遊戯王GX ~氷結の花~   作:大海

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月一試験編、は~じま~るよ~。

そいじゃ、行ってらっしゃい。



第四話 月一試験開始 ~前日~

視点:梓

 女子寮での一件から数日経ちました。

 今日はいつにも増して生徒達が騒がしいように思えます。どうかしたのでしょうか?

 

「梓」

 

 その声に振り返ると、明日香さんです。

「さすがに余裕みたいね。みんな慌ててるのに」

「はあ……一体、皆さんは何をそんなに慌てているのでしょう?」

 そう尋ねてみると、明日香さんはなぜかジト目で私を見つめてきました。

「……もしかして、忘れてる?」

「何がですか?」

「……明日の月一試験よ」

「月一試験?」

 月一試験……

「ああ、そう言えば、そんな物もありましたね」

「忘れてたんだ……」

 また呆れてうつむきました。完璧に忘れていましたよ。

「勉強はしなくていいの?」

「勉強……しなくてはダメでしょうか?」

 そう聞いたら、明日香さんはもはや話すのが疲れたという顔を見せました。

「……私に聞いてどうするのよ。まあ、勉強しなくても大丈夫なら、しなくていいんじゃないの?」

「はあ……」

 そうですか。今のままでもそれなりの点数を取れる自信はあるのですが、一応一通りの復習はしておいた方が良いでしょうか?

 

「明日香ちゃ~ん」

 

 おや? この口調と、今にも泣き出しそうなこの声は……

「あら、あずさ」

「ここ教えて……」

 目が合いました。

「こんにちは。あずささん」

「え? あ、うん。こんにちは……///」

 普段通りの笑顔を見せたのですが、なぜ顔が赤いのでしょう?

「そうだ。梓」

 急に明日香さんが何かを思いついたように、私に話し掛けてきました。

「はい?」

「そんなに余裕があるなら、あずさに色々と教えてあげたら?」

「!?」

「構いませんよ。私などで役に立つなら」

 人に何かを教えるのは慣れていますし、お安い御用です。

「ちょちょちょちょ、ちょっと待ってくれたまえよ明日香くん!//////」

 あずささんが話し掛けてきました。何やら口調がおかしくなっていますね。

 

 ……ああ、そうでした。

 

 

 

視点:明日香

「すみません明日香さん。私には無理です」

「え? どうして?」

「……この間のこともありますし、本人も嫌がっているようですし……」

「え!?」

 また勘違いしてるわ。あずさは嫌がっている訳じゃなくて、梓と一緒にいるのが恥ずかしいだけよ。

 けど、誰でもそうだろうけど、特に梓は人の態度や見た目、事実ばかりを気にして心情をあまり見ようとしないから、よくこうして間違った解釈をしてしまうみたい。

 特に今回は前のこともあるし、自分のことだから、なお更自分にとって悪い方向に取ってしまっているということね。

「別に、嫌じゃないよ! 梓くん!」

 あら、あずさが梓に向かって……やっぱり紛らわしいわ。とにかく叫んだ。

「別に、嫌な訳じゃなくて、その……ほ、ほら! わたしなんかが梓くんみたいな人に聞くなんて、畏れ多いと言いますか、そんな感じに思っただけなのだよ、本当に」

 必死にごまかしてる。口調も変だし、誰でも変だと思う。

「そんなことですか」

 けど、変だと思わないのが梓なのよね。微笑ましそうに笑顔を浮かべてるわ。

「私達は友人同士ではないですか。だからいつでも頼って下さって構いません。私の力が必要なら、いつでも助けになりますから」

「……////」

 また顔が赤くなってる。まあ、面と向かって梓の綺麗な笑顔を見せられたら無理も無いわ。周りを見ると、私以外の女子も男子もほとんどが赤くなってるもの。

「よろしければ、これから私の部屋にいらっしゃいますか? 勉強のついでにお茶をお出ししましょう」

「え!?」

 かなりさり気なく部屋に誘ったわね。梓のことだから下心なんて無いんだろうけど、あずさは誤解してないかしら。

「////(コクコク)////」

 ……本当に誤解してないかしら。よく分からないわ。

 それにしても、あの告白から、あずさはずっと梓を意識してる。梓は一方的に振られたって勘違いしてるから普通に接してるけど、あずさは未だに答えが出てなくて、ずっとその答えを探してる。だから梓のことをかなり意識してる。

 (はた)から見たら、もう好きで良いと思うけど、あずさ自身はその気持ちに自信が無いみたい。まあどちらにしろ、きちんとした答えを見つけられる日が来るのを祈るしか無いわ。

 

 

 

視点:あずさ

「梓くんの部屋です!」

「そうですが、どうかしましたか?」

「う、ううん、何でも無いよ///」

 という訳で、梓くんの部屋に誘われて、そこで勉強しているわたくし、平家あずさですが、この部屋には驚きました。

 畳に(すだれ)に掛け軸生け花。わたしの住む女子部屋のことを思い出せば、他とは明らかに違うことは一目瞭然。いつも着てる着物と言い、とことん和風なんだね。

「では、さっそくどこが分からないのか教えて下さいますか?」

「う、うん。ここ……」

 わたしがノートを見せると、梓くんは笑顔を見せた。

「ここはですね……」

 そして、笑顔のまますらすら解いてくれた。

 梓くんの教え方は凄く丁寧で優しくて、普段勉強はあまり好きじゃないわたしも、いつまでも聞いていられそうなくらい、聞いてて気持ちの良い指導だった。

「では、次は一人でやってみましょうか」

「う、うん」

 梓くんから教わって、できると思った。

 けど……やっぱりイメージだけだね。

「そこにこれを当てはめて下さい」

 横から優しい声が聞こえて、指を指された。言われた通りやってみる……

「うわ! できちゃった! できちゃったよ梓くん!!」

 そう言って、顔を梓くんに向けたんだけど、

「……」

「//////」

 か、顔が近過ぎる!! いつの間にそんなに近くにあったの!? あとちょっと近寄ったらできちゃうじゃん!! せ……せ……せっぷ……

「他に分からない所はありますか?」

 はっ!

 そうだった、勉強しなくちゃ。梓くんは何も感じてないみたいだし……ちょっと寂しい。

 まあいいや。この際、分からない所は全部聞いちゃおっと。

「えっと、次はね……」

 

 ……

 …………

 ………………

 

 そんなこんなで、あっという間に時間が過ぎていった。そして気が付くと、

「うわぁ!! もうこんな時間!!」

「……おや、本当ですね」

 梓くんは落ち着いてる。でも、正直わたしは辛い。

「晩御飯食べ損ねちゃった~……」

 今じゃ食堂も閉まっちゃってるよね……

 

 グゥ~……

 

 嘆いた直後、お腹から大きな音が。うぅ……梓くんの前なのに、恥ずかしい。

「……少し、くつろいでいて下さい」

 梓くんはわたしにそう言って、立ち上がって部屋の奥に入っていった。

 すると、部屋の奥、台所から色んな音が聞こえた。包丁で刻む音、食器同士のぶつかる音、火を着ける音、何かを焼く音、茹でる音なんかも聞こえる。それと一緒に、とても良い匂いがしてきた。

 大体二十分くらい経ったかな。梓くんは大きなお盆を持って戻ってきた。

「あり合わせですが、良かったらお召し上がり下さい」

 そう言われて出されたのは……

 な、何これ!!

 ご飯はさすがに普通だ。けど、それ以外には、お吸い物にお魚、後は卵焼きだったり漬物だったりだけど、よくテレビで見るような料亭で出されるような出来栄えだよ!!

「これ、本当に食べて良いの!?」

 あまりにも食べるのが勿体ないんですけど!!

「……? はい。どうぞ」

 梓くんは何も気にしてない。そりゃいつもこんな料理作ってたら何も感じないよね。

「じゃあ……いただきます」

 キチンと挨拶をして、箸に手を伸ばした。そして、一口食べてみたら……

「美味しい……」

 それ以上、言葉が出なかった。本当に美味しかった。

「おかわりもありますから、お好きなだけどうぞ」

 そう言ってくれた。その言葉が嬉しくて、何より味が美味し過ぎて、お箸が止まらなくなった。

「おかわり!」

 空のお茶碗を渡すと、すぐに新しくご飯をよそいできてくれた。何だかお米も美味しい。もしかしてこのお米も特別なお米なのかな? その辺の知識はあんまり無いけど、とにかく美味しい。もちろんお米だけじゃなくて、お吸い物もお魚も、全部が美味しい。和食ってもう少し難しいイメージがあったけど、こんなに美味しいものだったんだ。

「幸せ……」

 気が付いたらそう言っちゃった。言った後で恥ずかしくなって、梓くんを見てみたら、梓くんは嬉しそうにわたしを見ていた。

 梓くんも、わたしが食べてることが嬉しいのかな……?

 

 そして、全部平らげて、お茶碗もお皿も綺麗になった。

「ごちそうさまでした」

 キチンと手を合わせる。何だか今日ほど食事に感謝の気持ちを持ったことも無いよ。

「お粗末様でした」

 梓くんも挨拶をした。

「凄く美味しかったよぉ」

「喜んで下さって光栄です。お口に合いましたか?」

「もう合い過ぎ! 毎日食べたいくらい」

 ……あれ? こんな告白、昔テレビで見たことあるような……

「それは嬉しい言葉です」

 梓くんは普通に笑ってる。よかった。また顔が熱くなりかけてた。

「よろしければ、食後の甘いものなどは?」

「え! デザートもあるの!?」

「はい」

 返事をした後で、梓くんはまた台所へ行った。そしてその手には、漆塗りの赤い厳かな小皿と、その上に……お花?

「練り切りで作った、生菓子です」

 練り切りって、あの職人さんが作るお花や木の実なんかのお菓子のこと?

「初めて食べるよ」

 添えられた竹(正式名称が分かんない)を取って、まずは見てみた。

 綺麗……花弁一本一本が細かく作られてる。遠くから見たら本物のお花にしか見えない。先が尖ってるから痛そうに見えたけど、竹でつついてみたら、かなり柔らかい。竹を刺してみたら、何となく固そうな見た目とは違って、スッと刺さって、簡単に半分に切れた。

 一口大に切って食べてみると……

「美味しい!!」

 食べたのは初めてだけど、本当に美味しい。甘いんだけど、甘すぎないとても上品な甘さで、その甘さがゆっくり口に広がっていくみたい。しかもケーキみたいにいつまでも口に残る甘さじゃなくて、飲み込んだ瞬間スッと溶けていく感じ。

「玉露もどうぞ」

 言われて出されたお茶も一口飲む。

 はあー、まだ少し残ってた甘みが程良く溶けていく。

「美味しい……」

「喜んで下さって何よりです」

 お菓子が美味しくて嬉しい。お茶が美味しくて嬉しい。梓くんが笑ってるのが嬉しい。

 もう、ここでの全部が嬉しいよ。

「これどこのお店で買ったの?」

 あんまり美味しいから、また食べたくて聞いてみた。でも、こんなに美味しいんじゃ、きっと高いんだろうな。

「いえ、これは私の手作りです」

 なーんだ。それじゃとても買えないや……

 ……

 え!!

「作ったの!? 梓くんが!?」

「はい。やはり、男子がお菓子作りをするのはおかしいでしょうか?」

「おかしくないよ!! むしろお店出せるくらいの出来だよ!!」

 わたしは和菓子のことは詳しくないけど、見た目も味も凄いよ!!

「そこまで評価して下さるとは、光栄です」

 うぅ……梓くんは結局そういう人なんだから。自分がどれだけのもの作ったのかの自覚が無いのかな……

 あれ? そう言えば……

「梓くんは食べないの?」

 わたしがいても、一緒に食べても良かったのに。

「私はそれほど空腹ではありませんので」

「そうなんだ。ちなみに普段食堂へは行くの?」

「ほとんど行きません。何かを食べる時は自分で作ります」

「やっぱり自炊してるんだ。すご~い。普段からこんな料理やお菓子が作れるなんて、羨ましい」

「普段はあまり。そもそも普段はほとんと食べませんし」

 へ?

「それって……その、一日何食くらい食べてるの?」

「一食……むしろ必要が無いので水だけの日の方が多いですね」

 えぇ~えぇー!!

「ダメだよ! ちゃんと食べないと!!」

 だから女子より体がほっそりしてるんだ!?

「よく言われます。けど昔から空腹はあまり感じなくて。食べる時間があれば、他にしなければならないことに費やした方が有意義ですし」

 そんな……

「どうしてお腹空かないの?」

 そう聞いたら、梓くんは少し無言になった。そして、

「……幼い頃から、空腹の状態こそが日常だったから、でしょうか」

「え?」

 聞き返したけど、梓くんはいつもの笑顔を見せた。

「どうかお気になさらず。それより、もう遅いので、女子寮までお送り致します」

「え? 良いよ、悪いよ……」

「お送りさせて下さい。あずささんのような素敵な方を、一人で歩かせるのは心配ですから」

 /////////

 そ、そんな恥ずかしい言葉をストレートに、君という人は////

 また顔が熱くなった。間違い無く今のわたしの顔は真っ赤だ////

「す、すみません! 失礼なことを……」

 梓くんもさすがに恥ずかしかったみたいで、顔を横に向けた。ちょっと可愛い////

「では、行きましょう。明日は試験もあります。早く寝た方が良いですよ」

 はっ! そうだった!

「うん、すぐに帰ろう!」

 

 ……

 …………

 ………………

 

「女子寮前です!」

「……誰に話し掛けているのですか?」

「気にしてはいけない、そういう存在の人達だよ」

「? ……分かりました。気にしません」

 それで良いんだよ。梓くんのような純粋な人は、気にしてはいけない。

「ここまでで良いよ。ありがとう」

「いえ。こちらこそ、こんなに長い時間引き止めてしまって、申し訳ありませんでした」

「ううん。明日の試験、お互い頑張ろうね」

「はい。では、さよなら」

「また明日~」

 手を振りながら、徐々に見えなくなっていく梓くんの顔を見続けた。

 

 

 そして、見えなくなって、部屋に戻った後、梓くんのことを思い出した。

 

 やっぱり、お互いのこと全然分かってないんだな。

 梓くん、どんな人なんだろう。普段から全然食べないなんて。

 本当に、どんな人なのかな……

 

 

 

視点:梓

 ……

 …………

 ………………ブハァ!!

 

「恥ずかしい////////!!」

 

 ゴロンゴロンゴロンゴロン……

 

 今思い出しても恥ずかし過ぎる////!!

 勉強を教えている間、あまりにも顔が近距離にありました。その度に顔から火が出そうな気持ちでしたが、私の顔は普通でしたでしょうか。彼女の顔を思い出すだけで、凄く胸がドキドキしてしまいます////

 何より、あずささんが素敵なのは本当のことですが、それをわざわざ言葉にしてどうする!? そんなことを言っても、あずささんの気を悪くしてしまうだけだというのに!!////

 ただでさえあの告白で彼女からの印象は最悪なものになっているというのに、これ以上失礼なことを言ってどうするのですか!?

 彼女といつまでも友達でいるために、余計な言葉を慎まなければ……

 

 それにしても、あずささんが、私の作った料理やお菓子を食べて下さった。しかも、毎日私の作った料理を食べたいと。

 とても嬉しいです。嬉し過ぎて、卒倒しそうな言葉でした。昔から、よく求婚の言葉としても使用される言葉です。当然そんな意味は無いのでしょうが。

 やはり、今でも夢見てしまう。あずささんと一生を添い遂げる。夫婦の契りを結ぶ。永遠に来るはずの無いそんな日を、私は切望している。

 いい加減諦めなければ。私はあずささんに振られた身。その思いは全て、心から消し去って然る物。いつまでも持っていても女々しいだけです。

 

 ……と、言葉ではいくらでももっともらしいことを言えます。実際今日まで何度も実行しようとしました。なのに、消えません。あずささんに抱いてしまった、この(よこしま)な思いを、消すことができない……

 

 なんと、弱い人間なのだろう。私という、水瀬梓という男は……

 

 ……とにかく今は眠らなければなりませんね。明日の試験のためにも。

 

 

 それにしてもあずささん、明日は大丈夫でしょうか……

 

 

 

 




お疲れ様です。
決闘はまだ先です。
だが今はこれしか言えねえ。
ちょっと待ってね。
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