遊戯王GX ~氷結の花~   作:大海

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第三話~。
言うほどでもないけど急展開入りますじゃ。
そんじゃ~行ってらっしゃい。



第三話 里の最期

視点:ハジメ

 ……

 ……俺達は、夢でも見てるのか?

 ……だとしたら、俺は今日一日でどれだけ長い夢を見てる?

 目の前には、魔轟神。そして、逃げまどう里の住民達。

 里を守っていた結界が消え、同時に外にいた魔轟神の大群が、里の中に攻め入ってきた。

 そして、そんな魔轟神達の先頭に立っているのが、

 

「否定されたくなければ、貴様ら自身の力で生き残れ人間」

 

 青く光る着物と、後ろに伸びる長い黒髪。左手には、鍔の二つ付いた異様な刀。

 そして、あの冷たく、なのに純粋な瞳は……

 

「どうしてだ……青!!」

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

 

視点:カナエ

 アズサが魔轟神。

 そんな、目の前で確かに起きた、あり得ないはずの現実。

 私もハジメもそれが信じられなくて、受け入れることもできないまま、里まで戻ってきた。

 里に入れば、いつも見掛ける大人達が仕事をして、子供達が遊んでいる、何も変わらない光景。

 そんな光景を、本当なら今頃、紫さんと、アズサとの四人で見るはずだった。

 なのに、その二人は……

 

「お! おーい!」

 

 と、歩いている私達に誰かが声を掛けてきた。見ると、お茶屋を経営しているお兄さんが手を振り近づいてきた。

「よう。今日は二人か?」

 そう言えば、アズサが山を登っていたということは、子供達以外には知られていませんでした。

「よかったら一杯どうだ? 団子も一本サービスしてやるぜ」

『……』

 一度顔を見合わせた後、言われるままにそこに座りました。

 

「どうした? えらく落ち込んでるな。何かあったのか?」

 お茶とお団子を出しながら、陽気に話し掛けてくる。調子はいつも明るい人なのですが、褐色に焼けた顔はよく見れば、心配してくれていることは分かります。

「……ああ。少しな」

 ハジメが苦しそうに短く答えながら、お茶を一口啜りました。

「そっか……ごめんな」

「え?」

 突然謝られて、その理由が分かりませんでした。

「今更だけどちゃんと謝ってなかったからさ。いつもいつもお前達に、面倒事を全部押しつけちまってさ。青や紫に言われるまで気付かなかった。俺達は、生き残っただけでそれ以上は何も求めて無い。その通りだ。情けない限りだが、結局お前達に全部任せちまってさ」

「……今更そんなこと、関係無い」

 お兄さんに、またハジメが答えました。

「単純に俺達がそうしたいからそうしただけだ。そうしないといけないって思ったから。そのことに今更謝られても、どう答えれば良いのか分からん」

「……そっか」

 お兄さんは顔を伏せました。変わらず笑っている。けれど、何だかとても、寂しそう。

「……なあ」

 と、今度はハジメが声を出しました。

「ん?」

「もし……もしだぞ。ずっと、何年も家族だと信じて一緒に暮らしてきた奴が、実は家族じゃなくて、おまけにそいつが、例えばその本人を殺した魔轟神とかの変装だったとしたら、あんたはそいつをどんなふうに思う?」

「……なんか、えらく具体的なもしもだな」

 アズサのことですね。

「そうだな~……」

 お兄さんは腕を組み、空を仰ぎながら考え始めた。そして、しばらく空を眺めた後、こっちを向いた。

「やっぱりまずは、混乱からだろうな」

「……当たり前だろう」

「それで、やっぱ本人を殺されてるわけだし、怒る」

「……」

「で、一通り混乱して怒った後、考えるだろうな」

「何を?」

「そいつは俺にとって、家族じゃなかったのかどうかをさ」

 家族じゃなかった、のか?

 ハジメも、疑問を顔に浮かばせました。

「その魔轟神て、正体明かした後で何かしてくるのか?」

「……いや、特に何も。ただ、本人も、自分が魔轟神だってこと忘れてて、なのに突然元に戻って、混乱してる」

 アズサのことを思い出しながら説明している。確かに、あの時のアズサはそんな感じでした。

「どんだけ具体的なんだよ……けど魔轟神なら確かにやりそうだし、まあ良いか。じゃあ、本人次第だろうけど、もしそいつがまだ俺の家族でいたいって言ってくれるのなら、俺は受け入れちまうかな」

「受け入れるのか? 魔轟神だぞ」

「確かに魔轟神は憎い。けどさ、そいつだって、長い間俺と一緒になって、その魔轟神を憎んでたんだろう。それ以前に、ずっと寝食を一緒にしてきて、一緒に笑って、一緒に暮らしてきたんだ。こっちだって、その魔轟神のことを本人だってずっと思ってきたわけだし、そもそもそいつが自分を魔轟神だってこと忘れてたなら、殺された本人だって、その魔轟神と同じように過ごしてきただろうからな。だから本人には悪いけど、そいつが俺に対する気持ちを変えてないのなら、受け入れちまうかな」

「……」

 もしかして、途中で気付いたのでしょうか。話しているのが、アズサのことだって。

 けど、その話しを聞いて、ハジメは考えているようです。

 私も考えています。

 正直、アズサの姿をした魔轟神のことを許せるかどうか、まずはそこだと思います。本物のアズサを殺されて、けど、その本物と同じように、長い間一緒に暮らして、戦ってきた。紛れも無く、あの人は私達の家族でした。

 そして、あの時の様子を見た限り、あの人も、そのままでいることを望んでいるようにも見えました。魔轟神の姿に戻った後も、まるで縋るように私達を見て、その結果ダメだと諦めて、レイヴンの元へ行くしかなくなったようだった。

 そのすぐ後、梓さんが、アズサを連れ去った。きっと梓さんは誰よりも早く受け入れていたのでしょうね。アズサが何者であろうと、自分にとっての家族だと。だから、レイヴンの元へ行かせないようにと連れさった。

 私達にはできるでしょうか。アズサのことを、今まで通り家族として迎え入れることができるのでしょうか……

 

「なら、私のことも受け入れてもらおう」

 

 と、考えていた所に、突然そんな、何度も聞いてきた声が聞こえてきた。

 その声の方を見ると、青く光る着物と、形を含めどこか異様な刀。

「お前は……青か!?」

 その姿に、お兄さんは歓喜しました。

「おーい!! 青が戻ってきたぞー!!」

 

「なに! 青が!」

「無事だったのね」

「青!」

「青!!」

 

 その声を聞いて、大勢の人間が茶屋に集まってきた。

「おいバカ! 来るな!」

「今の彼は……!!」

 私とハジメで必死に制止しようとしたけれど、誰もが目の前の青さんの姿に歓喜し、近づいてくる。当たり前です。青さんのこと、誰にも知らせていないのだから。

 

「青、無事だったのか!?」

「……ああ」

「良かった。魔轟神の野郎にやられたのかって思ってた……」

「……魔轟神なら倒した。三神将、創生の騎士、レヴュアタンとか言ったか」

『レヴュアタンを!?』

 全員が驚愕しました。そう言えば、山でチラッとそんなお話しをしていましたね。だとすれば、既に三神将も全滅したということですね。

「やっぱすげーぜ!! 紫もヴァルキュルスの野郎を倒しちまうしさ!!」

「お前達なら、三匹の龍も倒せるぜ」

「……ああ。たった今、その一体のブリューナクを下してきたところだ」

 

『うおおおおおおおおお!!』

 

 倒した!? ブリューナクを、倒したのですか?

「すげえ!! すげえぜ!!」

「お前達双子は、正に俺達にとって英雄だな!!」

「……英雄、か」

 と、青さんは急に口を噤んで、皆さんに背中を向けました。そして、皆さんから離れて、また振り返ります。

「なら、その英雄がいなくなれば、お前達はどうする?」

 そう言いながら、刀を地面に突き立てた、その瞬間、

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……

 

「な、何だ?」

 突然、地震が巻き起こりました。地面が揺れながら、なぜか、空に亀裂が生まれていく。

 これは、まさか……

「何だ? 何が起こってる!?」

「ここに来る前に、この結界の柱である、三人の虎将の遺体を消しておいた」

『なに!?』

「もうすぐで結界は消え、この里は無防備になる」

「そんな……結界が……」

「それだけではない。既に結界の外には、最後の命を持って蘇った魔轟神の大群が控えている」

「なっ!!」

 

『何だと!?』

 

「だが、さっき言った通りレヴュアタンは死んだ。つまり奴らを殺せば、真の意味でお前達の敵の魔轟神はいなくなる」

「そんな……」

「青!! お前、一体何の真似だ!?」

 誰かが叫びました。

「ハジメとカナエから聞いていないのか? 私は、レイヴンと手を組んだ」

「なっ!?」

「つまり、今の私は、貴様らの敵だ」

 その言葉と同時に、さっきまで歓喜の声に沸き立っていた人達の顔から、地震による恐怖が消え、怒りの顔に変わっていきました。

「おい青!! どういうことだ!?」

「何でだ!? 俺達あんなに、仲良く暮らしてきたってのに!?」

「お前、お前も俺達と同じ人間だろ!! どうしてこんなこと!?」

 全員が、口々に青さんに罵声や怒声を上げていく。その様子を、青さんはまるで、哀れむような目で見ていました。

「嫌になったからだ」

「なに!?」

 そんな目のまま、私達に話し掛けました。

「貴様の言った、人間であることに嫌気が差したからだ」

「何だと!?」

「そうだろう。貴様らのような、自分の中の可能性を否定し、そのくせ目の前の可能性にばかり縋りつき、耳触りの良い言葉ばかりを並べ立てて全てを他人任せにする。そして、それに命を賭けてみせ、伴わなければ簡単に落胆を見せる。レイジオンを倒して戻ってきた私達を見た貴様らの反応、忘れたとは言わせない」

「そ、それは……」

「そんな者達のために命を賭けて戦う。こんな愚行が他にあるか?」

「愚行って……」

「それで、俺達を……」

「そうだ。そんな貴様らを、私は肯定する気にはなれない。始めから私が望んでいたことではないのだからな。それも、こんな偽りの平和でしかない結界さえ無くなれば、貴様らも少しは目を覚ますだろう」

 話している間も地震は続き、空の亀裂は大きくなっていく。

「それでも逃げるのなら、いよいよもって救えない。私はそんな、お前達と同じ人間でなどありたくない」

「青、お前!!」

「そう怒鳴るな。既にワームはほぼ全滅している。それに、外にいる魔轟神の中に三神将はいない。三匹の龍も無い。お前達も散々戦争で相手をしてきた、一介の兵士のみだ。もしかしたら貴様らでも、頑張れば生き残れるかもな」

「この野郎!!」

 と、誰かが叫んだ直後、空が音を立てて割れた。そして、透明な何かが、空から飛び散っていく。全てが飛び散った時、青さんの後ろから、黒と白の塊が迫ってくる。

 

「否定されたくなければ、貴様ら自身の力で生き残れ人間」

 

 

 

視点:外

「どうしてだ……青!!」

 そんなハジメの声も、悲鳴と怒号、足音、あらゆる音によってかき消された。

 真っ先に動いたのは、カナエ、そして、

 

『グオオオオオオオオオオオオオオ』

 

 『ワーム・キング』、コウ。魔轟神の群れに向かって、梓達の言いつけ通り、拳を振り上げ向かっていく。だが、

 

「コウ」

 

 その声に、コウは制止する。

「こっちだ。大人しくしていろ」

『……』

 その言葉に忠実に従い、梓の前にひざまずいた。

 

 その間も、カナエは逃げていく者達の前に立ち、杖をかざし、祈りを込める。

「『氷結の世界 ここに揺り籠となりて 汝 彼の者に零なる静寂を』」

 その詠唱と同時に杖から放たれた光線が、魔轟神達を凍らせていく。だが、それは大群の魔轟神にとっては、一部の足止めでしかない。

 凍った仲間を踏みしだきながら、残りが迫ってきた。

「くっ」

 呆然としていたハジメも、刀を抜き走った。

「うおおおおおお!!」

 結界を作って魔轟神達にぶつけていき、近くにいる魔轟神を切り裂いていく。

 だが、どれだけ二人で戦い、殺しても、その数の差は歴然とし過ぎている。二人で押さえ込めない者達はどんどん後ろへ行き、逃げまどう人間達を殺していく。

「やめろ!! お前達の相手は俺だ!!」

 そんなハジメの声さえ、悲鳴と狂声によってかき消される。どれだけ剣を振り、結界をぶつけ、凍らせ、突き刺しても、その悲劇は増えていけども、減る様子は全く無い。

 そして、その刃は、ハジメのよく知る人物にも向けられた。

「エリ!!」

 目の前で鏡を持った少女が、一人の魔轟神の前に倒れていた。

 

「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 グサッ

 

 その刃は、その体を貫き、血に染まった。

 その剣を引き抜かれ、魔轟神は倒れた。

「お前は……」

 

「……確かに、ここまでされた以上、戦うのが怖いって、逃げてちゃいられないよな」

 それは、つい先ほどまで話しをしていた、褐色の茶屋の青年だった。

「あんたは……」

 その青年は、着ていた服を脱ぎ捨てて軽装になり、片手には剣を持ち、そして、背中に翼を生やしている。

「もう殺すのが嫌だったけど、俺も戦う。今まで黙っていたが、髪を見ての通り生まれは氷結界だけど、これでも霞の谷(ミスト・バレー)では『ファルコン』て呼ばれてたんだ」

「ファルコン……」

「今だけは、昔の俺に戻らせてもらう」

 喋りながら翼を開き、空にいる魔轟神に斬り込んでいった。

 

「うおおおおおおおお!!」

 

 唖然としていたハジメの前を、そんな声と同時に炎が通り過ぎ、ハジメの前まで迫っていた魔轟神が燃え尽きた。

 

「ぼおっとするなハジメ!」

 

 その声の方を見ると、やや白めの肌に、僅かに生やした赤い髪を揺らしながら、杖を握る壮年の男。

「仕立て屋のおっさん?」

「この『フレムベル・マジカル』が援護してやるから、お前は斬りまくれ!!」

「……」

 

「皆さん……」

 カナエが一瞬、そちらを向いた時だった。

 二人の魔轟神が、カナエに襲い掛かる。

(しまった!!)

 

「おら!!」

「それ!!」

 

 そこに二人の、赤い鎧を着た金髪の女性が鞭状の剣を振い、その二体の魔轟神を切り裂いた。

「ほら余所見しない!」

「今はもう戦争中なんだから!」

「飾り屋の、アナさんにフランさん……」

「こんな所で死んじゃったら、あんたも死にきれないでしょう」

「どうせまだハジメに告白もしてないんでしょう」

「……っ!!////」

「だったら余所見せずに戦いな。そんで何が何でも生き残って、その勢いのままハジメを襲って喰っちまいな」

「襲って? ハジメを、食べるんですか?」

「ダメだ。この人意味通じて無いよお姉ちゃん」

「仕様が無い。生き残ったら教えてあげるよ」

 二人とも、今の状況を楽しんでいるように話した所で、ようやく魔轟神を見据える。

「じゃあいくよ! 『XX(ダブルエックス)セイバー-フラムナイト』!」

「出遅れないでよ、お姉ちゃん! いや、『Xセイバー-アナペレラ』!」

 

 

「……」

 逃げる者も大勢いる。だがそんな中でも、立ち上がり、戦う者がいる。

 そんな様子を、梓はコウと共に静観していた。

「始めから、私達がいなくとも、やろうと思えばやれたのか……」

 

 ヒュッ

 ドガァッ

 

 呟いた直後、後ろから襲ってきた魔轟神を拳の一撃で沈める。その手を梓が振ると、コウが顔を近づけた。

「……」

 何かを命令し、直後、コウは走った。

 

 スゥ……

 

「あれは……」

 その直後、頭上に白い光が伸びていく。ブリューナクの居場所を示した光と同じもの。

「見つかったのか……」

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

 

視点:梓

 

 スタ

 

「……!」

 光の行き先まで走ってきたが、一足遅かったか。

「手に入れたのか。グングニールを……」

 もう一人の私の前で、グングニールは息絶えて横たわっている。

「……手に入れたのではない。彼は私を受け入れてくれた。だから私も、彼を受け入れた。それだけのこと」

 受け入れる、か。なるほどな。

「まあいい。その力、今日一日はお前に預けておこう」

「今日一日?」

「そうだ。明日の朝、魔轟神の巣まで来ると良い」

「巣?」

「場所は知っているな、グリムロ」

 後ろに立っている、人間の姿をしたグリムロに声を掛けた。

「そこに最後の龍、トリシューラは眠っている。そこで全てを終わらせる。全ての龍の力も、そして、貴様らの持つ虎将の力も私がもらう」

「なら、私はそんなあなたを全力で止めます。そして、彼女も守る」

 

「……」

「……」

 

「……守るか。なら、こんな所にいて良いのか?」

「え?」

「里の結界は壊した。今里は、魔轟神の襲撃を受けている」

「な!?」

「どうする? アズサを連れて、里に行くか?」

「くっ!!」

「梓、行こう!」

「アズサ……」

 奴は頷き、そのまま里へと走っていった。

 

 これで全ての準備は整った。

 さあ、待っていろ。

 

 私は必ず貴様を殺す。

 どんなことをしてでも……

 

 

 

 




お疲れ~。
さ~て、梓の行動は皆さんにはどう映りましたかの?
正しいかな? 間違ってるかな? まあ、何を成し遂げるか決めるのは結局全部本人だものね~。
まあ良いけれど。とりあえず、次話も待ってて。
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