一応、大海的にはこの小説で考えうる限りの最悪のエンドかなと思っています。
んなもんいちいち書くなや、と考えるのなら読まなくても大丈夫です。
興味があれば読んでみてくらさいや。
じゃ、行ってらっしゃい。
視点:外
「あずさ?」
声を掛けた明日香を含む、心配を向けるメンバーに、あずさは、笑顔を向ける。
「ごめん。一人にしてくれる?」
「え?」
「この力と、デッキのこと、ちゃんと分かっておきたいから」
『……』
「大丈夫……わたしはもう、大丈夫」
「あずさ……」
「梓くんのことは、わたしが絶対、何とかする」
『……』
「さっき、梓くんに言った通り、今夜の午前零時に、全部、終わらせるよ」
「……じゃあ、後で女子寮に行くからな」
「一人で行こう、なんて、思ってないわよね」
「うん。みんなで行こう。みんなで、梓くんを取り戻そう」
『うん』
そして、陽が完全に隠れた頃、残り二つとなった鍵を守るメンバーは、一時解散した。
そして、今度は日付が変わる時。
それが、彼を取り戻すための、最後の戦いとなる。
それを、全員が理解した。
「今夜の……午前零時に……」
もう一度、デッキを確認した。
そして、自分の中に宿った力を見つめた。
「……」
「無理」
……
…………
………………
視点:あずさ
ブウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……
わたしは今、アカデミアの定期連絡船の上にいます。いやあ、都合よく連絡船が来る日で助かったよ。
時間は、午後十一時ちょっと前。本当なら、一時間後には、あの滝壺にいなきゃいけないんだけど……
はっきり言います。今の梓くんには決闘どころか、実力でも勝つのは無理です。なので、思い切っての敵前逃亡というわけです。
うん、認めるよ。すっごく卑怯だよね。梓くんのこと、本気で救いたいって思ってるみんなからあれだけ頼られて、そんなみんなや梓くんに色々言っておいて、その上で選んだのがこんな方法だなんてさ。
……けど、仕方ないよ。だって、実際に勝てないって、分かっちゃったんだから。
梓くんのこと止めて、ああ言った時は、ただ梓くんの言うことが許せなくて、感情に任せてああしちゃったけど、よく考えたら、何の勝機も根拠も無いのにあんなことして、あんなこと言っちゃって、ちょっと無茶しすぎちゃった。
それに、梓くんの境遇は確かに可愛そうだって思ったけど、けどそれ普通にわたしは関係ないもんなぁ。みんながいて断り辛かったし、シエンの力とデッキがあれば何とかなるかもって思ったからああ言っちゃったけど、いざ手に入れてみたら、力もデッキも確かに強いけど、正直梓くんには敵う気のしない強さでしかないし。
第一、いくらわたしが唯一梓くんと正面から喧嘩できて、一番仲が良かった人間だからって、それで一方的に頼りにされても困るよ。頼りにするのは簡単だけど、自分達が懸けない命を頼る人に懸けさせてるだけなんだからさぁ。
命懸けで戦う怖さも知らないのに、無責任な期待をしないで欲しいよまったく。
……なんて、まあ愚痴を言っているうちに、連絡船は発進した。
時間になっても現れなかったら、みんなおかしいって思うだろうな。それに梓くんも、余計に怒るだろうな。
けど、その時にはこの船もだいぶ遠くへ離れてるはずだし、いくら精霊を宿した梓くんでも、簡単には追ってはこれないよね。
今はとにかく逃げる。もちろん、梓くんのことだから、追い掛けてくるだろうけど、最悪真六武衆のみんなに頼んで、精霊界とかに逃げてもいいし。
逃げて逃げて、そして、梓くんが限界に来たところを攻めて、そこで倒せばいいんだ。その頃には、梓くんの憎しみだってちょっとは晴れてるかもしれないし、わざわざ本物の命を懸ける必要だってなくなるかもしれない。
たかが決闘のために、勝てない喧嘩はできないよ。まして、本物の命が懸かった喧嘩なんて。
だから、
「ごめんね。梓くん……」
「謝罪など必要無い」
「……っっ!!」
中に入ろうとした時、そんな声が聞こえた。声の方を見てみると、海を眺められる手摺りのその上。ちょうど、出てきてる丸い月を背に、着物と青い髪と、日本刀のシルエットが見えた。
そのままデッキに飛び降りて、こっちに近づいてきた。
「あ、あ……」
「あんな確約事を取り決めておいて、不可能と見るや逃亡を図るとはな」
「あ、いや……」
「シエンも堕ちた者だ。こんな薄弱な人間に、自らを託すなど」
「いや、だから……」
「もっとも、私如きには、ある意味もっとも相応しい相手なのかもしれんがな。醜く、見苦しく、そして、平気で逃亡を図るような、見下げ果てた弱さ……」
「ちょっと、待って……」
呟いてるうちに、もう目の前まで近づいてきてた。
とっても冷たいその目には、殺意しかない。多分、わたしはシエンじゃないから、シエンに向ける憎しみを向ける理由が無いんだ。だから、シエンを宿してる私のことは、殺す以外の目的は無いから……
「その……み、みん、な……」
どうしようもなく、真六武衆のみんなに呼び掛けてみた。
『……』
「……え?」
六人とも、わたしのこと、今の梓くんと同じ、とっても冷たい目で見てた。
「そんな……」
その目が言ってる。助ける気は無いって。
「あ……そ、そうだ!」
こうなったら、最後の賭けだよ。
「ここで、ここで決闘しよう」
「……」
「元々、決闘で決着つけるはずだったんだし、ね。君も決闘者なら、こんなことじゃなくて決闘で決着つけた方がいいでしょう」
「……」
「ねえ、梓くん、君とわたしの仲じゃん。覚えてないだろうけど、わたしと君は……」
「尋ねるが……」
いきなり話を遮ってきて、質問してきた。
「その腕で、どうやって決闘するというのだ?」
「へ?」
どうしてか、私の左に目を向けて、そう尋ねてきた。わたしもそっちを見てみると、
「……」
「……」
「……!!」
一瞬、気付くのが遅れた。
私の左肩から、血が噴き出してた。それで、肩から先は、甲板に落っこちて、赤い水溜まりを作ってた。
「あ……い、痛い!!」
気付いた瞬間、直前まで全然感じなかった痛みが走った。肩を押さえるけど、痛みは全然ひかない。ただ、ひたすら痛いだけ。
「痛い!! 痛い!! いた……ンンッ!!」
今度は、声が出せなくなった。口がすっごく冷たい。触ってみると、氷の感触……
口が凍ってる!!
「ンン!! ンン……!!」
「まったく……」
「……!!」
「つくづく人間とは……」
ジャキ……
「醜い」
ズバァ!!
視点:外
あずさが、その刀身を見ることはなかった。仮に見えたところで、どうすることもできなかったろうが、ここで刀身が見えないという時点で、確かに本人の言う通り、戦っての勝ち目は始めから無かったのだろう。
そして、そんな見えない刀身から繰り出された一閃によって、あずさの身は、頭から股先まで、真っ二つに割られた。
そして、同時に、
バキバキバキバキ……
船全体から、大きな軋み音が響き、船体全てが揺れ始めた。
「な、何だ?」
ズゥンッ!!
「きゃあ!!」
「何だよこれ!?」
「何事だ!!」
「分かりません!! 突然、エンジンがストップしました!!」
「何だと!? 修復は?」
「……無理です!! 原因が分かりません!!」
「すぐに救援を呼べ!!」
「……ダメです!! 計器も全て故障しています!!」
「何だと!? 何が起こったというんだ!!」
そんな、船内の人々の慌てようなど知ったことではない、もろもろの緊急事態の張本人は、ただ、真っ二つになった真っ赤な
バキバキバキバキ……
「まったく……これが人間か……」
ズゥンッ……
「私は……ゴミでよかった」
バキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキッ
ズドォォォォォォォォォォォッ!!
荒波をうねらせ、遺体を、乗組員を、偶然乗り合わせていた生徒達を、そして、人の形をしたゴミを、全て海へと投げ出しながら、アカデミアの連絡船は、真っ二つになり、海へと沈んでいった。
……
…………
………………
午前零時、あずさは時間になっても現れず、それ以降、アカデミアから、二人の
その翌日には、アカデミアの連絡船が突然沈んだことが学園に伝わり、しばらくパニックの状態が続いた。
その直後、学園祭、最後のセブンスターズの出現、そして三幻魔の出現と、目まぐるしい日々が続いたことで、いつからか、二人の
そして、十代達の卒業の日まで、そしてそれ以降も、アカデミアで二人の
完
お疲れ~。
てなわけで、梓にビビッて逃げた結果、梓からも、真六武衆の面々からも見捨てられ、決闘することすら無く殺されて、挙句まるで無関係な大勢の人達まで巻き込みながら二人とも死んじゃったという、大海的には最悪のシナリオでした。
まあ、あずさがこう思う気持ちだって普通のことだと思うけどね。命も何も懸けなくていい輩から一方的な期待を寄せられるのって、やる気か使命感でなきゃ重荷か迷惑にしかならないわけだし。逃げたくもなるわそら。
無論、だからって成すべき時に成そうともせず逃げて良い理由にはならないとは思うし。難しいよなぁ。
ただ公式読んでもらうと分かるが、あずさはこんな子じゃないから誤解無きようにね。
まあいいや。
一応、ここまででのバッドエンドは以上ですわ。
それじゃ続きも書いていきますゆえ、ちょっと待ってて。