言うほどでもないけど急展開入りますじゃ。
そんじゃ~行ってらっしゃい。
視点:ハジメ
……
……俺達は、夢でも見てるのか?
……だとしたら、俺は今日一日でどれだけ長い夢を見てる?
目の前には、魔轟神。そして、逃げまどう里の住民達。
里を守っていた結界が消え、同時に外にいた魔轟神の大群が、里の中に攻め入ってきた。
そして、そんな魔轟神達の先頭に立っているのが、
「否定されたくなければ、貴様ら自身の力で生き残れ人間」
青く光る着物と、後ろに伸びる長い黒髪。左手には、鍔の二つ付いた異様な刀。
そして、あの冷たく、なのに純粋な瞳は……
「どうしてだ……青!!」
……
…………
………………
視点:カナエ
アズサが魔轟神。
そんな、目の前で確かに起きた、あり得ないはずの現実。
私もハジメもそれが信じられなくて、受け入れることもできないまま、里まで戻ってきた。
里に入れば、いつも見掛ける大人達が仕事をして、子供達が遊んでいる、何も変わらない光景。
そんな光景を、本当なら今頃、紫さんと、アズサとの四人で見るはずだった。
なのに、その二人は……
「お! おーい!」
と、歩いている私達に誰かが声を掛けてきた。見ると、お茶屋を経営しているお兄さんが手を振り近づいてきた。
「よう。今日は二人か?」
そう言えば、アズサが山を登っていたということは、子供達以外には知られていませんでした。
「よかったら一杯どうだ? 団子も一本サービスしてやるぜ」
『……』
一度顔を見合わせた後、言われるままにそこに座りました。
「どうした? えらく落ち込んでるな。何かあったのか?」
お茶とお団子を出しながら、陽気に話し掛けてくる。調子はいつも明るい人なのですが、褐色に焼けた顔はよく見れば、心配してくれていることは分かります。
「……ああ。少しな」
ハジメが苦しそうに短く答えながら、お茶を一口啜りました。
「そっか……ごめんな」
「え?」
突然謝られて、その理由が分かりませんでした。
「今更だけどちゃんと謝ってなかったからさ。いつもいつもお前達に、面倒事を全部押しつけちまってさ。青や紫に言われるまで気付かなかった。俺達は、生き残っただけでそれ以上は何も求めて無い。その通りだ。情けない限りだが、結局お前達に全部任せちまってさ」
「……今更そんなこと、関係無い」
お兄さんに、またハジメが答えました。
「単純に俺達がそうしたいからそうしただけだ。そうしないといけないって思ったから。そのことに今更謝られても、どう答えれば良いのか分からん」
「……そっか」
お兄さんは顔を伏せました。変わらず笑っている。けれど、何だかとても、寂しそう。
「……なあ」
と、今度はハジメが声を出しました。
「ん?」
「もし……もしだぞ。ずっと、何年も家族だと信じて一緒に暮らしてきた奴が、実は家族じゃなくて、おまけにそいつが、例えばその本人を殺した魔轟神とかの変装だったとしたら、あんたはそいつをどんなふうに思う?」
「……なんか、えらく具体的なもしもだな」
アズサのことですね。
「そうだな~……」
お兄さんは腕を組み、空を仰ぎながら考え始めた。そして、しばらく空を眺めた後、こっちを向いた。
「やっぱりまずは、混乱からだろうな」
「……当たり前だろう」
「それで、やっぱ本人を殺されてるわけだし、怒る」
「……」
「で、一通り混乱して怒った後、考えるだろうな」
「何を?」
「そいつは俺にとって、家族じゃなかったのかどうかをさ」
家族じゃなかった、のか?
ハジメも、疑問を顔に浮かばせました。
「その魔轟神て、正体明かした後で何かしてくるのか?」
「……いや、特に何も。ただ、本人も、自分が魔轟神だってこと忘れてて、なのに突然元に戻って、混乱してる」
アズサのことを思い出しながら説明している。確かに、あの時のアズサはそんな感じでした。
「どんだけ具体的なんだよ……けど魔轟神なら確かにやりそうだし、まあ良いか。じゃあ、本人次第だろうけど、もしそいつがまだ俺の家族でいたいって言ってくれるのなら、俺は受け入れちまうかな」
「受け入れるのか? 魔轟神だぞ」
「確かに魔轟神は憎い。けどさ、そいつだって、長い間俺と一緒になって、その魔轟神を憎んでたんだろう。それ以前に、ずっと寝食を一緒にしてきて、一緒に笑って、一緒に暮らしてきたんだ。こっちだって、その魔轟神のことを本人だってずっと思ってきたわけだし、そもそもそいつが自分を魔轟神だってこと忘れてたなら、殺された本人だって、その魔轟神と同じように過ごしてきただろうからな。だから本人には悪いけど、そいつが俺に対する気持ちを変えてないのなら、受け入れちまうかな」
「……」
もしかして、途中で気付いたのでしょうか。話しているのが、アズサのことだって。
けど、その話しを聞いて、ハジメは考えているようです。
私も考えています。
正直、アズサの姿をした魔轟神のことを許せるかどうか、まずはそこだと思います。本物のアズサを殺されて、けど、その本物と同じように、長い間一緒に暮らして、戦ってきた。紛れも無く、あの人は私達の家族でした。
そして、あの時の様子を見た限り、あの人も、そのままでいることを望んでいるようにも見えました。魔轟神の姿に戻った後も、まるで縋るように私達を見て、その結果ダメだと諦めて、レイヴンの元へ行くしかなくなったようだった。
そのすぐ後、梓さんが、アズサを連れ去った。きっと梓さんは誰よりも早く受け入れていたのでしょうね。アズサが何者であろうと、自分にとっての家族だと。だから、レイヴンの元へ行かせないようにと連れさった。
私達にはできるでしょうか。アズサのことを、今まで通り家族として迎え入れることができるのでしょうか……
「なら、私のことも受け入れてもらおう」
と、考えていた所に、突然そんな、何度も聞いてきた声が聞こえてきた。
その声の方を見ると、青く光る着物と、形を含めどこか異様な刀。
「お前は……青か!?」
その姿に、お兄さんは歓喜しました。
「おーい!! 青が戻ってきたぞー!!」
「なに! 青が!」
「無事だったのね」
「青!」
「青!!」
その声を聞いて、大勢の人間が茶屋に集まってきた。
「おいバカ! 来るな!」
「今の彼は……!!」
私とハジメで必死に制止しようとしたけれど、誰もが目の前の青さんの姿に歓喜し、近づいてくる。当たり前です。青さんのこと、誰にも知らせていないのだから。
「青、無事だったのか!?」
「……ああ」
「良かった。魔轟神の野郎にやられたのかって思ってた……」
「……魔轟神なら倒した。三神将、創生の騎士、レヴュアタンとか言ったか」
『レヴュアタンを!?』
全員が驚愕しました。そう言えば、山でチラッとそんなお話しをしていましたね。だとすれば、既に三神将も全滅したということですね。
「やっぱすげーぜ!! 紫もヴァルキュルスの野郎を倒しちまうしさ!!」
「お前達なら、三匹の龍も倒せるぜ」
「……ああ。たった今、その一体のブリューナクを下してきたところだ」
『うおおおおおおおおお!!』
倒した!? ブリューナクを、倒したのですか?
「すげえ!! すげえぜ!!」
「お前達双子は、正に俺達にとって英雄だな!!」
「……英雄、か」
と、青さんは急に口を噤んで、皆さんに背中を向けました。そして、皆さんから離れて、また振り返ります。
「なら、その英雄がいなくなれば、お前達はどうする?」
そう言いながら、刀を地面に突き立てた、その瞬間、
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……
「な、何だ?」
突然、地震が巻き起こりました。地面が揺れながら、なぜか、空に亀裂が生まれていく。
これは、まさか……
「何だ? 何が起こってる!?」
「ここに来る前に、この結界の柱である、三人の虎将の遺体を消しておいた」
『なに!?』
「もうすぐで結界は消え、この里は無防備になる」
「そんな……結界が……」
「それだけではない。既に結界の外には、最後の命を持って蘇った魔轟神の大群が控えている」
「なっ!!」
『何だと!?』
「だが、さっき言った通りレヴュアタンは死んだ。つまり奴らを殺せば、真の意味でお前達の敵の魔轟神はいなくなる」
「そんな……」
「青!! お前、一体何の真似だ!?」
誰かが叫びました。
「ハジメとカナエから聞いていないのか? 私は、レイヴンと手を組んだ」
「なっ!?」
「つまり、今の私は、貴様らの敵だ」
その言葉と同時に、さっきまで歓喜の声に沸き立っていた人達の顔から、地震による恐怖が消え、怒りの顔に変わっていきました。
「おい青!! どういうことだ!?」
「何でだ!? 俺達あんなに、仲良く暮らしてきたってのに!?」
「お前、お前も俺達と同じ人間だろ!! どうしてこんなこと!?」
全員が、口々に青さんに罵声や怒声を上げていく。その様子を、青さんはまるで、哀れむような目で見ていました。
「嫌になったからだ」
「なに!?」
そんな目のまま、私達に話し掛けました。
「貴様の言った、人間であることに嫌気が差したからだ」
「何だと!?」
「そうだろう。貴様らのような、自分の中の可能性を否定し、そのくせ目の前の可能性にばかり縋りつき、耳触りの良い言葉ばかりを並べ立てて全てを他人任せにする。そして、それに命を賭けてみせ、伴わなければ簡単に落胆を見せる。レイジオンを倒して戻ってきた私達を見た貴様らの反応、忘れたとは言わせない」
「そ、それは……」
「そんな者達のために命を賭けて戦う。こんな愚行が他にあるか?」
「愚行って……」
「それで、俺達を……」
「そうだ。そんな貴様らを、私は肯定する気にはなれない。始めから私が望んでいたことではないのだからな。それも、こんな偽りの平和でしかない結界さえ無くなれば、貴様らも少しは目を覚ますだろう」
話している間も地震は続き、空の亀裂は大きくなっていく。
「それでも逃げるのなら、いよいよもって救えない。私はそんな、お前達と同じ人間でなどありたくない」
「青、お前!!」
「そう怒鳴るな。既にワームはほぼ全滅している。それに、外にいる魔轟神の中に三神将はいない。三匹の龍も無い。お前達も散々戦争で相手をしてきた、一介の兵士のみだ。もしかしたら貴様らでも、頑張れば生き残れるかもな」
「この野郎!!」
と、誰かが叫んだ直後、空が音を立てて割れた。そして、透明な何かが、空から飛び散っていく。全てが飛び散った時、青さんの後ろから、黒と白の塊が迫ってくる。
「否定されたくなければ、貴様ら自身の力で生き残れ人間」
視点:外
「どうしてだ……青!!」
そんなハジメの声も、悲鳴と怒号、足音、あらゆる音によってかき消された。
真っ先に動いたのは、カナエ、そして、
『グオオオオオオオオオオオオオオ』
『ワーム・キング』、コウ。魔轟神の群れに向かって、梓達の言いつけ通り、拳を振り上げ向かっていく。だが、
「コウ」
その声に、コウは制止する。
「こっちだ。大人しくしていろ」
『……』
その言葉に忠実に従い、梓の前にひざまずいた。
その間も、カナエは逃げていく者達の前に立ち、杖をかざし、祈りを込める。
「『氷結の世界 ここに揺り籠となりて 汝 彼の者に零なる静寂を』」
その詠唱と同時に杖から放たれた光線が、魔轟神達を凍らせていく。だが、それは大群の魔轟神にとっては、一部の足止めでしかない。
凍った仲間を踏みしだきながら、残りが迫ってきた。
「くっ」
呆然としていたハジメも、刀を抜き走った。
「うおおおおおお!!」
結界を作って魔轟神達にぶつけていき、近くにいる魔轟神を切り裂いていく。
だが、どれだけ二人で戦い、殺しても、その数の差は歴然とし過ぎている。二人で押さえ込めない者達はどんどん後ろへ行き、逃げまどう人間達を殺していく。
「やめろ!! お前達の相手は俺だ!!」
そんなハジメの声さえ、悲鳴と狂声によってかき消される。どれだけ剣を振り、結界をぶつけ、凍らせ、突き刺しても、その悲劇は増えていけども、減る様子は全く無い。
そして、その刃は、ハジメのよく知る人物にも向けられた。
「エリ!!」
目の前で鏡を持った少女が、一人の魔轟神の前に倒れていた。
「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
グサッ
その刃は、その体を貫き、血に染まった。
その剣を引き抜かれ、魔轟神は倒れた。
「お前は……」
「……確かに、ここまでされた以上、戦うのが怖いって、逃げてちゃいられないよな」
それは、つい先ほどまで話しをしていた、褐色の茶屋の青年だった。
「あんたは……」
その青年は、着ていた服を脱ぎ捨てて軽装になり、片手には剣を持ち、そして、背中に翼を生やしている。
「もう殺すのが嫌だったけど、俺も戦う。今まで黙っていたが、髪を見ての通り生まれは氷結界だけど、これでも
「ファルコン……」
「今だけは、昔の俺に戻らせてもらう」
喋りながら翼を開き、空にいる魔轟神に斬り込んでいった。
「うおおおおおおおお!!」
唖然としていたハジメの前を、そんな声と同時に炎が通り過ぎ、ハジメの前まで迫っていた魔轟神が燃え尽きた。
「ぼおっとするなハジメ!」
その声の方を見ると、やや白めの肌に、僅かに生やした赤い髪を揺らしながら、杖を握る壮年の男。
「仕立て屋のおっさん?」
「この『フレムベル・マジカル』が援護してやるから、お前は斬りまくれ!!」
「……」
「皆さん……」
カナエが一瞬、そちらを向いた時だった。
二人の魔轟神が、カナエに襲い掛かる。
(しまった!!)
「おら!!」
「それ!!」
そこに二人の、赤い鎧を着た金髪の女性が鞭状の剣を振い、その二体の魔轟神を切り裂いた。
「ほら余所見しない!」
「今はもう戦争中なんだから!」
「飾り屋の、アナさんにフランさん……」
「こんな所で死んじゃったら、あんたも死にきれないでしょう」
「どうせまだハジメに告白もしてないんでしょう」
「……っ!!////」
「だったら余所見せずに戦いな。そんで何が何でも生き残って、その勢いのままハジメを襲って喰っちまいな」
「襲って? ハジメを、食べるんですか?」
「ダメだ。この人意味通じて無いよお姉ちゃん」
「仕様が無い。生き残ったら教えてあげるよ」
二人とも、今の状況を楽しんでいるように話した所で、ようやく魔轟神を見据える。
「じゃあいくよ! 『
「出遅れないでよ、お姉ちゃん! いや、『Xセイバー-アナペレラ』!」
「……」
逃げる者も大勢いる。だがそんな中でも、立ち上がり、戦う者がいる。
そんな様子を、梓はコウと共に静観していた。
「始めから、私達がいなくとも、やろうと思えばやれたのか……」
ヒュッ
ドガァッ
呟いた直後、後ろから襲ってきた魔轟神を拳の一撃で沈める。その手を梓が振ると、コウが顔を近づけた。
「……」
何かを命令し、直後、コウは走った。
スゥ……
「あれは……」
その直後、頭上に白い光が伸びていく。ブリューナクの居場所を示した光と同じもの。
「見つかったのか……」
……
…………
………………
視点:梓
スタ
「……!」
光の行き先まで走ってきたが、一足遅かったか。
「手に入れたのか。グングニールを……」
もう一人の私の前で、グングニールは息絶えて横たわっている。
「……手に入れたのではない。彼は私を受け入れてくれた。だから私も、彼を受け入れた。それだけのこと」
受け入れる、か。なるほどな。
「まあいい。その力、今日一日はお前に預けておこう」
「今日一日?」
「そうだ。明日の朝、魔轟神の巣まで来ると良い」
「巣?」
「場所は知っているな、グリムロ」
後ろに立っている、人間の姿をしたグリムロに声を掛けた。
「そこに最後の龍、トリシューラは眠っている。そこで全てを終わらせる。全ての龍の力も、そして、貴様らの持つ虎将の力も私がもらう」
「なら、私はそんなあなたを全力で止めます。そして、彼女も守る」
「……」
「……」
「……守るか。なら、こんな所にいて良いのか?」
「え?」
「里の結界は壊した。今里は、魔轟神の襲撃を受けている」
「な!?」
「どうする? アズサを連れて、里に行くか?」
「くっ!!」
「梓、行こう!」
「アズサ……」
奴は頷き、そのまま里へと走っていった。
これで全ての準備は整った。
さあ、待っていろ。
私は必ず貴様を殺す。
どんなことをしてでも……
お疲れ~。
さ~て、梓の行動は皆さんにはどう映りましたかの?
正しいかな? 間違ってるかな? まあ、何を成し遂げるか決めるのは結局全部本人だものね~。
まあ良いけれど。とりあえず、次話も待ってて。