遊戯王GX ~氷結の花~   作:大海

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四部の初決闘~。
やるのはタイトルの通りですわ。
んじゃ、行ってらっしゃい。



第二話 激昂のビークロイド

視点:十代

 

「ダメだ!! お兄さん!!」

 

「『サイバー・エンド・ドラゴン』、プレイヤーにダイレクトアタック!!」

 

 魔法カード『幻魔の扉』。

 相手フィールドの全モンスターを破壊して、その決闘中に使われたあらゆるモンスターを、召喚条件を無視して特殊召喚できる魔法カード。ただし、使ったプレイヤーは、負けた時その魂をカードに奪われる。

 カミューラはその代償を、自分の魂じゃなくて、カイザーの弟である翔の魂で支払おうとした。

 カイザーが勝てば、決闘には勝てるけど翔の魂は奪われる。しかも、今日は順番であずさじゃなくて翔が鍵を持つ番だったせいで、その翔が倒れれば必然的に鍵は奪われる。

 勝っても負けても、確実に鍵は一つ奪われる。そんな状況にカイザーは追い詰められて、そして、最後には、翔を助けるために、負けを選んだ。

 

「お兄さん!!」

 

 翔がまた叫んだ直後、カイザーはひざを着いて、地面に落ちた鍵は消えた。と同時に、カイザーの姿も消えて、カミューラの手にある人形が、カイザーの姿に。

「カイザー……」

 

「鍵と人形は頂いたわ。安心なさい。私のコレクションとして、大事に大事に可愛がってあげる」

 

「……さない」

 

「ん?」

 

 翔?

 

「……お兄さんを、こんな汚い方法で負かしたお前のことも許せないけど、それ以上に、まんまと人質なんかにはまって、無敵のお兄さんを敗北させちゃった、僕自身のことが許せない……」

 

 言いながら、翔は立ち上がって、カミューラをまっすぐ見上げた。

 

「お前や、僕や、色んなものが許せないけど、今はそれ以上に、お前のことが憎い!!」

「次の相手は僕だ!! 僕と決闘しろ!! ヴァンパイア・カミューラ!!」

 

 翔……

 その姿は、今までの翔には無かった、激しい怒りと憎しみに苛まれた、強烈な表情だった。

 

「ふふん。面白いわね。けど今日はもう疲れちゃったから、また明日受けてあげるわ」

「ふざけるな!! お前の都合なんか関係ない!! 今すぐ僕と決闘だ!!」

「慌てちゃダメ。何より、怒り心頭のそんな状態じゃ、私には逆立ちしたって勝てやしないわよ、坊や」

 

 翔にそんな言葉を吐き捨てながら、カミューラはその姿を消した。

 

「待て!! 逃げるのか!!」

 

「はっはっはっはっは、はっはっはっはっは、はっはっはっはっは……」

 

「待て、カミューラ!! 僕と!!」

 

「僕と決闘しろおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 ……

 …………

 ………………

 

 その後は、怒りに喚き続ける翔を何とか抑えて、城の外まで引っ張っていった。

 けど、城から出た直後、

 

「あずささん。悪いけど、この鍵、もう一日僕が持っていいよね?」

 

 そう、激しい顔のままあずさに、確認ていうよりほとんど脅して、あずさはそれに何も言わず頷いた。

 そして、いつもなら俺達と同じ、レッド寮に戻ってたんだけど、今日はイエローの寮にある自室に戻っていった。

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

 

視点:三沢

 さて、時間が過ぎるのは早いもので、気が付けば一日経って、今は既に月の光る夜だ。

 昨夜と同じように湖に立ち、俺と万丈目、隼人と大徳寺先生、あずさの五人で城を見上げている。

「それで、翔はまだか?」

「ああ。昨日からカーテンを閉め切って引き籠っていたが、一晩中灯りが漏れていた。ギリギリまでデッキを確認しているのか、それとも怒りに震えているのか」

「何にしても、昨日カミューラが言ったように、今の翔に冷静な決闘ができるか不安なんだな」

「だとしても、次に決闘するのは翔くんだよ。ここで他の誰かが行ったら、今度はわたし達が翔くんに恨まれちゃうよ」

 あずさの言うとおりだ。ここは翔に託す。そのことには、誰もが納得していることだ。

 

 ザ……

 

『……!』

 足音がしたと思ったら、翔が歩いてきていた。

「……」

『……』

 何て、冷たい目だ。今までの翔からは考えられない表情だ。

 そんな目を俺達に一度向けたかと思うと、無言のままレッドカーペットの上に立った。

「……あ、そうだ」

 と、歩き出す直前、かなり冷たい、低い声を出した。

「悪いんだけど、みんなは来ないでくれる?」

『……!!』

 冷たい声のまま何を言い出すかと思えば、

「なぜだ! お前一人で行くというのか!?」

「そうだよ。みんな、昨夜の僕みたいになりたいの?」

「それは……」

『……』

「言っとくけど、今の僕は、カミューラに勝つことしか考えてない。だから誰かが人質に取られても、お兄さんみたいに気遣うことなんてしない。むしろいるだけ邪魔だよ」

「邪魔だと……」

 万丈目が声を上げたが、その声に力は無い。翔の言葉が正しいことを分かっているんだろう。

「はっきり言って、今日の僕は、勝つためならみんなだって見捨てちゃうよ」

「翔くん……」

 あずさの声が聞こえた。かなり悲しそうな、寂しそうな。

 正直、そんなあずさの気持ちは何となく分かる気がする。今の翔の姿は、あまりにもあいつに似過ぎている。

 

「心配はいらねえ!!」

 

 突然、そんな声が聞こえた。その声の方を見ると、十代が天上院君と共に、モーターボートでこちらへ近づいてきた。

「あいつの闇の力への対策はしてきたぜ」

「対策?」

 そういうと、十代は首にぶら下げているペンダントを示した。半分に割れているものが、今は二つに増えている。

 

 そして、天上院君は吹雪さんから聞いたという話をした。

 闇の力を破るには、闇のアイテムが必要だと。そして、それを持つのが十代であると。

「闇の決闘の理屈は分からないけど、闇のアイテムを持つのは十代だけよ」

 それで俺達が本当に安全なのか、正直疑わしいが、それでも信じる価値はあるな。

「まかせろ」

 十代はそう言って胸を叩き、それによってペンダントが揺れている。

「良いよな、翔」

「……好きにしたら」

 十代にまで、翔は冷たいまま、歩き始めた。

 

 

 城の中に入り、昨日と同じように、翔は上に上がり、俺達はそれを下から眺めるという形になる。

 そして、翔の前に、カミューラは現れた。

 

「よく来たわね、坊や」

「カミューラ……」

 

 翔、怒りに囚われるな……

 

「彼の弟の坊やがどれほどの力を見せてくれるのか、精々楽しませてもらうわ」

「楽しませる気なんてない。楽しむ前に……」

 

「潰す」

「はん、やってみなさいな」

 

『決闘!!』

 

 

LP:4000

手札:5枚

場 :無し

 

カミューラ

LP:4000

手札:5枚

場 :無し

 

 

「僕の先行、ドロー」

 

手札:5→6

 

 まずは翔のターンから。どんな戦術を使う。

 

(カーテンを閉め切っていたせいでデッキの内容は覗けなかったけれど、この坊やなら楽勝ね……)

 

「僕は魔法カード、『融合』を発動する」

 いきなり融合か!

「手札の『スチームロイド』、『ドリルロイド』、『サブマリンロイド』を融合。来い、『スーパービークロイド-ジャンボドリル』」

 

『スーパービークロイド-ジャンボドリル』融合

 攻撃力3000

 

「おお! いきなりすげえのが出た!」

「『スーパービークロイド』。最強クラスのビークロイドだ」

「初っ端から飛ばしているな」

「あの卑怯カードが出る前に、勝負をつける気だニャ」

「でも、カミューラは闇の決闘者……」

 

「カードを二枚伏せ、ターンエンド」

 

 

LP:4000

手札:0枚

場 :モンスター

   『スーパービークロイド-ジャンボドリル』攻撃力3000

   魔法・罠

    セット

    セット

 

 

「ていうか、いきなりあんなに手札使っちゃって、大丈夫かな……」

 

「ほう……いいわ、元気があるのね。私のターン、カードドロー!」

 

カミューラ

手札:5→6

 

「ふふ……」

 何だ? ドローしたカードを見て、笑っている。

 

「『幻魔の扉』を発動!」

 

 なっ!

「いきなりそれかよ!!」

 十代が喚いた直後、扉が出現し、カミューラは効果説明を始めた。

「説明するまでもないわよね。このカードの発動後、決闘に敗けた場合、自分の魂は幻魔のものとなる……」

 だが、そんな気はないんだろう。

「でも私、慎み深いから、また生贄の役を、お前の仲間に譲ってあげる」

 だと思った! そんな慎み深さいらない!!

「さあ、誰の魂を代わりにしようかしら……」

 そう言いながら、扉が徐々に開き、そこから黒い瘴気が漏れ出てきた。

『……っ!』

 嫌な瘴気だ。かなり息苦しい。

「……」

「どうせなら、仲間達みんなを生贄にしてもいいわね。そしてゆっくり鍵を頂くわ」

「……」

「嫌ならお前が敗ければいい。あなたが勝ちに走れば、仲間達はまた人形になるのよ」

「……それがどうかしたの?」

「え?」

 そんな、二人の会話が聞こえた時だった。

 

 カァァァァ……

 

 突然、強い光が発生した。そして、それが周囲の黒い瘴気を払い、扉に押し返す。

 

「きゃああああああああああ!!」

 

「これは……」

「闇のアイテムの力で、闇の力が破られたのよ」

「そうか……よし。」あとは頼んだぞ、翔!」

 

「……これで、魂の契約は自分の魂でしなきゃいけない、てことだよね」

「く……だが、決闘に勝てば何のことは無い。このターンで終わらせる」

 

「私は、誇り高きヴァンパイア一族の魂を、幻魔に預け発動! 相手フィールド上のモンスターを、全て破壊する!」

 く、扉から発生したエネルギーが、ジャンボドリルを破壊した。

「……」

「更に、その能力により、ジャンボドリルを特殊召喚する」

 

『スーパービークロイド-ジャンボドリル』融合

 攻撃力3000

 

「更に、手札から、『不死のワーウルフ』を攻撃表示で召喚する」

 

『不死のワーウルフ』

 攻撃力1200

 

「この攻撃を受けたら翔くんは……」

 

「いけ! ジャンボドリル!」

 巨大なジャンボドリルが、翔に向かって飛んでいく。危ない!

 

「……リバースカード、オープン。速攻魔法『融合解除』……」

「な!」

 あのカードは!?

「ジャンボドリルの融合を解除し、僕の融合デッキへ戻す。その後、僕の墓地に眠る融合素材モンスター一組を、フィールドに特殊召喚する」

 

『スチームロイド』

 守備力1800

『ドリルロイド』

 守備力1600

『サブマリンロイド』

 守備力1800

 

「く、そんなカードを伏せて……『不死のワーウルフ』では攻撃力が足りない。カードを伏せて、ターンエンドよ」

 

 

カミューラ

LP:4000

手札:3枚

場 :モンスター

   『不死のワーウルフ』攻撃力1200

   魔法・罠

    セット

 

LP:4000

手札:0枚

場 :モンスター

   『スチームロイド』守備力1800

   『ドリルロイド』守備力1600

   『サブマリンロイド』守備力1800

   魔法・罠

    セット

 

 

「……ねえ、確認したいんだけど」

「何よ?」

「この決闘で僕が勝てば、お前は幻魔に魂を奪われるってことだよね?」

「それがどうしたのよ」

「……クス」

「ん?」

「ふふ……ふふふはは……」

 な、何だ? その不気味な笑いは……

「そっか……わざわざ手札全部使い切ってまでジャンボドリルを呼んだ甲斐があったよ」

「何ですって!?」

 

『……!?』

「じゃあ、翔は『幻魔の扉』を使わせるためにわざとジャンボドリルを呼んだってのか!? カミューラを生贄にするために!?」

「そうだよ。そのくらいしないと、僕の怒りは治まらない……」

「だ、だが、十代の闇のアイテムで、闇の力が防げるとも限らないだろうが!」

「だからそれがどうしたのさ?」

「なに!?」

「そんなの、最初に来るなって言っておいたのに、勝手についてきたみんなが悪いんでしょう。最初に言ったよね。僕はカミューラを倒すためなら、みんなだって見捨てるってさ」

『……』

 翔、こんな奴だったか?

 確かに、今までの翔にも、多少傲慢な面はあった。だが、いつもは心優しく、穏やかな性格だった。

 それが今では、カミューラを倒すために俺達をも犠牲にしようとし、更にはカミューラを生贄にするためにカードの発動まで促す狡猾さまで見せている。

 憎い。翔は昨夜、カミューラにそう言っていた。

 前例を知っているから分かったつもりではいた。だが改めて思う。憎しみという感情は、ここまで人を変えてしまうものなのか。

 

「く……やれるもんならやってごらんなさい!!」

「続けるよ。僕のターン、ドロー」

 

手札:0→1

 

「『強欲な壺』を発動。カードを二枚ドロー」

 

手札:0→2

 

「……『サブマリンロイド』を生贄に、『ユーフォロイド』を召喚」

 

『ユーフォロイド』

 攻撃力1200

 

「そして、『スチームロイド』と『ドリルロイド』を攻撃表示に変更」

 

『スチームロイド』

 攻撃力1800

『ドリルロイド』

 攻撃力1600

 

「『ユーフォロイド』で、『不死のワーウルフ』を攻撃」

 

「二体の攻撃力は同じだなんだな!」

 だが、あの二体には特殊能力がある。

 

「く……『不死のワーウルフ』が戦闘で破壊された時、デッキから新たな『不死のワーウルフ』を、攻撃力500ポイントアップさせて特殊召喚する」

 

『不死のワーウルフ』

 攻撃力1200+500

 

「『ユーフォロイド』が戦闘破壊された時、デッキから攻撃力1500以下の機械族モンスターを特殊召喚できる。『パトロイド』を特殊召喚」

 

『パトロイド』

 攻撃力1200

 

「『スチームロイド』で、『不死のワーウルフ』を攻撃。『スチームロイド』がバトルする時、攻撃力が500ポイントアップする」

 

『スチームロイド』

 攻撃力1800+500

 

「くぅ……」

 

カミューラ

LP:4000→3400

 

「デッキから三体目の『不死のワーウルフ』を特殊召喚!」

 

『不死のワーウルフ』

 攻撃力1200+500+500

 

「攻撃力、2200……」

 今の翔のフィールドに、あの攻撃力を超えるモンスターは無い。攻撃はここまでか。

「メインフェイズ、『パトロイド』の効果。相手フィールド上にセットされたカードを確認して元に戻す」

「く……」

 

『妖かしの紅月(レッドムーン)

 通常罠

 

「『妖かしの紅月』……手札のアンデット族を墓地に捨てることで、モンスターの攻撃を無効にしてその攻撃力分のライフを回復する、ね……」

「な、何よ、文句あるわけ?」

「……『ドレインシールド』の方がよくないかな?」

「……」

 

「『ドレインシールド』?」

「相手の攻撃を無効にして、その攻撃力分のライフを回復できる罠カードだ。ちなみに手札コストは必要無い」

『……』

 万丈目が十代に説明した所で、この場におかしな空気が流れてしまう。

 翔、それは今言うべきことなのか?

 

「う、うるさい! このカードには更にバトルフェイズを終了させる効果があるのよ!!」

「……まあ、どうでもいいけどさぁ。一枚伏せて、ターンエンド」

 

 

LP:4000

手札:0枚

場 :モンスター

   『スチームロイド』攻撃力1800

   『ドリルロイド』攻撃力1600

   『パトロイド』攻撃力1200

   魔法・罠

    セット

    セット

 

カミューラ

LP:3400

手札:3枚

場 :モンスター

   『不死のワーウルフ』攻撃力1200+500+500

   魔法・罠

    セット

 

 

「いちいち鼻に突くガキね……私のターン!」

 

カミューラ

手札3→4

 

「見せてあげるわ。私の最強の僕を! 『不死のワーウルフ』を生贄に捧げ、『ヴァンパイア・ロード』を召喚!」

 

『ヴァンパイア・ロード』

 攻撃力2000

 

 来るのか。カミューラの最強カードが。

「『ヴァンパイア・ロード』を除外し、『ヴァンパイアジェネシス』を特殊召喚!」

 

『ヴァンパイアジェネシス』

 攻撃力3000

 

「更に永続魔法『ジェネシス・クライシス』! 一ターンに一度、デッキからアンデット族モンスターを手札に加える!」

 

カミューラ

手札:1→2

 

「『ヴァンパイアジェネシス』の効果! 手札のアンデット族を一体、墓地に捨てることで、墓地からそのレベルより低いモンスターを墓地より特殊召喚する。手札に加えたレベル8の『闇より出でし絶望』を墓地へ捨て、墓地の『不死のワーウルフ』を特殊召喚!」

 

『不死のワーウルフ』

 攻撃力1200

 

「更に、魔法カード『生者の書-禁断の呪術-』を発動! 自分の墓地のアンデット族モンスター一体を、特殊召喚できる。『闇より出でし絶望』を特殊召喚!」

 

『闇より出でし絶望』

 攻撃力2800

 

「その後、相手の墓地のモンスター一体をゲームから除外する! 『サブマリンロイド』を除外!」

「……」

 まずい! カミューラの場には、モンスターが三体!

「バトル! 『闇より出でし絶望』で、『ドリルロイド』を攻撃!」

 自慢のドリルで交戦する『ドリルロイド』だったが、すぐに『闇より出でし絶望』の腕で無残に破壊されてしまった。

 

LP:4000→2800

 

「……」

「更に、『ヴァンパイアジェネシス』で、『スチームロイド』を攻撃! ヘルビシャス・ブラッド!」

「……この瞬間、罠カード『スーパーチャージ』を発動。僕の場のモンスターが『ロイド』と名の付く機械族のみの場合、相手の攻撃宣言時にカードを二枚ドローする」

 

手札:0→2

 

「『スチームロイド』は攻撃される時、攻撃力が500ポイントダウンする」

 

『スチームロイド』

 攻撃力1800-500

 

 それ以上は何をするでもなく、『スチームロイド』は破壊されてしまう。

 

LP:2800→1100

 

「『不死のワーウルフ』で、『パトロイド』を攻撃! ハウリングクラッシュ!」

 二体の攻撃力は同じ。共に破壊された。

「……」

「これでターンエンドよ」

 

 

カミューラ

LP:3400

手札:0枚

場 :モンスター

   『ヴァンパイアジェネシス』攻撃力3000

   『闇より出でし絶望』攻撃力2800

   魔法・罠

    セット

    永続魔法『ジェネシス・クライシス』

 

LP:1100

手札:2枚

場 :モンスター

    無し

   魔法・罠

    セット

 

 

「何とか生き延びたけど、決闘はカミューラが圧倒的に有利……」

「確かに……カミューラの場に、『ヴァンパイアジェネシス』と、『ジェネシス・クライシス』がある限り、カミューラの手札にモンスターが途切れることはない」

「更にまた、そのカードをコストに、毎ターン、『ヴァンパイアジェネシス』による蘇生コンボが成立している」

「正に、危機的状況は変わらないニャ」

 

「どうして!?」

 

 突然、あずさが大声を上げた。

「闇の決闘なんかしなくたって十分に強いじゃん! 何で闇の力なんかに頼るの!?」

 

「……決闘に勝つことなど、私にとって何の意味も無い」

 カミューラは目を閉じながら、語り始めた。

「中世ヨーロッパにおいて、ヴァンパイア族は全盛を誇り、私達は、誇り高き一族として、孤高に生きていた。しかし人間共は、我々を怪物と呼び、その存在すら許さなかった。そして一族は滅び、私一人だけ、棺の中で永遠の眠りに着いていた」

「……」

「そんな私を、起こす者がいた。闇の力を使い、ヴァンパイア一族を復活させないかと。その力を貸そうってね。私が決闘した相手を人形にするのは、ただの遊びじゃない。この人形の魂を使い、滅びたヴァンパイア一族を復活させ、我々一族の魂を認めず滅ぼした人間共に、復讐すること!」

 

「そっか。あの人も、恨みから戦ってるんだ……」

「そんな凄えことになってるなんて……つまりこの決闘は、ヴァンパイア一族と、人類の対決ってわけ?」

 

「そういうことになるわね。一族の運命を背負った私は、勝たなければならない。お前に勝ち目は無いわ」

 十代の質問に答えながら、新たに翔に話し掛けた。

「……言いたいことはそれで終わり?」

「なに?」

「だったら僕のターンを始めるよ。お前が何を背負って、どんな思いでそこに立っていようと関係無い。お前は僕が倒す。その大層に語った一族の運命ごとね」

「く、貴様如きに我々の無念が分かって……!!」

 

「分かりたくもない!! お前はお兄さんを人形にした!! それだけで、お前を許さない理由は十分だ!! 僕のターン、ドロー!!」

 

手札:2→3

 

 翔、場のモンスターは全滅したというのに、決闘開始からの自信は全く揺らいでいない。

 その心の強さも、憎しみから来る力だというのか。

「『魂の解放』を発動! 互いの墓地から、五枚までカードを除外できる。更にチェーンしてリバースカード、『非常食』! 『魂の解放』を墓地へ送り、ライフを回復する」

 

LP:1100→2100

 

「そして、『魂の解放』の効果処理。僕の墓地から四枚のロイドと、お前の墓地の『生者の書-禁断の呪術-』を除外してもらう」

「く……」

 顔をしかめながら、墓地の魔法カードを除外する。確かにまた使われるのは嫌なカードだが、翔の様子から、ほとんどついでといった様子だ。

 何を狙っている?

 

「さあ……このターンで終わらせるよ」

 

 何!?

「何だって!?」

「バカな……!」

「何をする気なの?」

 

「お前のフィールドのモンスターはゼロ。その状態で、どうする気よ!?」

「こうする気さ! 魔法カード『次元融合』発動!!」

「そのカードは!!」

「ライフを2000ポイント払って、効果を発動!」

 

LP:2100→100

 

「互いにゲームから除外されたモンスターを、可能な限り特殊召喚する」

 

『スチームロイド』

 攻撃力1800

『ドリルロイド』

 攻撃力1600

『サブマリンロイド』

 攻撃力800

『ユーフォロイド』

 攻撃力1200

『パトロイド』

 攻撃力1200

 

「確か、お前もモンスターを一体、除外してたよね」

「く……」

 

『ヴァンパイア・ロード』

 攻撃力2000

 

 これで互いのフィールドに、それぞれ五体と三体のモンスターが並んだ。

「いくら数を並べたところで、そんな雑魚共じゃ私のアンデット達には勝てないわ!!」

「……せっかくだから、『パトロイド』の効果を発動。お前の伏せカードを見せてもらう」

「またか……」

 

『妖かしの紅月』

 通常罠

 

「今お前の手札はゼロ。『妖かしの紅月』は手札を一枚墓地に送らなければ効果は発動できない。だよね」

「わざわざ分かりきったことを……それがいちいち何だってのよ!?」

「『スチームロイド』で、『ヴァンパイアジェネシス』を攻撃!」

「なっ、自滅する気!?」

 

 いや、翔の手札は残り一枚、あれは……

 

「ダメージステップ、『スチームロイド』は攻撃力が500ポイントアップする!」

 

『スチームロイド』

 攻撃力1800+500

 

「そして、速攻魔法『リミッター解除』!! 自分の場の全ての機械族の攻撃力を倍にする!!」

 

『ドリルロイド』

 攻撃力1600×2

『サブマリンロイド』

 攻撃力800×2

『ユーフォロイド』

 攻撃力1200×2

『パトロイド』

 攻撃力1200×2

 

『スチームロイド』

 攻撃力(1800+500)×2

 

「攻撃力4600の、『スチームロイド』だとぉ!?」

「いけ! 『スチームロイド』!!」

 

 先程とは逆に、『スチームロイド』が『ヴァンパイアジェネシス』の体を踏み潰した。

 

カミューラ

LP:3400→1800

 

「私の、最強の僕が……」

「『ドリルロイド』で、『闇より出でし絶望』を攻撃!」

 

 カミューラが一瞬呆けていた内に、『ドリルロイド』のドリルが、先程とは逆に『闇より出でし絶望』の体を貫いた。

 

カミューラ

LP:1800→1400

 

「『パトロイド』で、『ヴァンパイア・ロード』を攻撃!」

 

 先程『不死のワーウルフ』に倒された鬱憤を晴らすように、『パトロイド』が『ヴァンパイア・ロード』を殴り飛ばし、破壊する。

 

カミューラ

LP:1400→1000

 

「こんな……バカな……」

 

 圧倒的な有利を築きながら、それを一瞬で逆転されてしまったことで、カミューラは完全に呆然事実といった表情を浮かばせている。

 そして、そんなカミューラの前には、まだ攻撃していない二体のモンスターが残っている。

「あ、あぁ……」

 

「これでとどめだ!! 『サブマリンロイド』と『ユーフォロイド』で、カミューラにダイレクトアタック!!」

 

 『サブマリンロイド』と『ユーフォロイド』、二体のモンスターが、カミューラへ向かっていく。

 

「潰れろ!! このクソ女!!」

 

 それは普通の仮想立体映像による姿のはずなのに、まるで、今の翔を支えている、憎しみの感情が乗り移ったかのように見えた。そして、その憎しみから生まれた怒りに身を委ねたビークロイドの体が、カミューラにぶつかって……

 

 

「きゃぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!!」

 

カミューラ

LP:1000→0

 

 

 

 




お疲れ~。
ちよつと翔君を色々強くし過ぎたかしら?
まあいっか、今更過ぎるし。とりあえずオリカいきますわ。


『幻魔の扉』
 通常魔法
 相手フィールド上に存在する全てのモンスターを全て破壊する。
 その後、このターン召喚、特殊召喚されたモンスターを自分及び相手の手札、デッキ、墓地から選択し、召喚条件、蘇生制限を無視して自分フィールド上に特殊召喚する。
 
何度見ても酷いなこれ。
魂と引き換えとは言え相手の場や手札に防御カードが無ければほぼ負けないカードだ。

『不死のワーウルフ』
 レベル4
 闇属性 アンデット族
 攻撃力1200 守備力600
 このカードが戦闘で破壊された時、デッキから「不死のワーウルフ」1体を自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。
 この効果で特殊召喚に成功する度に、このカードの攻撃力は500ポイントアップする。

普通にOCGなら何度特殊召喚しようと攻撃力は最大1700なんだろうけれど、この小説では敢えて積み上げ式にさせて頂きました。
そこまで強いわけでもないからOCG化しても良かったんじゃないかなぁとか書いてて思いました。

『妖かしの紅月』
 通常罠
 手札のアンデット族モンスターを1枚捨てて発動する。
 相手フィールド上のモンスター1体の攻撃を無効にし、そのモンスターの攻撃力の数値分、自分のライフを回復する。
 その後、バトルフェイズを終了する。

アンデット族限定の『ドレインシールド』の上位互換。
単純な汎用性で言えば翔の言ったように『ドレインシールド』のが良いけれど、アンデット族を使うのならこれは十分選択肢に入るレベルかと。
墓地肥やしにライフ回復、そして強制終了。アンデットに取っちゃ美味しすぎますな。

『ジェネシス・クライシス』
 永続魔法
 1ターンに1度、自分のデッキからアンデット族モンスター1体を手札に加える事ができる。
 自分フィールド上に「ヴァンパイアジェネシス」が存在しない場合、このカードと自分フィールドのアンデット族モンスターを全て破壊する。

テキスト通りに解釈すると、アンデット族でなきゃジェネシスがいなくても破壊されないってことなんだよね。
もっともアンデット族じゃなきゃ効果を活用できないから結局ジェネシス入れる羽目になるのだろうが。
けどまあレベルとかの指定も無いから、毎ターンほぼノーコストのアド稼ぎと考えりゃ強力ではあらぁな。


以上。
じゃあ次も書いていきますゆえ、ちょっと待ってて。

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