遊戯王GX ~氷結の花~   作:大海

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じぃあ~。
それじゃあ新章の、本当の第一話ですじゃ~。
ただまあ、この話はあまり原作とは変わらないのだけれど。
それでもまあいいかって思う人たち、行ってらっしゃい。



第一話 七つの鍵、月夜の朱き高貴

視点:あずさ

 

「お久しぶり!!」

 

「どうしたのかね、平家君」

「お気になさらず、お話をお願いします」

「……? 分かりました」

 

 さて、鮫島校長はわたしに返事をした後、改めてここ、校長室に集まった面々の顔を眺めた。

 メンバーは、オシリスレッドの遊城十代くん、万丈目準くん、ラーイエローの三沢大地くん、丸藤翔くん、ベリスクブルーの天上院明日香ちゃん、カイザーこと丸藤亮さん、レッドの大徳寺先生、ブルーのクロノス先生、そしてわたくし平家あずさの、計九人です。

 

「君達に集まってもらった理由ですが……」

 

 校長先生のお話を簡単にまとめると……

 何でもこの学園には『三幻魔』って呼ばれるカードが封印されてるらしい。それはどれだけの力かというと、下手をすれば世界を滅ぼしちゃうくらいの力を持ってるらしい。

 そしてそのカードを狙って、今校長先生の座る机の上に置かれてる七つの鍵、『七星門の鍵』を狙ってくるのが、『セブンスターズ』って呼ばれる七人の決闘者、らしい。

 その七人と戦う、鍵を守る決闘者を選ぶために、わたし達をこうして呼び出した、らしい。

 

「……まあ、二名ほど予備で呼んだ者もいるのですが」

「ふ……」

「あなたのことなノーネ、ドロップアウトボーイ」

「……ふん!」

 クロノス先生が十代くんにそう話し掛けてた。

「校長先生質問」

 ちょっと気になったことがあったから聞いてみる。

「何かね平家君?」

「そのセブンスターズって、決闘でしか追い返せないんですか?」

「というと?」

「力ずくで追い出しちゃダメなんですか?」

 

『……』

 

 あれ? なにこの空気。

「……おそらく、それができるのは、この学園では君しかいないのではと……」

「はい。だからわたしが七人全員ぼこぼこにして追い返せば……」

「まあ、それはある意味一番現実的かもしれませんが、相手もどんな力を持つ者達か分からない。そうなると、最も安全で、且つ君達全員に勝ち目があるのは、決闘だけです」

「そんなもんですか?」

「そんなもんです」

「……分かりました」

 まあそんなこんなで、真っ先に鍵を取った十代くんを筆頭に、亮さん、三沢くん、明日香ちゃん、万丈目くん、クロノス先生と、次々に鍵を取っていったんだけど……

 

「あれ? 一個余っちゃったよ」

「大徳寺先生は?」

「あ、いや、私は今回は遠慮させてもらうのニャ」

 そう言いつつ壁際まで下がっちゃう。相変わらずこの人の話し方は面白いなぁ。

「てことは、わたしか翔くんが、残りの一つを守るってこと?」

「そうだね。ここはやっぱり強い方が守るべきだと思うっス」

「じゃあ、翔くん」

「……え?」

 と、当然のことを言っただけなのに、何でか疑問の声を上げちゃった。

「いや僕は……あずささんの方が強いって」

「えぇ? いやいや、翔くんの方が強いよ」

「いやいやいや、あずささんこそ」

「いやいやいやいや……」

 

『あはははは……』

 

『……』

 

 どうしよう……

 翔くんは遠慮がちな性格だし、話が全然進まない。

 と、困ってるうちに、

「じゃあ、いっそ二人で守ればいいじゃん」

『二人で?』

 十代くんが、そんな解決方法を提案してきた。

「僕とあずささんが……」

「一つの鍵を……」

「うむ。ではそうして頂きましょうか」

 と、校長先生も了承しちゃった。

 

 

「じゃあ、今日は翔くんで、一日交替ってことで」

「分かりました」

 というわけで、七人じゃなくて八人で鍵を守っていくことになった。

 それにしても、三幻魔かぁ。十代くんじゃないけど、世界を滅ぼせるくらい強力なカードなら、一度は見てみたいかなぁ……

 

 ……

 …………

 ………………

 

 その夜のことだった。

 

「十代くん!!」

「翔!! 隼人!!」

 

 火山の方からおかしな気配がして、途中出会った万丈目くん、三沢くん、亮さんと一緒に火山へ急いだ。

 翔くんと隼人くんが、倒れてる十代くんを抱きかかえてる。

 ていうかすごいぼろぼろなんですけど!! 何事!?

「やはり、闇の決闘か……」

「そうなんだなぁ」

 万丈目くんと隼人くんがそう話した。

「けど、十代は勝ったんだなぁ。すごい決闘だったんだなぁ」

 そっか。これが、闇の決闘なんだ。今まで見たこともなかったけど、決闘しただけで、こんなふうになっちゃうんだ。

 

「明日香」

 と、亮さんが立ち上がって、十代くん達とは離れてる明日香ちゃんのもとへ……

 何してんの?

「明日香?」

「魂が……別の魂が入っていたの……」

「……?」

「だから……それが封印されて、元の魂が残って……」

「何を言っているんだ、明日香……」

「分からないの? 吹雪兄さんよ!」

「……!!」

 吹雪、にいさん……?

「吹雪……」

 そういえば、前に行方不明だって言ってたっけ。

 じゃあ、それが、セブンスターズになってたってこと……?

「……とにかく、運ぼうよ」

 どうにもこういう沈黙は苦手だ。だから、とりあえず明日香ちゃんが抱きかかえてる、吹雪さん? を、背負い上げた。

 ちょうど朝日が昇った中、十人になったメンバーで、火山を降りていった。

 

 ……

 …………

 ………………

 

 そんなことがあって、十代くんと、吹雪さんは保健室で寝てて、それに翔くんと明日香ちゃんが付き添ってる。

 そっちも気になるところだけど、それ以上に、どうにも変な噂がアカデミアに流れてた。

 

「おい、聞いたかよ、例の噂」

「噂?」

「何でも、湖んとこに凄え美人が立ってたと思ったら、口元に牙があったんだとよ」

「おいおい、吸血鬼かよ」

 

「マジだって。女の吸血鬼が出たんですってよ」

「うっそぉ、信じらんなぁい」

 

 

「……吸血鬼!?」

 ということで、現在昨日と同じく校長室にいる。昨日いた十代くんと翔くん、明日香ちゃんの三人はいない、六人なんだけどね。

「今学内は、その噂話で持ちきりです」

「こここ、怖いのニャ」

 吸血鬼か。確かにいれば怖いよね、それ。

「バカバカしい。ありえないノーネ」

 まあ、確かに普通に考えたら笑い話で済む話なんだけど……

「しかし、闇の決闘と何か関係しているとすれば……」

「次なる敵は、既にこの島に……」

 そうなんだよ。闇の決闘に、吸血鬼。ちょっと安易すぎるくらいの結びつきなんだけど、昨夜、不思議な力を使って決闘したっていうダークネス、吹雪さんのことを考えると、十分にあり得るんだよ。

「うむ。皆さん、くれぐれも、油断なきようお願いします。」

 

『うん』

「はい」

 

 大徳寺先生以外は頷いた。先生、顔引きつってるけど、大丈夫かな……

 

 まあそんな感じで解散して、今わたしは寮の自室にいる。

 明日香ちゃんはまだ保健室みたいだし、吹雪さん、早く目を覚ませばいいんだけど……

「……まあ、わたしはわたしにできることをしよう」

 昨日は翔くんが鍵を持ってたから、今日はわたしが持ってる。だからもし今敵が現れたら、今度闘うのはわたしになるかもだし……

 

 バッ

 ブンッ

 

 バサバサバサ……

 

「……鳥かなぁ」

 何だか見られてる気配がしたから、机に置いてあった英語辞典を窓の外へ投げて見たんだけど……

「……鳥ならいっか」

 後で取りに行かなきゃ。

 

 

 

視点:???

「……」

 

 バサバサ……

 

 帰ってきたわね。

 (しもべ)を迎える手を差し出す。

「良い子ね。さあ、お使いの品を……」

 言葉を掛けながらその瞳を覗き込む。

 そして、見えてきたのは僕の見てきた者達の顔と、

「……見えるわ、全ての手の内が。これで勝利は私の物……」

 あら?

「一人足りないようね」

 確か、もう一人女がいたはずだけれど……

「……」

 いくら覗いても見えてこない。どうやら失敗したようね。

 まあ、それならそれ以外の相手を選べばいいだけのことだけれど。

「……見つけた。私の相手を」

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

 

視点:あずさ

 夜になって、またわたし達は校長室に集まっています。

「準備は万端だぜ。校長」

 万丈目くんがそういった、その直後だった。

 

 ガラ

「た、大変なんだなぁ!」

 

 隼人くんが、血相変えて校長室に入ってきた。

「出たんだなぁ。湖の上なんだなぁ」

 

 

 隼人くんに言われた通り、湖まで来てみた。

 湖は霞が掛かってて、周りがよく見えなくなってる。

 ここに、吸血鬼が出たの?

 

 ……と、ボンヤリ湖を眺めてると、

「……ん?」

 何だか赤い物が見えたような気がして、その直後、みんなも気付いたみたい。

 それは、レッドカーペットだ。お笑い番組じゃなくて、地面に敷くやつ。

「ヴァージンロードってやつか?」

「違うと思うのニャ」

 大徳寺先生が万丈目くんに言った。

 まあわたしも見たことはないけど、少なくとも水上に敷くやつじゃないよね、それ。

「呼んでるんだ。俺達を」

『えぇ?』

 まあ確かに、ここを通れって言ってるみたいに見えるけど。

「どうする?」

「……やるしかない」

「誰が行くんだ?」

「……よし」

 

「うがぁ!!」

「ひぃ!!」

 

「うぁ、前出ちゃったノーネ」

 クロノス先生……

 わたしが行こうかと思ったのに、大徳寺先生と変な奇声を発したかと思ったら、前に出ちゃった。

「さすがなんだなぁクロノス教諭」

「ニュ?」

「真っ先に立候補するとは」

「教師の(かがみ)だニャー」

 多分違うと思うけど……

「あ、当たり前なノーネ! 赤き道は、紳士の道。つまりは誇り高いメディチ家の末裔である、この私の道なノーネ」

「そ、そうですか。さすが紳士……」

 怖がってるのは見たら分かるけど、ここは素直に褒めておこうっと。

 

 ということで、わたし達六人は、クロノス先生を先頭に置いて敵が来るのを待つことにした。

 ちなみに隼人くんは、このことを明日香ちゃんや翔くんに伝えるために保健室へ走った。

「大丈夫か? 震えてるぞ」

 ずっと震えてるクロノス先生に、万丈目くんが呆れたふうに話し掛けた。

「こ、これは武者震いなノーネ!!」

「武者震い、ですか……」

「そうなノーネ!! 吸血鬼など怖くは……」

 

 バサバサ……

 

 鳥か何かの羽音が聞こえてきた。

 その音に、全員の目がまた湖へ。その直後、見えてきたのは、

 

「ようこそ。朱き闇への道へ」

 

 そこに、たくさんの蝙蝠と一緒に現れたのは、ボートに乗った、緑色の髪と赤色のドレスの、びっくりするくらい綺麗な女の人。

 その人はボートから降りると、レッドカーペットの上に足を着いて、こっちまで歩いてきた。

「……あら、お相手はあなたなの?」

「いかにもなノーネ」

 ……あれ? クロノス先生を見てから、視線を逸らした。その方向にいるのは……

「チェンジはありかしら?」

「ギャフーン!」

 チェンジて……分からなくもないけどチェンジて……

「失礼なノーネ! このクロノス・デ・メディチ、相手にとって不足は無いノーネ!!」

「そう。では始めましょう、闇の決闘を。今回の相手は(わたくし)、セブンスターズの貴婦人、『ヴァンパイア・カミューラ』」

 

「ヴァンパイア・カミューラ」

「吸血鬼が出たって噂、本当だったんだニャ」

「本当に吸血鬼なんだ……」

 

「して、決闘(けっとう)のルールはいかに、なノーネ」

「勝者は次なる道へ。敗者はその魂を、この人形に封印される」

「人形に魂を封印!」

「マジかよ……」

「バッカバカすぃ。そんなおとぎ話、信じろという方が無理なノーネ」

「おとぎ話かどうかすぐに分からせてあげるわ。用意はよくて?」

「いざ!」

 

『決闘!!』

 

 

 始まった。

 まずカミューラが『不死のワーウルフ』を召喚して、カードを一枚伏せて終わり。

 その後でクロノス先生は余裕を見せながら永続魔法『古代の機械城(アンティーク・ギア・キャッスル)』を発動。攻撃力がアップした『古代の機械兵士(アンティーク・ギア・ソルジャー)』で攻撃して、ライフを削った。

「見事な先制攻撃です。クロノス教諭」

 『古代の機械兵士』には攻撃する時、相手の魔法と罠の発動を封じる効果があるからね。

 けど、確か破壊されたあのカードの効果って……

 

「甦れ、『不死のワーウルフ』」

「なにぃ!」

「お忘れかしら? このカードが戦闘で破壊された時、デッキから同名のカードを、攻撃力を500ポイントアップさせて、召喚できるということを」

「ぬー……」

 

「えぇ、知らなかったんですか?」

 

「……全て計算通りなノーネ。私はカードを一枚伏せて、ターンエンドしまスーノ」

 

 大丈夫かな、本当に……

 そう思ってるうちに、カミューラは新たに『ヴァンパイア・バッツ』を攻撃表示で召喚。その効果で場のアンデット族モンスターの攻撃力を200ポイントアップさせた。

 そして、『不死のワーウルフ』で『古代の機械兵士』を先頭破壊して、その後で『ヴァンパイア・バッツ』のダイレクトアタックが決まった。

 

「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……」

 

 ……え? 頭を抱えて、すっごく苦しそうにしてる。

 そして、ひざを着いちゃった。

「クロノス教諭!」

 本当にダメージを受けてるの!?

 

「うふふ。どお? 悪魔の手下にいたぶられる気分は? けど残念。どうせいたぶるなら私、あちらの彼がよかったわ」

 

 あぁ、さっき見てたし、やっぱ亮さんか。

「おいおい、敵さん、あんたが目当てらしいぜ」

 

「今からでも遅くないわ。こちらはチェンジオッケーよ」

 

 だからチェンジて……

 

「冗談ではないノーネ!!」

 

『……!』

 おお!! 先生!!

 

「彼は私の大事な生徒。指一本触れさせはしませンーノ!」

 

「クロノス教諭」

 

「そして、私は栄光ある決闘アカデミア実技担当最高責任者。断じて闇の決闘など、認めるわけにはいきませンーノ」

 

「けど、あんたボロボロだぜ」

 

「ヌ、心配は無用なノーネ。決闘は光。私が正統なる決闘で、闇を葬ってみせまスーノ」

 

 そして、決闘が再開された。

 先生は伏せカードの『ダメージ・コンデンサー』を発動した。その効果で、受けた戦闘ダメージ以下の攻撃力を持つモンスター、『古代の機械兵士』を特殊召喚した。

 そして先生のターン、『古代の機械獣(アンティーク・ギア・ビースト)』を生贄召喚。

 『不死のワーウルフ』を戦闘破壊しちゃったけど、『古代の機械獣』には、戦闘破壊したモンスターの効果を無効にする効果がある。

 

「ホホホのヒュー。かくして闇の決闘なるまやかしは、葬り去られたノーネ」

 

「よほど無かったことにしたいらしいな」

「あの人、そう言い続けてきたからな」

「そんなに闇の決闘が怖いのかなぁ」

 とか会話してるうちに、カミューラのターン。

 

「手札より、フィールド魔法『不死の王国-ヘルバニア』を発動!」

 

 シルバニ……ヘルバニア!?

 

「ヘルバニア……禁断のフィールド魔法なノーネ!!」

「その通り。手札のアンデット族モンスター一体を墓地に送ることで、フィールド上の全てのモンスターを、破壊することができる」

 

 けど確か、デメリットがあったよね。

「おいおい、そんなことしたら、あんたのモンスターも破壊される上に、効果を使用した後、通常召喚ができなくなっちまうぜ」

 そうそう、それだ。

 

「でもこれで終わりではないことはご存知よね。クロノス先生」

「……そ、そうだったノーネ。セニョーラのモンスターは、『ヴァンパイア・バッツ』」

「いかにも。このカードが破壊される時、デッキの同名カードを墓地に送ることで、破壊を無効にすることができる。まさに不死身のモンスター」

 

『……!』

「まずい」

 

 カミューラは手札の『ヴァンパイア・ロード』を墓地へ送ってヘルバニアの効果を発動させた。場のモンスター全部が破壊されたんだけど、『ヴァンパイア・バッツ』はデッキから同名カードを墓地へ送ってまた復活した。

 そして、

 

「舞え! ブラッディ・スパイラル!」

「ンギャァァァァ!! 同じ失敗を二度繰り返すとは情けないノーネ。生徒諸君、今のは悪い手本として、決して、決して真似をしては、いけませんノーネー……」

 

 バタァ……

 

『あぁ……!』

 まずい、もう限界じゃないの?

「く、やはり俺が出るべきだった……」

 亮さん、頑張ってる先生の前でそんなこと言っちゃだめだよ。

 

「だからチェンジなさいと言ったでしょう。この私に、こんなに弱くて無様な決闘者を差し向けるとは……」

 

「それは違うぜ」

「それは違うよ」

 

 カミューラが話してる最中、そんな二人分の声が聞こえてきた。

『十代(くん)』

 翔くんと隼人くんと、十代くんが隼人くんに背負われながらここまで走ってきた。

「クロノス先生は強いぜ」

 

「ぬぅ、ドロップアウトボーイ……」

 

「戦った俺が言うんだ。間違いない」

「僕も、一緒にタッグ決闘で組んだ人間として分かる。先生は強い」

「クロノス先生! 見せてくれよ、あんたのターン!」

「先生は負けない! 先生の力を証明して下さい!」

 二人がそう話し掛けた後、クロノス先生は体に力を籠めて、呻き声を上げて、ふらつきながら、けど立ち上がった。

 

「セニョーラカミューラ」

「あらお目覚めかしら」

「このクロノス・デ・メディチ、断じて闇の決闘などに、負けるわけにはいきませンーノ! なぜなら、決闘とは本来、青少年に、希望と光を与えるものであーり、恐怖と闇をもたらすものではないノーネ!」

 

「だよな。クロノス先生」

「それで、闇の決闘なんか存在しないと……」

「存在してはならぬと言っていたのか」

 何か、格好いい。

 そして、クロノス先生のターン。

 永続魔法『古代の機械城』を生贄に、先生の切り札、『古代の機械巨人(アンティーク・ギア・ゴーレム)』が召喚された。

 そのまま『ヴァンパイア・バッツ』を戦闘破壊。その後『大嵐』を発動して、ヘルバニアを含む全ての魔法、罠が破壊された。

 

「やはりあなたは弱くて無様ね、クロノス先生」

「負け惜しみはやめるノーネ」

「これでも負け惜しみと言えるかしら!」

 

 ちょ、顔!

 て、罠カードが発動された!?

 

「バカな、罠カードは全て破壊したはずなノーネ!」

「お勉強が足りないわよクロノス先生」

「なに?」

 

「く、『不死族の棺(アンデットベッド)』は、破壊されることで効果を発動する、特殊な罠」

 

「その通り。『不死族の棺』の効果で、『不死のワーウルフ』を攻撃表示で召喚するわ!」

「ぐぅ……」

「さすがの先生もここまでは読み切れなかったようねぇ!」

「いぃー……」

 

「あぁ……」

「そんな……」

「ここまで手の内が読まれているとは……」

「あと、顔……」

 

「ふふん。私の赤目に掛かれば、それくらい容易いこと」

 

 あ、戻った。

 ん? なに、あのカミューラの肩に止まった蝙蝠。

 

「ほっほっほっほっほっほ。私のターン、ドロー」

 

 そしてカミューラのターン。

 カミューラは魔法カード『生者の書-禁断の呪術-』を発動。墓地の『ヴァンパイア・ロード』を攻撃表示で召喚して、クロノス先生の墓地から『古代の機械獣』をゲームから除外した。

 その後『ヴァンパイア・ロード』をゲームから除外して、『ヴァンパイア・ジェネシス』を特殊召喚した。しかも『ヴァンパイア・バッツ』の効果で、攻撃力が200上がって、『古代の機械巨人』を超えた。

 

「……諸君、よぉく見ておくノーネ。そして約束するノーネ」

 

 突然こっちを向いて、語り掛けてきた。

「約束……?」

 

「たとえ闇の決闘に敗れたとしても、闇は光を凌駕できない。そう信じて、決して心を折らぬこと。私と約束して下さーい」

 

「クロノス教諭……」

「クロノス先生……」

 

「最後の授業は終わったのかしら、クロノス先生」

 

「いつでも来いなノーネ!!」

 

 そして、『ヴァンパイア・ジェネシス』で、『古代の機械巨人』を戦闘破壊。

 

「まだまだ!! 私は、闇の決闘に屈しはしないノーネ!!」

 

 その後、『不死のワーウルフ』と、『ヴァンパイア・バッツ』のダイレクトアタックが決まった。

「クロノス先生!」

 

「ボーイ……光の、決闘を……」

 

「ジ・エンド」

 

『……』

「クロノス……教諭……」

「格好よかったぜ。クロノス先生」

 

 倒れたクロノス先生に、カミューラは近づいて首から鍵を取り外した。

「やっと一つ……約束通り、彼の魂は私のコレクションに頂くわ」

 そう言った後、さっき見せた人形を取り出した。

 その直後、倒れてたクロノス先生の姿が消えて、カミューラの手に持ってる人形は……

「クロノス先生が、人形に!!」

「それにしても、好みじゃないわね」

 それだけ言って、先生の人形を足元に放り投げた。

「お前!!」

 十代くんが叫んだけど、それを、亮さんが引き止めた。

「カイザー……」

 

「ふふふ、次の対戦が楽しみだわ」

 その時、湖の上に城が現れた。

 

「間もなく、素敵な招待状をお届けするわ」

 

 それだけ言い残して、カミューラは姿を消した。

 後には、三日月の下に光ってる、不気味なお城だけがそこにそびえ立ってた。

 

 

 

 




お疲れ~。
ちゃんとした決闘の描写をしてないからオリカの紹介は無しです。それかやっぱあった方がいいかしら?
ほんで、前書きにも書いたけど、大海としてはなるだけ原作は尊重したいので、ほぼ原作そのままになってしまいました。
一応次からオリジナル展開を入れる予定なので、それまでちょっと待ってて。

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