て、誰も待ってないかな。
まあ楽しんでもらえりゃ何でもいいや。
行ってらっしゃい。
視点:明日香
梓が落ちついた後で、私達は事情を説明した。
翔君がお風呂を覗いて、私達がそれを捕まえたと言うこと。まあ彼がそんなことをする人じゃないのは分かるけど、彼を利用して十代を呼び出し、決闘をしようと考えたわけ。
もっとも、それで梓までやってきて、危うく女子寮が全壊の危機に晒されるなんて思いもしなかった。
「なん……です、と……」
理由を聞いた梓はそう言って、しばらく放心状態になった。
「……翔……」
まずい! 名前から『さん』が抜けてる! また凶王(十代命名)になってる!?
「……さん」
あ、違うみたい……
バッ
そう思った瞬間、梓は翔君の胸倉を掴んだ。体を震わせて、声も震えてる?
「なぜ……なぜ……」
「いや、僕は、覗いてなんて……」
「なぜ私に一言相談して下さらなかった!!」
……へ? 相談? 梓に?
「こんな行動までして性欲の解放を望んでいたのなら、まずは私に言って欲しかった!! 私なら、少なからずとも翔さんの力になることができたのに!!」
「えっと、意味が分からないんスけど……」
私も同意見。どうやらみんながそう思ってるわね。
「私とて不本意ながら、周囲から外見の美しさは認められている身!! でなければ、いくら好きでもこんな格好などできません!! だから本物には敵わずとも、せめて女性の変わりを買うことはできました!! 友人ならば、一言相談して欲しかった!! それともやはり本物の女体でなければダメですか!? 私では興奮できませんか!? 私の裸体では、あなたの性欲の捌け口にはなり得ませんか!?」
「梓さんの裸体……」
『梓さんの裸体……』
「梓の、らたい?」
「梓の裸体……」
……
…………
………………ブッ!
いけない! 想像したら鼻血が……
見てみると、ジュンコとももえも鼻を押さえながらハンカチを取り出していた。翔君も。
にしても、凄い自信だわ。外見に関して自覚があったのは分かってたけど、まさかそこまでの自負があったなんて。私達ごときには負けないっていうの? まあ、だから私達も今こうして鼻血を流してる訳なんだけど。とは言え、さすがに女としてのプライドが……
「らたい?」
十代はどうやら裸体という言葉の意味を理解してないみたい。というか理解してたとしても、あいつがそんなことに興奮するとも思えないけど。
よかった……て、何で?
「分かったら、次からは私に一言ご相談下さい。この小説が18禁に指定されない程度のことはして差し上げます」
「はい……じゃなくて! 覗いてないんだってば!!」
あ、思い出したみたい。何だか梓が変なことを言った気がしたけど、多分気のせいね。
「覗いていない?」
「はい! 天地神明、デュエルの神に誓ってやってないっす! 何なら首筋や手首を晒して梓さんの部屋に泊まってもいいっスよ!!」
す、凄い覚悟の言葉ね。けど翔君、事情の知らない人が聞いたら、何だか卑猥な言葉に聞こえるわ。
「……そうですか。なら私はあなたを信じましょう」
梓はそう言って笑顔を見せた。いちいち綺麗な笑顔よね。また二人が見とれてるし。
……っと、忘れる所だったわ。
「まあ、私も彼がやったとは思えないけど、二人の手前どうしてもこのまま返す訳にはいかないのよ。だから十代、私と決闘して」
「俺と?」
「ええ。それであなたが勝てば翔君は見逃すわ。ついでに梓の暴走も水に流してあげる」
……あ、私の言葉でまた梓が凹んだわ。まあ、凶王化は梓も気にしてたみたいだし。
「ここでやるの?」
そう私に話し掛けてきたのは、平家さんね。
「ここじゃ見つかっちゃうわ。ボートに乗って湖の上でやりましょう」
「え? それは無理だ。さっきのこいつらの戦いで俺達のボートは粉々だぜ」
あ……
「……すいません」
「いいわよ。もう一台出せば済む話だから」
謝る平家さんにそう声を掛ける。まあこれ以上は気にしなくていいわ。それと、ずっと黙ってたんだけど……
「平家さん……」
「え?」
「いい加減、鼻血は拭いたら?」
「あ……」
視点:梓
「サンダー・ジャイアントの攻撃! ボルティック・サンダー!!」
「きゃあー!!」
十代さんが勝利しましたか。お二人とも、とても良い決闘でしたよ。
……
…………
………………
「ねえ」
船を着けてしばらく話した後、帰ろうかとオールを持った時、急に平家さんが話し掛けてきました。
「はい?」
「わたしとも決闘しようよぉ!」
「え? これからですか?」
「うん! 二人の決闘見てたら私もしたくなっちゃったよぉ!」
「……十代さんは今やったばかりですし、そういうことなら私がお相手しましょう」
それになぜか、十代さんも翔さんもボーっとしておりますし。どうかしたのでしょうか?
「えぇ? 本当に?」
「ええ。私では不足ですか?」
「ううん。やろうやろう!」
そういうことで、私達は立ち上がりました。
(平家の奴、何だかさっきとキャラ変わってないか?)
(梓と同じ。普段はこうだけど、怒るとさっきみたいになるの)
(梓さんは気ならないのかな? 第一、仮にもさっきまで殺し合ってた仲なのに)
(きっと似た者同士だから、気にならないんじゃないかしら)
……?
視点:十代
「いくよ、梓くん! 実は君には少なからず恨みがあるのだ!」
恨み? 梓にか?
「恨みですか。先程のこととは違うことですか?」
「そう。まあ大したことではないけれど、君がいて地味に嫌な目に遭ってきたから」
「そうですか。大体の想像はつきますね」
「え? 分かるの?」
何だよ梓、覚えがあるのか?
「先程から親しそうにしている明日香さん達が、あなただけを名字で呼んでいる所を見れば」
「あぁ、そうなの……」
え? どういうことだ?
「ああ、なるほど」
「翔、お前分かったのか?」
「うんまあ、多分そうだと思うっスけど」
えぇ、何だよ? 明日香達は知ってるみたいだし、分かってないの俺だけかよ!
「では始めましょう」
まあいいや。今は二人の決闘だ。
『決闘!』
梓
LP:4000
手札:5枚
場:無し
平家
LP:4000
手札:5枚
場:無し
「私の先行、ドロー!」
梓
手札:5→6
梓はしばらく手札を眺めた。手札事故かな? しばらく考えて、やっとカードに手を伸ばした。
「モンスターを裏守備表示でセット! そしてカードを二枚セットし、ターンエンド!」
梓
LP:4000
手札:3枚
場 :モンスター
セット
魔法・罠
セット
セット
「わたしのターン! ドロォー!」
平家
手札:5→6
平家がカードを引いた。何だか笑える口調だな。
「わたしは永続魔法『六武の門』を発動!」
宣言したと同時に、湖からでっかい門がせり上がってきた。何だあの門?
「『六武の門』は、『六武衆』と名の付くカードが召喚か特殊召喚される度に『武士道カウンター』が二つ乗る! わたしは『六武衆-イロウ』を召喚!」
『六武衆-イロウ』
攻撃力1700
『六武の門』
武士道カウンター:0→2
平家の前に、全体的に黒っぽくて、サングラスみたいなのを着けた侍が出てきた。ちょっと格好良いな。
「更に、フィールド上に六武衆がいる時、このカードは特殊召喚できるのです! 『六武衆の師範』を特殊召喚んん!!」
『六武衆の師範』
攻撃力2100
『六武の門』
武士道カウンター:2→4
すっげ。一気に二体のモンスター揃えた。
「バトル、いきます! イロウでセットモンスターを攻撃! そして、イロウが裏守備表示モンスターを攻撃した時、ダメージ計算を行わず裏側のまま破壊するよ!」
そして、裏側のままモンスターは墓地へ。あ、でも仮想立体映像は表示されるのな。破壊されたのは……雪だるま?
「『スノーマンイーター』はリバースした時、フィールド上の表側のモンスターを破壊できます。しかし、裏側のまま破壊されたので効果は使えません」
「おお! イロウを召喚して正解だったよ!」
「どの道、できたのは精々師範の攻撃を止めることくらいですが。師範を破壊した所でほとんど無駄撃ちですし」
「え? 師範の効果知ってたの?」
盛り上がってる所悪いけど、会話が全然分からない。
「師範は相手のカード効果で破壊された時、墓地の六武衆と名の付くモンスターを手札に戻す効果があります。師範自身も六武衆なので何度でも手札に戻るのです」
ああ、なるほど。わざわざ解説サンキューな、梓。
「では! 師範で梓くんにダイレクトアタック!!」
「罠発動! 『ガード・ブロック』!」
「はい?」
師範が刀で梓に斬りつけたけど、梓を斬る前に刀が弾かれちまった。
「止めるのは不可能ですが、受け止めることはできます。『ガード・ブロック』は、戦闘ダメージを一度だけ0にし、カードを一枚ドローするカード」
梓
手札:3→4
へぇー、良い効果だな。
「うむむ……わたしは『六武の門』の効果を発動! 門から四つの武士道カウンターを取り除いて、六武衆を一枚デッキか墓地から手札に加える!」
『六武の門』
武士道カウンター:4→0
「わたしはデッキから『六武衆-ザンジ』を手札に加えるよ」
平家
手札:3→4
「カードを一枚伏せてターンエンド!」
「エンドフェイズにリバースカードオープン!」
「はい?」
「速攻魔法『サイクロン』により、あなたのセットカードを破壊!」
「えぇええ!?」
破壊されたのは『攻撃の無力化』か。破壊しといて正解だぜ。
これって確か、『エンドサイク』って言うんだっけ?
平家
LP:4000
手札:3枚
場 :モンスター
『六武衆-イロウ』攻撃力1700
『六武衆の師範』攻撃力2100
魔法・罠
永続魔法『六武の門』(武士道カウンター:0)
梓
LP:4000
手札:4枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
無し
「私のターン、ドロー!」
梓
手札:4→5
「魔法カード『強欲な壺』を発動させます! デッキから二枚ドロー!」
梓
手札:4→6
「魔法カード『コストダウン』を発動! 手札一枚を墓地に送り、手札のモンスターのレベルを二つ下げます。更に魔法カード、『クロス・ソウル』発動! 相手フィールド上のモンスターを召喚のための生贄に捧げます! 対象は『六武衆の師範』!」
「え、それって……」
平家が何か言う前に、師範は光になって消えた。あれ? でもそんなことしても……
「これは破壊ではなく生贄なので、師範の手札に戻る効果も使用不可です」
ああ、破壊じゃなくて生贄ね。
「私はレベル5となった『氷結界の虎将 ガンターラ』を召喚!」
『氷結界の虎将 ガンターラ』
レベル7→5
攻撃力2700
色黒のいかついおっさんが出てきた。うわ、見た目からしても強そうだなおい。
「『クロス・ソウル』を発動させたターン、バトルフェイズは行えません。カードを二枚伏せターンを終了しますが、ガンターラはエンドフェイズ時、墓地からガンターラ以外の『氷結界』一体を特殊召喚できます。『氷結界の虎将 ライホウ』を特殊召喚致します」
『氷結界の虎将 ライホウ』
守備力2300
『コストダウン』で捨ててたのか。にしてもまた『虎将』か。意味がある名前なのかな?
「ライホウが場にある限り、あなたのフィールド上で発動されるモンスター効果は、手札を一枚墓地に送らなければ無効となります。さあ、あなたのターンです」
梓
LP:4000
手札:0枚
場 :モンスター
『氷結界の虎将 ガンターラ』攻撃力2700
『氷結界の虎将 ライホウ』守備力2300
魔法・罠
セット
セット
平家
LP:4000
手札:3枚
場 :モンスター
『六武衆-イロウ』攻撃力1700
魔法・罠
永続魔法『六武の門』(武士道カウンター:0)
「むむぅ、わたしのターン! ドロー!」
平家
手札:3→4
「永続魔法『六武衆の結束』を発動して、手札から『六武衆-ザンジ』を召喚!」
『六武衆-ザンジ』
攻撃力1800
「六武衆が召喚されたことで、門に二つ、結束に一つ武士道カウンターが乗るよ!」
『六武の門』
武士道カウンター:0→2
『六武衆の結束』
武士道カウンター:0→1
「ザンジは攻撃したモンスターをダメージステップ終了時に破壊する効果がある! そして、フィールドに二体の六武衆がいることで、手札から『大将軍 紫炎』を特殊召喚!」
『大将軍 紫炎』
攻撃力2500
「出ましたわ! 平家さんのエースカード!」
モモエが叫んだ。こいつがエースか。かなり強そうな武将だな。
「行くよ! まずはザンジでガンターラを攻撃!」
攻撃力が低いのに!? そう言えば破壊効果があるって言ってたな。ザンジでガンターラを破壊して紫炎でライホウを戦闘破壊か。ザンジでもライホウを倒せるけどそれだとガンターラは戦闘で倒せないからな。
「速攻魔法発動、『月の書』」
梓が静かにカードを発動させる。あれはどんな効果だ?
「フィールド上のモンスター一体を裏守備表示に変更します」
なるほどな。それでザンジか紫炎を……
「対象はイロウです」
って何でそっち!?
「うぅえぇえええ!?」
突然平家が絶叫する。ていうかいちいち笑える口調だよなあいつ。けど、何がそんなに問題あるんだ?
「ザンジの効果、というより六武衆の効果は、自分フィールド上に同名カード以外の六武衆が存在する時のみ発動可能。ならば、それを裏守備表示に変えてしまえば……」
光の
平家
LP:4000→3100
「あうぅ~……」
涙目になってる。そっか。仲間がいなきゃザンジの効果は使えないのか。
「平家さん、さっきから行動が裏目に出てるわね」
「それが梓の戦い方なのよ。相手の行動を封じつつ、その力を利用して、効果的にダメージを与えていく。単純な攻撃頼りのデッキにとっては、とても厄介な戦術と言えるわ」
「まさに『柔よく剛を制す』。日本の精神ですわ~」
明日香達がそう話してるのが聞こえた。ところで、ももえだっけ? 何か顔が赤くなってるけど、どうしたんだ?
けどそっか。それが梓の戦い方だったのか。
「うぅ~、ターンエンド」
平家
LP:3100
手札:1枚
場 :モンスター
セット(『六武衆-イロウ』守備力1200)
『大将軍 紫炎』攻撃力2500
魔法・罠
永続魔法『六武の門』(武士道カウンター:2)
永続魔法『六武衆の結束』(武士道カウンター:1)
梓
LP:4000
手札:0枚
場 :モンスター
『氷結界の虎将 ガンターラ』攻撃力2700
『氷結界の虎将 ライホウ』守備力2300
魔法・罠
セット
「なぜ紫炎でライホウに攻撃しなかったのですか?」
「え?」
……そう言えばそうだな。紫炎の攻撃力なら十分なはずのに。セットカードの警戒か?
「……はっ!」
忘れてたのか。ザンジの効果が使えなかったのがよっぽどショックだったんだな。
「……私のターン!」
梓
手札:0→1
あ、気にせず続けるのか。
「ライホウを攻撃表示に変更」
『氷結界の虎将 ライホウ』
攻撃力2100
「バトル! ガンターラで紫炎を攻撃!
平家
LP:3100→2900
ガンターラの回し蹴りが紫炎をぶっ飛ばした。紫炎は一瞬で凍りついて、そのまま砕けた。
「あぁ~、せっかく呼んだのに、効果も有効に使えなかったよ~」
紫炎の効果って、どんなだったんだ?
「続いて、ライホウでセットモンスターを攻撃!
ライホウはその場で扇子を持って踊ったかと思うと、セットされたイロウはこま切れにされた。
「これでターンエンド。エンドフェイズにガンターラの効果が発動しますが、墓地に氷結界は存在しないので効果は発動せず終了です」
梓
LP:4000
手札:1枚
場 :モンスター
『氷結界の虎将 ガンターラ』攻撃力2700
『氷結界の虎将 ライホウ』攻撃力2100
魔法・罠
セット
平家
LP:3200
手札:1枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
永続魔法『六武の門』(武士道カウンター:2)
永続魔法『六武衆の結束』(武士道カウンター:1)
「さっすが梓さんっス! このまま行けば勝てるっスよ!」
盛り上がってる翔には悪いけど、
「いや、そうでもないと思うぜ」
「どうしてっスか?」
「見てみろよ。平家をさ」
さっきから何度も泣きごと言ったりオーバーリアクションを取ったりしてるけど、
「あいつは、全然諦めてねえ」
「そろそろ、あなたの本気が見たい」
「良いでしょう! ここから逆転したら最高に格好良いもんね!」
(とは言っても、手札は一枚。フィールドのカードも、これだけじゃまだ足りない。何とか、逆転に繋がるキーカードが欲しい)
「ドロー!」
平家
手札:1→2
「『強欲な壺』! カードを二枚ドロー!」
平家
手札:1→3
「……わたしは『六武衆-ヤイチ』を召喚!」
『六武衆-ヤイチ』
攻撃力1300
「二枚のカードに武士道カウンターが乗るよ!」
『六武の門』
武士道カウンター:2→4
『六武衆の結束』
武士道カウンター:1→2
「『六武衆の結束』の効果! このカードを墓地に送って、このカードに乗ってる武士道カウンターの数だけデッキからカードをドローできる。元々二個までしか乗らないけどね。という訳で二枚ドロー」
平家
手札:2→4
新たにドローした二枚のカードを見て、平家は、笑った!
「このターンで、梓くんのモンスターを全部倒す!」
『え!!』
全員驚いて声を上げたけど、梓は笑っていた。
「見せて下さい! あなたと
「うん! わたしは魔法カード『戦士の生還』を発動! 墓地の戦士族モンスター一体を手札に加える。わたしは墓地の『六武衆の師範』を手札に加える!」
師範を!? どうして紫炎を戻さねえんだ!?
「そしてそのまま師範を特殊召喚! これで『六武の門』の武士道カウンターは六つ!」
『六武の門』
武士道カウンター:4→6
「ヤイチの効果! 場にヤイチ以外の六武衆がいる時、相手の場のセットカードを破壊できる!」
「ライホウの効果! 手札を一枚捨てなければその効果は無効となります!」
「分かってる。わたしは手札から『六武衆の御霊代』を墓地に送るよ!」
平家
手札:3→2
「く……」
破壊されたのは罠の、『ナイトメア・デーモンズ』? 聞いたこと無えな。
……あれ? 明日香は知ってるのか嫌な顔してる。ひょっとしてこの前の夜の時か? あの時は万丈目との決闘に夢中で、全然見てなかったんだよな。
「わたしは『六武の門』の効果を発動! このカードに乗ってる武士道カウンターを六つ取り除いて、墓地から『大将軍 紫炎』を特殊召喚!」
『六武の門』
武士道カウンター:6→0
そんな効果があったのか! 再びフィールドに現れる紫炎。やっぱ凄え貫禄だ。
「そして魔法カード『死者蘇生』! これで『六武衆の御霊代』を蘇生!」
『六武衆の御霊代』
攻撃力500
青い鎧を着た幽霊が現れた。あ、でも一応戦士族なんだな。
「これでまた、『六武の門』に武士道カウンターが二つ乗る!」
『六武の門』
武士道カウンター:0→2
「御霊代の効果! フィールド上の六武衆一体に装備できる。ライホウの効果で最後の手札を捨てて、師範に装備! 師範の攻撃力をアップ!」
平家
手札:1→0
『六武衆の師範』
攻撃力2100→2600
「最後に『六武の門』の効果! 武士道カウンターを二つ取り除いて、わたしの場の『六武衆』か『紫炎』一体の攻撃力をエンドフェイズ時まで500ポイントアップさせる! 対象は紫炎!」
『六武の門』
武士道カウンター:2→0
『大将軍 紫炎』
攻撃力2500+500
す、凄え! 本当に逆転しやがった!
「行くよ! バトルフェイズ! まずは師範でライホウを攻撃!
「ぐっ!」
梓
LP:4000→3500
梓に初ダメージだ!
「戦闘破壊したことによって、御霊代の効果で一枚ドロー!」
平家
手札:0→1
「続いて、紫炎でガンターラに攻撃! 獄炎・紫の太刀!」
「ぐあぁ!」
梓
LP:3500→3200
「最後に、ヤイチでダイレクトアタック!」
「っ!」
梓
LP:3200→1900
「カードをセットして、ターンエンド!」
平家
LP:3200
手札:0枚
場 :モンスター
『大将軍 紫炎』攻撃力2500
『六武衆の師範』攻撃力2100+500
『六武衆-ヤイチ』攻撃力1300
魔法・罠
永続魔法『六武の門』(武士道カウンター:0)
ユニオン『六武衆の御霊代』
セット
梓
LP:1900
手札:1枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
無し
「……まさか、ここまでとは、予想外です」
「君のことだから、紫炎の効果も分かってるんだろうね」
紫炎の効果? そう言えばさっき言ってたな。
「……紫炎が場にある限り、私は一ターンに一度しか魔法・罠を発動できない効果。そして紫炎が破壊される時、フィールドの六武衆を代わりに破壊し自身の破壊を免れる効果」
げ! 何だよそのとんでも効果!
「つまり今の私は、常に魔法か罠を一度しか使うことが許されず、おまけにヤイチの存在からリバースカードさえ意味を成さず、最低二度の破壊に耐えられる紫炎と、自身の効果に加えて御霊代のユニオン効果で同じく破壊耐性を持つ師範、そしてヤイチを相手にしなければならない。そういうことですね」
「その通り!」
平家が嬉しそうに言った。梓のシリアスな雰囲気が台無しだな。まあ、それが平家なんだろうけどさ。
「君の言った言葉を返してあげよう! 君の本気が見たい!」
「良いでしょう」
梓は笑顔でそう返事を返した。うん。あいつもまだ諦めてねえ!
「私のターン……ドロー!」
梓
手札:1→2
梓の手札は今引いたカードと合わせて二枚。どうする?
「……参ります!」
笑った。何か策があるのか!?
「モンスターをセット」
また裏守備。今度もリバース効果狙いか?
「そして、魔法カード『ミラクル・フュージョン』を発動!」
『ミラクル・フュージョン!?』
全員が声を上げた。だって、あの魔法カードの効果って、
「フィールドか墓地から必要な融合素材を除外し、『E・HERO』を融合召喚致します! フィールドにセットした『E・HERO アイスエッジ』、そして『スノーマンイーター』をゲームから除外!」
セットされてたアイスエッジと、墓地から現れる『スノーマンイーター』。
でも、アイスエッジだって!? そんなE・HERO、今まで聞いたこと無いぞ!
現れた二体のモンスターは飛び上がって、光になる。
「融合召喚! 現れよ! 『E・HERO アブソルートZero』!!」
梓が叫んだ時、光の中から雪が降ってきた。
そしてそこから現れたのは、氷を思わせる鎧を纏って、真っ白なマントをひるがえす、雪のような純白のヒーロー。
また俺の知らないカードだったけど、それを理解するのが遅れちまった。だって……
「綺麗……」
隣に座る翔が呟くのが聞こえた。俺も、同じことを思ってた。
真っ白に輝くアブソルートZero。主人である梓を守るように、梓の前に立ってる。まるで本当に、お姫様と、それを守ってるヒーローみたいだった。その光景がとにかく綺麗で、見入っちまったんだ。
「アブソルートZeroで、『大将軍 紫炎』に攻撃!」
「はっ!」
はっ! 梓と平家の声でようやく我に返った。
『E・HERO アブソルートZero』
攻撃力2500
て、紫炎に攻撃!?
「えぇ!? 攻撃力は紫炎と互角だよ!!」
「アブソルートZeroは、フィールド上のZeroを除いた水属性モンスター一体につき、攻撃力を500ポイントアップする効果があります。あなたのフィールドには、水属性のヤイチがいます。よって、攻撃力は3000です!」
『E・HERO アブソルートZero』
攻撃力2500+500
凄え! これなら戦闘では負けない! 破壊耐性効果で紫炎は倒せなくても、確実にヤイチか師範は倒せる!
「
「させない! 速攻魔法『突進』! 紫炎の攻撃力を700アップ!」
『大将軍 紫炎』
攻撃力2500+700
そ、そんな!
「迎え撃て! 獄炎・紫の太刀!!」
ぶつかり合う、Zeroの氷と、紫炎の炎。けど、徐々にZeroが押されて、最後には真っ二つにされた。
梓
LP:1900→1700
「やった! 次のターンで勝てる!!」
梓……
「……アブソルートZeroの効果発動」
え? まだ何かあるのか?
「Zeroがフィールドを離れた時、相手フィールド上のモンスターは全て破壊されます」
「うそぉ!!」
平家の絶叫と同時に、猛吹雪が起こった。
「うわぁ! ちょ、ちょっと待って、ひぃ!」
平家のフィールドのモンスターが、湖ごと全部凍っていく。
「
梓が叫んだ直後、凍ったモンスター達が砕けた。
「そぉ~んなぁ~~~~~!!」
平家は放心状態だ。
「私はこれでターンエンド!」
梓
LP:1700
手札:0枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
無し
平家
LP:3200
手札:0枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
永続魔法『六武の門』(武士道カウンター:0)
これで互いに手札もモンスターもゼロ。先に強力なモンスターを呼び出せた方の勝ちだ。
「わ、わたしのターン! ドロー!」
平家
手札:0→1
「……わたしは『紫炎の足軽』を召喚!」
『紫炎の足軽』
攻撃力700
「足軽で梓くんにダイレクトアタック!」
「……」
梓
LP:1700→1000
やべえな。足軽の攻撃にはまだ耐えられるけど、もう一体出されたら決まっちまう。
「ターンエンドだよ!」
平家
LP:3200
手札:0枚
場 :モンスター
『紫炎の足軽』攻撃力700
魔法・罠
永続魔法『六武の門』(武士道カウンター:0)
梓
LP:1000
手札:0枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
無し
「私のターン」
梓
手札:0→1
「……私は魔法カード発動します。『死者蘇生』! 対象は、平家さんの墓地の『大将軍 紫炎』!」
「え……えぇ~えぇー!!」
『大将軍 紫炎』
攻撃力2500
梓の場に紫炎が現れた。服装のせいか、こっちの方がしっくり来るな。
「……」
て、あれ? 何だか梓、やけに紫炎を見てるけど、どうかしたのか?
「参ります!」
お、戻った。
「『大将軍 紫炎』で、『紫炎の足軽』に攻撃! 獄炎・紫の太刀!」
「くぅ……」
平家
LP:3200→1400
「……この瞬間、『紫炎の足軽』の効果発動! このカードが戦闘で破壊された時、デッキからレベル3以下の六武衆と名の付くモンスターを特殊召喚する! 『六武衆-ヤリザ』を特殊召喚!」
『六武衆-ヤリザ』
攻撃力1000
『六武の門』
武士道カウンター:0→2
「……私はこれでターンエンド!!」
梓
LP:1000
手札:0枚
場 :モンスター
『大将軍 紫炎』攻撃力2500
魔法・罠
無し
平家
LP:1400
手札:0枚
場 :モンスター
『六武衆-ヤリザ』攻撃力1000
魔法・罠
永続魔法『六武の門』(武士道カウンター:2)
(梓くんのライフは1000。ヤリザの攻撃力もぴったり1000。ヤリザは他の六武衆がいる時、ダイレクトアタックできる。このドローで六武衆を引くか、六武衆を特殊召喚できるカードを引くしかない!)
「わたしのターン……ドロー!」
平家
手札:0→1
「……」
「……カードをセット。ヤリザを守備表示に変更!」
『六武衆-ヤリザ』
守備力500
「ターンエンド!!」
平家
LP:1400
手札:0枚
場 :モンスター
『六武衆-ヤリザ』守備力500
魔法・罠
永続魔法『六武の門』(武士道カウンター:2)
セット
梓
LP:1000
手札:無し
場 :モンスター
『大将軍 紫炎』攻撃力2500
魔法・罠
無し
何を伏せた……?
「私のターン、ドロー!」
梓
手札:0→1
「速攻魔法『サイクロン』! そのセットカードを破壊!」
「あぁ~~~~~~~~!!」
あずさが絶叫してる間にカードは破壊される。破壊されたのは、『リビングデッドの呼び声』。
「紫炎でヤリザを攻撃!」
「あぁ~~~~~~~~ぅ!!」
「ターンエンド!」
梓
LP:1000
手札:0枚
場 :モンスター
『大将軍 紫炎』攻撃力2500
魔法・罠
無し
平家
LP:1400
手札:0枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
永続魔法『六武の門』(武士道カウンター:2)
「わ、わたしのターン!」
平家
手札:0→1
(『六武衆の
「ターンエンド!!」
平家
LP:1400
手札:1枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
永続魔法『六武の門』(武士道カウンター:2)
梓
LP:1000
手札:無し
場 :モンスター
『大将軍 紫炎』攻撃力2500
魔法・罠
無し
平家、何もできなくて、今にも泣きそうな顔してるけど、決闘への闘志は捨ててねえ。その心意気は見事だぜ!!
「私のターン、ドロー!」
梓
手札:0→1
「私は『E・HERO オーシャン』を召喚!」
『E・HERO オーシャン』
攻撃力1500
また俺の知らないE・HERO!
って、終わったな。
「せめて、とどめは私のモンスターで……」
「バトル! オーシャンで、平家さんにダイレクトアタック!」
「うわぁ~~!!」
平家
LP:1400→0
お疲れ様です。
『』はカードの正式名称、またはカテゴリ名が初めて出た時だけに付けてます。
例:
付ける⇒『氷結界の虎将 ライホウ』、『六武の門』、『E・HERO』(初回)
付けぬ⇒ライホウ、門、E・HERO(二回目以降)
読み辛くないですかね?
まあいいや。次話までちょっと待ってね。