遊戯王GX ~氷結の花~   作:大海

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ぶえぇ~。
書くのが遅いよ~。
書く時間も無いよ~。
別に誰も待ってないろうけど話しが進まないよ~。

……なんて、泣き言という名の言い訳はこの辺にして、行ってらっしゃい。



第四話 最終決闘、『凶王』対『帝王』

視点:梓

 アカデミアを入学する際、私の手元には、調整用や、単純な所有物としての多くのカードと共に、五つのデッキがありました。

 もっとも、実際にデッキとしての(てい)を成していたのは、うち二つだけ。

 一つ目は、私が元来使っていたもの。現在は、平家あずささんの手に渡っている、『真六武衆』。

 二つ目が、現在私が使っているもの。『氷結界+E・HERO』。

 後の三つは、枚数こそ四十枚以上揃ってはおりますが、このままではまともな決闘はできない、単純に、そのカード達を束ねただけ。デッキとすら呼べないもの達でした。

 

 氷結界デッキと、その三つのデッキに出会ったのは、アカデミアの入学試験から遡り、半月ほど前。

 理由は分からない。ただ、ずっと真六武衆のデッキを使用すると決めていた私の前に、突然、四つのデッキが現れた。無論、四つとも、最初は私が言ったような、デッキとは呼べない状態でしたが。

 四つのうちの一つ、氷結界は、すぐに私のものだと分かった。

 理由は、当時は定かではなかった。ただ、一目見た瞬間、このカードは私が使うべきもの。私に使われることを望んでいる。そう、頭で理解してしまったからです。

 だから、それを既存のカードと組み合わせ、今のデッキに組み上げたもの、それが、私が入学試験で、そして、今使用しているデッキです。

 けど、残り三つのデッキ。

 単純に決闘で使用することは、或いは可能だったかもしれない。しかし、なぜかそうすることは躊躇われた。

 この理由は、今でも定かではない。敢えて言えば、これも、一目見た瞬間、分かったから。

 この三組のカード達は、私ではない。誰か、別の人達を求めている。その人達に出会うことを、望んでいる。まるで、私の頭の中に、言葉ではなく、意識でそう伝えているように感じられた。

「……いいでしょう」

 私はそれを、承諾した。どこにいるか、どこを探せばいいのか、それは、検討もつかない。

 ですが、決闘アカデミアに行けば、大勢の決闘者に出会える。だから、その中からきっと見つかるだろう。そう思って、ずっと探し続けていた。

 バカげた話だとお笑いになるでしょうが、探しながら、そのカード達と共にしていくことで、本当に、カード達が言葉を発しているように感じるようになった。

 

 ……

 …………

 ………………

 

『梓……』

 

「ええ。もちろん、分かっていますよ」

 

『忘れてないよね? 約束……』

 

「あなたとの約束を、忘れた日はありません。ですが、同時に私にも、解決しなければならない問題が起きてしまっている。それが解決した時、必ず約束を果たします」

 

『ありがとう……大好きだよ。梓』

 

「……私も、あなたが大好きですよ」

 

『……そっちに行っても、いいかな?』

 

「ええ。いらっしゃい」

 そう返事をしながら、私はカード達を手に取った。

 

『見つかるかな……』

 

「もちろん、必ず……」

 

『見つかると、いいな……』

 

 ……

 …………

 ………………

 

『……大丈夫?』

 

「慰めてくれるのですか」

 

『心配だから……』

 

「ありがとう」

 

『……泣かないで』

 

「ええ。もう大丈夫です」

 

『もう、話せる……?』

 

「構いませんよ。いらっしゃい」

 

『……うん』

 

 ……

 …………

 ………………

 

 そして今日、三つの内、二つのデッキが行き場を、自分達にふさわしい決闘者を探し出すことができた。

 守ることができるか、とても不安な約束だったけど、すくなくとも、二つの約束は守ることができた。

 これで、残りはあと一つ、あと一人。

 それは、果たしてどこにいるのか……

 

 ……

 …………

 ………………

 

 ……と、そんなことを考えつつ、今は、別のことに集中するべきですね。

 なにせ次の相手は、このアカデミア最強の人物。

 デッキを見直すことができる時間は、わずか一時間。その間に、不公平な決闘を想定して組んだデッキのままでは勝つことは難しい。

 必ず勝てるよう、調整を繰り返す……

 

 そして、時計を見ると、時間は会場を出て、五十五分を過ぎようとしていた。

「早くいかなくては」

 調整もちょうど終わったところだ。

「アズサ」

『あいよー』

「行きますよ」

『おうよ』

 返事が返ってきたのを確認して、私は、控室を後にした。

 

 

 

視点:外

 

「どっちが勝つかな?」

「やっぱカイザーじゃない?」

「いやあ、梓さんも強いし……」

「どんな決闘になるのかなぁ……」

 

 一方は、全ての生徒からの羨望と尊敬を、その身に集める決闘者。

 一方は、全ての生徒からの好意と憧憬、時に恐怖を、その身に宿す決闘者。

 そして、同じなのは、その二人のどちらもが、このアカデミアで最強の力を有しているということ。そして、そんな二人が激突するということが、誰もが望んでいた光景だということ。

 

「それでは両者、決闘フィールドへ!」

 

『わあああああああああああああああああああ!!』

 

 鮫島の宣言と同時に、二人の決闘者がフィールドへ上がる。

 それは、会場のボルテージを最大限にヒートアップさせる熱源と変わった。

 

「いっけー!!」

「梓さーん!! お兄さーん!!」

 十代ら仲間達もまた、それは同じこと。

 

「……」

「……」

 

 だが、二人はそんな空気など意に介さず、ただ、互いを見つめる。

 その視線から放たれる圧力が、先程と同じように会場中に広がり、

 

「……」

 

『……』

 

 気付けば誰もが、声を出すことを止め、やがて、会場中が無音と変わった。

「先程の決闘、見事だった」

 先に言葉を発したのは、カイザー、丸藤亮。

「ありがとうございます」

 水瀬梓もまた、それに続いて声を出す。

 その声一つ一つが圧力を感じさせる、それほどの熱気と闘志が、二人の間に流れていた。

「正直、この決闘ができるか不安ではあったが、杞憂だった。お前はこうして、俺の前に立っている。そして俺は、この日が来るのを楽しみにしていた」

「ええ。私もです。あなたとの決闘、とても楽しみにしておりました」

「俺はこの決闘、全力を出して戦うつもりだ。手加減はしない」

「もちろんです。私はあなたの本気が見たい」

「……」

「見せて下さい。あなたの本気……あすべすと決闘を!!」

「……アスベスト?」

 

「え、世界一高い山……?」

「それはエベレスト。アスベストは石綿だ」

「ああ、ちょっと前に、発がん性か何かで問題になったやつだっけ?」

 

「リスペクト、だ……」

「……」

 そんな突っ込みもそこそこに、二人は決闘ディスクを構える。

「先行後攻は?」

「どちらでも」

「では遠慮なく……先行を頂く」

「良いだろう」

 

「……」

「……」

 

「それデーハ、決闘、開始ィィィィイイイイ!!」

 

『決闘!!』

 

 

LP:4000

手札:5枚

場 :無し

 

LP:4000

手札:5枚

場 :無し

 

 

『わああああああああああああああああああああ!!』

 

「私のターン、ドロー」

 

手札:5→6

 

「モンスターをセット。カードを四枚伏せます。魔法カード『命削りの宝札』を発動! 手札が五枚になるよう、カードをドローし、五ターン後、全ての手札を捨てます」

 

手札:0→5

 

「更に一枚伏せます。これでターンエンド」

 

 

LP:4000

手札:4枚

場 :モンスター

    セット

   魔法・罠

    セット

    セット

    セット

    セット

    セット

 

 

「うおお!?」

「なんだ? あんな大量に伏せて……」

「しかも、手札補充まで……」

「なんか、すげえ……」

 

「梓さん、さすがに本気だ」

「あれが、翔や万丈目に使った?」

「ああ」

 

「……俺のターン、ドロー」

 

手札:5→6

 

(……なるほど。あれが翔と万丈目を苦しめた、カードのフルセット。確かに、正体不明の伏せカードは恐怖だが……)

「俺は、俺の決闘を行うのみ。魔法カード『融合』を発動! 手札の『サイバー・ドラゴン』二体を融合! 『サイバー・ツイン・ドラゴン』を、融合召喚!」

 

『サイバー・ツイン・ドラゴン』融合

 レベル8

 攻撃力2800

 

「出た! 『サイバー・ツイン・ドラゴン』!」

 

「更に、『サイバー・フェニックス』を召喚」

 

『サイバー・フェニックス』

 レベル4

 攻撃力1200

 

「『サイバー・フェニックス』が存在する限り、俺のフィールドの機械族モンスターを対象とする魔法・罠の効果を無効にする。そして、『サイバー・ツイン・ドラゴン』は、一度のバトルフェイズに二回の攻撃が可能」

 

「つまり、このまま上手くいけば、カイザーの勝ち」

「だが……」

 

「いくぞ。『サイバー・ツイン・ドラゴン』で、セットモンスターを攻撃! エヴォリューション・ツイン・バースト!」

 二つの口から放たれた光線が、伏せられたモンスターを蒸発させる。そこから現れたのは……

 

「あれは!!」

 

「『スノーマンイーター』の効果。このカードがリバースした時、フィールド上の表側表示のモンスター一体を選択し、破壊します。対象は当然、『サイバー・ツイン・ドラゴン』!」

 梓の宣言と共に、『サイバー・ツイン・ドラゴン』の体に氷が走る。やがて、体全体が凍り付き、砕けた。

「たとえ対象を取る効果であろうとも、モンスター効果までは『サイバー・フェニックス』の効果で無効にできない」

「ならば、『サイバー・フェニックス』で、梓にダイレクトアタック!」

「罠発動『ガード・ブロック』!」

 発動と同時にカードをドローし、それを向かってきた『サイバー・フェニックス』へ投げる。カードにぶつかったことで、『サイバー・フェニックス』は弾き返され、亮のフィールドへ、カードは梓の手に戻った。

「戦闘ダメージを一度だけ無効にし、カードを一枚ドローします」

 

手札:4→5

 

「やるな……ならば、魔法カード『二重魔法(ダブルマジック)』発動! 手札の魔法カード一枚を墓地へ送り、相手の墓地の魔法カードを使用する」

「私の墓地の魔法カードは一枚……」

 

手札:1→0

 

「俺は『サイバネティック・ゾーン』を墓地へ送り、お前の使用した『命削りの宝札』をもらう」

「……」

 言われた通り、梓は墓地から魔法カードを取り出し、亮に投げてよこした。

「魔法カード『命削りの宝札』発動! 手札が五枚になるよう、カードをドローし、五ターン後、手札を全て墓地へ捨てる」

 

手札:0→5

 

「魔法カード『時間融合-タイム・フュージョン』! 手札一枚をゲームから除外し、このターン破壊された融合モンスターを、次の俺のスタンバイフェイズに召喚条件を無視して特殊召喚できる」

 

手札:4→3

 

「次のターン、また『サイバー・ツイン・ドラゴン』が……」

「カードを三枚伏せる。これでターンエンド……」

「速攻魔法『サイクロン』発動。あなたから見て左側の伏せカードを破壊します」

 

「出た、『サイクロン』!」

「やっぱ梓さんと言ったらこれだよな!」

 

「……」

 破壊されたのは、カウンター罠『トラップ・ジャマー』。

「……俺はこれでターンエンド」

 

 

LP:4000

手札:0枚

場 :モンスター

   『サイバー・フェニックス』攻撃力1200

   魔法・罠

    セット

    セット

 

LP:4000

手札:5枚

場 :モンスター

    無し

   魔法・罠

    セット

    セット

    セット

    セット

 

 

「今の所は互角ってとこか……」

「ああ。カイザーの場にはカードが二枚。だが次のターンには、『サイバー・ツイン・ドラゴン』が戻ってくる。そして、梓の場にはモンスターこそいないが、まだ四枚もの伏せカードがあり、手札も潤沢にある」

「いずれにせよ、次の梓の動き次第ね……」

 

「私のターン、ドロー」

 

手札:5→6

 

「……参ります」

(来るか……)

「永続魔法『ウォーターハザード』! 私の場にモンスターが存在しない時、手札の水属性モンスターを特殊召喚できます。私はこの効果により、『氷結界の水影』を特殊召喚」

 

『氷結界の水影』チューナー

 レベル2

 攻撃力1200

 

「そして、伏せカードを発動します。速攻魔法『地獄の暴走召喚』! 相手の場にモンスターが存在する時、攻撃力1500以下のモンスターの特殊召喚に成功した時、そのモンスターと同じモンスターを、手札、デッキ、墓地より特殊召喚します!」

 

「出た! 梓の必殺コンボ!」

 

「その手は読めている。リバースカードオープン『リビングデッドの呼び声』!」

「……!」

「俺の墓地に眠る、『サイバー・ドラゴン』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

『サイバー・ドラゴン』

 レベル5

 攻撃力2100

 

「そして、『地獄の暴走召喚』の効果が適用される」

「……私はデッキより、二体の水影を特殊召喚」

 

『氷結界の水影』チューナー

 レベル2

 攻撃力1200

『氷結界の水影』チューナー

 レベル2

 攻撃力1200

 

「そして、相手は自分フィールドのモンスターの同名カードを、手札、デッキ、墓地より特殊召喚できます」

「『サイバー・ドラゴン』を選択」

 

『サイバー・ドラゴン』

 レベル5

 攻撃力2100

『サイバー・ドラゴン』

 レベル5

 攻撃力2100

 

「すげえ、カイザーはこれを狙って……」

「だが、『氷結界の水影』の効果は……」

 

「フィールド魔法『ウォーターワールド』発動!」

 そのカードの発動は、決闘場を、青く輝く空の下へ広がる海へと変えた。

 

「おお……さすがにもう普通だ」

「もう、これ以上の憎しみはない、ということだな……」

 

「これにより、場の水属性モンスターの攻撃力を500ポイント上昇し、守備力を500ポイント下がります」

 

『氷結界の水影』

 攻撃力1200+500

『氷結界の水影』

 攻撃力1200+500

『氷結界の水影』

 攻撃力1200+500

 

「そして、ご存知でしょうが、私の場のモンスターがレベル2以下のモンスターのみの場合、水影達は直接攻撃が可能となります」

「……」

(『氷結界の水影』……かつての仲間、三人の(アズサ)達……私の罪は、永久に消えることはない。それでも、その罪を恐れ、逃げることは、もうしない……!)

「『氷結界の水影』で、亮さんを直接攻撃! 氷結・斬影の形!」

 三人の水影が水の上を走り、亮へ向かっていく。

「罠発動『攻撃の無力化』! 攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了する」

「……」

 

「おお、防いだ」

「さすがカイザーだ……」

 

「……ならば、魔法カード『融合』! 手札のモンスター、『E・HERO オーシャン』と、水属性『氷結界の番人ブリズド』を融合!」

 

「来た!」

 

「現れよ、氷結の英雄『E・HERO アブソルートZero』!!」

 

『E・HERO アブソルートZero』融合

 レベル8

 攻撃力2500+1500+500

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』

「梓さんのエースモンスター!!」

「うわぁ、何度見ても綺麗……」

「眩しいくらいの純白……」

 

「私はこれでターンを終了」

 

 

LP:4000

手札:1枚

場 :モンスター

   『E・HERO アブソルートZero』攻撃力2500+1500+500

   『氷結界の水影』攻撃力1200+500

   『氷結界の水影』攻撃力1200+500

   『氷結界の水影』攻撃力1200+500

   魔法・罠

    セット

    セット

    セット

    永続魔法『ウォーターハザード』

    フィールド魔法『ウォーターワールド』

 

LP:4000

手札:0枚

場 :モンスター

   『サイバー・ドラゴン』攻撃力2100

   『サイバー・ドラゴン』攻撃力2100

   『サイバー・ドラゴン』攻撃力2100

   『サイバー・フェニックス』攻撃力1200

   魔法・罠

    永続罠『リビングデッドの呼び声』

 

 

「俺のターン、ドロー」

 

手札:0→1

 

「そしてこのスタンバイフェイズ、『サイバー・ツイン・ドラゴン』が復活する」

 

『サイバー・ツイン・ドラゴン』融合

 レベル8

 攻撃力2800

 

「更に、ゲームから除外された『異次元からの宝札』の効果を発動!」

「……! 時間融合の効果で除外された……」

「そうだ。このカードがゲームから除外された時、除外された次のターンのスタンバイフェイズに手札に戻る」

 

手札:1→2

 

「そして、互いのプレイヤーは、カードを二枚、ドローする」

 

手札:2→4

 

手札:1→3

 

「魔法カード『天使の施し』を発動。カードを三枚ドローし、二枚を捨てる。そして……魔法カード『パワー・ボンド』!」

「……!!」

 

「おお!! カイザーも来るぞ!!」

 

「手札、フィールドのモンスターを使い、機械族モンスターを融合召喚する。俺はフィールドに存在する三体の『サイバー・ドラゴン』を、融合! 現れよ、『サイバー・エンド・ドラゴン』!」

 

『サイバー・エンド・ドラゴン』融合

 レベル10

 攻撃力4000+4000

 

『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』

 

 鋼の光沢を輝かせる、巨大な翼と三つの首をもたげ、雄々しき咆哮と共に現れる機械竜。

「これが、帝王(カイザー)、丸藤亮さんを象徴する最強のモンスター……」

「『パワー・ボンド』で融合召喚されたモンスターの攻撃力は、その元々の攻撃力分、アップする。そして、このカードを発動させたターンのエンドフェイズ時、俺はそのモンスターの攻撃力分のダメージを受ける」

「このターンで決めるつもりですか?」

「……バトルだ! まずは『サイバー・ツイン・ドラゴン』で、『氷結界の水影』を攻撃! エヴォリューション・ツイン・バースト!」

「ですが……速攻魔法『融合解除』! Zeroの融合を解除します!」

 

『E・HERO オーシャン』

 レベル4

 守備力1200-500

『氷結界の番人ブリズド』

 レベル1

 守備力500-500

 

「Zeroがフィールドを離れた!!」

 

「アブソルートZeroがフィールドを離れた時、相手フィールドのモンスター全てを破壊します! 氷結時代(アイス・エイジ)!」

 猛吹雪が発生し、それが亮のフィールドへと向かっていく。

「その反撃は読めている! 速攻魔法『我が身を楯に』! ライフを1500ポイント支払い、フィールド上のモンスターを破壊する効果を無効にし、破壊する!」

「なっ!!」

 

LP:4000→2500

 

 カードの発動によって、猛吹雪は治まった。

「これで攻撃が可能。『サイバー・ツイン・ドラゴン』の攻撃!」

 先程の『スノーマンイーター』と同じく、水影が『サイバー・ツイン・ドラゴン』の光線に破壊される。

「くっ……!」

 

LP:4000→2900

 

「おお! 梓に初ダメージだ!」

 

「『サイバー・ツイン・ドラゴン』で、再び『氷結界の水影』を攻撃! エヴォリューション・ツイン・バースト!」

「ぐあ……!」

 同じように、二体目も破壊された。

 

LP:2900→1800

 

「く……」

「速攻魔法『融合解除』!」

「な……!」

「『サイバー・ツイン・ドラゴン』の融合を解除し、墓地より二体の『サイバー・ドラゴン』を、特殊召喚!」

 

『サイバー・ドラゴン』

 レベル5

 攻撃力2100

『サイバー・ドラゴン』

 レベル5

 攻撃力2100

 

「『サイバー・ドラゴン』で、最後の『氷結界の水影』を攻撃! エヴォリューション・バースト!」

「うおお……!」

 

LP:1800→1500

 

「二体目の『サイバー・ドラゴン』で、『E・HERO オーシャン』を攻撃! エヴォリューション・バースト!」

「くぅ……!」

「『サイバー・フェニックス』で、『氷結界の番人ブリズド』を攻撃!」

「く……!」

 

「梓さんのフィールドが全滅だ!」

「すげえ! やっぱ勝者はカイザーだ!!」

 

「……ブリズドが戦闘によって破壊された時、カードを一枚、ドローします」

 

手札:3→4

 

「これで最後だ。『サイバー・エンド・ドラゴン』で、梓にダイレクトアタック! エターナル・エヴォリューション・バースト!!」

「……」

 攻撃力8000。その巨大な光弾が、梓目掛けて放たれた。

 

『梓!』

『梓さん!!』

 

「手札の『バトルフェーダー』を、特殊召喚!」

 

手札:4→3

 

『バトルフェーダー』

 レベル1

 守備力0

 

「相手の直接攻撃を無効とし、バトルフェイズを終了させます!」

「引き当てていたのか……メインフェイズ、『サイバー・ジラフ』を召喚」

 

『サイバー・ジラフ』

 レベル3

 攻撃力300

 

「このカードを生贄に捧げることで、俺はこのターンのエンドフェイズまで、効果ダメージを受けない」

「『パワー・ボンド』のデメリット回避、というわけですね……」

「カードを二枚セット。これでターンエンド」

 

 

LP:2500

手札:0枚

場 :モンスター

   『サイバー・エンド・ドラゴン』攻撃力4000+4000

   『サイバー・ドラゴン』攻撃力2100

   『サイバー・ドラゴン』攻撃力2100

   『サイバー・フェニックス』攻撃力1200

   魔法・罠

    セット

    セット

    永続罠『リビングデッドの呼び声』

 

LP:1500

手札:3枚

場 :モンスター

   『バトルフェーダー』守備力0

   魔法・罠

    セット

    セット

    永続魔法『ウォーターハザード』

    フィールド魔法『ウォーターワールド』

 

 

(反撃を警戒してモンスターの破壊を優先したが、逆効果だったようだなt……)

 

「なんちゅう攻防や。学生のレベルを超えとるで」

「ああ。梓君の力は身をもって知っているが、あの、カイザーと呼ばれる丸藤亮。プロの世界でも注目はされていたが、確かに並みの実力じゃない……」

 

「すげー決闘だ……」

「ああ。お互い、まるで油断できない……」

「優勢だと思ったら、次のターンには一気に優位に持っていく」

「これが、あの二人の決闘……」

 

「亮さん」

「……?」

「やはりあなたは素晴らしい。これがあなたの言う、ねぐれくと決闘なのですね」

「ネグレクト……?」

 

「ネグレクト?」

「育児放棄。虐待の一種だ」

「そんな決闘したくない……」

 

「リスペクト、だ……」

「どうやら私も、本気を出して良さそうだ」

「……来い、梓。見せてみろ、お前の本気を」

 

「え、本気……?」

「今まで本気じゃなかったってことか?」

 

 梓の本気を知らない者達。

 

「とうとう出すのか、梓……」

「カイザー、本気の梓に、どう戦う……」

 

 梓の本気を知る者達。

 

「竜崎!」

「ああ。どうやら出すようやのう。この、たくさんのカードと一緒に渡された、見たことも無いカード……」

「この、白い縁のカードを……」

 

 梓の本気を感じている者達、それぞれの反応に包まれる中で……

 

「私のターン、ドロー!」

 

手札:3→4

 

「『氷結界の舞姫』を召喚!」

 

『氷結界の舞姫』

 レベル4

 攻撃力1700+500

 

『うおっしゃー!!』

 と、勢いよく出てきた、アズサだが……

『うおお……』

 目の前にたたずむ『サイバー・エンド・ドラゴン』を前に、たじろぎを見せる。

「大丈夫ですか?」

『……お、おうよ! 僕も伊達にアズサを名乗っちゃあいねえ』

「伊達も何も本名でしょうに……心配せずとも、最初(はな)から戦闘での期待など寄せてはおりません」

『ひど……』

「……まあいい。魔法カード『サルベージ』! 墓地に眠る攻撃力1500以下の水属性モンスター二体を手札に加えます。私は墓地から、攻撃力1200の『氷結界の水影』二体を手札に加えます」

 

手札:2→4

 

「そして……永続罠『リビングデッドの呼び声』を発動! チューナーモンスター、『氷結界の水影』を墓地より特殊召喚します」

 

『氷結界の水影』チューナー

 レベル2

 攻撃力1200+500

 

「チューナーモンスター?」

「え、なに? 普通のモンスターじゃないの?」

 

「ここで、『氷結界の舞姫』の効果を発動。このカードを除く氷結界が場にある時、手札の氷結界を任意の枚数見せることで、その枚数分、相手の場にセットされた魔法・罠を手札に戻します」

「なに……!」

「手札の『氷結界の水影』二枚を公開し、あなたのその伏せカードを手札に戻します」

「……っ」

 

手札:0→2

 

「ここでバトルです。まずは『氷結界の水影』で、『サイバー・フェニックス』を攻撃します。氷結・斬影の形!」

「ぐぅ……」

 水影のクナイにより、『サイバー・フェニックス』は細切れにされる。

 

LP:2500→2000

 

「『サイバー・フェニックス』が戦闘で破壊されたことで、カードを一枚ドロー」

 

手札:2→3

 

「まだです。『氷結界の舞姫』で、『サイバー・ドラゴン』を攻撃! 雪斬舞踏宴(せつざんぶとうえん)!」

『しゃあああああああぃ!!』

 アズサも同じく、あまり女性らしくない声で絶叫しながら『サイバー・ドラゴン』へ走り、舞い、細切れにした。

「ぐおお……!」

 

LP:2000→1900

 

「そして……メインフェイズです。アズサ」

『オッケイ!』

「来る……!」

 

「来るぞ……!」

「来る……」

「梓くんの……」

 

「レベル4の『氷結界の舞姫』に、レベル2の『氷結界の水影』をチューニング」

 アズサと、水影の二体が宙に跳ぶ。やがて、水影は二つの星になり、アズサの周囲を旋回し始めた。

 

「な、なんだ?」

「なに?」

「なにが起こってるんだ……?」

 

「凍てつく結界(ろうごく)より昇天せし翼の汝。全ての時を零へと帰せし、凍結回帰(とうけつかいき)の螺旋龍」

「シンクロ召喚! 舞え、『氷結界の龍 ブリューナク』!」

 

 その瞬間、『ウォーターワールド』の海が一気に氷に包まれ、暗く、冷たく染まった空の、雲の切れ目から、現れた。

 空中で流麗な螺旋を描く、巨大な翼と、それを支える長い体。

 そこから生えた、小さいが、力強さの伝わる四肢。

 そして、雪の結晶を模した、鋭い眼光を供えし頭部。

 全体から放つ輝きの光を、まるで粉雪のように舞い散らせながら、梓の前に、梓を守るように、舞い降り、敵である亮を見据える、青き龍。

 

「何だ、あれ……?」

「すごい……」

「綺麗……」

「アブソルートZeroと同じ……いや、それ以上に……」

 最初にブリューナクを見た十代達と同じように、それを初めて見た者達は、その美麗に釘付けとなり、酔いしれた。

 

「出たな、『氷結界の龍 ブリューナク』」

 だがそれも、亮の声で、全員が我を取り戻した。

「梓、お前の本当のエース、『シンクロモンスター』!」

 

「シンクロモンスター?」

「何だよそれ?」

「そんなの聞いたこと無いぞ……」

 

「竜崎」

「ああ。あれが……」

 二人は納得しながら、手元のカードを見る。

「こいつらと同じカード……」

「シンクロモンスター……」

 

『氷結界の龍 ブリューナク』シンクロ

 レベル6

 攻撃力2300+500

 

「シンクロモンスターは、フィールドに立つチューナーモンスターと、チューナー以外のモンスターのレベルを合計し、その数値とレベルが一致した時、それらのモンスターを墓地へ送ることでエクス……融合デッキより特殊召喚できるモンスターです」

 羽蛾、竜崎の座る方向へ視線を送りながら、そう説明をする。

 

「なるほど。シンクロの次くらいには気になっとったが、効果以外にそういう役割があったんかい」

「ただの効果モンスターではなかったわけだな。よく分かった」

 

「けど……シエン、あの龍、大丈夫?」

『……ああ。前に戦った時みたいな邪悪さは感じない。もう大丈夫だろう』

「そっか、良かった……」

 

「そして、『氷結界の龍 ブリューナク』のモンスター効果。手札を任意の枚数、墓地へ捨てることで、捨てた数だけフィールド上のカードを選択します。選択したカードを手札に戻す」

「っ……」

「私は二枚の『氷結界の水影』を捨てます」

 

手札:4→2

 

 捨てられた手札を吸い込み、その瞬間、ブリューナクの体からオーラのようなものが立ち上がった。そのオーラは拡散していき、やがて、フィールド全てを包み込んだ。

「凍結回帰!」

 梓が叫んだ瞬間、そのオーラに包まれた『サイバー・ドラゴン』、そして『サイバー・エンド・ドラゴン』が光に変わった。

「く……」

 

手札:3→4

 

「融合モンスターである『サイバー・エンド・ドラゴン』は、手札ではなく融合デッキに戻ります」

「……」

「罠発動『堕天使の施し』。このターン、手札から墓地へ捨てられたカードを全て、手札に加えます。たった今、ブリューナクの効果で墓地へ捨てた二枚の水影を再び手札に戻します」

 

手札:2→4

 

「カードを一枚伏せます。これでターンエンド」

 

 

LP:500

手札:3枚

場 :モンスター

   『氷結界の龍 ブリューナク』攻撃力2300+500

   『バトルフェーダー』守備力0

   魔法・罠

    セット

    永続魔法『ウォーターハザード』

    永続罠『リビングデッドの呼び声』

    フィールド魔法『ウォーターワールド』

 

LP:1900

手札:4枚

場 :モンスター

    無し

   魔法・罠

    永続罠『リビングデッドの呼び声』

 

 

「すごい、また逆転した……」

「これが、梓さんの本気……」

 

「シンクロモンスターか……確かに強力だな」

「ああ。そうでなくとも、こんな、誰も見たことの無い召喚方法のカード、おいそれと人前で使われへんで」

「それを、使わせるほどの実力を持つ相手というわけだな。カイザー亮は」

「ああ」

 二人とも納得しながら、決闘に目を戻した。

 

 

 

 




お疲れ~。
んじゃ、早速オリカいこ~。

『時間融合-タイム・フュージョン』
 通常魔法
 手札を1枚ゲームから除外する。
 このターンに破壊された自分フィールド上の融合モンスター1体を召喚条件を無視して次の自分のスタンバイフェイズ時に特殊召喚する。
 この効果で特殊召喚したモンスターは召喚したターン、攻撃を行う事ができない。

 遊戯王GXにて、亮が使用。
 通常魔法だから発動と効果を無効にされなければ、蘇生は確定する。
 けどそれだったら普通に『死者蘇生』とか使った方が早いよね。手札コストも地味にきついしね。

『異次元からの宝札』
 通常魔法
 このカードがゲームから除外された場合、次の自分のターンのスタンバイフェイズ時にこのカードを手札に戻す。
 この効果で手札に戻った時、お互いのプレイヤーはデッキからカードを2枚ドローする。

 同じく亮が使用。
 形はどうあれとにかく除外さえすれば、次の自分のターンにドローできる。
 相手にもドローさせてしまう危険もあるものの、ドローのタイミングが自分ターンの開始時と考えりゃ十分魅力でしょうな。

『堕天使の施し』
 通常罠
 このターンに魔法・罠・効果モンスターの効果によって手札から捨てられ墓地に存在するカードを手札に加える。

 以前に紹介した通り、『天使の施し』と使うのが常套パターン。
 『氷結界の龍』とは、割と好相性。手札コストの確保か、どうしても使いたいカードがある時には重宝するでしょうな。


以上。
んじゃ、続きも書いていきますから、待っててね~。

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