遊戯王GX ~氷結の花~   作:大海

99 / 175
さぁ~いいいぁ。
そんじゃあ、二人の決闘、は~じま~るよ~。
ちなみに先に言っときますと、同じじゃつまらないと思ったので、デッキは変更させております。
そういうのが「ふざけんな!」て人には謝る。
大丈夫なら、読んでみて。
じゃ、行ってらっしゃい。



第七話 求愛、そして仇愛 ~決闘~

視点:翔

 

 

ももえ

LP:4000

手札:5枚

場 :無し

 

カミューラ

LP:4000

手札:5枚

場 :無し

 

 

 始まった。ここはやっぱ、女子寮に連れていこうとするももえさんじゃなくて、レッド寮に残るカミューラを応援するべきなんだろうか……

 

「私の先行、ドロー!」

 

ももえ

手札:5→6

 

 先行は、ももえさんか。

 

「私は『巨大ネズミ』を召喚。守備表示ですわ」

 

『巨大ネズミ』

 レベル4

 守備力1450

 

「更にカードを伏せ、ターンエンド」

 

 

ももえ

LP:4000

手札:4枚

場 :モンスター

   『巨大ネズミ』守備力1450

   魔法・罠

    セット

 

 

 へぇ。序盤としては悪くない手だ。

 

「リクルーター。ちょっと厄介かしらね……私のターン」

 

カミューラ

手札:5→6

 

「そうね……まずは魔法カード『天使の施し』を発動。カードを三枚ドローして、二枚を捨てる。続いて、『牛頭鬼(ごずき)』を召喚」

 

『牛頭鬼』

 レベル4

 攻撃力1700

 

 カミューラの宣言で出てきたのは、大槌を両手に持った、牛の鬼だ。

 

「『牛頭鬼』の効果。一ターンに一度、デッキから妖怪族モンスター一枚を墓地へ送る。私はデッキから、『陰摩羅鬼(おんもらき)』を墓地へ送るわ」

 

「『妖怪族』。また珍しいカードでデッキを組みましたね……」

「へぇー、それがカミューラの新しいデッキか。けど、どうして妖怪族?」

 

「あんたや恐竜君と同じ寮の、空気君に教えてもらって、面白そうだから使ってみたのよ」

 

「空気君、ねぇ……」

 確かに、彼ならかなりマニアックなカテゴリの妖怪族のこともよく知ってそうだし、それを習ったとしても不思議じゃない、かな?

 

「さてと……ビビってても仕方ないし、ここはあんたの誘いに乗ってあげるわ。『牛頭鬼』で『巨大ネズミ』を攻撃!」

 

 その宣言で、『牛頭鬼』は大槌を振り下ろして、ももえさんの『巨大ネズミ』を破壊した。

 

「この瞬間、『巨大ネズミ』の効果。デッキから攻撃力1500以下の地属性モンスター一体を、攻撃表示で特殊召喚致します。私はデッキから、『レスキューキャット』を召喚」

 

『レスキューキャット』

 レベル3

 攻撃力300

 

「はん。何が来るかと思ったら、結局はプリティな獣ちゃんじゃない」

 

「ふむ……中々凶悪なカードを呼び出しましたね……」

 カミューラと、梓さんの真逆な反応が聞こえてきた。

 ちなみに僕が感じてるのは、両方かな。ただ単に可愛いから呼び出しただけなのかもしれない。けど、あのカードには見た目とは裏腹な、強力な効果がある。

 

「カードを二枚伏せる。これでターンエンド」

 

 

カミューラ

LP:4000

手札:3枚

場 :モンスター

   『牛頭鬼』攻撃力1700

   魔法・罠

    セット

    セット

 

ももえ

LP:4000

手札:4枚

場 :モンスター

   『レスキューキャット』攻撃力300

   魔法・罠

    セット

 

 

「私のターン」

 

ももえ

手札:4→5

 

「私はここで、『レスキューキャット』の効果を発動。このカードを墓地へ送ることで、デッキからレベル3以下の獣族モンスター二体を特殊召喚しますわ。この効果で、私はデッキから、レベル2の『コアラッコ』、レベル1の『モジャ』の二体を特殊召喚」

 

『コアラッコ』

 レベル2

 守備力1600

『モジャ』

 レベル1

 守備力100

 

「この効果で特殊召喚したモンスターは、エンドフェイズ時に破壊されます」

「そんな可愛らしい上に破壊されるモンスターを呼び出して、どうする気かしら?」

「慌ててはなりません。見た目の可愛らしい獣ほど、成長した姿は恐ろしいものですのよ」

「む……?」

 

「『モジャ』ですか。ということは……」

「あのカードが来るね」

「ドン?」

 

「これが、私の新たなデッキのエース。フィールド上の『モジャ』一体を生贄に捧げ、手札より、『キング・オブ・ビースト』を特殊召喚!」

 

 ももえさんがそう宣言した瞬間、フィールドに立っていた『モジャ』の一体が光に包まれた。黒い毛を逆立てながら体が大きくなって、体からは黄色の、骨みたいな形をした足を四つ伸ばして、顔は可愛い顔から、まるで骸骨みたいな顔に変わった。

 

「うわ……これって……」

「そう。これこそ、『モジャ』が成長した姿ですわ」

 

『キング・オブ・ビースト』

 レベル7

 攻撃力2500

 

「ご覧下さい。この美しき姿を」

「美しき……?」

 

「あれは、美しいのかドン……?」

『いやぁ……色合い的には、まあ、綺麗に見える、かな……?』

『不気味なだけですよー……』

「ふふ……」

 ももえさんの発言に、カミューラや剣山君、アズサやマナは戸惑ってる。けど梓さんは、何か意味ありげに笑った。

 

「そんなのが美しいって、あんた言うわけ?」

「そうです」

 

 すると、ももえさんは、『キング・オブ・ビースト』を見上げながら、言葉を続けた。

 

「確かに、今でも可愛い動物は好きですわ。見ていて心が癒されて、優しい気持ちにさせてくれます。そんな癒しに満たされたくて、ずっと可愛い動物のモンスターばかり使ってきました。そして、翔君を好きになったのも、そんな、彼の可愛い顔に惹かれたからです」

 

 いきなりなんの告白……?

 

「ですが、同時に彼をずっと見ていて、気付いたのです。どんな存在でも、本当の美しさは、小さく、可愛らしい姿でなく、そこから強くなろうと前進し続け、やがて大きくなり成長した姿。それこそが真の美しい姿であるのだと。小さかった『モジャ』が、獣の王と呼ばれるまでに成長したように。そして、レッド寮で、落ちこぼれだの、遊城十代の腰巾着だのと揶揄され続けながら、それでもここまで強く逞しく成長した、翔君のように!」

 

「ですよね。ももえさん」

「……」

 

「そんな! 成長していく翔君の姿を誰よりも長く見てきた私の、翔君への思いは誰にも負けません! 精霊よりも吸血鬼よりも、誰よりも長く彼を見てきた私の力を、このデッキと共に見せて差し上げます!」

「く……」

 

「何か、格好良いザウルス」

『翔君、何だかんだで君、すっごい愛されてるじゃん』

「……////」

 ちょっと恥ずかしいけど……けど、確かに嬉しいかな……

『むむむ……私だって……』

 

「『キング・オブ・ビースト』はその効果により、フィールド上に一体しか存在できません。ここで、『コアラッコ』のモンスター効果。このカード以外の獣族モンスターが自分フィールドに存在する時、相手モンスター一体の攻撃力をエンドフェイズまで0にしますわ」

「何ですって!?」

「この効果で、『牛頭鬼』の攻撃力を0に!」

 

『牛頭鬼』

 攻撃力1700→0

 

「そして私はこのターン、まだ通常召喚が残っています。『コアラッコ』を生贄に、『百獣王(アニマル・キング) ベヒーモス』を召喚!」

 

『百獣王 ベヒーモス』

 レベル7

 攻撃力2700

 

「レベル7を生贄一体で……!」

「ベヒーモスは生贄一体で召喚できます。ただし、その際攻撃力は2000に下がります」

 

『百獣王 ベヒーモス』

 攻撃力2700→2000

 

「ベヒーモスの効果。このカードの生贄召喚に成功した時、生贄に捧げた数だけ墓地の獣族モンスターを手札に戻します。私は墓地から、『レスキューキャット』を手札に加えます」

 

ももえ

手札:3→4

 

「く、これでまた何か呼び出されるわけか……」

 

「強力モンスターを並べながら、同時に相手モンスターの攻撃力まで0にするなんて……」

「この攻撃が通ればももえさんの勝利、ですが……」

 

「バトルです! 『キング・オブ・ビースト』で、『牛頭鬼』を攻撃! アドバンス・オブ・キング!」

 

 『キング・オブ・ビースト』が、『牛頭鬼』に向かって前進していく。細い骨の足の見た目とは裏腹な、力強い、凄い迫力だ。

 

「させない。罠発動『攻撃の無力化』! 攻撃を無効にし、バトルは終了よ」

「く……!」

 

 カミューラのカウンター罠の発動に、ももえさんは、悔しそうに顔をしかめた。

 

「……私は更にカードを一枚伏せ、ターンエンドです。この瞬間、『牛頭鬼』の攻撃力が元に戻ります」

 

 

ももえ

LP:4000

手札:3枚

場 :モンスター

   『キング・オブ・ビースト』攻撃力2500

   『百獣王 ベヒーモス』攻撃力2000

   魔法・罠

    セット

    セット

 

カミューラ

LP:4000

手札:3枚

場 :モンスター

   『牛頭鬼』攻撃力1700

   魔法・罠

    セット

 

 

「ももえさん、すごい……」

 防がれたとは言え、あそこまでのカードを使いこなして、ワンターンキル寸前まで追い込むなんて。ほんのちょっと前までは、可愛い獣族ばかり使って、おまけにその力も使いこなせない、正直、あんまり頼もしくない人だったのに。

「ももえさんも、成長してるんだな……」

 

「……やるじゃない」

 

 と、関心してると、カミューラも、そう笑いながら言った。

 

「正直、いっつも翔の近くにいて、スタイルも格好もエロいマナが一番の強敵だと思って、あんたなんか眼中にないと思っていたけど……ここまで牙を立ててくるっていうなら、私も全力でそれを折りにいってあげるわ。私のターン」

 

カミューラ

手札:3→4

 

「そっちが『成長』で攻めてくるなら、私は『復活』を見せてあげる」

「復活……?」

「『牛頭鬼』の効果発動。デッキから『カラス天狗』を墓地へ送る。そして、罠カード『妖魔の援軍』発動。ライフ1000ポイントと引き換えに、墓地のレベル4以下の妖怪族二体を特殊召喚できる。『陰摩羅鬼』、『カラス天狗』の二体を特殊召喚」

 

カミューラ

LP:4000→3000

 

『陰摩羅鬼』

 レベル4

 攻撃力1200

『カラス天狗』

 レベル4

 攻撃力1400

 

「……あら? 『カラス天狗』って確か、レベル5の通常モンスターでは……?」

「そうね。そっちの存在忘れて作られたんじゃないの?」

「あらら……」

「続けるわよ。この二体の妖怪には、墓地から特殊召喚された時に発動できる効果がある。『陰摩羅鬼』が墓地から特殊召喚された時、カードを一枚ドロー」

 

カミューラ

手札:4→5

 

「更に『カラス天狗』が墓地から特殊召喚された時、相手モンスター一体を破壊できる。対象は『キング・オブ・ビースト』。悪霊退治!」

「な……!」

 

 ももえさんが驚いてる間に、『カラス天狗』が降った芭蕉扇(ばしょうせん)の風が、『キング・オブ・ビースト』を破壊した。けど……

 

「『カラス天狗』自身が妖怪なのに、悪霊退治ですか……」

「細かいことはいいのよ。『カラス天狗』を生贄に捧げて、『九尾の狐』召喚」

 

『九尾の狐』

 レベル6

 攻撃力2200

 

「バトルよ。『九尾の狐』でベヒーモスを攻撃。九尾槍!」

 

 『九尾の狐』から伸びた九つの尻尾が槍になって、ベヒーモスに向かっていった。

 

「なんの! 罠発動『キャトルミューティレーション』! 自分フィールドの獣族モンスター一体を手札に戻し、それと同じレベルを持つ獣族モンスターを特殊召喚します。ベヒーモスを手札に」

 

ももえ

手札:3→4

 

「そして、手札に戻したベヒーモスを再び特殊召喚!」

 

『百獣王 ベヒーモス』

 レベル7

 攻撃力2700

 

「上手いザウルス! これでベヒーモスの攻撃力は元々の数値にアップしたドン」

 

「……攻撃は中止。カードを一枚伏せて、ターンエンド」

 

 

カミューラ

LP:3000

手札:3枚

場 :モンスター

   『九尾の狐』攻撃力2200

   『陰摩羅鬼』攻撃力1200

   『牛頭鬼』攻撃力1700

   魔法・罠

    セット

 

ももえ

LP:4000

手札:3枚

場 :モンスター

   『百獣王 ベヒーモス』攻撃力2700

   魔法・罠

    セット

 

 

「復活で発動する効果とは……確かに強力ですが、大したことはありませんわ」

「……」

「その程度の復活なら、私の獣たちの力で踏み潰して差し上げますわ。私のターン」

 

ももえ

手札:3→4

 

「『ビーストライカー』を召喚!」

 

『ビーストライカー』

 レベル4

 攻撃力1850

 

「『ビーストライカー』の効果。手札一枚を捨てることで、デッキから『モジャ』一体を特殊召喚します。手札の『レスキューキャット』を捨て、デッキから『モジャ』を特殊召喚!」

 

「『レスキューキャット』を墓地へ!?」

「ほう……」

 

ももえ

手札:3→2

 

『モジャ』

 レベル1

 守備力100

 

「ここで、墓地に眠る『キング・オブ・ビースト』の効果を発動」

「墓地から……?」

「自分フィールドの『モジャ』一体を生贄に捧げることで、手札または墓地から特殊召喚できます。『モジャ』を生贄に、墓地の『キング・オブ・ビースト』を復活!」

 

『キング・オブ・ビースト』

 レベル7

 攻撃力2500

 

「続いて、『死者蘇生』発動! 『レスキューキャット』を墓地から特殊召喚」

 

『レスキューキャット』

 レベル4

 守備力100

 

「そしてこのカードを墓地へ送り、デッキからレベル2の『ラッコアラ』、レベル3の『デス・ウォンバット』を特殊召喚!」

 

『ラッコアラ』

 レベル2

 守備力100

『デス・ウォンバット』

 レベル3

 攻撃力1600

 

「『ラッコアラ』の効果! 一ターンに一度、自分フィールドの獣族モンスター一体の攻撃力を、エンドフェイズまで1000ポイントアップさせますわ。『ビーストライカー』の攻撃力を、1000ポイントアップ!」

 

『ビーストライカー』

 レベル4

 攻撃力1850+1000

 

「永続罠『ビーストライザー』発動! 一ターンに一度、自分フィールドの獣族、または獣戦士族モンスター一体をゲームから除外することで、自分フィールドのもう一体の獣族、または獣戦士族モンスターの攻撃力を、除外したモンスターの攻撃力分アップさせますわ。私は『ラッコアラ』を除外し、『キング・オブ・ビースト』の攻撃力をアップさせます!」

 

『キング・オブ・ビースト』

 攻撃力2500+1200

 

「攻撃力3700! 凄いドン!」

「……」

 

「さあ、バトルです! まずは『デス・ウォンバット』で、『陰摩羅鬼』を攻撃!」

「……っ!」

 

 可愛い顔をした『デス・ウォンバット』の突進が、『陰摩羅鬼』を破壊した。

 

カミューラ

LP:3000→2600

 

「続いて、『ビーストライカー』で、今度は『牛頭鬼』を攻撃!」

「……一度目は通すけど、二度目はさせないわ。罠発動『百鬼夜行』!」

「な!」

 

 カミューラが罠を発動させた途端、フィールドに不気味な霧が発生した。そして、その霧には、たくさんの鬼の顔が浮かんでる。

 

「こ、これは……」

「自分の墓地に眠る妖怪族モンスターを、可能な限り特殊召喚できる。私はこの効果で、墓地の『陰摩羅鬼』二体、『カラス天狗』一体を、守備表示で特殊召喚」

 

『陰摩羅鬼』

 レベル4

 守備力1000

『陰摩羅鬼』

 レベル4

 守備力1000

『カラス天狗』

 レベル4

 守備力1200

 

「な……え、『陰摩羅鬼』が二体? もう一体を、いつの間に墓地へ……は!」

「気付いたみたいね。そう。一番最初に発動した『天使の施し』の時にね」

「く……」

「そして、墓地から特殊召喚された妖怪達の効果。二体の『陰摩羅鬼』の効果で、カードを二枚ドロー」

 

カミューラ

手札:3→5

 

「そして、『カラス天狗』の効果。『ビーストライカー』を破壊! 悪霊退治!」

「くぅ……!」

「ただし、『百鬼夜行』の効果で特殊召喚されたモンスターは、エンドフェイズに破壊されるけど」

「……仕方がありません。ではベヒーモスで、『牛頭鬼』を攻撃!」

「く……!」

 

 今度は黙って破壊された。

 

カミューラ

LP:2600→1600

 

「そして、『キング・オブ・ビースト』で、『九尾の狐』を攻撃! アドバンス・オブ・キング!」

「うぅ……!」

 

カミューラ

LP:1600→100

 

「うぅ……破壊された『九尾の狐』のモンスター効果。このカードがフィールド上で破壊された時、『狐トークン』二体を特殊召喚するわ」

 

『狐トークン』

 レベル1

 守備力0

『狐トークン』

 レベル1

 守備力0

 

「モンスターを残されましたか……カードを伏せます。ターンエンドと同時に、『レスキューキャット』の効果で特殊召喚された『デス・ウォンバット』を破壊」

「こちらもエンドフェイズに、三体の特殊召喚した妖怪は破壊される」

 

 

 

ももえ

LP:4000

手札:0枚

場 :モンスター

   『キング・オブ・ビースト』攻撃力2500+1200

   『百獣王 ベヒーモス』攻撃力2700

   魔法・罠

    永続罠『ビーストライザー』

    セット

 

カミューラ

LP:100

手札:5枚

場 :モンスター

   『狐トークン』守備力0

   『狐トークン』守備力0

   魔法・罠

    無し

 

 

(粘られていますが、まだまだ余裕ですわ。ライフポイントは無傷。そちらのライフはわずか100。戦闘を狙おうものなら、既に発動した『ビーストライザー』があります。更に、今伏せたカードは永続罠『バーサーキング』。自分のメインフェイズか相手のバトルフェイズ中、自分フィールドの獣族モンスター二体を選択し、エンドフェイズまで一体の攻撃力を半分に、もう一体の攻撃力をその数値分アップさせるカード。どちらかを破壊されたとしても、戦闘で反撃してみせますわ……)

 

「……ももえさん、あの様子ですと、反撃されても余裕なようですね」

「カミューラが逆転を狙うとしたら、このターンでももえ先輩のモンスターを何とかするしかないザウルス」

「カミューラ……」

 

「私のターン」

 

カミューラ

手札:5→6

 

「……確かに、あんたの成長は凄いわ。どんなに小さく、弱くても、そこからどんどん大きくなって、強くなっていく。私は、凄く強い翔しか知らないから、翔がそうだったっていうなら、確かに、そんな頃から翔のことを思っていたあんたには、勝てないのかもしれない」

「ふふん……」

 

『ぬぅ~……』

 

「けどね、一度落ちるところまで落ちて、そこから復活して、見えるものもあるのよ」

「……は?」

 

「カミューラ?」

 

「私は確かに、昔の翔のことは知らない。どころか最初は敵として翔の前に現れて、翔に心底恨まれて、決闘して、敗れた……正直、今でも信じられないわ。そんな翔に対して、吸血鬼の私が、こんな気持ちを持つなんてね……」

「……」

「最初は、敗けて傷ついた私を助けたことに対して、混乱しか感じなかった。けど、翔は恨んでいたはずの私のことを許して、精一杯の愛情を注いで看病してくれた。そんな翔の優しさに触れて、段々翔のことばかり考えるようになって……そして、気付かされた。とっくの昔に無くしたと思ってた、誰かを愛する気持ちが、私にはまだ、残ってたって。私はまだ、誰かを愛することができるんだって。その気持ちを、翔のお陰で取り戻すことができた」

「……」

「だから、あんたが誰より翔の成長を見てきたから強いっていうなら、私も見せてあげるわ。死んでいた私の心を、復活させてくれたのが翔だから、そんな翔に対する気持ちは誰にも負けないってことを!」

 

「成長する姿への愛情に対して、心を蘇らせてくれたことへの感謝と情愛……どちらも正しく、清く、そして、だからこそ強い……」

「あんなこと言わせるなんて。丸藤先輩って、もしかして凄い人ザウルス……」

「そんなわけないでしょう……////」

 

「く……フィールドにカードが無い状態で、それ以上どうすると……?」

「こうするわ。まずは永続魔法『奇奇怪怪』を発動」

「な、何ですの……?」

 カミューラがカードを発動させた瞬間、フィールド全体に黒い染みが広がった。そして、その染みが、ももえさんのフィールドのモンスターを包んだ。

「このカードが場に存在する限り、フィールド上のモンスター全ては妖怪族になる」

「な!」

(そんな……! これでは、獣族を対象に発動する『ビーストライザー』も、『バーサーキング』も役に立たない……)

「更に、墓地に眠る『九尾の狐』の効果。フィールド上の妖怪二体を生贄に捧げることで、墓地から特殊召喚できるわ。妖怪族である『狐トークン』二体を生贄に、『九尾の狐』、黄泉帰り!」

 

『九尾の狐』

 レベル6

 攻撃力2200

 

「更に魔法カード『死者蘇生』発動。墓地から『カラス天狗』を蘇生」

 

『カラス天狗』

 レベル4

 攻撃力1400

 

「カラス天狗が蘇生された時、相手フィールドのモンスター一体を破壊する。私はベヒーモスを破壊するわ。悪霊退治!」

「うぅ……!」

「更に、墓地の『馬頭鬼(めずき)』の効果発動!」

「『馬頭鬼』!? まさかそれも……!」

「そう。『天使の施し』の効果で捨てていた二枚目よ。このカードを墓地から除外することで、墓地の妖怪族一体を特殊召喚できる。来なさい『陰摩羅鬼』!」

 

『陰摩羅鬼』

 レベル4

 攻撃力1700

 

「『陰摩羅鬼』の蘇生効果で、一枚ドロー」

 

カミューラ

手札:4→5

 

「そして、私は『陰摩羅鬼』と、『カラス天狗』の二体を生贄に捧げる。現れなさい! 地獄を司る閻魔の使者、『赤鬼』招来!」

 

『赤鬼』

 レベル7

 攻撃力2800

 

「『赤鬼』……!」

 

「なんか、すごいのが出てきたザウルス……!」

「……カミューラさんの勝利ですね」

「うん」

 

「『赤鬼』の効果。このカードが召喚、特殊召喚に成功した時、手札を任意の枚数捨てることで、その枚数分フィールド上のカードを破壊できる。私は三枚を捨てる」

 

カミューラ

手札:4→1

 

「破壊するのはももえのフィールドのカード全部! 地獄の業火!」

「うぅぁ……!」

 

 『赤鬼』の口から吐かれた炎が、ももえさんのフィールドのカードを、全部燃やした。

 

「くぅ……」

「あんたが、そして翔が成長し続けるっていうなら、私の中の、復活した気持ちだって、これから成長させていく。そして必ず、翔にとっての一番の女になってみせるわ」

 

「カミューラ……」

『むむむ……』

 

「バトルよ!」

「……!」

「『九尾の狐』、『赤鬼』の二体で、ダイレクトアタック! 九尾槍! 鬼火!」

 

 カミューラが叫ぶと同時に、『九尾の狐』の尻尾と、『赤鬼』の口からの炎が、ももえさんを包んだ。

 

ももえ

LP:4000→0

 

 

「敗けた……」

 ももえさんは膝を着いて、落ち込んでる。

 確かに、大逆転されちゃったけど、でも……

「ももえさん」

 そんなももえさんに近づいて、声を掛けてあげた。

「凄く、良い決闘だったよ」

「翔君……」

「知らない間にももえさんがあんなに成長してるなんて、思わなかった。ももえさんなら、もっともっと強く成長できるよ」

「……」

「だから元気出して。ももえさんの強さは、僕が一番知ってるからさ」

「……(フルフル)」

 あれ? なんで涙目になって震えて……?

 

「ありがとうございます! 翔くーん!!」

 

「うおお!」

 やっぱこうなるのか……!

「こらー翔! 勝った私にお祝いの言葉は無しかー!!」

「……もちろん、カミューラも凄かったよ。新しい妖怪デッキの力をあそこまで引き出すなんてさ」

「でしょう? それに、これで女子寮に住まずに済んだんだから、私としてはご褒美が欲しい所ね」

「ご褒美?」

 その言葉を聞いて、ももえさんを何とか引き離しながら、カミューラの方を向いた。

「そりゃあ、お礼も兼ねて、僕にあげられるものならあげるけど……」

「じゃあ、遠慮なくもらうわ」

 そう言うと、カミューラは僕の前まで歩いてきた。そして、僕の肩に手を置いて、僕の身長に合わせて膝を着いて、そして……

 

 

 

視点:外

 

「んぐ!?」

 

「おっと!?」

『うわ! なに梓? いきなり目隠しなんかして』

「ドン?」

「お子様は見てはいけません」

「誰がお子様ザウルス!」

『誰がお子様だよ!』

 

『ああー!! ちょっと、そんな!!』

「んんん! んんんんんんん!!」

「ちょっと……長い、長いです!」

 

 ツゴウニヨリギオンハナシ……

 

「おまけにそんな、舌まで入れて、嫌らしい音響かせないで!」

 

 チュポン

 

「ご馳走さま」

「ぷはぁ~////」

「ズルい! 私だってまだだというのに!」

「ふふん、勝った者勝ちよ。ただ、順番がフォースなのが気に入らないけど……」

『いくら四番目だからって、ディープなんて私もまだしていませんよ! 最初の二回は気付かれませんでしたし!』

「本当? じゃあ翔の舌のファーストは私のものね」

「きー!! なら、せめてフィフスだけでも!」

「あんたは今日敗けたんだから、我慢なさい」

「我慢できないぃぃ~~~!!」

 

「……////」

 

「あら? 翔はどうやらダウンみたいね」

『あら、本当ですね……』

「……こうなったら気絶しているうちに、ぜひ着せ替えだけでも」

「あらぁいいわね。それは私も見たいと思ってたところよ」

『あ、それなら私も見たいです』

「では、このまま邪魔が入らないように、女子寮まで連れていってしまいましょう。梓さーん」

「はいはーい。衣装の用意はできておりますよー」

 

「さあて、どんな格好をさせましょうか?」

「色々あって、迷うわよね」

『どれもきっと似合いますけどね』

「着付けはお任せ下さい。お三方はゆっくり写真撮影でも……」

「きゃー//// 素敵です~////」

「翔のコスプレ……萌える~////」

『私の翔さん//// 可愛い翔さん////』

「ああ、また鼻血を流して……ただ、間違いだけは犯さないよう、お願いします」

「わ、分かっていますわ……////」

「……でもどうしよう。我慢できず襲い掛かったりしたら……////」

『翔さん……可愛すぎて、食べちゃいたいです~////』

「うむ……ここはやはり、私がしっかりせねばなりませんね……」

『梓……笑いながら言われても説得力ないんだけど……』

「気のせいですよ。うふふふ……写真ができたら、私にもぜひ焼き増しを」

「もちろん! 一番の功労者は梓さんなのですから」

「そんな梓を無視するなんてしないわよ」

『その代わり、翔さんに似合いそうな衣装を今後とも~……』

「分かっております」

 

『ウフフフフフフフ……』

 

『梓……』

 

 

「……」

 去っていく六人(剣山の目からは精霊を除いた四人)の、楽しそうに話しながら、そして、不敵な笑い声を出しながら、去っていく様を見ながら、剣山は、ただ呆然と立ち尽くしていた。

 そして、ふと、今見ている光景を、誰かに伝えたくなった。

 

「前略、十代の兄貴様……丸藤先輩は今、すごく、苦労してますドン……」

 

 

 

 




お疲れ~。
さぁて、皆さんは、翔に着て欲しいコスプレはありますかい?
あればドシドシ言っとくれ。梓に作らせっから。

……まあ冗談はこの辺にして。
今回はオリカがたくさんあるので、途中で飽きたら読み飛ばしておくれ。
ついでに忘れてるのあったら、教えてくれると嬉しいなぁ……(チラチラ)



『牛頭鬼』
 レベル4
 地属性 妖怪族
 攻撃力1700 守備力800
 1ターンに1度、自分のデッキから妖怪族モンスター1体を墓地に送る事ができる。

 漫画版GXにて、三沢が使用。
 『妖怪族』限定の『おろかな埋葬』効果。
 ご存知の通り、妖怪族は墓地から特殊召喚するのが前提のモンスターが多いから文字通り潤滑油的な存在です。
 まあそうでなくともデッキ圧縮もできるって時点で強力すぎますわな。


『陰摩羅鬼』
 レベル4
 地属性 妖怪族
 攻撃力1200 守備力1000
 このカードが墓地から特殊召喚成功した時、このカードのコントローラーはデッキからカードを1枚ドローする。

 同じく、三沢が使用。
 かなりシンプルなドロー加速効果。
 この決闘を読んで分かる通り、妖怪には複数体の蘇生手段もあるので、一度に二体も三体も出したら大量にドローできます。
 墓地以外からでもいける『聖鳥クレイン』でも同じことは言えますが、サポートの差ではこっちかな、と思います。


『カラス天狗』
 レベル4
 地属性 妖怪族
 攻撃力1400 守備力1200
 このカードが墓地から特殊召喚に成功した時、相手フィールド上に存在するモンスター1体を破壊する。

 やはり三沢が使用。
 これもシンプルな相手モンスター除去効果。
 基本的に考え方は『陰摩羅鬼』と一緒で、特に相手ターンに複数出せれば強力かと思われます。


『九尾の狐』
 レベル6
 地属性 妖怪族
 攻撃力2200 守備力2000
 自分フィールドの妖怪族モンスター2体を生贄に捧げて発動する。
 自分の墓地に存在するこのカードを特殊召喚する。
 フィールド上に存在するこのカードが破壊された時、「狐トークン」(妖怪族・地・星1・攻/守0)2体を自分フィールド上に特殊召喚する。
 このカードが墓地からの特殊召喚に成功した時、以下の効果を得る。
 ●このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

 はたまた三沢が使用。
 レベル6としては物足りないステータスだけど、それでも破壊されればトークンを残せるし、それを生贄にすれば貫通効果付与で黄泉帰ります。
 除外やバウンスには弱いが、それでも中々ではなかろうか。
 ちなみに、トークンは作中で出てないのでステータスは適当です。その辺誤解なきように。
 ついでに、漫画GXに出た中で大海の一番好きなモンスターだったりします。
 ……いやまあ、それだけなんだけど。


『奇奇怪怪』
 永続魔法
 このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、フィールド上に表側表示で存在する全てのモンスターは妖怪族となる。

 当然三沢が使用。
 効果だけ見れば微妙だけど、相手の種族を封じようと思えば便利かも分からんね。
 ただ、それなら墓地も封じられる『アンデットワールド』で良いじゃん、てなるんだけどね。
 まあそんなことしたら妖怪族を特殊召喚できなくなるからこっち使うしかないわけだが。


『妖魔の援軍』
 通常罠
 1000ライフポイントを払って発動できる。
 自分の墓地のレベル4以下の妖怪族モンスター2体を特殊召喚する。

 無論三沢が使用。
 妖怪限定とは言え、ライフ1000でモンスター二体を完全蘇生というのはかなり強力かと思います。
 もちろん二体揃ってないとっていう懸念はありますが、それでも妖怪族ならば十分使えるかと思われまする。


『百鬼夜行』
 通常罠
 自分の墓地に存在する妖怪族モンスターを可能な限り特殊召喚する。
 この効果で特殊召喚したモンスターはこのターンのエンドフェイズ時に破壊される。

 結局三沢が使用。
 エンドフェイズに破壊とは言え、一気に大量展開できる。
 おまけに蘇生時効果と合わせればおっそろしいことになります。
 やっぱ、本当は自分のターンに発動できるのが理想でしょうな。


続いて、原作効果。


『馬頭鬼』
 妖怪族
 墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事で、自分の墓地から妖怪族モンスター1体を特殊召喚する。
 この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できず、相手ターンでも発動できる。

 漏れなく三沢が使用。
 言うまでもなく、特殊召喚はアンデット族でなく妖怪族です。
 また、墓地へ送ったターンに使えなくなった代わりに、相手ターンでも発動できます。おまけにレベルの制限も無し。
 中々に強いね。


『赤鬼』
 妖怪族
 このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、自分の手札を任意の枚数墓地に送る事で、その枚数分だけフィールド上に存在するカードを破壊する。

 果てなく三沢が使用。
 妖怪族であること、効果が特殊召喚にも対応していること、バウンスでなく破壊であることが違いです。
 今のご時世だとバウンスのが強力だろうけど、特殊召喚に対応してることが地味に強力だったりします。
 他のカードとの兼ね合いも考えると、原作のが強いかな。



これで全部かしら?
ちなみに、なぜか元妖怪族のOCG化モンスターは全部地属性になってたので、ここでも一応地属性に統一しております。

何気に『妖怪族』って蘇生カードは多い割に、全部罠なのが地味に使い辛かったりするんだよな。
けど、それでもぶっちゃけ、『幻竜族』なんかより『妖怪族』をOCG化して欲しかったなぁ、なんて思ったのは大海だけかな?
まあ、妖怪族は大概アンデット族に変更されてるし、今更遅いか。

とまあそんな感じで、いつになるか分からんが、次話まで待ってて。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。