使の施し』とか使ったとしてもそのカードを引いたら邪魔にしかならんし、結束を引けばそれこそ事故だし。
「~~~~~~」
どうするの?
「~~~~~~ターンエンド!!」
あずさ
LP:4000
手札:1枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
無し
外
LP:4000
手札:1枚
場 :モンスター
『ハンマー・シャーク』攻撃力1700
『イビリチュア・リヴァイアニマ』攻撃力2700
『リチュア・アビス』守備力500
『イビリチュア・マインドオーガス』攻撃力2500
魔法・罠
無し
さて、ドローフェイズ。
外
手札:1→2
うむ……ダメ押しと言う奴だ。『リチュア・アビス』召喚。
『リチュア・アビス』
守備力800
デッキから『シャドウ・リチュア』を手札に加えて効果発動。手札から捨てて『リチュアの儀水鏡』を手札に。そして発動。場のレベル2の『リチュア・アビス』二体とレベル2になってる『ハンマー・シャーク』を生贄に、『イビリチュア・ガストクラーケ』を儀式召喚。
『イビリチュア・ガストクラーケ』
攻撃力2400
説明は省略。手札は一枚しか無いからそのまま捨てて。
「分かってるよ……」
『死者蘇生』
あずさ
手札:1→0
これでよし。
バトルフェイズ、『イビリチュア・ガストクラーケ』、『イビリチュア・マインドオーガス』、『イビリチュア・リヴァイアニマ』の順でダイレクトアタック。
「ひどい決闘だった……」
あずさ
LP:4000→0
……
…………
………………
うおおぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
「いや、あんな決闘しておいて、号泣して喜ばれても説得力無いよ……」
ほっとけ。
(く、こうなったら、力づくで聞き出すしか……)
おっと。
「どうかした?」
ちょうど梓が目を覚ましたみたい。
「!! ほんと!?」
うん。どうせ俺からは聞き出せないし、さっさと行っておあげよ。
「うぅ……この借りはいつか返すからね!!」
はいはい。また会える時があればね。
……
…………
………………
視点:あずさ
「あ……ありのまま今起こったことを話すぜ! 『俺達がベッドに眠っていた梓を見ていたら目を覚ました梓が赤面しながらいなくなった』な……何を言っているのか分からねーと思うが、俺も何が起こったのか分からなかった……頭がどうにかなりそうだった……催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……」
「明日香ちゃん、落ち着いて」
混乱して口調とか色々おかしくなってる明日香ちゃんをなだめながら、状況はどうにか把握した。
「梓さん、どこに行っちゃったのかな」
「多分部屋に戻ったんじゃないかな。台所があんな状態だったし」
「じゃあ、とりあえず行ってみるか」
……
…………
………………
コンコン
「梓くん?」
……
コンコン
「梓くん?」
「……はい」
「いた」
声の感じからして、どうやらドアもたれ掛かって体育座りしてるみたい。
「セニョーラあずさの予想が当たったノーネ」
「梓くん、開けてもらえないかな?」
「……すみません」
「……じゃあ、何があったのかだけでも教えてもらえないかな?」
……
返事は無い。やっぱりダメなのかな。
「……昨日の放課後のことです……」
あ、話してくれる。
「私は昨日、教えられた手順通り、ほわいとでえのクッキーを作っていました……」
……
…………
………………
視点:梓
「さて、生地はこんな感じでしょうか。後は焼くだけですね」
オーブンとやらが無いので、代わりに炊飯窯を使えということでしたね。
まず、炊飯窯の蓋を閉じて、中の温度が百七十程度になるようあらかじめ熱しておき、その中に生地を入れる。この時、火傷をしないようあらかじめ取り出しやすいようにしておくことと、火傷にはとにかく注意せよ、と。
なぜ二度も同じことを言ったのかはともかく、そこで蓋を閉じて二十分ほど焼いていくが、クッキーが焦げるため焼きながら窯の温度が大きく変化しないよう注意せよ、と。
とは言え、これで本当に焼けるのか心配です。昨日の説明でも、
『理屈上はこれでいけると思うがオーブンの詳しい仕組みは俺にも分からないから上手くいかんでも責任は取りかねる』
と言っていましたし。まあこれで失敗すれば、今度は窯の温度を徐々に上げていく方法を試してみろ、と言っていましたし。どうなることか……
~二十分経過~
「時間です」
一応火は消しておきましょうか。上手く焼けたか……
ズドォオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンンンンンンンンン……
……
…………
………………
視点:あずさ
「そのまま気を失い、気が付くと、私は保健室のベッドの上におりました……」
『……』
やっぱりあいつのせいじゃん!! あいつの教えた手順が間違ってたんだなぁ……
「私は昔からそうでした……」
「え?」
「私は昔から、日本料理や和菓子の作り方ばかりを習ってきたせいか、それ以外の腕は絶望的でした。目玉焼きは必ず黒コゲにして、トースト一枚、まともに焼けたことがない。それ以上の規模の料理になると、最終的には必ず訳の分からないものができあがってしまう。今回は時間がだいぶ経っていることもあり、料理の腕も上がっていると自負していたので、上手くいくと確信していたのに……」
あぁ……
「梓……」
「まさか、セニョール梓にそんな秘密があったとーは……」
「目玉焼きどころか、トースト一枚まともに焼けないとは、確かに絶望的だな」
「お兄さん!!」
「亮!!」
「す、すまん……」
「だが妙だな。さっき部屋を見た感じ、あれだけの爆発があったのなら誰かが気付くはずだろう」
「ブルー寮の各部屋は完全防音になっていますノーネ。だからきっと誰も聞くことができなかったノーネ……」
『……』
みんなが感じてる。そりゃ意外だよね。
わたしも含めて、みんな梓くんの料理やお菓子作りの腕前は知ってる。わたしも食べたことあるし、家庭科の調理実習なんかでは必ずヒーローになってた。料理の腕も知識も、クラス全員が認めてた。だから、梓くんは料理上手なんだって、みんなが思ってた。
けど、確かに今思えば、焼き魚とかお味噌汁とか和菓子とか、日本料理ばかりだった。梓くんが和食以外の料理を作ったのを見たことなんて一度も無い。
よく考えたら、一言に料理って言ってもたくさんある。同じような材料でも、親子丼は作れても、オムライスは上手く作れない、なんて人だっている。たった一つの分野だけでその人の力量を決めつけるなんて、しちゃいけなかったんだ……
「こんな情けない姿、みっとも無くて見せられない……情けなくて、皆さんに会わせる顔が無い……恥ずかしい……」
梓くん、泣いてる……
『……』
「そうだ! 梓くん」
「……はい?」
「これからみんなでクッキー作りしようよ」
『え?』
「皆さんと?」
「うん。ここにいる全員、たまたまクッキーの作り方は知ってるし、みんな梓くんに教えてあげられるよ」
「ですが、私は……」
「それに、それで失敗しても、梓くんだけじゃなくて、教えたわたし達だって悪いんだから。そうすれば、梓くんだけのせいじゃないから、恥ずかしくないでしょう?」
「それは……」
「みんな、良いよね?」
みんなの顔を見ながら言った。みんな、しばらく顔を見合わせると、笑顔を浮かべてくれた。
「もちろんだぜ!」
「分かりました」
「やるんだな」
「仕様がないわね」
「やりましょう」
「ぜひ」
「仕方あるまい」
「うむ、やろう」
「面白そうだ」
「ぜひやるノーネ!」
全員が賛成してくれた。
「だから梓くん、出てきて」
「本当に……良いのですか?」
『もちろん!!』
「……」
ギィ……
「皆さん……」
悲しい声を出しながら、ゆっくりドアを開けて、わたし達の前現れてくれた。
「……ぷ、あははははは!」
「あずささん?」
悪いとは思ってる。けど、いつもと違って、顔にも着物にも黒いススが着いてて、
「梓くん格好悪い、あははははは!」
笑ってるわたしを見ながら、梓くんはただ困ってるみたいな顔をした。
「こんなことにならないように、わたし達がちゃんと教えてあげるからね」
「……」
私の顔を見た後で、他の人達の顔も見て、そして、笑った。
「よろしくお願いします」
『うん(おう)(はい)!!』
こうして、わたし達は昨日と同じように、レッド寮の台所へ移動した。
……
…………
………………
視点:外
「まず小麦粉はふるいに掛けるんだ」
「はい、十代さん……」
「無塩バターは溶かす際、湯煎といって、小さな器に無塩バターを入れて、その器を湯につけることで溶かすんだ」
「分かりました、大地さん……」
「卵はそのままでは無く卵黄だけを使う。分ける際なるべく卵白が残らないようにしろ」
「卵白はどうするのですか?」
「メレンゲにして後で使う」
「分かりました、亮さん……」
……
…………
………………
『できたー!!』
ちょうど空に赤みが差した頃、そんな声がレッド寮に響いた。
「信じられない……この私が、洋菓子を……」
あり得ないと思っていた出来事。それが今、目の前で起こり、梓の目には、涙が光っていた。
「まだよ。美味しくできてるかが問題だから」
「そ、そうですよね、では……」
「いただきまーす!」
「あ……」
明日香の言葉で味見しようとした梓をよそに、あずさが一枚取り、食べた。
「えっと……」
「うん! 美味しいよ!」
「!!」
「マジか!?」
「やった!!」
「良かったな、梓!!」
全員が梓に称賛の言葉を掛けていった。
「……////」
だが当の梓は、喜びに打ち震えることしかできない。手に持つクッキーを眺めながら、メンバーの顔を見ながら、顔を高揚させ、微笑み、震える。あまりにも大きな喜びを前に、それしかできずにいた。
「あ……」
そんな中、急に十代が声を上げた。
「どうかしましたか?」
「いや……これ、どうするんだよ?」
『あ……』
あずさが保健室を飛び出す際、クッキーは十代に預けていた。
そして、ここに来てようやく、『梓のためのクッキー』の存在を、事情を知らない梓以外の人間が思い出した。
「……?」
当然梓はその包みがどういう意図のものかは理解できず、首を傾げるだけ。
「……みんなで食べよう」
「そうね」
あずさの言葉に、明日香が頷く。
「たった今焼いたクッキーも合わせれば、量は十分だな」
「お皿お皿……」
「私はお茶を淹れます」
「僕も手伝うよ」
全員がそれぞれの作業を行い、更にクッキーを並べていく。それを、梓は一人、ボーっと眺めていた。
「あ、あの……」
「セニョール梓は座っていますノーネ」
クロノスに促され、着席させられる。
こうして、全員分の紅茶が並び、全員が座った時、梓以外が、梓への笑顔を向けた。
「え……?」
「せーの……」
『梓(さん)(くん)、バレンタインありがとう!!』
……
…………
………………
ホワイト。
「縁起が良い」、そして、「幸福を呼ぶ」、それらの言葉を意味する言葉。
そして、共に信じ合える仲間だからこそ彼らに訪れた、『友情』と言う名の幸福。
彼らの友情が永遠であらんことを。
そして、彼らのこれからの友情に、幸多からんことを。
Happy White day to everyone。
お疲れ~。
誰にだって苦手分野はあるよな~。
それを克服するか放棄するかは物にもよるけど本人次第。
大海も未だにオムライス綺麗に作ること諦めてないしね。
皆さんも苦手を克服できるよう頑張って下さい。
てなわけで、次話まで待ってて。